TBS 1977年12月9日
あらすじ
学徒出陣に次いで徴兵年齢引き下げが決定し、いせ(市原悦子)は迫り来る新二(大和田獏)の徴兵に怯えていた。学友たちの志願を見送っていた新二は自分だけが残っていることに苛立ち始める。
2024.7.26 BS松竹東急録画。
冒頭はお決まりのシーン。青白画像。船が港に帰ってくる。
いせ「石頭(せきとう)教育、13981(いちさんきゅうはちいち)部隊、荒木連隊、第1大隊、第6中隊の端野新二(はしのしんじ)を知りませんか? 端野新二知りませんか? 端野新二を知りませんか? 端野…新二~!」
端野いせ:市原悦子…字幕黄色。
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端野新二:大和田獏…字幕緑。
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石田健太郎:長澄修
石田の母:宮内順子
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水野のぶ子:小畑あや
石田の父:前沢迪雄
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三浦文雄:山本耕一
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音楽:木下忠司
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脚本:高岡尚平
秋田佐知子
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監督:高橋繁男
端野家
慰問袋のアップ
千人針に縫い付けられた五銭玉。
新二「ねえ、この五銭、なんなの?」
いせ「死線を越えるように五銭なの」
新二「なるほどね」
いせ「やっとこれで2人分の千人針が出来たよ」
新二「でも、慰問袋を送るったって、三浦先生の隊は分かってるけど、石田さん、どこの基地にいるか分かんないんだろう?」
いせ「うん…でも、用意だけはしておこうと思ってね。居所が分かったら栃木のお母さんが知らせてくれることになってるから」
新二「みんな、どんどん戦地へ出ていくなあ。中学時代の友達もだいぶ行ってる」
長久武運の布を腹に巻いてみるが、いせに取り上げられる。「お前、まだ徴兵年齢に達してないんだから。焦ることないの。三浦先生が戦地に行くだけが男の生きる道じゃないって言ったんだろ?」
橋の前に女性が立っている。「あっ、お願いいたします」
通りかかったいせが千人針に協力する。
<一人一針ですから千人針といっても、それは大変です。中に縫い込んだ五銭玉のおかげで命拾いした運のいい兵隊さんもいたそうですが、ほとんどの千人針はシラミの巣だったそうでございますね>
衝撃の事実!
いせは神社にお参り。頭を下げて何か唱える。
新二と帰りに行きあったいせ。「早かったじゃない」
新二「うん。電休日で工場のほうが休みだから、学校へ行ってみればガランとしててね。勉強らしい勉強もできないよ」
いせ「あっ、そう」
新二「なんのために大学行ってるのか分からなくなるよ」
いせ「こういうご時世だからしかたないよ。自分で勉強すればいいだろ」
新二「うん」
いせが玄関の鍵を開けて入ると、戸の隙間に何か挟まっていた。
新二「あっ、踏む踏む!」
いせ「あっ、何? ごめん」
新二「石田さんからだよ」
いせ「まあ…うれしいね」
新二「母さんと僕宛てだ」
いせ「まあ、うれしいね」
封書に貼られた切手のアップ
検索するとすぐ出てきた。「第2次昭和 少年航空兵」という15銭切手。発行年度は1942年。青白。
いせは庭に誰かいるのに気付いた。新二は封書をポケットにしまって庭へ。庭にいたのは三浦先生だった。
新二「母さん、三浦先生」
いせ「おや、まあ、どうなさいました? まあ…」
敬礼する三浦先生。「しばらくでした。外出許可が出たもんですから」
いせ「まあ…さあ、どうぞ。どうぞ、お上がりください」
三浦「はあ」
坊主ズラをかぶる三浦先生。お茶を飲み、ホッと一息。「近いうちに前線に移されそうなんです。それで急に外泊許可が出たってわけなんですよ」
新二「先生、今夜は泊まってってください。ねえ、母さん、いいだろ?」
いせ「ええ。ええ、ええ」
三浦「そうしたいんだが、明日の朝までには帰隊しなければいけないんでね。夜の汽車には乗らないと」
いせ「じゃ、ご飯だけでも」
三浦「ありがとうございます」
いせ「ろくな配給物がなくって、なんにもできませんけど。奥様のほうには…」
三浦「行ってきました。ちょうど留守でしてね。行き先まで訪ねるには、ちょっと時間が…それにあなた方にもお会いしたかったし」
いせ「そうですか。お会いになれなかったんですか」台所に立つ。
三浦「しかたありません」
端野家に来る時間があるなら、もっと粘ればいいのに。
新二「少し痩せたんじゃないですか?」
三浦「うん。2貫目、痩せたよ」
1貫目が3.75キロだから7.5キロか。はあ~。
新二「大変なんでしょうね、軍隊生活って」
三浦「まあね、あれは人間の生活とはいえないな。石田君、どうしてるね?」
新二「あっ…アハハッ。石田さんから手紙が来てたんだ。先生、おどかすもんだから忘れてた」
いせ「ハハハハッ」
三浦「どこにいるんだい?」
封書の裏は名前だけしか書いてない。
新二「どことも書いてないです。母さん」
いせ「大きい声で読んで」
新二が手紙を読み始める。
「拝啓 おばさん、新二君。この前は、わざわざありがとうございました。お二人にも母にも会えて思い残すことはありません。とうとうお別れの手紙を書く時が来ました。今日、僕は特攻隊員として出撃いたします。いろいろ考えた末、特攻隊に志願したのです。親不孝なヤツだとお思いでしょう。父も母も、兄が戦死したあと、僕だけを頼りに生きているのは、よく分かっています。それでも、僕は、この道を選ばずにはいられませんでした。こうするよりほかになかったとしか言いようがありません。おばさんや新二君と一緒に暮らした楽しい思い出が次々に走馬灯のように浮かんできます。僕は新二君に教えてもらった歌を大声で歌いながら敵に突っ込みます。僕は自分で選んだ道です。悔いてはいません。本当にいろいろお世話になりました。今、待機指令が来ました。お別れの時が来たようです。さようなら。石田健太郎」
ゼロ戦が飛んでいく。手を振る整備士。敵に突っ込む当時の白黒映像。
三浦「彼はきっと苦しんだと思う。その結論が自ら進んで特攻隊を志願するということだったんだよ、きっと。戦争を批判しながら、お国のために自分の命を捨てる。分かる。分かるんだよ、その気持ち」
泣きだす新二。
食事も終わり、帰り支度の三浦先生。
いせ「千人針、お送りしようと思ってたんですけど、先生と石田さんに」
三浦「ありがとうございます」かばんに千人針をしまう。「新二君、お母さんを悲しませるようなことだけはしちゃいけないぞ」
うなずく新二。
三浦「じゃあ、私は…」
新二「僕、送っていきます」
いせ「うん。お帰り、お待ちしてます」
三浦先生は敬礼して、外へ。新二も後に続く。
路地
新二「先生、僕はもうたまりません。僕だけいつまでも…」
三浦「まだそんなこと言ってるのか。軍隊なんて君が考えてるようなもんじゃないよ。ひどいもんだ」
新二「それならなおさらです。みんながそういう所で戦ってるのに、僕だけ…」
三浦「お母さんによく相談してみるんだな。のぶ子さんのことだってあるんだろ? さあ、もうここでいいよ」
新二「先生」
三浦「うん?」
新二「母のためにも帰ってきてください。僕には分かっています。先生と母の気持ち。おばさんのことがあるから…僕のこともあったし、先生たちは…」
三浦「新二君」
新二「僕もそういうことを少しは分かるようになったんです。先生、死なないでください」
三浦「生きるも死ぬも運しだいだからな。じゃ」
新二、公認!? 三浦先生も少しは否定してよ。
いせと新二は橋の上を歩いていた。手すりも何もない木の板だけで怖い。
石田の実家
石田さんの遺影は全身なんだね。いせと新二は手を合わせる。
石田の母はお茶を運んできた。
石田の父「帰ったのか? みんな」
石田の母「ええ」
石田の父は母に比べて出演頻度は低い。
祭壇の前にいたいせは石田の母に頭を下げる。
石田の母「ホントにわざわざいらしていただいて…健太郎も喜んでいることでしょう」
石田の父「端野さんとこへ来た健太郎の手紙だ」
石田の母も手紙を読む。
石田さんの声で手紙が読まれる。
「拝啓 おばさん、新二君。この前は、わざわざありがとうございました。お二人にも母にも会えて思い残すことはありません。とうとうお別れの手紙を書く時が来ました。今日、僕は特攻隊員として出撃いたします」
石田さん、いい声。
石田の母「端野さんには、本当にお世話になりどおしで…」
いえ…と小さく首を横に振るいせ。
石田の母「新二さんにも仲よくしていただいて…帰ってきたら親孝行しなくっちゃねなんて、ウソ言って。あんな箱に入って帰ってきて。爪と髪だけになってしまって…健太郎はあのとき覚悟を決めていたんですね」
新二「僕にとっては兄のような…」
石田の母「たった2人しかいない息子を2人とも…こんなことになるんだったら、女の子を産むんだった」
石田の父「よさんか。健太郎が立派にお国のお役に立ったんだ。同じことを何度も言うな」
石田の母「私は違う。脱走したっていい。両手両足なくなったっていい。生きて帰ってきてさえくれたら…」すすり泣く。
石田の父「泣くな」と祭壇の前へ
石田の母は手紙をいせに返した。「新二さん。あなたはお母さんに私のような思いをさせちゃダメよ。お母さんは、あなたを頼りに生きていらっしゃるんだから。母親って、そういうものよ」
「警察日記」には5人の息子を亡くした元校長が出てくるけど、戦争中で記憶が止まっていて、カラスが飛んでいるのを見て「空襲警報ー!」などと叫んでいた。この映画の三國連太郎さんは若い警官役だけど、ホントカッコいい。
帰り道
新二が先を歩いて行く。微妙に距離のある2人。
端野家
新二のギター弾き語り。
♪沖の鴎と 飛行機乗りはヨ
どこで散るやらネ
果てるやら ダンチョネ
色は黒いや 飛行機乗りはヨ
空じゃ天女のネ 色男
ダンチョネ
今度 会うのは 来年4月ヨ
坂の九段のネ 花の下
ダンチョネ
いろんな人がカバーしてるね。
新二の歌を聴きながら仕立物をしているいせの目が潤む。
新二も自室に寝転がって涙を流す。
<新二が次第に何かに駆り立てられているのが分かりましてね。皆さんにはちょっとお分かりにならないかもしれませんが、あのころの男の子は誰でも戦争と無関係には生きられませんでした。お国のために戦って死ぬことが男の一番すばらしい生き方だと考えられていたんです。ホントに本気だったんです。どう生きるかというよりもどう死ぬか。そういう時代だったんでございます>
いせ「来てよかっただろ?」
新二「うん」
いせ「石田さんのことがあってから、うちにばっかり閉じこもってたから、たまには母さんと出かけるのもいいだろ」
川の土手でヨモギ摘み。
新二「母さん」
いせ「なあに?」
新二「俺、昨日、学校に退学届、出してきたから。母さんに相談しなくて悪かったけど」
いせ「悪いに決まってるじゃないか。あした、学校行って退学を取り消してきなさい。母さんがどんな思いでお前を大学にやってるか…」
新二「分かってる。でも、これ以上、学校へ行く気にはなれないんだ。みんなお国のために戦ってる。それなのに僕だけ知らん顔して。勉強してるわけにはいかないんだよ」
いせはヨモギを摘んだかごを持って歩きだす。
新二「聞いてよ。石田さんは自分の体ごと敵に突っ込んで死んだ。三浦先生も戦地で戦ってる。三浦先生や石田さんだけじゃない。俺の知ってるヤツは、ほとんど志願して兵隊へ行ってしまった。みんな、今日死ぬか、あした死ぬかギリギリのところで戦ってるんだよ。そんなとき僕だけ…」
いせ「母さんを捨てる気なのね」
新二「問題が違うよ。僕は男として義務を果たしたいんだ。自分だけよければいいってのはイヤなんだよ」
いせ「兵隊に行く気なの?」
うなずく新二。
いせ「絶対イヤよ、母さんは。イヤよ。召集令状が来たんならともかく自分から兵隊なんか」
<恐れていた時がやって来ました。いつか新二が、そのことを切り出すのではないかと。私はなんとか新二の決意を崩さねばと思いました>
端野家
帰ってきた新二。「いらっしゃい、今日は遅いんだね」とのぶ子に声をかけ、そのまま2階へ行こうとする。
いせ「新二、ちょっとここお座んなさい。のぶ子さん、さっき言ったこと、もう一度、新二にはっきり言ってちょうだい」
のぶ子「新二さん、おばさんから聞いたわ。私も反対よ」
新二「母さんやのぶ子さんが反対だと言っても、俺は…」
いせ「何を言ってるの。親を捨ててまで」
新二「女には分からないよ」
いせ「生意気言うんじゃないよ。お前、一人で大きくなったの?」
のぶ子「新二さん、お願い。もう一度考え直して。ねっ? 新二さん」
いせ「新二、私たちのことを…」
新二「分かったよ。分かったよ」
のぶ子「じゃ…」
いせ「のぶ子さん。お夕食していきなさいよ」
のぶ子「いえ、でも…またうちで心配するといけないから」
いせ「今日はゆっくりしていきなさいよ」
のぶ子「新二さんさえ分かってくれれば」
いせ「そう?」
新二「ちょっと待ってくれよ。俺、満州行くから」
いせ「だって今、分かったって…」
新二「決心は変わらないから」2階へ。
いせ「新二! 満州…」(つづく)
新二は満蒙開拓青少年義勇軍になるつもりじゃないだろうな?
それだけはやめとけ! 島崎は16歳で応募。4年後に終戦だから、同じ歳くらいかな? 変な昼ドラ要素がなけりゃもっと純粋な気持ちで見られたのにな~、ま、昼ドラなんだけどね。

