徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】太陽の涙 #1

TBS 1971年12月7日

 

あらすじ

正司(加藤剛)はヨーロッパ出張の前日、弟(小倉一郎)の入院を見舞った折に小川老人(三島雅夫)と出会う。つい、自分には一人息子がいると嘘をついた小川老人から、正司はとんでもないことを頼まれて……。

2024.3.18 BS松竹東急録画。

 

人生の喜怒哀楽に

私達が求めるものー

人々は、即座に

「しあわせ」と言う。

では、幸わせとは

何処から来るのでしょう

 

ここでバーンという効果音と太陽の映像とドラマタイトルが出る。

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この記録映画を思い出しました。

 

この人間喜劇は

太陽の前に顔を押さえ

嬉し泣きに泣いた

ある人生の

ささやかな挿話です

 

制作・脚本 木下恵介

 

音楽 木下忠司

主題歌

 作詞 尾中美千絵

 作曲 木下 忠司

 唄  有賀 公彦

 

協力 俳優座

 

及川正司:加藤剛…添乗員。字幕黄色。

*

前田寿美子:山本陽子鉄板焼屋の娘。字幕緑。

*

池本良子:沢田雅美…病院の売店の売り子。

及川勉:小倉一郎…正司の弟。

*

前田政代:村瀬幸子…寿美子の母。

井上はつ:菅井きん…新作の知り合い。

*

前田昭三郎:山本豊三…新作の三男。

前田賢一郎:小笠原良知…新作の長男。

*

友江:檜よしえ…看護師。

前田竜二郎:早川純一…新作の次男。

板前:浅若芳太郎

*

仲居:白水聿子

仲居:小峰陽子

仲居:間島純…仲間から菊ちゃんと呼ばれている。

ナレーター:矢島正明

*

前田新作:浜村純…寿美子の父。

*

小川:三島雅夫…1年半入院している病院の主。

 

ドラマが始まっても歌が終わらない「たんとんとん」方式。

 

マンションのベランダから外を歩いている寿美子を新作が呼んでいる。戻ってこいと手招きをする新作を見て、寿美子は引き返した。

 

MAMIANA MANSION

狸穴マンション

 

地上10階建て。1969年7月竣工。

エレベーターは9階で止まり、寿美子は”前田新作”の表札の出ている901号室のドアを開けようとしたが、鍵が閉まっており、インターホンを鳴らした。思い出したように鍵を開ける新作。

 

寿美子「鍵かわなくたっていいじゃないの。呼んどいて」

新作「つい癖なんだよ。ほら、スリッパはそろえてやるからな」

 

高級マンションに住んでるんだから、いちいち施錠するのも仕方のないことなのかも?

 

新作はいい話だというが、寿美子は権利金が高いところはダメと支店の話だと思っている。「もうこれ以上使用人で苦労すんのはイヤですよ」

 

新作は寿美子に写真を見せた。「ステキにいい男」

寿美子「私の結婚のこと?」

新作「そうさ。心配なのは使用人よりお前のほうだからね」

寿美子「イヤです、私は」

新作「どうして?」

寿美子「どうしてもこうしてもないわ。分かってるでしょ、お父さんだって」

新作「分かってるよ」

寿美子「分かってたらなんにも言わないでちょうだい」

新作「そうはいきませんよ。あの事件が起きたんだって、もとはといえばお前みたいなキレイな娘がいつまでも結婚しないでいるからじゃないか」

寿美子「そんなこと大きなお世話でしょ? 私がいつまで独りでいたって」

 

新作「まあ、そうどならないで、さあ、掛けなさいよ」

ソファに掛けると着崩れするからダメ。出かけるという寿美子。

 

新作はあっちの椅子ならいいだろ?とダイニングテーブルに移動。

寿美子「だけど、言っときますからね。私は私の結婚したい人は自分で探しますからね」

新作「ああ、いいですよ。探しても」

寿美子「だったらほっといてほしいわ」

新作「だけどどうやって探すの?」

寿美子「別にほっつき歩くわけじゃないわよ」

 

椅子に掛けた寿美子だが写真を見ることは拒否。

新作「だけどだよ…」

寿美子「だけどもヘチマもないんです」

 

腹を立てた寿美子は立ち上がる。

新作「そんなところは、まるっきりおふくろに似てるんだから」

寿美子「いいえ。強情なとこ、お父さんに似たんです」

新作「そうさ。あんなおふくろに似るより、お父さんに似たからお前は幸せなんだよ。まあ、掛けなさい。なっ? 今、お茶を入れてやるから」

 

スリッパ出してくれたり、お茶入れてくれたり優しい。

 

新作「お茶でも飲んで落ち着きなさい」

寿美子「魔法瓶にお湯いっぱい入ってますからね」

新作「いい話なんだがな」

寿美子「いくら良くてもダメよ」

新作「ダメダメって、お前は少しあの事件にこだわりすぎげんじゃないの?」

寿美子「こだわってなんかいるもんですか。私が誘惑したわけじゃあるまいし。向こうが勝手に好きになったんじゃありませんか」

 

新作「だけどだよ、結局お前の顔が見たいばっかりに会社の金を使い込んでしまったんだからな。まさか、うちの鉄板焼きが食べたいばっかりに毎晩来たわけでもないだろ? とにかく栄養のとりすぎで心臓が弱っていたっていうからな」

寿美子「もともと気が小さい人だから心臓が弱かったんですよ。それらしいことをひと言も言ったこともないくせに、それを捕まったらペラペラしゃべっちゃって、こっちこそとんだ迷惑よ。競輪や競馬ですったのまで私のせいにするんですもん」

新作「やけっぱちで賭け事したんじゃ外れるよ。かわいそうに若い身空でな…22っていうから、お前より3つ年下だよ。今年の3月、大学を出たばっかりだからな」

寿美子「ばっかりが使い込みをするんだから大した人間よ」

 

新作「いや、それもこれもお前が好きになったからじゃないか」

寿美子「お父さん。そんな言い方は週刊誌の見出しだけでたくさんですよ。お茶まだなの?」

新作「うん。今、お湯を冷ましてるんだよ」

寿美子「いいから早くちょうだい」

 

新作「そう威張るなったら。そういうところがおふくろに似てるんだよ。そういえばあいつも3つ年上だ。どうもいけないよ、3つ年上は。それにおまけにあいつは申年ときてやがる」

寿美子「別にひっかかれたわけじゃないでしょ?」

新作「ひっかかれたさ。かみつかれたことだってあるよ」

寿美子「ふ~ん、イヤね。結婚なんて」

新作「特別だよ、お父さんのは。さあ、飲みなさい」

寿美子「私、お父さんとお母さん見てるから、とっても結婚する気になんかなんないわ」

新作「相手によるよ、相手に。この男は気が優しくって親孝行なんだ。それに男前だっていうしさ」

寿美子「そんな写真、誰が持ってきたの?」

新作「おはつさんだよ。おはつさんのアパートの近所にいるんだよ。お父さんと2人でな。まあ、ちょっと見なさいよ、ええ? 小さい写真だけど、感じは分かるだろ?」

 

寿美子「なあに? これは外国の景色じゃないの」

新作「そうさ。これがパリ…かな。これは確かローマだな。これもローマだな。これはオーストリアかな」次々写真を置く。この時代にカラー? もうカラーだっけ?

寿美子「イヤな人。得意になって外国行ったときの写真を持ってくるんだもん」

新作「いや、そうじゃないよ。外国なんかしょっちゅう行ってるんだよ。旅行社に勤めてるんだよ。あれはなんていったかな…とにかく団体客なんかをしょっちゅう外国へ案内してるんだよ」

寿美子「じゃ、ガイドじゃないの」

新作「お…うんうん、まあ、そうかな。あ~、だからこの…英語はペラペラだしさ、それにこの…あか抜けしてるよ、ほら」

 

寿美子「イヤです」

新作「何が?」

寿美子「真っ平よ。そんな二枚目が外国しょっちゅう行ってて一体何してると思ってんの? お父さんは」

新作「何をって何を?」

寿美子「ああ、いやらしい。ムズムズしてくるわ」

新作「いやらしい?」

寿美子「そうよ。パリにローマにオーストリアに行く先々でモテてるんでしょ? ああ、気持ちが悪い。金髪の女に抱かれちゃって。おはつさんもおはつさんよ。こんな写真持ってくるなんて。さあ、私、お店行きますからね。ごちそうさま。あんまりおいしいお茶じゃなかったわ」立ち上がる。←ていうか、なんで抱かれるほうなのよ?

 

新作「おい、寿美子」

寿美子「お父さんも早くお店へ来てちょうだいよ。つまらない夜更かしなんてしないで早く起きてもらわなきゃ困るんだから」玄関へ向かう。

新作「寿美子」

寿美子「あっ、ランチタイムは忙しいんだからお願いしますよ」出ていく。

 

新作「ハァ…まるでおふくろそっくりだ」

 

最初からすごい情報量。新作たちの住むマンションは港区麻布。寿美子をストーカーしていた男が会社の金を使い込んで捕まって、寿美子のことをベラベラしゃべったって感じ? 新作はキレイな娘なのに結婚してないからだと見合いを勧める、と。

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純ちゃんの応援歌」の清原先生でおなじみ浜村純さんが寿美子のお父さん。でも、1971年で還暦過ぎてたんだな~。「3年B組金八先生」の荒谷二中の米倉先生を演じたときは74歳だったんだから、そりゃおじいさんに見えたよね。

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「ミスター・ベースボール」では高倉健さんのお父さん。

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「父子草」では渥美清さんのお父さん。

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新作が経営する鉄板焼き屋は店内も広く、客もいっぱい。新作は従業員たちにマスターと呼ばれている。仲居からお座敷に寿美子の兄が来ていると聞かされた。今は1人だけど、4人の予約が入っている。新作が店に来たので、寿美子はお座敷へ。

 

新作「すぐはいいけど、若い男だったら気をつけなきゃダメですよ」

寿美子「またそれを言う」

新作「それが一番心配なんだよ」

 

店内を歩いてお座敷席へ。お座敷もいっぱいテーブル並んでて広いお店だね~。ひろ~いお座敷にポツンとスーツに眼鏡の男が座っている。

 

賢一郎「よう、寿美子。久しぶりじゃないか」

寿美子「相変わらず元気そうね」

賢一郎「どうだい? 景気は」

忙しいという寿美子に「間もなくお母さんも来るよ」と言う賢一郎。竜二郎も昭三郎も来る。

 

賢一郎役の小笠原良知さんは「おやじ太鼓」では小笠原良智さんの名で出演。

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黒田の妻と駆け落ちしたバーテンダー。眼鏡のせいか、あの時とまた感じが違うな。

 

寿美子「一体どういう風の吹き回しなの?」

賢一郎「お前だよ、原因は」

寿美子「えっ?」

賢一郎「新聞には出るし、週刊誌には出るし、みっともないったらありゃしないよ」

寿美子「だからみんなで押しかけてくるんですか?」

賢一郎「来たくもなるじゃないか、心配で。もとはといえば、お前が親父のほうへ来てしまったのがいけないんだよ。そりゃ親父だって寂しいさ。だけど、それもこれもいわば親父さんの身から出た錆だからな」

寿美子「何が錆なの? 何がお父さんの悪いとこなの?」

 

賢一郎「フフッ、ああ、そうか、お前はな…」

寿美子「なにも笑うことはないでしょ? 私はあんな政略結婚がイヤでお父さんとこへ来たんですからね」

賢一郎「いや、誤解誤解。お前がそう思っただけだ」

寿美子「そうかしら?」

賢一郎「そうに決まってるじゃないか」

寿美子「私にはそうは思えなかったの。お母さんだって兄さんたちだって、みんな一緒になって」

賢一郎「いや、だけどだよ…」

寿美子「だけどは、お父さんの口癖だけで結構よ」

 

仲居Aが案内して、竜二郎が入ってきた。「おう、寿美子。どうしたんだ? あんなヘマして。兄さん、お母さんと昭三郎まだ?」

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竜二郎役の早川純一さんは見たことない方かと思ったけど、「おんなは一生懸命」でプロデューサー役で見てたんだね。

 

賢一郎「いや、間もなく来るだろう」

竜二郎「ああ。なかなか大した店じゃないか」

寿美子「ええ、お父さんが頑張ったのね」

竜二郎「ああ、偉いよ。見直したよ」

賢一郎「もっと早いうちに頑張りゃ家族から捨てられなかったろうにな」

竜二郎「手遅れが運をつかんだのかな」

寿美子「私、忙しいから消えます」←言ってみたい言葉。

賢一郎「おい、寿美子。お母さんがもうじき来るよ」

寿美子「どうぞごゆっくり。私、お父さんの悪口なんか聞きたくないわ」勢いよく襖を開けてしまい、お茶を運んできた仲居Aとぶつかった。「あっ! ごめん、ごめん。つい急いでたもんだから」

 

仲居A「今、お雑巾を取ってきます。あっ、いらっしゃいまし。失礼いたしました。じゃ、こちらからどうぞ」政代や昭三郎が立って見ていた。

 

政代「まあ、まあ、はしたない。これが前田家の娘でしょうかねえ」

寿美子「すいません」

昭三郎「しょんぼりすんなよ、寿美子。お茶を蹴飛ばすなんて元気でいいよ」

政代「いいことがありますか」

昭三郎「はあ」

政代「久しぶりに会えば出会い頭にこれですからねえ。お前さんもニヤニヤしなさんな」

昭三郎「はあ、すいません」

 

仲居A「すいません。ちょっとごめんなさい」廊下の向こうから雑巾を持って走ってきて、寿美子の前を拭き始める。

 

政代「昭三郎、よく覚えておくんですよ。すいませんというのは、こういうとこの言葉ですからね。申し訳ございませんと言うのですよ」

昭三郎「はあ」

2人は廊下からお座敷席へ入って行く。

政代「寿美子、いらっしゃい」

 

政代役の村瀬幸子さんは「おやじ太鼓」では堀部長の母。

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昭三郎役の山本豊三さんも「しなの川」で見ていた。

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ていうか、「しなの川」に仲雅美さん出てたんだ。竜吉というメチャクチャ重要な役だったのに「思い橋」の良男と全然違うキャラだったから今の今まで忘れていた。

 

寿美子「(仲居に)お願いします」お座敷席へ。

 

仲居A「何よあれは?」

仲居B「あれが申し訳ない顔でしょ」

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仲居さんには名前がないんだろうか。字幕にAとかBとかでてるわけじゃありませんが、自分が分かるように区分け。最初から出ていたAが間島純さん。Bは小峰陽子さんだね。「あしたからの恋」「たんとんとん」では看護士、「思い橋」では北の同僚。「二人の世界」ではスナックうぐいす本木の妻だった。ちょっと尾崎奈々さんっぽい細身の洋風美人。

 

厨房で伝票をチェックする新作。仲居Cから妻子が来ていることを知らされた。

 

最初にお座敷席に案内した仲居Aは”菊ちゃん”と呼ばれていた。他の仲居さんも名前が出てきますように。

 

菊ちゃん「あの方はマスターの奥さんじゃないんですか」

新作「来たのか、あのババアが」

仲居B「お嬢さんのお兄様も3人様おそろいですけど」

新作「あ…あいつら、よくも雁首をそろえやがって。おい、呼んできなさい、寿美子を!」

 

厨房に寿美子が戻って来た。

新作「あいつらは何しに来たんだ? お…お前に何か言ったのか?」

寿美子「こんなはしたない商売をしてるから新聞種になるんですって」

新作「なんだと? お前にそう言ったのか?」

寿美子「私、頭が痛くなったから、うちへ帰ります」

新作「寿美子、待ちなさい」

寿美子「お金さえ払えば大威張りでお客様ですって」

新作「ちきしょう…バカ野郎。こんちくしょう」

 

菊ちゃん「あの…広間のお客様、極上の鉄板焼き4人前お願いします」

新作「バカ野郎。あんなヤツには猿の肉だ。猿の肉だって食わしてたまるか」

寿美子「猪鍋(ししなべ)の店かと思ったら、牛肉もあるのねって。お母さんが言ってたわ。お先に」帰っていった。

 

新作「あのババアめ。よくもよくも抜かしやがった」

菊ちゃん「猪鍋ってイノシシですね」

新作「イノシシは俺の年だよ。あいつは申でおまけにババアだ。とっとと帰ってもらいなさい。板さん、私も帰るからね。あとは頼むよ」

板前「はい!」

新作「料理なんかくれぐれも出すんじゃないぞ」

 

それは、直接言ってくれなくちゃ~、従業員も困るよ。

 

明治41/1908年生まれの申年だと思います。政代は63歳。

新作は明治44/1911年生まれの亥年で60歳。寿美子は25歳で4人兄妹の末っ子。

 

あんまり姿は見せない板前は浅若芳太郎さん。

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「たんとんとん」では健一の亡夫の仕事仲間で「二人の世界」では麗子が一瞬働いていた会社の課長さん。

 

新作のマンション

はつ「だから、そのことはあとでお話ししようと思ってたんですよ」

新作「あとでって、あんた。それじゃまるっきり…」

はつ「そうなのよ、そうなのよ。とにかく1年前、お父様は軽い脳溢血で倒れたでしょ」

新作「まあ、それはいいさ。今は自分の用ぐらい自分で足せるんだから」

はつ「ええ、そりゃもう。言葉だってね、ちょっと変かなと思うくらいですからね。気にしてなきゃ分かりませんよ」

新作「しかし、不良の弟がケンカをして今の今、病院にいることは話さなかったじゃないか」

 

はつ「だからですよ。それは寿美子さんの気持ちがちょっとでも動いてから話そうと思ってたんですよ」

新作「動くどころかさんざんだよ」

はつ「だけどですよ」

新作「だけどだよ」

はつ「いいえ、だってですよ。あなただって親孝行だっていう一点が気に入ったんじゃありませんか」

新作「そうそう。親孝行は気に入ったよ。私にはろくでなしの息子が3人もあるからね」

 

はつ「だから私だって、ろくでなしの弟のこと、あんまり話したくなかったんですよ」

新作「じゃあ、いいところの一点は帳消しじゃないの」

はつ「とんでもない。それが10点も20点も30点もですよ。とにかく血のつながらない弟をかわいがること、かわいがること。とにかく今どき、あんな優しい人はいませんからね。近所の娘さんだって、おかみさんだって惚れ惚れしてるんですよ」

新作「その惚れ惚れがいけないんだよ」

 

バスローブ姿の寿美子が「おばちゃん、いらっしゃい」と出てきた。

 

はつ「お掛けなさいよ、ここへ」←今までソファの上に正座してた?

新作「あの話だよ、写真の」

寿美子「おばちゃん、悪いけどお断りするわ」

はつ「いいえ。私に悪いことなんかありませんよ。でもね、本人にちょっとでも会ったら気が変わるんじゃないかしら」

新作「その写真だって見ないんだから」

はつ「それじゃとても話にもなんにもならないけど…とにかくいい男ですからねえ」

 

はつさんは木下恵介アワーではおなじみ菅井きんさん。

 

病院の廊下を歩く正司。う~ん、確かにいい男! 看護師から弟が治療室のほうへ行っていると伝えられた。あした、ヨーロッパに発つため、ちょっとでも会おうと来たが、看護師がレントゲン室に行ったかもしれないというので、売店で待つことにした。

 

売店へ歩いていく正司の後ろ姿を見つめる。坊主頭の男性が三島雅夫さん。

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「雁の寺」のエロ坊主みたいなたたずまい。

 

売店には誰もおらず、正司は椅子に掛けた。

良子「あっ、ごめんなさい。ちょっとおトイレ行ってたの。何、差し上げます?」

正司「そうだな…いなり寿司をもらおうかな」

良子「まあ、いなり寿司ですか?」なんとなく似合わない感じと言いながら、ケーキ屋のショーケースのようなガラス棚からいなり寿司を出した。

 

正司「どうして似合わない感じがするの?」

良子「だって、いなり寿司食べる顔じゃないわ」

正司「そんなバカな。僕だって日本人じゃないか」

良子「ハハッ、でもね、なんとなく…あっ、いらっしゃい」

 

小川「ああ、さてさて何をもらうかな?」←和服だから太ってみえるのか「3人家族」や「二人の世界」の頃と雰囲気違うなあ。髪型のせい?

 

良子「お茶だけでいいんじゃない? おじさん」

小川「いやあ、今日は何かもらうよ」

良子「あっ、そうか。月の初めだもんね」

小川「うん。いなり寿司にしようかな」

良子「あっ、豪勢だ」

小川「フフッ」

良子「あっ、お隣の人を見たら食べたくなったんじゃない?」

小川「うん。私だって、たまにはね」

良子「フフフッ」

 

売店の黒電話が鳴る。看護師からの電話で正司が電話に出た。勉がレントゲン室から治療室へ行ったが、混んでるから時間がかかるだろうと言われた。旅行は長いんですか?と問われた正司はインド、エジプトからヨーロッパで3週間だと答えた。まだ弟さんは病院にいそうだと言われ、お礼を言って電話を切った正司。

 

良子「どうりでそういう人だと思ったわ」

正司「えっ? 何が?」

良子「ヨーロッパ行くんでしょう?」

正司「うん」

良子「しゃれてるなあ。いいわ、とっても羨ましいわ」

正司「だって仕事だもの」

良子「あっ、仕事で行くの? じゃあ、なおさらいいわ。旅費だってホテル代だってタダでしょ?」

正司「ハハッ。団体旅行だもの。僕はガイドでね、骨が折れるんだ」

良子「あっ、そうなの。だから、いなり寿司食べんのね。しばらく食べらんないから」

正司「まあ、そんなとこかな」

 

小川「あの…ちょっと伺いますけど」

正司「はっ?」

小川「そのヨーロッパ旅行というのベニスへも行くんですか?」

正司「ええ、行きますよ」

「そうですか、行くんですか」と何度も繰り返し、おいしそうにいなり寿司を頬張る小川。良子と顔を見合わせる正司。

 

人生には奇妙な出合いがあります。いや、奇妙な出合いこそ人生なのかもしれません。

 

小川は厚かましいお願いがあると話しかけたが、廊下でお話ししたいと正司を連れ出した。

 

良子「変なおじさん。わざわざ廊下出てかなくたっていいのに」

♪泉にそいて しげる菩提樹

慕いゆきては うまし夢見つ

ララララ…

菩提樹

菩提樹

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歌いながら、小川と正司の食べかけのいなり寿司に紙?をかぶせる良子。

 

松葉杖をついた勉が来た。「あれ? いないや。ねえ、今、ここにいなかった?」

良子「いたわよ。ヨーロッパへ行くガイドの人でしょ?」

勉「うん。もう帰っちゃったのかな?」

良子「ううん。変なおじさんとね、廊下まで出てったけど、その辺にいないかな?」

勉「変なおじさんって誰さ?」

良子「病院の主なの。もう1年半も入院してんのよ。三食付きでね、タダでしょ。生活保護を受けてんのよ。月の初めにはお小遣いももらえるしね」

勉「あれ? どこ行ったんだろう?」

 

二人して辺りを見回していた。(つづく)

 

沢田雅美さんと小倉一郎さんは「心」でも共演してたね。

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1話から出演者が多かったな~。兄3人がスーツに黒縁眼鏡で見分けつかない。

 

主題歌を歌う有賀公彦さんは同時期に木下恵介・人間の歌シリーズの「春の嵐」(1971年12月16日 - 1972年4月13日)の主題歌「宍道湖周遊歌」も歌っています。こちらの脚本は「思い橋」の高橋玄洋さん。

 

春の嵐」は情報がほとんど出てこない。「たんとんとん」直後の近藤正臣さんが主演っぽい? ほかに「思い橋」の松坂慶子さん、幸子役の望月真理子さん、正紀(セーキ)役の山本聡さんもいる。「兄弟」の秋山ゆりさん、「たんとんとん」の松岡きっこさんなど。美人が集まりまくってる。「太陽の涙」にも出演してる浜村純さんの名前も見つけた。掛け持ちだったのね。

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そういえば、以前見たドキュメンタリー番組によると、加藤嘉さん、花沢徳衛さん、浜村純さん、藤原釜足さんは長年同じ芸能事務所に所属していて、春に花見をするのが恒例だったと言ってたな。

 

浜村純さん以外は妻が20前後若い人ばかりでそこにも衝撃を受けた。妻が17歳下の花沢徳衛さんが「たんとんとん」でも「思い橋」でもちょい下心がありそうな親父役が似合うのはそのせい!? 「たんとんとん」で夫婦役だった杉山とく子さんとは15歳差。

 

主演の加藤剛さんはいなり寿司なんて似合わないと言われてたけど、1970年には「大岡越前」放送してんだよね~。この時代、加藤剛さん、竹脇無我さん、山口崇さんを集めるなんてすごすぎる。時代劇じゃなきゃ長くやれないけど、ちょんまげのない3人のドラマが見たかった気もする。

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そうそう、私が見た第10部(1988年)は森田健作さんもレギュラーになってた。

 

今週の金曜日は放送がなくて、来週は(来週から?)午後4時30分からの放送になる模様。今は橋田ドラマを見てないからいいけど、かぶっちゃうね。やっぱり、「たんとんとん」の次は「太陽の涙」を放送してほしかった。こんなにも最初から休止や時間変更があるなんて、面白そうなだけに不運。