NHK 1987年10月2日(金)
あらすじ
泰輔(前田吟)の食堂が開店して、蝶子(古村比呂)とみさ(由紀さおり)が顔を出す。帰って来ると、邦子(宮崎萬純)が待っていて、大川が死んだと泣き崩れる。蝶子は、邦子が辛い時は私が傍にいるから、と慰める。蝶子は要(世良公則)が一年以上戻ってこないのはおかしい、諦めるしかないのか、とみさに弱音を吐く。数日後、蝶子が買い物に出かけようとすると、「どこへ行くんだ?」と声をかける男が。それは復員した要で…。
2025.10.10 NHKBS録画
脚本:金子成人
*
*
音楽:坂田晃一
*
語り:西田敏行
*
岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
*
岩崎要:世良公則
*
北山みさ:由紀さおり
*
国松連平:春風亭小朝
*
中山音吉:片岡鶴太郎
*
大川邦子:宮崎萬純
国松たま:もたいまさこ
*
中山はる:曽川留三子
梅花亭夢助:金原亭小駒
*
岩崎加津子:藤重麻奈美
岩崎俊継:服部賢悟
*
鳳プロ
早川プロ
*
野々村富子:佐藤オリエ
*
野々村泰輔:前田吟
<しばらくして泰輔さんの食堂が出来ました>
滋養満点
泰明食堂
蝶子「開店おめでとうございます」
みさ「おめでとう!」
富子「ああ、来たね!」
泰輔「はい、どうぞどうぞ。座った座った座った! はい、いらっしゃい。チョッちゃんは、そっちだ」
カウンター席に座ったみさと蝶子。
みさ「どんなだい?」
富子「うん」
泰輔「まあまあだな」
富子「食べてくだろ?」
蝶子「もちろん!」
富子「うん!」
泰輔「まあ、こんなもんしかないけどさ。何にする?」
壁に貼られたメニュー
スイトン
燒魚
雜炊
煮込み
蝶子「雑炊と焼き魚」
みさ「じゃ、私も」
富子「あいよ!」
泰輔「雑炊2丁に焼き魚2丁!」
富子「あいよ!」
男「ここ、置くよ」
泰輔「ありがとうございました!」
蝶子「ありがとうございました!」
みさ「ありがとうございます」すぐ食器を片付けに行く。
泰輔「姉ちゃん、いいんだよ」
みさ「アハ、つい、青森の癖、出てしまったもね」
泰輔「今日は、お客さんなんだからさ」みさの手に持っていた食器を受け取る。
みさ「あ、そうだ、そうだ」
富子「座ってて」
蝶子「いや~、けど、青森の食堂が懐かしいわね」店内を見回す。
みさ「うん」
夕方、岩崎家前の材木に腰掛けている邦子。
蝶子とみさが帰ってきた。
蝶子「邦ちゃん…」
邦子「待ってたの」
みさ「中に入らないかい?」
うつむく邦子。
蝶子「どうしたの?」
みさ「…したらね」
察して、先に家の中へ。こういう空気の読み方が天才的なのよ、みささんは。
泣き出した邦子。
蝶子「邦ちゃん?」
邦子「チョッちゃん。今日、戦地で大川と一緒だったって人、来てね…。大川の遺品、持ってきたのよ」
蝶子「遺品?」
邦子「出征の時の日の丸と私の女優の頃の写真。20年の5月に弾に当たってジャングルの中で死んだんだって。死んだんだって、大川」蝶子に抱きついて泣く。
蝶子は材木に邦子を座らせ、自身も隣に座った。「ホントに大川さん? 映画女優の頃の邦ちゃんの写真だったら、ほかの人が持ってたって変じゃないし」
邦子「日の丸が…。友人の人たちの…寄せ書きがあったの。血がついてるのよ、日の丸に。大川の血が…」
蝶子が泣き出した邦子の肩を抱く。
邦子「チョッちゃん…私、どうなるの? どうしたらいい? チョッちゃん」
蝶子「邦ちゃん、へこたれるんでない! 悲しいのは、よく分かる。したけど、へこたれるんでない! 邦ちゃんがつらい時やなんか、私、話、聞くから。そばにいるから! したから邦ちゃん。私がつらい時は邦ちゃんが慰めてくれないと…この先、もし、そういうことになったら…いいかい?」
うなずく邦子。
家の中から、みさも涙を浮かべて見ていた。
蝶子「母さん」
みさ「ん? なんさ?」
夜、子供たちは寝ていて、蝶子とみさは窓を開けて、庭を見ている。
蝶子「…戦争終わって、1年よ。要さん、復員してくるなら、もうとっくに」
みさ「蝶ちゃん」
蝶子「邦ちゃんの旦那さん、1年以上も前に戦死したのに知らせ来たのは今日なの」
みさ「諦めるんかい? 諦めるんかい?」
蝶子「諦めた方が…」
みさ「なんも。蝶ちゃん、忘れたんかい? 青森で母さんに話してくれたしょや? 戦地で『ユーモレスク』ば聴いたっちゅう復員した兵隊さんのこと。その人、戦地でその曲ば聴いたんだべさ?」
うなずく蝶子。
みさ「その話、聞いて、蝶ちゃんは『要さんは生きてる』って信じたんでなかったかい?」
うなずく蝶子。
みさ「したら…最後まで信じないとうまくないっしょ?」
目を潤ませ、うなずく蝶子。
ラジオ「『復員便り』の時間です。まず、シベリア地区からは岡田太一郎元陸軍大尉以下2,515人、看護婦長、大山美佐子さん以下…」
みさが寝ている子供たちを起こした。「俊ちゃん、加津(かっ)ちゃん。ほらほら、起きなさい! はいはいはい、ほら! ほら、よいしょ。ほら、いい子だ、いい子だ。起きて。ねえ」
蝶子は外で七輪の火をあおいでいた。
ラジオ「明日午後、雲仙丸で函館へ入港する予定です」
チンドン屋が岩崎家前の路地を歩き、加津子たちにチラシを配っていた。水まきをしているはる。「こんにちは」と通りかかった近所の人に挨拶。
岩崎家から出てきた蝶子。「買い物に行ってくるから! どうもこんにちは」
はる「こんにちは」
チンドン屋が通り過ぎるのを見送り、路地を歩きだした蝶子。
要「どこ行くんだね?」
蝶子「ん? ちょっとね…」ふりむくと…
冬装備の復員兵・要!!
蝶子「何してんの?」
要「帰ってきたんだ」
蝶子は、みるみる目を潤ませ要を見つめた。
要「加津子! 俊継!」
2人「お父さ~ん!」
俊継を抱き上げる要。「ほら、ああ~、重くなったなあ! ん?」
中山家から音吉が顔を出した。「お帰りなさい!」
要「ただいま」
何度もうなずき合う音吉と要。
蝶子も潤んだ目で要を見上げた。
<よかったね! チョッちゃん>
史実だと昭和24年に帰ってきたらしいので、ちょっとびっくりの展開。
<要さんが帰ってきたというニュースは瞬く間に伝わり、早速、歓迎会になりました>
坊主ヅラの要と蝶子が笑顔で並ぶ。
要「皆さん、私が留守の間、家族の者が大変お世話になり、ありがとうございました」
音吉「いえ」
泰輔「いやいや、要さんにそう言われると、こっちはあれだよ、恥ずかしいよ。なあ?」
富子「お世話になってたのは、私らなんだよ」
蝶子「いや、そんなことないって。あの、何もないけどつまみましょ」
要「どうぞ、どうぞ」
一同「いただきま~す!」
たまと連平が目で合図。
たま「はい」酒瓶を置いた。
富子「あ~、おいしそう」←これは料理のことね。
連平「これ、どう?」
泰輔「おっ、ウイスキー!」
連平「へへ、この日のために」
泰輔「いや、しかしまあ、よく手に入ったな」
連平「顔だけは広うござんすからね」
泰輔「おう、コップ、コップ!」
蝶子「数がないけど」
音吉「じゃあ、あの、ほら、湯のみでも」
連平「2つ3つあればいいからね」
蝶子「はい!」加津子も一緒に立ち上がって台所へ。
音吉「すごいなあ」
要「お前、これじゃないだろうね?」←なになに、どういうこと!?
連平「大丈夫だよ」加津子たちが持ってきた湯飲みに酒を注ぐ。「さ、要さん」
要「いや、俺は…」
富子「お酒、ダメなクチだったね?」
ダメというかね…
連平「今日は、いいよ」
音吉「そうだよ!」
要「うん、じゃ…」ウイスキーを湯飲みで飲み、せき込む。「ああ、しみるな、これは」
泰輔が笑う。
夢助「生きていりゃこそだ、ヘヘッ」
連平がお酌する。
音吉「すいません、どうも」
泰輔「それじゃ、ご相伴にあずかろうか」
要「死んだのは頼介君と邦ちゃんの旦那さんか…」
蝶子「けど、神谷先生と安乃ちゃんには頼介さんの生まれ変わりいみたいに男の子が産まれたわ」
要「そうだな」
さすがにこの席に邦ちゃんはいない。
富子「こりゃ、戦死じゃないけど要さんが出征したあと、滝川のお父さんがね」
うなずくみさ。
要のお母さんだって、どうなったことやら?
泰輔「けど、あれだよ。空襲に遭って、カスカスのものを食って、これだけ生き残ったんだ。御の字だよ。な!」
音吉「うん。そうですよ」
連平「要さん、どう? この辺でバイオリンは?」
音吉「いいねえ」
蝶子がバイオリンを取りに立った。
拍手を送る一同。
泰輔「要さんも帰ってきた。連平・たま夫妻の雑貨屋もうちの食堂も繁盛し、あと、あれだな、夢ちゃんが真打ちになったら言うことなしさ」
頭をかく夢助。
連平「そりゃ無理! ちょっと無理」
笑い声
泰輔「ああ、聴こう。な!」
しかし、バイオリンを手にした要は「今日は…やめとこう」
連平「そう?」
要「うん、酒のせいかな。ちょっとドキドキしちゃって。すいません」
連平「残念だな…」←小さめの声なので、違う人かも。夢助?
泰輔「じゃ、あれだ。歌にしよう、歌に! 加津ちゃん、歌だ!」
加津子「はい!」
俊継「僕も!」
拍手
連平「何、歌う?」
加津子「『リンゴの唄』」
夢助「待ってました!」
拍手
♬赤いリンゴに唇よせて
だまって見ている 青い空
リンゴは何にも
言わないけれど
リンゴの気持(きもち)は よく分(わか)る
リンゴ可愛や 可愛やリンゴ
みんな手拍子で子供たちの歌を聴いていたが、じっとバイオリンを見つめる要が気になる蝶子。
歌が終わり、一同拍手。
みさ「いやいや、上手だ、上手だねえ。上手だねえ、いや、よかった」
子供たちを見て、微笑む要だったが、蝶子は要を見つめて真顔のまま。(つづく)
大川さんは正直、キャスト的にゲスト扱いだと思ってたので、ま、そうかな…と。まず結婚したのが意外だったし。明日が最終回だというのに気になる展開!

