NHK 1987年8月25日(火)
あらすじ
雅紀(相原千興)の容体は急に悪化し、黒木医師(大門正明)ははっきりとしたことは言わず、「最後まであきらめちゃいけない」としか言わない。蝶子(古村比呂)と要(世良公則)は、助かる望みはあるのかと問い詰めるが、答えに詰まる黒木を見て、蝶子は雅紀を家に連れて帰ると言う。家で寝ていた雅紀が目を覚まし、要は雅紀が好きだったアイスクリームを買いに飛び出す。アイスクリームを雅紀も含めてみんなで食べて…。
2025.9.2 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
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岩崎要:世良公則
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中山音吉:片岡鶴太郎
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黒木医師:大門正明
中山はる:曽川留三子
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岩崎加津子:藤重麻奈美
岩崎雅紀(まさのり):相原千興
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神谷安乃:貝ますみ
横山里子:吉田やすこ
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岩崎俊継:服部賢悟
鳳プロ
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野々村富子:佐藤オリエ
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野々村泰輔:前田吟
<雅紀君の容体は、その後も持ち直す気配はありません。いろんな症状が次から次へと出てきました>
雅紀が治療されているのを病室の外で待っているしかない蝶子と要。そこに富子と安乃が顔を出した。
富子「どうしたのさ?」
蝶子「今、先生が中で…」
富子「どうしたの?」
要「…ちょっと」
富子「うん。あ…あの、加津(かっ)ちゃんと俊(とし)ちゃん、学校に送り出してきたから」
蝶子「すいません」
富子「ねえ、2人とも、ゆうべ寝てないんじゃないの?」
安乃「目が真っ赤」
ドアが開き、黒木医師が出てきた。
蝶子「…先生」
黒木「ちょっといいですか?」
蝶子「はい…」
黒木医師のあとについていこうとする蝶子に声をかける富子。「病室に私たち、いるから」
頭を下げて、診察室へ向かう蝶子。
診察室
要「雅紀、助かりますか? ダメですか!?」
黒木「最後まで諦めちゃいけません」
要「諦めはしませんよ! けど、先生、何もおっしゃってくれないじゃないですか。『助かる』なんて、ひと言も…。どうなんですか?…望み、ありますよね?」
要がどうしても苦手なのは大声が怖いとこなんだよな。「はね駒」の渡辺謙さんもちょっとそんなとこあったけど。声を荒げる演技が妙に怖い人っている。
黒木「ないことはありません」
蝶子「それは五分五分の望みでしょうか?」
黒木「それは、なんとも」
蝶子「四分六? 三分? 二分? 一分…?」
黒木「望みだけは…」椅子に掛け、うなだれる。
蝶子「先生。あの子、うちに連れてっていいでしょうか?」
要「(小声で)蝶子!」
立ち上がった黒木医師。「しかし…」
蝶子「是非…!」
黒木「分かりました」
病室に戻ってきた蝶子と要。
富子「何だったの?」
要「退院を決めてきました」
安乃「本当ですか?」
要「…うん」
何となく察した感じの富子。
雅紀の顔を見つめる蝶子。顔色の悪い雅紀。
<2日後、雅紀君は洗足の家に帰ってきました>
岩崎家
布団で寝ている雅紀を見守る蝶子と要。
しんどそうなのに、こんな状態のマーちゃんをどうやって連れ帰ってきたんだろう?
⚟︎玄関の戸が開く音
⚟︎音吉「ちは!」
玄関に出ようとする蝶子を要が止めた。「いや、俺が」
玄関
要「やあ!」
はる「退院おめでとうございます」
音吉「いや~、今回は早くよくなってよかったよ。ねえ!」
うなずく要。
はる「マーちゃんは?」
要「寝てますよ」
音吉「あ、そう。よかった、よかった!」
はる「奥さんは?」
要「そばについてます」
音吉「あとはあれだね。ゆっくり養生するこったね」
要「うん」
⚟︎泰輔「ごめんよ! 退院したんだって?」
要「ええ」
泰輔「(音吉に)やあ!」
音吉「いや、退院だって知らねえから驚いちゃってね」
はる「ホント!」
泰輔「ヘヘヘッ、で、マーちゃんは?」
要「寝室で」
泰輔「あ、そうか。これ、気持ち」お土産を要に手渡す。
要「すいません」
泰輔「よし! 顔見てくるかな」家に上がり込む。
音吉「あと、あれだね。退院祝っての、やらなきゃいけないね」
はる「そうそう。ね!」
笑顔でうなずく要。
雅紀の寝ている部屋
雅紀の頭の上にはバイオリンケースが置いてある。
泰輔「眠ってる、眠ってる」まじまじと顔を見て「顔色、よくないなあ。え?」
蝶子「…うん」
泰輔「本当にもういいのかい? うん?」
涙をこらえる蝶子。
診察室
泰輔「治ってもいねえのに退院だなんて『さじ投げた』ってことじゃねえか! 我が家で死なせろってことだろう! 違うか!」
黒木「…」
泰輔「退院なんか許さなきゃよかったんだよ。許したってことはさ、『もうダメだ』って言ったと同じことだよ! 様子見てて、何となくダメだと思ったって、我が子の命だろ。少しぐらい望み持つじゃねえか! 九分九厘ダメだと分かったって一厘、望み持つだろ! そういう親の気持ちも分からないで先生は…!」
泰輔を見る黒木。
泰輔「『病院へ置いといてやる』って言ったら親だって望み持つでしょう! え!」
黒木「望みを持たせてよかったんですか?」
泰輔「…」
黒木「もう手の施しようのないことが分かっていても『助かる』と言わなきゃいけなかったんですか? 『治る』という期待を持たせた方がよかったんですか? 教えてください」
泰輔「正直すぎるんだよ…あんた」
立ち上がって窓の外を見る黒木医師。
泰輔「ウソつきゃよかったんだよ。それでもしダメだったら…。『力いっぱい尽くした』って言やあ…。諦めもつくってもんだよ。どっちにしろ諦めはつかねえけどさ…。9歳だもん。諦めがつくわけねえけどもよ…」
この2人を見ると「マー姉ちゃん」を思い出す。大和田高男と天海朝男。大和田さんは昭和13年に召集され、天海さんは昭和14年。「チョッちゃん」周りの人は昭和19年になって、30代くらいの人がドッと召集されるのが、ちょっと違和感あるんだよね。
そういや前田吟さんは怒鳴り声があまり怖くないかも。
雅紀の寝ている部屋
雅紀「売り切れちゃうよ」
蝶子「…え?」
要「うわごとだ」
雅紀「…消しゴム。学校の前の文房具屋さんに行かなきゃ。早く買いに行こうよ」
蝶子「マーちゃん!」
要「雅紀!」
蝶子「マーちゃん!」
目を開けた雅紀。「僕のこと呼んだ?」
蝶子「…うん」
雅紀「ふ~ん」
要「夢でも見てたのか?」
雅紀「お姉ちゃんと俊ちゃんと学校行ってたとこ」
蝶子「そう」
雅紀「お姉ちゃんたちは?」
蝶子「まだ学校」
雅紀「ふ~ん」
蝶子が雅紀の額の汗を拭く。
雅紀「お父さん」
要「うん?」
雅紀「バイオリン…」
要「うん?」
雅紀「バイオリンを教えてくれた時、怒ったりしたの、ちっとも恨んだりしてないよ」
要「そうか」
雅紀「お父さんは僕のこと上手にしたくて怒ったんだから。心配しないで」
要「うん…」
泣くのをこらえる蝶子。
要「ちょっと出かけてくる」
蝶子「どこへ?」
要「お前、アイスクリーム好きだったな」
雅紀「うん」
要「買ってきてやる」
うなずく雅紀。
蝶子「今どきアイスクリームなんか…」
要「東京中、探し回ってみるよ。東京になきゃね、横浜だ」部屋を出ていった。
柱時計は6時。食事を終えた加津子と俊継。
加津子「お代わりは?」
俊継「いい」
加津子「そう。じゃあ、ごちそうさま」
俊継「ごちそうさま」
自分たちの使った食器をそれぞれ台所に運ぶ。
ここで加津子1人で運ぶんじゃなく、幼い俊継も自分の食器を持って運ぶのがいい!
雅紀の寝ている部屋の襖が開く。
加津子「お母さん、ごはん」
俊継「ごはん」
蝶子「(小声で)シ~ッ」手招きする。「虫の声がしない?」
⚟︎虫の声
蝶子「ねっ」
⚟︎虫の声
蝶子「不思議ね。秋でもないのに」
加津子「マーちゃん、聞こえてる?」
雅紀「うん。虫のオーケストラみたい」
蝶子「そうね」
⚟︎虫の声
⚟︎玄関の戸の開閉音
雅紀「お父さんだ」
⚟︎足音
蝶子「あったの!?」
要「ああ、銀座にね!」
蝶子「加津ちゃん、スプーン!」
加津子「はい!」
要「4本だぞ!」
俊継「僕も食べられるの?」
要「ああ、食べられるぞ!」
加津子がスプーンを持ってきた。
要「はい、お母さん。よし」
蝶子が雅紀にアイスクリームを食べさせた。
アイスクリームを口に入れ、満足そうな雅紀。
蝶子「加津ちゃんたちも」
要「ああ、おいしいぞ~」
加津子、俊継も1口ずつ食べ「おいしいね!」と言いあう。
要「そうか」
蝶子「マーちゃん。はい」もう1口食べさせた。
要「どうだ、雅紀?」
雅紀「…ああ、おいしかった」
要「アハハッ、ねえ! おいしかったって」
蝶子がもう一口食べさせようとすると、首が傾き、額に当てた手拭いが落ちた。
要「雅紀?」
蝶子「マーちゃん?」
要「雅紀!」
蝶子「マーちゃん!」
<虫のオーケストラを聴いた、その日、雅紀君は僅か9歳でその命を閉じたのです>
泣きだす加津子と俊継。蝶子も手で顔を覆って泣いた。(つづく)
哀しい展開が続くね。しかもまだ戦争終わってないんだよ。
2ページ目以降は今後のネタバレっぽい!? 先日の24時間テレビのドラマは「チョッちゃん」終了後に見たいと思います。
これを読むとやっぱり、もう妹は生まれてたみたい。ドラマでは出さないのかな?
