TBS 1972年4月4日
あらすじ
正司(加藤剛)は、はつ(菅井きん)に自分と小川の関係を説明する。寿美子(山本陽子)の一目ぼれの相手が他でもない正司だったことを知ったはつは、大喜びで早速寿美子と新作(浜村純)に会いに行き……。
2024.4.11 BS松竹東急録画。
ふと行き合ったとき
優しく声をかける
花があります
ふと出合ったとき
可愛い目をして
立ち止る犬があります
ふと見上げたとき
人生を語り合う
真昼の月があります
でも人と人とは…
及川正司:加藤剛…添乗員。33歳。字幕黄色。
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前田寿美子:山本陽子…鉄板焼屋「新作」の娘。25歳。字幕緑。
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及川勉:小倉一郎…正司の義弟。20歳。
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ケン坊:鍋谷孝喜…「信濃路」の店員。
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菊ちゃん:間島純…「新作」の仲居。
仲居:小峰陽子
ボーイ:伊藤吉秀
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仲居:伊沢理恵
板前:大西千尋
仲居:大槻俊子
ナレーター:矢島正明
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前田新作:浜村純…寿美子の父。「新作」マスター。
はつのアパートを訪ねた正司。「すいません、出し抜けに」
はつ「いいえ。1人じゃつまらないんですもの。ひょっこり来てもらったほうがうれしいですよ」
ホントによく人の来るアパートだね。
正司は「信濃路」へ行ったが、はつはついさっき帰ったばかり。勉と良子はお店で一緒におそばを食べている。ここへ持ってきてもらえばよかったと言うはつだったが、正司は奥さんに話があると言う。「さあ、なんて言ったらいいのかな。とにかく変な話ですから」
「信濃路」
勉と良子は向き合って、天ぷらそばを食べている。
勉「おいしいだろ? ここの天ぷらそば」
良子「うん、おいしいわ。それに久しぶり」
勉「そうだよね。何か食べようと思うとき忘れてるもん。大抵、他の物食べちゃう」
良子「そうかしら。私、食べたいけどね、よしちゃうの。高いのよ、天ぷらそば」
勉「なんだ、だから久しぶりか」
良子「悪いわね、今日は」
勉「当たり前さ。兄貴のことでわざわざこんな所まで来たんだもん。兄貴だよ、払うのは」←なーんだ、自分じゃ払わないのか。
良子「だけど、あんたどうすんの?」
勉「何を?」
いつまでもブラブラしてるわけにはいかないでしょと良子に言われ、とにかく足が治らなきゃと言う勉。マッサージに通うのもあと少し。
良子「随分バカなことしたもんね。自分でもそう思うでしょ?」
勉「思ったときはもう手遅れ。そういうもんじゃないの、なんでも」
良子「あんたは特別なの。ダメよ、もっとしっかりなくちゃ」
勉「ほらまた始まる。せっせと食べなよ。天ぷらそばおいしいんだろ?」
良子「すぐ話そらすんだから」
勉「おつゆもおいしいね。ああ、おいしい」舌を鳴らすのがクセ?
あきれ顔の良子。
ケン坊が出前から戻って来た。「いい月ですよ。煌々(こうこう)と輝いちゃってんだから。すがすがしいな、雨はやんだし。だけど、どうしてだろうな。できないんだなあ」
勉「何ができないの?」
ケン坊「ガールフレンド。さっぱりおできも出来ないんだから」
⚟一郎「ケン坊」
ケン坊「はいはい」
⚟一郎「つまんないこと言ってないで出前だよ」
ケン坊「これですからね。はい、出前3丁! 景気のいいこと、いいこと」
顔を見合わせて笑う良子と勉。
声だけで初登場のはつの息子・一郎。
とにもかくにもこの夜の2人は何かしゃべり合っていれば楽しかったのです。そして、それぞれの気持ちは雨上がりの空に浮かぶ月のように静かに冴えた感情が、はっきりとお互いを好きだと自覚していたのです。
はつのアパート
はつ「まあ、あきれた。そんなことになってたんですか」
うなずく正司。「妙なことから妙なことになっちゃったんですけどね」
はつ「じゃあ、あれですか? あれですよね? 寿美子さんが一目惚れしたあの人の息子さんっていうのは…」
正司「一目惚れかどうか知らないけど」
はつ「いいえ。そうなんですよ。お父さんが何回ここへ来ましたか。困った困ったって言いながら、おそばだけはおいしそうにたっぷり食べてったんですからね」
正司「そりゃやっぱりおいしいですよ。奥さんとこのおそば」
はつ「そりゃまあいいんですけどね。こりゃまあ一体どういうことになっちゃったんでしょう?」
正司「僕としてはあれなんです」
はつ「あれよりも何よりも面白いじゃありませんか。正司さん、しっかりしてくださいよ」
正司「ええ。しっかりしてるつもりだったんですけど」
はつ「つもりじゃダメですよ。どんどん積極的に会わなきゃ。とにかく私はひどい目に遭ったんですからね。せっかくこんないい縁談はないと思ったのに。それをどうでしょう。まるで木で鼻をかんだような返事をして。せっかく持ってった写真だって見てもくれなかったんですからね。ああ、いい気持ちだ。胸がせいせいしましたよ。あっ、どっかにお月様が出ていましたね」立ち上がって窓を開ける。「あら、ないわ」
正司「奥さん」
はつ「えっ?」
正司「僕はその人のことよりも小川さんのことなんですよ」
はつ「そんなこと正司さんが気にすることないでしょ。もともと大ウソなんですもの。大体無理ですよ。そんな大ウソを押し通そうなんて」
正司「初めは軽い気持ちだったんですけどね」
はつ「そりゃそうでしょ。そんなバカバカしいこと軽い気持ちでなくてできるもんですか」
正司「でも、いい人だし、気の毒な人なんですよ」
はつ「だからそれでいいんですよ。もうするだけのことはしてあげたんですもの」
当時は同じような境遇の人も大勢いたからなのか割と冷たく感じちゃうね。はつも夫の影がないので店を出すのに相当苦労はしたんだろうけど。まあ、でも変に同情するよりいいのか。
正司「じゃあ、こうしようかな。僕はもう一度ベニスへ帰ったことにして…そうすればもう病院に行かなくてもいいし」
はつ「そうよ、そうそう。それが一番いいですよ」
正司「小川さんだって、それが一番いいですよね」
はつ「あっ…だけど、ちょっと待ってちょうだい。そうすると寿美子さんに何もかも話してしまうんですか?」
正司「そうしないと、いつまでもだましていたことになるんじゃないですか?」
はつ「じゃあ、正司さん。はっきり聞きますけどね、正司さんも寿美子さんならいいと思うんでしょ?」
正司「さあ…どうでしょうね」
はつ「何を言ってるんですか。自分のことですよ、自分の一生の」
正司「だってあれでしょ? 僕みたいにしょっちゅう外国へ行ってる人間はイヤだって言ったんでしょ?」
はつ「言ったけど、それは正司さんを知らない前のことですよ。今は夢中なの。イタリア料理の店を始めようかなんて言ってるんですもの。お父さんだって、あきれ果ててカンカン。私だってカッカしましたからねえ。それがどうでしょう。一方は大嫌いで一方が大好きで、それが同じ一人の正司さんだったんですもの。胸がスーッとして、お月様だって見たくもなりますよ」←胸がスーッとする!?
正司「ねえ、奥さん」←この甘い響きどこかで…
「岸辺のアルバム」の北川さん(演・竹脇無我)を思い出すんだなあ。
はつ「奥さんじゃありませんよ、おばちゃん」
正司「じゃあ、おばちゃん」
はつ「はいはい、なあに?」
正司「つまり、あれですよね。僕なんかダメですからね」
はつ「何がダメなの?」
正司「やっぱりいろんなことがね」
はつ「ちっともダメじゃありませんよ。何を言ってるんですか、正司さんは」
正司「無理なんですよ、この話は。初めっから」
はつ「あのね、正司さん。私は初めっからこんないい話はないと思えばこそ、この話を持っていったんですよ」
正司「すみません」
はつ「いいえ。済むとか済まないとかじゃないんですよ。私はもうこうなれば意地なの」
正司「そりゃ、奥さんの気持ちはありがたいけど」
はつ「おばちゃんですったら。どうしてこう頭が悪(わり)いのかしら。こうなれば、もう意地でもおばちゃんって言ってもらいますからね」
正司「頭が悪いのかな、僕は」
はつ「いえ、これはもののはずみ。頭の悪いのは彼女のほうですよ」
正司が気にしてるのは家柄の違い? どさくさ紛れに寿美子を頭が悪いと言うはつ。
「新作」
はつが店に入ってくると、仲居の菊ちゃんが声をかけてきた。「お食事ですか?」
はつ「ええ、ちょっと簡単にね」
菊ちゃん「では、どうぞこちらへ」
席についたはつ。「さあ…何を頂こうかしらね」
お昼なので、天ぷらかお肉の照り焼きかお刺身の定食を勧められ、お刺身定食をチョイスし、何となく厨房の様子をうかがう。
菊ちゃんが厨房へ行き、井上さんがおみえですよと新作に報告。
寿美子「どうしてこっちへ顔出さないのかしら?」
新作「お前がとやかく言うからですよ」
菊ちゃん「でも珍しいですね。お一人でお食事にいらっしゃるなんて」
新作「何を気取ってるんだろう。こっちへ来て食べりゃいいのに」寿美子に呼んでくるように言うが、寿美子は、わざとこっちへ来ないのだから何かあるだろうと答えつつ、前掛けを外して、はつに挨拶に行った。
寿美子「いらっしゃい。一体どうしたんですか? 1人で澄まし込んじゃって」
はつ「たまにはいいのよ。お客様の気分になるのも」
寿美子「お昼ご飯ですってね。向こうで食べたら? お父さんが待ってるわ」
はつ「そう、じゃあとでね」話がありそうなのにもったいぶる。
寿美子「病院へわざわざいらしたんですってね、小川さんに会いに。聞きましたわ、父から」
はつ「あっ、そうそう。それがあれなんですよ。とんでもない大間違いだったの」
寿美子「何がですか?」
はつ「小川さんっていう人とその息子さんですよ」
寿美子「えっ? なんですって?」
菊ちゃんがお刺身定食が出来たので、奥へ来ていただきなさいと言っていたと寿美子に伝えた。寿美子はすぐ行きますと菊ちゃんに返事をして、もう一度はつに何が大間違いなのか聞いた。
はつ「それがあれなんですよ」←こればっかり。「とんでもない大間違いってあるもんですよね。それに私そそっかしいでしょ。よく失敗しちゃうのよ」
もう一度問いただした寿美子にとにかくおなかがすいたと言って、お刺身定食を持ってこさせるはつ。
厨房へ戻った寿美子はお刺身定食を持って店へ。
はつ「これがお刺身定食なの? 白身に赤身にこれが赤だしね」
寿美子「ねえ、おばちゃん」
はつ「まあ、いい匂い」
寿美子がまた聞くが、はつは定食の値段を気にする。「でもお高いんでしょ?」
寿美子「高いもんですか。おばちゃんならタダよ」
菊ちゃんが来て、お膳を再び奥へ運ぼうとする。「マスターがそう言うんですもの」
寿美子「いいのよ、ここで。ねえ? おばちゃん」
はつ「ええ、私はどっちだっていいけど」
寿美子はおばちゃんこっちのほうがいいって、とまた戻し、菊ちゃんは行ってしまった。
寿美子「ご飯おつけします」
はつ「悪いわね、寿美子さんに」
寿美子「どういたしまして、商売ですもの」
はつ「あら…じゃあ、タダじゃないのかしら?」
寿美子「いいえ。どうぞ何杯でも赤だしもお代わりしてくださいね」
はつ「じゃ、ごちそうになるわ」
また小川秀行について聞きだそうとする寿美子。
はつ「それがね、こうなんですよ」
奥から新作が出てきた。「おばちゃん、こんなとこで食べるより奥で食べなさいよ」とお膳を手に持つ。
寿美子「お父さん」
新作「なんですか、水くさい。2人だけで」さっさと奥へ行ってしまう。
はつ「やっぱりタダじゃ落ち着いて食べられないわね」
AURANという店名の喫茶店
新作「ここならいいだろう、何を話したって」
はつ「いいんですか? 2人とも店を空けちゃって」
新作「いや、それよりも大事な話だからさ」
ボーイが注文を取りに来た。
新作「あっ、おばちゃん、何飲む?」
はつ「そうですねえ…」
寿美子はレモンティー、新作はコーヒーを注文。
はつ「あれ、なんていったかしら? あのパンのような卵焼きのような…」
新作「あんた、まだ食べるの?」
はつ「まだってろくろく食べちゃいませんよ」
新作は食べたでしょうがとあきれ、寿美子がなだめる。
はつ「そうよ、ほら、あれあれ」
ボーイ「あっ、フレンチトーストですか?」
はつ「あっ、そうだったかしら」
新作「そんなしゃれた物を頼まなくたっていいですよ」
新作は面倒だから簡単な物でいいと言うが、ボーイはフレンチトーストも簡単だと答え、はつはフレンチトーストとコーヒーを注文。
新作「うんと大きいフレンチをね」←なぜ?
はつ「大きくなくたっていいんですよ」
新作「なんですか。刺身のあとにフレンチだのコーヒーだの。まるでうちの定食にケチをつけるようなもんだ」
はつ「そうじゃないですよ。ろくすっぽ食べてるような気がしなかったんですよ」
新作「これだからね、このおばちゃんは」
はつ「それにあの忙しい台所じゃ喉を通りませんよ。それに早く食べろって顔してにらんでたくせに」
寿美子「そうじゃないのよ、おばちゃん」
はつ「いいえ。赤だしだって半分飲んだだけですからね」
新作「にらみたくもなりますよ」
はつ「あら、どうしてでしょう?」
新作「だってそうでしょうが」大きな声に周りの客が振り向く。
はつ「あら、そうかしら」
新作「あんたはね、あんないいかげんな親父さんはないって、昨日病院から帰ってきて、そう言ったんですよ」
はつ「だから大間違いだって言ったでしょ?」
新作「困るんですよ、それじゃ」
寿美子「私は大間違いで大喜び。ねえ、どういうふうに大間違いなの?」
新作「いいかげんだよ、この人は」
はつ「いいかげんなもんですか、私が」
飲み物が先に運ばれてきた。フレンチトーストはちょっとお待ちくださいと言うボーイに、大きいのをねとまた言ってる新作。
ボーイ「じゃ、2人前お持ちしますか?」
はつ「いいえ、冗談。いいのよ、1人前で」
ボーイ「はい」
新作のマンション
寿美子「おばちゃん、ホントにありがとう。私、きっとそういう人だと思ったの」
はつ「そうですよ。寿美子さんが一目惚れする人はやっぱり違いますよ」
新作「何がきっとだ」
寿美子は、はつや新作にお茶を出す。新作は寿美子も掛けるように言う。
はつ「まあ、おいしいお茶。新茶ですね」
寿美子「ええ、そう」
新作「赤だしだの、コーヒーだの、よくもまあそうガブガブ飲めたもんだよ」
はつ「だっておいしいんですもの。飲んでごらんなさいよ」
新作「分かってますよ、うちのお茶ぐらい。おいしいかまずいか」
新作は昨日、あんないいかげんな親父はいないと言いに来たのにとプリプリ怒っている。はつは、だから言い直しに来た、大違いだと言う。
新作「あんたときたら、お刺身のあとにフレンチトーストなんだから、びっくりするよ、こっちのほうが」
はつ「だからおちおち食べられなかったって言ってるでしょ」
寿美子がお茶を勧めた。
はつ「いいじゃありませんか。私が飲みたいんですもの」
新作「飲みませんよ、私は」
はつ「まるで子供みたい」
新作「この年になって子供に見えたら大したもんだよ。あんたなんてとうが立ってるよ」
はつ「まあ、憎たらしい」
寿美子は小川秀行さんっていう人と会ってみたいと新作に言う。
え~!? はつさん、まだ話してないの? 喫茶店でも大間違いで押し通した?
はつ「そうそう。会ったほうがいいですよ」
新作「おばちゃん。あんたは少し黙っててほしいの」
もう一度、小川秀行さんに会ってもいいか聞く寿美子に新作は会ってもいいが、その前におばちゃんの言う及川正司さんに会ってみなさいと言う。
はつは2人の会話を聞いて急にせきこむ。
新作「イヤなせきをするよ、この人は」
はつ「いえね、ちょっと喉がかゆくなっちゃって」
寿美子はお茶を持ってくると言うが、新作に秀行さんと比べるのはイヤだと会おうとしない。ニヤニヤして聞いているはつは、新作に突然話を向けられると、また喉がかゆくなったとごまかした。なんで言わないのー!?
考えてみれば、この道を往復するのも不思議な運命というものです。弟のケンカ、そして、足の骨折。そして、そこで知り合った3人。その一人一人が今は正司の心に深く入り込んでいるのです。勉と愛し合ってくれればと願う良子。赤の他人ではあるが、他人とは思えなくなっている小川さん。そして、いま一人の人…
バスに乗っていた正司がバスを降りた。もうコートの季節じゃなくなったね。
あの日、ここで偶然に話しかけたあの人…その人が自分を捜し、自分を求めているという。そして、あるいは自分の心のどこかでもその人を求めていたのかもしれない。
病院へ向かって歩き出す。
「あしたからの恋」の勉もバスで来ました。
だが、正司は、この3人に対する思いを振り切ろうとしていたのです。愛することも愛されることも、しばしば傷ついてきた正司だからです。
売店にいる良子に声をかける正司は小川さんとこ行ってくるよと掛けようとしない。「会社を抜けてきたし、忙しいんだ」
良子「何しに行くの? 小川さんとこへ」
正司「じゃあ、ちょっと掛けようかな」
良子「どうぞ」
正司「お茶を1杯だけね」
良子は小川さんが今日は一度も来ないと気にする。大体午前中と午後には来る。お茶を出しながら「小川さんになんか用なの?」と聞く。
正司「それがね…小川さんには気の毒だけど、もう病院へ来るのはやめようかと思って」
良子「あっ…やっぱり昨日のことね」
正司「ハァ…しかたがないよね。考えてみれば大変なウソなんだから。長くは続かないよ、こんなウソ」
良子「でも…小川さんにはなんて言うの?」
正司「もう一度、ベニスへ帰るって言うんだよ」
良子「小川さん、どんな顔するかしら」徐々に涙声になってる。
正司「さあ、どうかな」
良子「がっかりするんでしょうね」
正司「そうかな?」
良子「そりゃするわよ」
正司「どうして?」
良子「寂しくなるもの」
正司「だってそのほうがいいじゃないか。僕がいればいつまでもごまかしていられないもの」
良子「そうかしら?」
正司「そうだよ。小川さんのためにもあの人のためにも」
良子「あの人って前田さんのこと?」
正司「そう。いつまでもだましてちゃ悪いじゃないか。僕さえいなけりゃいいんだ。僕がいなくなってからならさ、よっちゃんがみんなウソだって言ってあげればいいんだ。それも早ければ早いほど」
良子「でもね、小川さん、ウソがホントになっちゃってるんじゃないかしら」
正司「ウソがホントか…」
良子「そうよ、きっと」
正司「とにかく行ってくるよ」売店を出て行く。
入れ違いに勉が来た。「よっちゃん、兄貴、どこ行ったの?」
良子「小川さんとこ」
勉「えっ? 小川さんとこへ、また行ったの?」
良子「お別れですって」
勉「お別れ?」
良子「またベニス行くんですって」
勉「あっ、そうか、ベニスか。ベニスはいいね。ゴンドラへ乗っちゃってさ。イカすんだけどなあ。俺とよっちゃんと行ったら」
良子「何言ってんの?」
勉「うん?」
良子「小川さんの気持ちにもなってごらんなさいよ」
階段を上る正司。(つづく)
良子が小川さんに肩入れしすぎ。良子は小川さんがかわいそうばかり言うけど、正司の気持ちを全く考えてないよね。正司に罪悪感を植え付けてる。憂いのある顔もカッコいいんだけどね。
ウソがホントになっちゃってるのは良子で、小川さんは普段は及川さんと呼びかけ、立派なお父さんがいるのにすいませんと謝ったりしてる。一度会いに行ってやってほしいと良子が事を複雑にしたとしか思えない。寿美子のことは置いといて、段々、良子のことがうっとおしくなってきた。寿美子はもう全然物語の本筋とは関係ない感じに思えてきた。はつさんもなぜあんなに引っ張るのか。
「おやじ太鼓」9話。トシは幸子にも洋二にもあんな大きなうちで~云々言ってるのね。しかし、トシみたいにあの時代地方から上京して進学することもすごいと思うが。
10話はこれから。カラー化まであと少し。