NHK 1987年7月23日(木)
あらすじ
下校した加津子(椎野愛)が蝶子(古村比呂)に、今日は学校で絵を描いたと報告する。ちょうど仕事先から帰ってきた要(世良公則)がそれを耳にし、加津子に音楽も好きになってほしいと、バイオリンで一曲披露することに。だが、思うように弾くことができない要は、それをバイオリンの調子が悪いせいにする。そこで加津子は、お向かいの大工・中山音吉(片岡鶴太郎)のもとにバイオリンを持ち込み、修理を頼むのだが…
2025.7.31 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
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中山音吉:片岡鶴太郎
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山口信江:岡本舞
岩崎加津子:椎野愛
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中山はる:曽川留三子
彦坂安乃:貝ますみ
岩崎雅紀(まさのり):河野純平
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岩崎まつ:初井言榮
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岩崎要:世良公則
岩崎家
ミシンを踏む蝶子。
<チョッちゃんは安乃ちゃんが家政婦として家に来てくれたおかげで自分の時間を少し持てるようになりました>
⚟︎加津子「ただいま!」
蝶子「お帰り!」
加津子「あのね、今日ね、クレヨンで絵を描いたの」
蝶子「うん、何を描いたの?」
加津子「うんとね、え~とね、何を描いたかというとね、いつだったか神谷先生が話してくれた『白い少年』」
蝶子「白いマント着た少年だと思ったらシマフクロウだった話だ」
加津子「そう! それで、加津子、困ったの。だって、画用紙が白で少年も白で雪も白だから描けないんだもん」
蝶子「あ、そうだね。それで、どうしたの?」
加津子「雪の上の影を描いたの!」
蝶子「はあ~、お母さんに見せて」
加津子「返してもらったら見せてあげる」
蝶子「はい」
加津子「あ、安乃おねえちゃんは?」
蝶子「ん? マーちゃんと俊(とし)ちゃん連れて、お散歩」
加津子「うん」
⚟︎要「ただいま!」
加津子「お父さんだ! お帰りなさ~い!」要に抱きつく。
要「ただいま」
蝶子「早かったのね」
要「うん。ああ、夕方ね、また出かける。坂上と篠山の演奏会に顔、出すんだ」
蝶子「食事は?」
要「うん、いらんな」
蝶子「はい」
要「あれ、お前、今、帰ってきたの?」
加津子「そう」
要「あれ」
蝶子「今日はね、学校で絵を描いたのよね」
加津子「うん! 絵描くの大好き!」
要「そうか、ハハハッ」廊下を歩きだすが引き返す。「音楽は?」
加津子「…好き」
要「そうか! よし。じゃあね、加津(かっ)ちゃん、お父さんのバイオリン聴いてくれるかな?」
加津子「聴く、聴く!」
要「そうか。あれ、チビたちは?」
蝶子「うん、安乃ちゃんが散歩」
要「ああ、そうか。よし」
蝶子「楽しみだね」
♬~(ベートーベン「ロマンス」)
要「加津ちゃん、君、歌とバイオリンとどっちが好きだ?」
加津子「うんと…歌!」
蝶子「私似だ、ウフフフッ」
加津子「お父さん。この曲弾いて」
要「はい」
加津子「学校で教わった歌!」
♬ひよひよひよこ
小さなひよこ
兄弟なかよく
いっしょに歩け
要がバイオリンで唱歌「ひよこ」を弾く。
加津子「違う違う!」
要「うん?」
加津子「♬ひよひよひよこ 小さなひよこ でしょ?」
要「うん…う~ん、よし」
再び要が「ひよこ」を演奏する。
加津子「違うもん!」
要「今日ね、バイオリンの調子がちょっと悪いみたいだね」
加津子「壊れたの?」
要「ん? うん、そうかな?」
加津子「修理しなくちゃ」
要「あ、そうだね。う~ん」
蝶子「手、洗ってらっしゃい。おやつ、あるわよ」
加津子「は~い!」奥へ。
夕方、要が出かけた。
バイオリンケースを背中にしょって加津子がお向かいへ。
中山家
音吉「おい、どうしたい?」
加津子「おじさん、バイオリンを修理してほしいの」
音吉「バイオリン? お父さんのかい?」
加津子「調子が悪いんだって」
はる「お父さんが『直して』って言ったの?」
加津子「お父さんには、ないしょ」
はる「うわっ!」飛びのいてバケツが転がる。
音吉「けど、加津ちゃん、おじさん、バイオリンは…」
加津子「見て。木で出来てるのよ。おじさん『木のことなら任せろ』って言ったことあるもん。『どんなもんだって直せる』って」
うなずく音吉。はるは加津子の後ろで手を振る。
音吉「分かった。なんとかしようじゃないの」
はる「ちょっと!」
音吉「いいから!」
加津子「おじさん、お父さんにはないしょよ。驚かせてあげるんだから」
音吉「分かってる」
加津子「じゃ、お願いね!」帰っていった。
はる「どうすんのさ!」
音吉「だってよ~」
はる「何だい!」
音吉「うぬぼれじゃねえけどよ、加津ちゃん、どうも俺のこと尊敬してる節があるんだよ」
はる「何しょってんだい!」
音吉「その俺が、お前…今更、お前、直せねえもんがあると知ったら、加津ちゃん、どう思うよ、俺のこと」
はる「どう思うんだい?」
音吉「軽蔑されら!」
はる「じゃ、直せるのかい!」
音吉「バカヤロー、お前、誰がこんなもの直せるか! お前!」
岩崎家
⚟︎蝶子「安乃ちゃん、ちょっと!」
安乃「おはようございます」
蝶子「安乃ちゃん、要さんのバイオリン知らない?」
ソファや机のある洋風な要の練習室。
安乃「さあ」
蝶子「黒いケースに入った」
要「昨日ね、帰ってきて、で、加津子に聴かせてやって、で、そこにだね」
安乃「ないんですか?」
要「ないんだね」ソファに座って膝をバンバンたたく。「あ~!」
加津子「何、探してるの?」
蝶子「お父さんのバイオリン」
要「そう」
蝶子「加津ちゃんは知らないわよね?」
ニッコリ笑う加津子。
蝶子「あ…知ってるの?」
加津子「うん」
要「どこにあるの?」
加津子「ないしょ」
要「加津ちゃん!」
蝶子「どこにあるの?」
加津子「う~ん…」
要「あれはね、お父さんの大事なバイオリンなんだから!」
加津子「壊れたんでしょ? お父さん、昨日『調子悪い』って言ったもん」
蝶子「それでバイオリンは?」
加津子「修理に出したの」
要「修理!? どこに?」
加津子「お向かいのおじさん」
要「アイタ~…」ソファに座り、手で顔を覆う。
⚟︎戸が開く音
⚟︎音吉「おはようございます! 中山です!」
バイオリンケースを抱えた音吉が玄関に座っていた。
要「あ~、中山さん!」
蝶子「それ!」
音吉「何ですか?」
要「バイオリン!」
音吉「ですから、お返しに」
加津子「修理できたの?」
音吉「…ああ」
要「いじったのかね?」
音吉「大丈夫です。何にも…」
加津子「ん?」
音吉「大丈夫、大丈夫」
蝶子「加津子の学校の支度を」
安乃「はい。加津子ちゃん、こっち行こう」加津子と奥へ。
音吉「手、つけてないからね」
バイオリンケースを開けて確かめる要。
蝶子「すいませんでした」
音吉「いや、昨日、『修理してくれ』って来てね」
要「どうして引き受けたりするんですか」
音吉「だって…」
要「大体ね、あなたに直せるわけないんだよ」
音吉「いや、分かってます」
要「どうしてすぐ持ってきてくれないんだ」
音吉「一晩ぐらい置かねえと、加津ちゃん、信用しねえんじゃねえかと思って」
要「どうして引き受けるんだろうなあ。全く信じられないよ」
音吉「だってさ、『ないしょで直して、お父さん喜ばせる』なんて、けなげなこと言うもんだからね。つい、あっしも引き受けちゃって『直せる』なんて言っちゃったもんだから」
蝶子「要さんがよくないのよ。昨日『バイオリンの調子が悪い』なんてウソついたもんだから、それで、加津子、気ぃ利かせて、中山さんとこに。中山さんや加津子を怒れる筋合いじゃないわよ」
音吉「子供にウソは禁物だ」
蝶子「本当にそうですよね」
音吉「ええ」
玄関に戻ってきた加津子。「どう、調子は?」
要「ああ、ちゃんとね、直ってたよ」
加津子「よかった」
要「うん、ありがとうね」
加津子「うん、おじさん、ありがとう」
音吉「いや~、どうも、どうも、どうも」
はるが路地で水をまいていると女性が水を避けた。会釈して家に戻るはる。まつが岩崎家へ入っていったのを見ていた。
岩崎家茶の間
⚟︎まつ「ごめんなさいよ」着物を拭きながら。
加津子「おばあちゃん! おばあちゃん、加津子ね、建具屋さんになるのよ!」墨壺で畳に線を引いたため、畳や加津子の顔に墨がついていた。
だから月曜日回、大工道具について詳しく説明があったのね。
まつ「蝶子さん! 蝶子さん!」
蝶子「あ…お義母(かあ)さん!」
まつ「ち…蝶子さん、これ!」
安乃が駆け寄る。「加津子ちゃん」
蝶子「あ、安乃ちゃん、いいのよ。(まつに)あ、この前から、うちに来てくれることになった安乃さんです。滝川の頃からの幼なじみなんです。(安乃に)要さんのお母さん」
安乃「よろしくお願いします。じゃ、お茶を」
蝶子「失礼します。どうぞお座りください」座布団を置く。
手土産を蝶子に渡し、座布団の上に座るまつ。「こういうことをやらせておくの?」
蝶子「真剣に打ち込んでますし」
まつ「汚してもいいの?」
蝶子「後で拭き取ればいいことです」加津子の引いた線を見て「あら、少し、ゆがんだわね」
加津子「なんもなんも。そうだ! お風呂場の前でやってみる」
蝶子「うん」
まつ「要は、こんなこと許してるんですか?」
蝶子「はい」
安乃がお茶を出した。「お茶を。(蝶子に)私、俊ちゃんのおしめを…」
まつ「蝶子さん」
蝶子「はい」
まつ「子供の勝手を許していてはいけませんね。甘やかしてはいけません」
蝶子「私、なにも甘やかしては…」
まつ「私は要をついつい甘やかして育ててしまいました。要が何をやっても何にも言いませんでした。13の時に百貨店に働きに出したあとは、もう要は、うちにも寄りつかず、近くの不良とつきあい、長男から勘当されることになりました」
蝶子「けど、要さんはバイオリンの才能を開かせました。お義母さんは、今、要さんの育て方を失敗したと思ってらっしゃいますか? 要さんはダメな人ですか?」
まつ「そんなことは…」
蝶子「でしょう?」
まつ「でも、しつけというものは」
雅紀が部屋に入って来た。「あ、おばあちゃん来てる!」
安乃「ダメ、ダメ、後でね。はい」雅紀を連れて部屋を出る。
蝶子「お義母さん。こんなこと大したことじゃありませんよ。この時期、子供は何にでも興味を持つものじゃないでしょうか? 抑えつけるのは簡単ですけど、何て言うか、心の伸びやかさの芽を摘むことにもなるという気がしてきてるんです。お義母さん。汚したあとは、いつも加津子に拭き掃除させてるんです。それがなかなかうまくなったんですよ。加津ちゃん!」
⚟︎加津子「は~い!」
蝶子「後でぞうきんがけ、おばあちゃんに見てもらおうね!」
⚟︎加津子「は~い!」
<それから数日後のことです。チョッちゃんは加津子ちゃんの担任の先生に呼び出しを受けたのです>
学校の教室
山口「お母様」
蝶子「はい」
山口「これをご覧ください」
机に引かれた数本の黒い線。
山口「お宅のお嬢様がつけたものです。これもこれもそうです」次々、机を指していく。「『墨壺』というものらしいんですけども、大工さんの使う道具を学校へ持ってらして、やたらあちこちに線をつけるわけです。あの壁もそうです」
壁にも黒い線が何本も引かれている。
山口「それだけではございませんで、先日は金づちとくぎを持ってらして、くぎなど必要のない所にくぎを打ってしまいました」
掲示板の下の方に何十本ものくぎが打ち込まれている。
山口「お嬢様にそういうことは、やめるように、ご注意いただきたいのと…ああいった道具を学校へ持ってくるのを親御さんは許していらっしゃるのかどうか、ということを伺いたいと思いまして」
<加津子ちゃんの問題は実は、これだけでは済まなくなっていくことになるんです>(つづく)
恥ずかしながらトットちゃん関連の書籍は読んだことがないけど、有名なエピソードがこれから出てくる感じかな?
椎野愛さんは1989年に岩崎ひろみさんとWキャストでアニーを演じたそうで、今は小学1年生の役をやってるけど、岩崎ひろみさんと同じ歳くらいなら実年齢は当時、小学5年生くらいなのかも。

