NHK 1987年8月5日(水)
あらすじ
加津子(椎野愛)はだいぶ元気になったが、まだ下半身はギブスで固定されて身動きできない。富子(佐藤オリエ)やはる(曽川留三子)は、蝶子(古村比呂)を家に帰してやろうと、安乃(貝ますみ)も含めて相談する。蝶子は皆に迷惑はかけられないと固辞するが、富子は家に帰って風呂に入った方がいいと譲らない。演奏会に集中していた要(世良公則)の演奏会も終わり、要が病室を訪れると蝶子は看病疲れて倒れてしまい…。
2025.8.13 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
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岩崎要:世良公則
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野々村富子:佐藤オリエ
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中山音吉:片岡鶴太郎
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増田たま:もたいまさこ
岩崎加津子:椎野愛
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中山はる:曽川留三子
彦坂安乃:貝ますみ
横山里子:吉田やすこ
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岩崎雅紀(まさのり):河野純平
鳳プロ
早川プロ
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神谷容(いるる):役所広司
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野々村泰輔:前田吟
外ではヒマワリが咲いている。
病室
加津子「かゆいよ~、暑いよ~。ここ」
蝶子「ここ?」
<加津子ちゃんは、だいぶ元気になりました。しかし、下半身はギプスで固定され、身動きができないんです>
蝶子「はい」
ノック
蝶子「はい」
たま「加津子ちゃん、どう?」里子と病室に入って来た。
加津子「カンゴクさん、かゆいの」
蝶子「あせもみたいなんですよ」
たま「夏はねえ。どれ? ああ、そうか…でもね、加津子ちゃん、これぐらい我慢しないと早くおうちに帰れないよ」
里子「そうよ」
加津子「うん…」
たま「それとね、私たちは『カ・ン・ゴ・ク』じゃなくて『カンゴフ』なのよ」
加津子「カ・ン・ゴ・ク」
たま「フ!」
里子「フ!」
加津子「カ・ン・ゴ・ク」
たま「う~ん」
蝶子「すいません」
たま「いいけどね」
加津子「そしたら、お名前教えて」
里子「私はね、横山里子」
加津子「うん」
たま「私も?」
加津子「そう」
たま「増田たま」
加津子「たま?」
たま「うん。猫みたいでしょ?」
加津子「うん」
たま「う~ん! いいけどね~だ」
蝶子「すいません」
たま「ハハハハ、いいですよ~!」
病室に入ってきた雅紀を見て驚く蝶子。「マーちゃん! アハハハ」
俊継を抱っこした富子も病室に入って来た。「あち、あち」
蝶子「どうしたの?」
富子「こっちに何か届ける物ないかと思って、うちに寄ったらね、『お母ちゃんに会いたい』って泣いて、安乃ちゃん困らせてたから。加津(かっ)ちゃん、少し元気になったみたいだね」
ベッドサイドに来た雅紀の頭をなでる加津子。
蝶子「うん」
富子「あ~あ、一時はどうなることかと思ったよ」
たま「でも、もう大丈夫。時間はかかりますけどね。よくなりますから」
ベッドサイドに移動した富子。「よかったね」
加津子「うん!」
たま「では!」里子と病室から出ていく。
富子「どうもご苦労さまでした」
蝶子「ご苦労さまでした」
加津子「あのね、加津子、動けないのよ」
雅紀「ふ~ん」
蝶子「あ、お茶、お茶! お茶」ヤカンを持って病室を出ていこうとする。
富子「チョッちゃん」
蝶子「ん?」
廊下
富子「ねえ、時には、うちへお帰りよ」
蝶子「いや、そりゃ、帰りたいけど、マーちゃんたちのこともあるし、要さん、大変だと思うのよ」
富子「うん」
蝶子「だけど、加津子から目も離したくないし」
富子「そんな両方いっぺんなんて無理だよ」
蝶子「いや、分かるけど」
富子「うちへ帰る時はさ、安乃ちゃんにこっちへ来てもらうとか」
蝶子「そしたら、安乃ちゃんに毎日来てもらわなきゃいけなくなるし」
富子「頼めない?」
蝶子「安乃ちゃんが大変だもの。今だって周りの好意に甘えてるっていうのに」←この場合、”厚意”では?と思ったけど、かなり意味の近い言葉なのね。
好意…親切、親愛感「好意的な態度、好意を寄せる」
厚意…思いやり〔他人の行為〕
病室から加津子が絵本を読む声が聞こえる。「『この川は島の片一方の端から流れ出ていて、もう一方の…』」雅紀や俊継がそばで聞いている。
富子「チョッちゃん、今日はね、私の言うこと聞いて、うちへお帰んなさい。マーちゃんたちとさ」
蝶子「いや、けど…」
富子「ね、私がここに残ってあげるから。ん?」
蝶子「あ…」
加津子「『ぐるりと一回りして、それから川の反対側に行くなんて、とても嫌だと…』」
富子「ほら、チョッちゃん、毎日、ここに詰めててさ、疲れてるだろうから」
蝶子「それはいいんだけど」
富子「よくなんかないわよ! あんたまで病人になったらどうすんのよ!」
蝶子「大丈夫!」
富子「それに…」蝶子の体に顔を近づけ、においを嗅ぐ。「ほら、お風呂だって、しばらく入ってないんじゃないの?」
蝶子「うん」
富子「だからさ」
蝶子「うん…」
髪も乱れて、お疲れ気味…
岩崎家茶の間
泰輔「おう、来た来た来た!」
安乃「はい、お待たせしました」そうめんの入ったボウルを持ってくる。
縁側から見ている音吉。「いや~、夏はそうめんに限るね」
要「音吉さん、よかったらどうですか?」
音吉「そうですか? すいません。どうも呼ばれやす!」
要・泰輔「いただきます」
はる「ダメだよ、あんたは」
音吉「何で?」
はる「2~3人分、すぐ食べちゃうんだから」
要「構わないですよ、別に。(泰輔に)ねえ!」
はる「いいんですよ、ホントに。あんたは帰ってから」
音吉「分かったよ」
蝶子「ああ~、サッパリした!」手拭いを頭に巻いている。
泰輔「お先にいただいてるよ」
蝶子「どうぞ!」
安乃「蝶子さん、食べますか?」
蝶子「汗、引いてから」
安乃「はい」
蝶子「音吉さん、はるさん、この度は、いろいろお世話になりました」
音吉「お世話なんて代物じゃないですよ、そんな」
はる「気にしないで」
蝶子が頭を下げているのを見て、食べるのをやめて音吉たちの方を向く要。
蝶子「いや~、これからも迷惑かけると思いますんで、どうぞよろしく」
要「よろしく」頭を下げる。
音吉「いいってこと! もう、そんな…」
泰輔「私がね、近くにいたらどうってことないんだけど、何せ千駄木でしょ?」
音吉「分かってます」
泰輔「私からもひとつよろしく」
音吉「いや~、もう、こちらこそ!」
安乃「蝶子さん」
蝶子「ん? 何?」安乃のいる台所へ。
安乃「私、これから毎日来ようかと思うんです」
蝶子「いや、けど…」
安乃「私、そのつもりでいるんです」
要をチラ見する蝶子。
安乃「蝶子さんにも安心して加津ちゃんについててほしいし。ご主人の演奏会近いっていうし、雅紀ちゃんたちの世話もあるし」
要「いや、安乃ちゃん、それはありがたいんだけどね、私は帰りが不規則だし」
安乃「かまいません」
要「夜、遅くなることもあるんだよ」
蝶子「そしたら、安乃ちゃん帰れないじゃない?」
安乃「その時は泊めてもらいます」
要「そりゃ、ちょっとまずいな」
泰輔「うん…そりゃ、まずいな」
うん、だいぶまずいと思う!
音吉「そりゃあね」
蝶子「そうよね」
はる「そしたら、こういうのはどう? 安乃ちゃんが帰る時間になっても要さんが帰ってない時は子供2人は、うちで預かるっていうのは?」
音吉「なるほど。それ、いいじゃない」
蝶子「いや~、そんな迷惑は」
音吉「いや~、迷惑じゃない」
要「いや~、それはやっぱり…」
音吉「私らが子供を取ると思ってんでしょ?」
要「いや…」
安乃「けど、誰もいなくて、ご主人1人の時、マーちゃんたちの世話、大変だと思うんですよ」
蝶子「うん、実はそうなの」
要「私なら!」
蝶子「だって、夜もぐっすり眠れないでしょ? 俊継も夜中泣いたりするし、演奏会前だし、要さん無理でしょ?」
「大変だ」←字幕に出てるけど、誰だ!? はるも音吉もうなずいてるし、泰輔?
泰輔「分かった。こうしよう! 子供2人さ、うちで引き受けよう。富子、一日中、暇だし、それだったら気兼ねないだろ?」←一日中暇って!!(怒)
蝶子「いや~」
泰輔「だから、安乃ちゃんは昼間、時々、このうちに来て、掃除、洗濯、それから要さんの食事の用意と、ね」
蝶子「そうね。そしたら要さんも子供たちに振り回されることもないし、自立心も出てくるかもね」
音吉・泰輔「うん、うん!」
蝶子「今なんて物のあるとこなんて、全然知らないじゃない? 着替えの服も下着も。そういうの自分でできるようになるんじゃないかな」
泰輔「そりゃいい、そうしよう!」
蝶子「さ、食べよう!」
泰輔「食べますか! いただきま~す」
蝶子も食べようとしている。
要「それ、俺んだよ」
蝶子「あ、そう? あれ、はるさんは?」
はる「いいんです」
泰輔「そんなかたいこと…ね! どうぞどうぞ」
要は練習部屋で「チゴイネルワイゼン」の練習。
「チゴイネルワイゼン」と字幕に出てたけど…
「ハンガリー舞曲第5番」だと思います。
病室
加津子がベッドの上で「かゆいよ~」と泣いている。
病室に入ってきた蝶子。「加津ちゃん」
加津子「かゆいよ~、かゆいよ~、かゆいよ~」
蝶子が手拭いを絞って、加津子のおでこを拭く。「お願い、我慢して」
加津子「おうちに帰りた~い! 暑いよ~」
たまが入って来た。「また泣いてんの?」
加津子「かゆいよ~」
蝶子「何とかなりませんかね?」
たま「何ともねえ、あ~あ~」うちわであおぐ。
加津子「かゆいよ~」
たま「我慢、我慢」
夜の病室
蚊取り線香をたいてるものの、蚊が飛んでいて、蝶子がうちわと手でたたき、開け放っていた窓を閉める。
網戸ないもんね~。昭和43年の「おやじ太鼓」の家にはあるのよ~。でも、ほかの木下恵介アワーの庶民的な家には、まだなかったな。
寝ている加津子のおでこにぬらした手拭いを乗せる蝶子。また蚊の羽音がして…
岩崎家
バイオリンの練習を続ける要。
病院の流しで洗い物をしている蝶子。
里子「岩崎さん、大丈夫ですか?」
蝶子「はい」
里子「夜、あんまり寝てないんじゃないの?」
蝶子「大丈夫ですから」フラフラと廊下に歩きだし、お見舞いに来た神谷先生にぶつかって倒れる。
神谷「おっ! おいおい、おい!」
蝶子「あ、先生!」
神谷「いやいやいや、大変だったねえ」
病室
加津子「かゆいよ~」
蝶子「加津ちゃん! 神谷先生よ」
神谷「あれ、加津ちゃん、泣いてるんかい?」
体ごと首を横に振る加津子。
神谷「そうだ、そうだ。病人が泣いたりなんかしたら、お母さん、かわいそうだもね」
加津子「うん」
神谷・蝶子「うん」
蝶子「身動き取れないのは慣れたんですけど、暑さと蚊には参ってるんです」
神谷「そうかい」
蝶子「蚊が入らないように閉め切ると暑いし、蚊取り線香もあんまり効かないんです」
神谷先生、力強く加津子の腕や顔を拭いてるな~。「いやいや、ゆるくないね」
加津子「先生、何か話、して」
神谷「よしよし、今、書いてる童話だ」
加津子「うん」
蝶子は加津子の足元にいて、うちわであおいでいる。
神谷「『あるところに星を見るのが大好きなキツネがいた。そのキツネは子供だ。子供といっても大人になりかけた子供だ。親と別れて独り立ちをする旅に出たばっかりだったんだ。季節は、もう秋だ。親と別れたばかりのキツネは1人になって寂しい思いばしてた』」
ウトウトし出す蝶子。
神谷「『夜などは悲しいくらい寂しかった』」
ベッドに頭をつけて寝てしまう蝶子。
加津子「先生。聞こえない」
神谷「シ~ッ!」寝ている蝶子を指さす。
病室に入ってきた安乃。
神谷「シ~ッ!」
蝶子に気付いて、静かに入ってくる安乃。
神谷「(小声で)安乃ちゃんも大変だね」
安乃「(小声で)いえ」
神谷「雅紀君たちは誰が?」
安乃「要さんの演奏会が明日なので、今は千駄木の方に」
加津子「先生、続き」
神谷「(小声で)『あるところに星を見るのが大好きなキツネがいた。そのキツネは子供だ。子供といっても大人になりかけた子供だ』」
蝶子のそばに行ってうちわであおぐ安乃。
練習部屋で練習する要。
嵐の日、要が濡れたコートを脱ぎながら病院の廊下を歩き、流しにいる蝶子を見つけた。「蝶子。演奏会、終わったぞ」
蝶子「うん」要の顔を見て、うんうんとうなずいていたが、倒れた。
要「蝶子!」
<チョッちゃんはついに看病疲れで倒れてしまいました。医師の命令でチョッちゃんは家に帰されてしまったんです>
病室
加津子の世話おする要。うちわであおぎながらも、やはり蚊が気になる。(つづく)
「ありがとう」の第2シリーズの昭和47年頃だと完全看護で付添婦がいたし、これ以降のドラマを見てると、完全看護だから家族の付き添いは、いらないというシーンが度々出てくる。思えばこうやって倒れるぐらい家族にとって負担だったんだね。

