NHK 1987年7月15日(水)
あらすじ
蝶子(古村比呂)が学生時代からお世話になっていた銀座の喫茶店が閉店することになった。マスターの河本(梅津栄)は妻を亡くして、店を今のまま受け継いでくれる後継者を探しているという。そこで蝶子は、叔父・野々村泰輔(前田吟)に喫茶店経営に興味はないかと相談するのだが、泰輔の妻・富子(佐藤オリエ)は新しい事業に手を出すことにいい顔をしない。そんな富子の気持ちを、一杯のクリームソーダが一変させる。
2025.7.23 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
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岩崎要:世良公則
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野々村富子:佐藤オリエ
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国松連平:春風亭小朝
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彦坂頼介:杉本哲太
田所邦子:宮崎萬純
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河本:梅津栄
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北山道郎:石田登星
梅花亭夢助:金原亭小駒
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彦坂安乃:近藤絵麻
吉崎雅代:松岡由利子
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早川プロ
劇団いろは
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神谷容(いるる):役所広司
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野々村泰輔:前田吟
こんなメンバーがそろうのは蝶子が加津子を出産した以来かな!?
カフェ泉
蝶子「この店、本当にやめるの? どうして?」
河本「うん…この秋に家内に死なれましたでしょ? 何だか力がスッと抜けましてね。死んだ家内とは私が絵描きの修行をしてる頃、知り合いました。家内の両親が反対だったもんですから、私たちは家出同然で結婚しました」
別のテーブルの要に視線を送る蝶子。
絵をかじっていたという話は以前もちらっとしてました。
河本「ところが絵はダメでした。描いても描いても売れませんでね。それで絵を諦めて、ま、いろんな仕事をしました。10年前ごろですかな、家内の親の許しがやっと出まして、その親の持ち物だった、この建物をもらい受けまして喫茶店にしたわけです。家内が死んだあと、夜、仕事が終わって、うちに帰りますでしょう? 生きてた頃は『今日、店が混んでてね』とか『お客さんの中にこんな人がいたよ』って話をしてたわけです。その家内が、今、いないわけです…何だか、力、抜けましてね。それじゃ、お客さんに申し訳ないでしょう。それで、ま…田舎へ引っ込もうかと」
女学校時代に知り合ったユーリーさんも妻に先立たれてたな。
蝶子「やめて、店は?」
河本「うん、今、買い取ってくれる人を探しております」
蝶子「マスターいないなら、私、この店、来ない!」
邦子「私も」
河本「うれしいね」
蝶子「いや、ホントよ」
要「あの…買い取ってくれるような人はいないんですか?」
河本「いや、います。いるけど、なかなかいい人がね。私はほら、この店をそっくりそのまま続けてくれる人を探しとるんですよ」
連平「レコードでもかけようか? ね!」蓄音機の前へ。
蝶子「この店は私が東京に来て初めて入った喫茶店だもの」
河本「はい」
蝶子「要さんと初めてコーヒー飲んだのもこの店。口ゲンカも仲直りもし」
邦子「チョッちゃんと東京出てきて初めて待ち合わせしたのが、ここ。チョッちゃんの叔父さんに映画女優にならないかって言われたのもここ」
連平「チョッちゃんさ、要さんに口説かれたのここだよね」
蝶子「そう!」
要「おいおい、俺は口説いちゃいないぞ!」
河本「私は、そういうものをず~っと見てまいりました」
蝶子「やめないでください」
要「無理を言うな」
連平「ということはさ、この店をそっくりそのまま引き受けてくれる人がいればいいんでしょ。ね?」
うなずく蝶子と邦子。
連平「いるじゃない!」
昭和の朝ドラあるあるで回想を入れないとこがまたいい。
野々村家
富子「何事?」
蝶子「叔父さん、泉っていう喫茶店知ってる?」
泰輔「何? ん?」
蝶子「実は…」
富子「あ! この人が…」
泰輔「何!?」
富子「そこの女給さんに手、出したとか?」
蝶子「そんなことじゃないわよ!」
泰輔「ほら、見ろ!」
連平「黙って聞いてくださいよ」
蝶子「実は、その店のマスターが店やめたいって言いだしたのよ」
泰輔「で、話って何だ?」
蝶子「うん…」
連平「そこのマスターがね、店を買ってくれる人を探してるんです。いや、誰にでも売りたいって、そういう了見じゃないんですよ。できれば、喫茶店を続けてくれるような、きっぷのいい人に売りたいって、こういうことなんですけどね」
蝶子「叔父さん、喫茶店、経営する気ない? 叔父さんならあの店売ってもいいって、マスター、しゃべってんの」
連平「そうそう、そうそう」
富子「ちょっ…ちょっと待っとくれよ。その人がいい人だか何だか知らないけど、私、もうこの人にこれ以上、手ぇ広げてほしくないんだよ。手ぇ広げて、これまでも何度もしくじってるしさ。ね? 欲出すと、もうロクなことがないんだから!」
泰輔「う…うんうん」
連平「けどね、おかみさん。喫茶店経営なんていうのはね、相場や仲買みたいな、そんなバクチ仕事じゃないんですよ。どっちかっていうと何かこう、もっと、堅実な商売だと思うけどな」
富子「けど」
蝶子「叔母さん、これからその店、行ってみない?」
富子「けど…」
蝶子「行こう!」
連平「何事も経験!」
泰輔「行ってさ、話だけでも聞いてみるか。な?」
蝶子「うん!」
カフェ泉
♬~…曲検索かけてみたけど、分からなかったな~。シャンソンっぽかったけど。
河本「いらっしゃいませ。お飲み物は?」
蝶子「私は紅茶」
河本「はい」
連平「コーヒー」
河本「はい」
泰輔「お前、何だ?」
富子「あ、あの…え…あれ」別の席の客が注文したものを指さす。
蝶子「クリームソーダ」
うなずく富子。
蝶子「(河本に)クリームソーダ」
河本「はい」
泰輔「俺、コーヒーだ」
河本「はい」店員を手招きする。「え~とね、コーヒー2つと紅茶、クリームソーダ」
店員「はい」
河本「え~と、何かお聞きになりたいことありましたら、どうぞ」
泰輔「いや、私は大してないんですけどね。こいつがいろいろと、ええ、まあ…」
富子「その…こういう店ってのは、どうなんでしょ? 必ずもうかるわけじゃないんでしょ?」
連平「こればっかり」
河本「はい」
連平「こればっかり」
うなずく河本。
富子「すると、危険だと?」
河本「危険もあります。いや、そりゃ、しかし…どの商いも同じことじゃありませんでしょうか?」
泰輔「そうそう、そうそう、そうそう」
蝶子「そうよ、うん」
店員「お待たせしました」
連平「あ、来た来た」
店員「クリームソーダは?」
蝶子「はい」
河本「どうぞ、ゆっくり召し上がってってください」
連平「どうも」
店員「こちらに?」
蝶子「はい。(富子に)あのね、これをね、こうやって…」クリームソーダをかき混ぜる。
テーブルには飲み物の他にショートケーキも置かれる。
店員「ごゆっくり、どうぞ」
連平「はい、どうも」
クリームソーダを飲んだ富子。「おいしい…」
連平と泰輔が顔を見合わせてニヤリ。
泰輔「どうだ?」
富子「いける!」
泰輔「ハハハハハ」
富子「はあ~、何だねえ。何だか芝居の中にいるみたいだよ」
泰輔「ハハハハ…」
<どうやら富子さんの喫茶店への警戒心は、ほぐれてきたようです>
岩崎家
蝶子「泉はね、叔父さんが買うことになったのよ」
要「へえ」
蝶子「うん、いや、最初は叔母さんが渋ってたんだけど、今日、実際、店に行ってみて、マスターに話聞いてみて安心したみたい。ウフフ」
要「お前、何、ニヤついてるんだ?」
蝶子「え?」
要「ウキウキしてる」
蝶子「エヘヘ、もしかしたら、私、頼まれるかもしれないな」
要「何を?」
蝶子「泉の女マスターになってほしいとかさ。フフフフ…いや、だってほら、叔父さんは映画館の仕事とかで忙しいでしょ? 叔母さんは客商売は無理。そしたら、私しかいない」
要「働きたいのか?」
蝶子「…ていうか、頼まれたら、だって…」
要「そりゃダメだな」
蝶子「どうして?」
要「加津子は誰が見るんだ?」
蝶子「…」
<その後、喫茶店・泉は泰輔さんの所有となり、12月に入った、この日、その報告を兼ねた集まりが持たれました>
カフェ泉には本日臨時休業の貼り紙。
泰輔「10年来、この店の経営に携わってこられた河本さんに代わりまして、この私が引き継ぐことになったのでありますが…」
富子「気楽におしゃべりよ」
笑い声
今まで、役名で”河本”と出ていたけど、マスターと呼ばれていたから、ずっと”こうもと”と思ってたけど、”かわもと”だった。
泰輔「まあ、引き受けるにあたり、河本さんの精神をも引き継いで、楽しい喫茶店、健全なる憩いの場になるよう、相務めまする覚悟でおります。吉崎さん、ちょっと…」
吉崎「はい」
泰輔「吉崎雅代さんは河本さんの亡くなった奥様の姪御さんでありますが、河本さんと相談した結果、泉の店長を吉崎雅代さんにやっていただくことになりました。よろしくお願いします」
拍手
要「お前に依頼はなかったのか?」
蝶子「ない」
河本と泰輔が握手。元々、河本さんの奥さんの親の持ち物だから、奥さんの親戚が店をやるって、いい納め方だと思う。河本さんの奥さんの親が生きてるか分からないけど。
泰輔「じゃ、まあ、あとは、ぶっちゃけた話、ワ~ッとやりましょう!」
夢助「よっ、待ってました!」
泰輔「どうぞどうぞ飲んでください」
神谷「野々村さん、どうもおめでとうございます」
泰輔「いやいや、どうも。これからはね、ここの喫茶店と映画館の仕事だけに絞りましたから」
神谷「ああ、そうですか」
富子「ほかの仕事、やめさせました」
神谷「そりゃいいことじゃないですか」
泰輔「まあね、ハハハ」
蝶子「頑張ってください」
要と蝶子で吉崎に挨拶。
吉崎は連平と夢助のもとへ。「あの…」
連平「ん?」
連平と夢助がお互いにサンドイッチを食べさせあっている。
吉崎「よろしくお願いいたします、これからも。どうぞたくさん召し上がってください」
夢助「おきれいな方」
連平「あ、邦子さん!」
店に入ってきた邦子は、すぐ泰輔たちの席へ。「あ、おじさん、おめでとうございます」
泰輔「あ、どうもありがとう」
河本「あ、来たの?」
邦子「あ、マスター! どうもいろいろありがとう」
河本「こちらこそ、どうも」
邦子「頑張って」
河本「どうも。女優さん頑張るんだよ」
邦子「はい」
河本「ま、ゆっくりね」
邦子と話したそうな連平。
蝶子「邦ちゃん!」
邦子「あ、ごめんね!」
蝶子「どうだった? 仕事」
邦子「ちょっと長引いちゃって」
蝶子「マスター、紹介しようかな」
泰輔「邦ちゃん、どんどん…乾杯だ」
要の隣に座る連平。「嫌われてるみたい」
要「何?」
邦子を指さす連平。
要、坂上、連平が演奏する。
メンデルスゾーンの「春の歌」。笹野高史さんの特技はトランペットだそうで、本当に吹いているのかな?
雪がちらつく中、頼介も店の前に到着した。
笑い声があふれる店内で一人座っている頼介。
神谷「ねえ、頼介君」
頼介「はあ」
神谷「先月、ほれ、同じ陸軍の青年将校たちがクーデターば計画して摘発されたべ?」
頼介「はい」
連平「そうそう」
神谷「あれ、一体、何だったんだべ?」
道郎「頼介君には関係ないよね?」
頼介「はあ」
連平「あれ、あれでしょう。内閣を乗っ取って、大臣になろうとしてんじゃないの?」
要「またいいかげんなことを」
連平「いや、私は、その線で『笑いの王国』の台本、書こうと思ってんだよ。将校もね、人数が増え過ぎたんだね。で、まあ、こう出世の望みがなくなってさ、そこで思いついたのがクーデターってわけ。ね! それで天下を取っちゃって外務大臣になろうとか陸軍大臣になろうとか、そういう腹だよ」
夢助「なるほど」
頼介「政治への不満ですよ」
ピリッとする人々。
頼介「最近、政治家の疑獄事件が多発しています。政治が腐ってます」
神谷「うん」
頼介「なのに、一方では農村は危機に瀕しています。娘の身売りも増える一方です」
別のテーブルにいた蝶子や安乃も振り返る。
頼介「娘でも身売りしなけりゃ食っていけない者もいるんだ。売りたくなんかないです。したっけ、そうしなきゃ生きていけない者もいるんだ。クーデター計画は政府の無策への怒りです。連平さんのおっしゃるような笑い話のようなもんじゃないんです」立ち上がる。
連平「いや、あたしはただ…」
頼介「こんな時期に『笑いの王国』などとふざけすぎてます」
道郎「頼介君」
神谷「そういう言い方は、よくないわ」
頼介「もっと時局をわきまえてほしいと思います。童話書いて日本が強くなるのか、音楽やって、後のことはどうでもいいのか」
要「それは一体どういうことだ!」立ち上がる。
坂上「おい、岩崎!」
蝶子「やめて! 今日は河本さんの泉の最後の日なのに! 叔父さんの門出の日なのに!」
頼介「申し訳ありません」頭を下げた。
ま、でもいつも話題を振るのは神谷先生だよね。
蝶子「マスター、レコード終わってますよ」
河本「じゃあ、最後に」
♬~(シャンソン)
マスターが最後にかけた「聞かせてよ愛の言葉を」は蝶子、要、マスターしか出てこない54話でもかかった曲でした。
<泉のマスターはこうして東京を去っていきました>(つづく)
東京のど真ん中で今んとこ食べ物にも困ってない人たちと頼介との温度差を感じる。
三谷幸喜脚本「笑の大学」を思い出すな。役所広司さんが検閲係。
昨日までの夫婦ゲンカからまたガラっと空気感が変わる所がいいね。


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