TBS 1977年12月8日
あらすじ
学徒出陣に次いで徴兵年齢引き下げが決定し、いせ(市原悦子)は迫り来る新二(大和田獏)の徴兵に怯えていた。学友たちの志願を見送っていた新二は自分だけが残っていることに苛立ち始める。
2024.7.25 BS松竹東急録画。
冒頭はお決まりのシーン。青白画像。船が港に帰ってくる。
いせ「石頭(せきとう)教育、13981(いちさんきゅうはちいち)部隊、荒木連隊、第1大隊、第6中隊の端野新二(はしのしんじ)を知りませんか? 端野新二知りませんか? 端野新二を知りませんか? 端野…新二~!」
端野いせ:市原悦子…字幕黄色。
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端野新二:大和田獏…字幕緑。
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石田健太郎:長澄修
石田の母:宮内順子
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水野のぶ子:小畑あや
のぶ子の父:菅貫太郎
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三浦文雄:山本耕一
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音楽:木下忠司
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脚本:高岡尚平
秋田佐知子
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監督:高橋繁男
<とうとう三浦先生に召集令状が来たのでした。俗に「赤紙が来た」なんて、皆さんおっしゃいますけどホントに赤いんですね>
テレビ画面の加減か分からないけど、赤くは見えない。すごく薄いピンクくらい。
三浦家
寝ていた三浦先生が目を覚ます。「どうかしたんですか?」
いせは黙って召集令状を差し出した。
三浦「来ましたか。しかたないんですよ。私だけじゃないんですから」
いせ「奥様に…」
戸が開く音がし、新二が名乗って家に入ってきた。
三浦「ああ、おかえり」
新二「ただいま。(いせに)どうしたの?」
三浦「私もお国の役に立つときが来たようだ」と召集令状を新二に見せた。
新二「来たんですか、召集令状」
帰り道
いせと新二はまっすぐ家には帰らず神社へ行き、お参りした。さすがに本物の神社なのでセットの家みたいに窓ガラスにバッテンのテープは貼られていなかった。お賽銭をする前にマフラーを外すのね。長いことお願いしているいせ。
三浦家
三浦先生、いせ、新二が集まっての壮行会。
三浦「とよ子に会ってきました」
新二「おばさん、帰ってこないんですか?」
三浦「うん。見送るのがつらいんだろう。故郷(くに)の歌でも歌いますか」
♪ハアー 佐渡へ
佐渡へと草木もなびくヨ
佐渡は居よいか 住みよいか
三浦先生の「佐渡おけさ」に新二もいせも拍手を送る。
三浦は庭の盆栽の一つを新二に渡した。「これを記念に」
新二「いりません、そんな…なんだかこれっきりになるみたいで」
三浦「バカだな。先生は死なないよ。これはなかなか丈夫でしてね、この前の雪のとき、しまい忘れたんだが、こうやって実をつけたんですよ」
三浦文雄君の旗にたくさんの名前が書かれている。一人、タバコを吸いながら見ている三浦先生。とよ子は書いたんだろうかね?
端野家
もらった盆栽に水をかける新二。
いせ「さみしいだろうね。三浦先生」
新二「おばさん、帰ってこないんだな。どうしてかな」
いせ「私のせいだよ」
新二「母さん、まだ責任感じてるの? もうとっくに忘れてるのかと思ってた」
いせ「忘れるわけないだろ。母さん、三浦先生と奥様には一生…」
新二「ほら、またそれだ。母さんがそう思いたきゃ思うしかないね。僕だけ残っちゃったな」
いせ「新二」
新二「しょうがないよな」
新二からしたら、いせはただの親切なのにおばさんが勝手に誤解してるとでも思ってるくらいの認識なのかもね。
三浦先生見送りの日。新二がかばんを持ち、いせも一緒に歩いていると、別の見送りの一行が「出征兵士を送る歌」を歌っていた。
林伊佐緒「出征兵士を送る歌」1939/昭和14年10月発売
字幕に曲のタイトルが出たので探しやすかった。歌詞も特徴的だね。
三浦「じゃあ、もうここで」
いせ「いえ、いえいえ、駅まで行かせてください」
三浦「お気持ちはうれしいんですが、かえって…新二君、お母さんを大事にな」
新二「はい。約束してください。必ず帰ってくるって」
三浦「ああ、私だって死にたくない。帰ってくるよ。教師としてやり残したこともいっぱいある。じゃ」
笑顔でうなずくいせ。
歩き出した三浦先生。
いせ「三浦先生~!」手を振る。
三浦先生は小さく会釈して歩いて行った。
端野家
盆栽に水をやる新二。
新二「おふくろは?」
のぶ子「うちの周りを掃除するって」まだ仕立物を習ってるのね。
新二「もう、じっとしてられないんだから」
表を掃き掃除していたいせ。のぶ子の父が歩いてきたのが見えて、慌てて家へ。
いせ「(小声で)早く2階へ。お父さんが」
新二は、のぶ子の手を引き2階へ。いせはふすまを閉じた。
⚟のぶ子の父「端野さん。いないのかね?」
いせ「はい」ふすまを開け、「あら、いらっしゃいませ。何かご用ですか?」
のぶ子の父「のぶ子が来てるだろ?」のぶ子の白いスニーカーを草履で踏んでる。
いせ「いいえ」
のぶ子の父「ちょっと上がらしてもらうよ」
いせは玄関にあったスニーカーを慌てて前掛けの中に隠した。
新二は押し入れにのぶ子を入れた。「いいね? 絶対出てきちゃダメだよ」
のぶ子「どうしてここだって分かったんだろ?」
新二「さあ…まあ、おふくろに任せとけば大丈夫だから」
のぶ子「うん」
のぶ子の父「どこへ隠した? ああ? どこへ隠した!?」
いせ「だから来てないって言ってるじゃありませんか」
新二「母さん、どうしたの?」
のぶ子の父「親子でとぼけやがって…のぶ子出しな」
いせ「失礼じゃありませんか、人のうちに勝手に。(新二に)大体、あんたがだらしがないからこういう目に遭うのよ。そりゃ、のぶ子さんはいい娘さんよ。お前が好きになるのも無理はない。母さんだって。でも、この前、お前、なんて言われたんだい? 非国民とまで言われたんだよ。ああまで言われて、まだつきあってるんだったら、母さんが承知しないからね、どうなの?」
何も言わずに2階へ上がろうとするのぶ子の父。
いせ「家捜しですか? どうぞご遠慮なく。2階でもなんでも得心がいかなかったら、ゆっくり見てください。これっぽっちのうちですから。ごゆっくりどうぞ。気が済むまで隅から隅までご覧になってください。捜すのはいいんですけど、もしいなかったら責任取ってもらいますよ」
2階へ上がったのぶ子の父は辺りをキョロキョロ。「のぶ子!」物音がしたのに「いねえな。いねえんだな」とニヤリとして階下へ。「いやな、かみさんがカンカンなんだ。のぶ子の野郎が仕立物習いに行くって言いやがったんだが、ヤツが習いに行ってるってえとこに、かみさんが挨拶に行ったところがよ、まだ一度も来てねえってんだ、あの野郎」
いせは前掛けからのぶ子のスニーカーを落としてしまい、廊下に座り込んだ。
のぶ子の父「まあ、ここにはいねえようだから、もし万一来たら、すぐ追っ返してくださいよ。なんせかみさんがうるせえのなんのって。いや、邪魔したな。いや、いや、いや…まあ、かわいい一人娘を心配したと思って勘弁してください。ほんじゃ、まあ。ハハハッ」と帰っていった。
新二もいせも大きなため息をつく。のぶ子は押し入れから出てきた。
新二「階段上っていかれたときには、もうダメかと思ったよ」
のぶ子「すいません。すいません、父ったらいっつもあんな調子なもんで」
いせ「寿命が縮まったよ、ホントに。お父さん、気づいてたね」
のぶ子「ええ」いせがのぶ子のスニーカーを手に持っていたことに気付いた。「あれ?」
いせ「あっ、これ、名前が書いてるから慌てたよ」
のぶ子「すいません」受け取り、玄関へ。
いせ「ねえ?」
新二「どうする?」
のぶ子「父は大丈夫。父は私がかわいくってしょうがないんだから。問題は母なの。父は母に頭が上がらなくって。養子だから」
いせ「養子なの? ああ、そう。それでお父さんは、お母さんのことばっかり言ってたのね。あんたに聞かせようとしてたんじゃない? お母さんを怒らせないようにしてくれってことよね」
のぶ子「ええ」
いせ「私からご挨拶に行ったほうがいいかしらね」
のぶ子「いいえ。母には時間をかけて分かってもらうようにしますから」
いせ「そうね。それがいいわね。フフッ、口が悪いけど人は、いい人みたいね、お父さん」
新二「江戸っ子だから、ねえ? ハハハッ」
のぶ子も笑う。
ある夜、石田の母が重い荷物を持って端野家を訪ねた。
いせ「まあ…石田さん」
石田の母「もう、その節はいろいろと」
いせ「こちらこそ。お久しぶりでございます。まあ、ご無沙汰しており…さあ、どうぞ」と家に上げる。
ちゃぶ台の上に重そうな袋を2つ置く石田の母。「少しですが…」
いせ「まあ、こんなに」
石田の母「これ、うちの卵なんです」
いせ「まあ…貴重な物を。どうぞそんなお気遣いなさらずに」
石田の母「どうぞ」
いせ「ありがとうございます。ホントに助かります。遠慮なくありがとうございます。ああ、こんな重い物を…」台所へ運ぶ。「で、東京へは何かご用でも?」
石田の母「はあ。健太郎から手紙が参りましてね、あしたの朝早く、どっか遠くへ移動するからって」
いせ「あした?」
石田の母「はい。主人が手紙を読みましてね、健太郎は何かを決意しているようだって」
いせ「と申しますと?」
石田の母「航空隊では特攻隊に志願する人も多いとか。主人は健太郎もそのつもりじゃないかと…」
いせ「でも石田さんは、この戦争は一日も早く終わらさなければいけないって、いつもおっしゃってたんですよ」
石田の母「ええ、私にも。だから、私はどうしてもあの子が主人や私を残して死ぬ気だなんて思えないんです」
いせ「そうですよ」
石田の母「でも…もしかしたら、あした会っておかないと二度と会えないような気もしましてね。それで出てきたんです。端野さん、今夜泊めていただけませんか?」
いせ「ええ、ええ。ええ、どうぞ。さあ」お茶を出す。
石田の母「主人も誘ったんですが、俺は行かないって…」
いせ「おつらいんでしょう」
大きくうなずく石田の母。
上空に戦闘機が飛ぶ。新二、いせ、石田の母が石田のいる基地?へ行った。カラー映像のゼロ戦が飛ぶ映像は当時のもの?
新二「あっ、石田さんだ」
石田が小走りで来て、3人を前に敬礼した。
映画やドラマでよく見るこんな感じの服装。
石田の母「健太郎」
石田「おばさんたちも来てくれたんですか」
石田の母「健太郎」
石田「こうやってみんなに来てもらえるとは思わなかった」
新二「石田さん、どこへ飛ぶんですか?」
石田「自分たちにもまだ分からないんだ。ここから今日、南のほうの基地へ飛んで、そこで出撃命令を待つことになるらしい」
新二「三浦先生も召集されました」
石田「そう」
いせ「新二、石田さんしばらくお母さんと…」
石田「いや、いいんです」
いせ「新ちゃん」とその場を立ち去る。
思いっ切り合成の空と戦闘機。
いせ「石田さんもつらいだろうけど、お母さん、たまらないだろうね」
新二「うん。石田さん、変わったね」
石田の母は石田の右手首の傷跡を見る。「覚えてる? お前が小学校2年のとき川で泳いでて、一升瓶の破片でザックリ切って…お医者は遠いし、出血多量で危なかった。お父さんと2人でお前を抱えて、山を越えて隣町の病院に担ぎ込んで…」
石田「覚えてるよ。よ~く」
石田の母「やっと助かったのよね」
石田「うん」
石田の母「健太郎。お父さん、私がここへ来る前、急にいなくなってね。お前と勇太郎の子供のころの物がしまってある奥の部屋にじっと座ってて、お母さん、なんにも言えなくて…ただ健太郎に悔いのないように戦えって言ってくれって」
石田「うん」
石田の母「でも、お母さんは違う。なんて言われてもいい。生きて帰ってきてほしいの。健太郎」
石田「分かってるよ、お母さん。お母さん、お父さんと2人、体を大事に。長生きしてよね。今まで心配ばっかりかけてきたもんね。帰ってきたら、お父さんとお母さんに親孝行しなきゃね」
石田の母は涙を流す。
少し離れた場所にいたいせと新二が近づいてきた。
石田「おばさん、おにぎりと卵焼き、ありがとう。もらっていきます」
いせ「お母さんのために必ず無事に帰ってきてくださいね」手袋を外して手を握る。
石田は、うなずくことなく新二に「新二君、ギターうまくなったかい?」と話しかけた。下を向いて首を横に振る新二。
石田「じゃ、時間ですから」頭を下げ、走り去る。
石田の母「健太郎!」
呼びかけに振り向いて敬礼する石田。
<なぜか無性に石田さんにお会いしたくて、お母さんにお願いして連れていっていただきましたが、今、思えば連れていっていただいて、ホントによかったと思ってます。あれが見納めでしたもの>
帰っていく石田の母、いせ、新二の後ろ姿。(つづく)
い、石田さん~~~(涙)。ホントに優秀な人がたくさんいなくなって、「赤い運命」の河野みたいな人が戦後の社会を牛耳って…
次の作品が「別れて生きる時も」と分かり、予習。田宮虎彦さんの小説が原作で何度もドラマ化されている。1959年版はTBSで前後編、1962年版はフジテレビ、キャストに園井啓介さんがいて、1964年版は大映制作で日テレ。フジと日テレのは昼ドラ。1969年版は脚本は田井洋子さんでNHK。今度放送されるのは1978年TBS愛の劇場で「岸壁の母」の次。
1961年の映画「別れて生きるときも」も同じ原作で、ここが一番詳しくあらすじが載っていたけど、かなりのドロドロ。「岸壁の母」と時代設定も同じくらいで、実在の人でもなく小説だから、もっとねっとりした昼ドラっぽい作品じゃないかと予想。もっとカラッと明るいのが見たいね、ホントは。しばらく愛の劇場が続くのかな?


