NHK 1987年7月18日(土)
あらすじ
蝶子(古村比呂)の父・俊道(佐藤慶)と夫・要(世良公則)が北山家で対面する。長い沈黙のあと、ついに俊道はふたりの結婚を認める。それを聞いた蝶子と母・みさ(由紀さおり)は嬉しさのあまり涙が止まらない。夜、診察室で尺八をたしなむ俊道のもとに、要が訪ねてくる。ふたりは蝶子についてあれこれ語り合い、次第に意気投合する。次の日から俊道は、加津子を抱きかかえて離さなくなり、初孫をすっかり溺愛するのだった。
2025.7.26 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
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岩崎要:世良公則
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北山みさ:由紀さおり
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石沢嘉一:レオナルド熊
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山本たみ:立原ちえみ
品子:大滝久美
彦坂公次:木内聡
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北山俊道:佐藤慶
雪が降り積もる北山医院
<チョッちゃんが結婚後、初めて滝川に帰ってきました。長女の加津子ちゃんも一緒です。みんな、緊張していますが、それもそのはずです。俊道さんはチョッちゃんと要さんの結婚を許していなかったからです。それに、要さんが俊道さんと正式に対面するのも今日が初めてなんです>
茶の間で正座して待っている蝶子、要、みさのもとに俊道が来た。今まで蝶子の隣に並んで座っていたみさが俊道の隣に座る。
蝶子「父さん、要さんです」
要「岩崎要です」
頭を下げる俊道。
要「今回は突然お邪魔しまして申し訳ありません。あ、突然といえば…4年前の時も、かなり突然ではありました。ああ、いえ…」
みさ「したけど、4年前のあの時、お父さん、要さんとね、顔合わせたんですよ、ね?」
要「その節は大変失礼いたしました」
黙ったままの俊道。
蝶子「父さん。あのあと、翌年の5月、私たちは結婚しました」
うなずく要。
蝶子「去年、子供もできました。それでも結婚は認めてくれないのかい?」
俊道「岩崎さん」
要「…はい」
俊道「ふつつかな娘ですが、どうかよろしく」頭を下げた。
要「…はっ!」頭を下げる。
蝶子「父さん…!」泣き出し、みさも一緒に泣く。
俊道「泣くんでない!」
泣き止まない蝶子とみさ。
俊道「で、いつまで?」
要「はあ。あさってには帰ります」
<その夜の宴には石沢嘉一と彦坂頼介と安乃ちゃんの弟・公次君も呼ばれました>
石沢「そうそうそう、石沢でした。まあ、よく来てくださいましたなあ、本当に」
蝶子「公次君だ。頼介さんの弟の」
要「ああ」
公次「おばんです」←さすがに成長した姿になった。
要「どうも」
ふすまが開き、俊道が入って来た。
俊道
嘉市
公次 要
蝶子
みさ
品子 たみ
それにしても、蝶子の弟の俊介はどうしたんだよぉ!?
みさ「したら、お父さん」
俊道「うん。したら、ま、始めるか」
石沢「じゃ、呼ばれようか」
一同「いただきま~す」
蝶子「おじさん…私が」お銚子を持つ。
石沢「悪いな、こりゃあ、え!」
蝶子「なんもだ」酒を注ぐ。
石沢「チョッちゃん、おっとっとととと…おお、あら? 岩崎さん、酒」
たみ「はい」
要「あ、いえ、僕はお酒は飲めないんですよ」
石沢「お? ええ!?」
蝶子「4年前にやめたのよね」
石沢「なして、また?」
みさ「蝶ちゃんがやめさせたんかい?」
蝶子「いや、なんもだ。要さんが勝手にやめたんだ」
みさ「はあ~」
石沢「なして、また?」
要「いや、実はですね、あの、蝶子と…いや、蝶子さんと、その、結婚すると決めた時にですね、野々村さんに『大事にする』と約束させられまして、まあ、その約束の証しとして酒をやめたわけです」
俊道はその言葉を聞いて、うなずいてる。診察室で対面した時も、要は酒はやめたと話していて、その時も「それはいいことだ」と褒めてた。
石沢「偉い! 先生、こちら偉いわ! 酒やめるなんて大した偉い! 本当に! ま、ひとつ」酒を勧める。
要「いやいや。ですから、本当に結構ですから」石沢の持っていたお銚子で石沢に酒を注ぐ。
石沢「偉いなあ、しかし…」
品子「おじさんも偉くなったらどうだい?」
石沢「ハハハハッ、ならんでいいわ」
笑い声
石沢「チョッちゃん、子供、どうした?」
蝶子「ん? 今、向こうで寝てる」
石沢「そうか。後で見してや。な!」
蝶子「はい」
石沢「あ~、かわいいべな」
俊道「岩崎さん」
要「はっ」
俊道「演奏家っていうのは、こういったふうにあちこち回るんですか?」
要「いや、そうでもないですね。大体、東京で演奏会をやったり、ラジオに出たり、演奏旅行というのは、そう多くはないです」
うなずく俊道。
みさ「ああ、いつも北海道に来れたらいいのにねえ」
石沢「ねえ!」
蝶子「その方がもめなくていいもね。ほら、今、住んでるうちの向かいが建具屋さんで、ほれ、金づちの音するっしょ。そしたら、要さん、『うるさい』って、けんかになるんだわ」
要「今はそうでもないだろ」
蝶子「加津子が泣いても怒るくせに。そりゃあ、演奏会前で神経がピリピリしてるっていうのは分かるけど、怒り過ぎだわ」
石沢「短気なんかい?」
蝶子「父さんに似て、子供なんだわ」
一同の笑い声
みさ「いやいやいや」
蝶子「いや~、この人は見境なく怒るもね」
要「もう、よさないか!」
蝶子「みんな、しゃべってやる!」
俊道「蝶子。夫の悪口ばペラペラしゃべる妻がどこにいる!」
蝶子「はい」
蝶子の部屋
みさと布団を敷く蝶子。
蝶子「父さん、許してくれたんだね」
みさ「うん」
蝶子「『夫の悪口ばしゃべる妻がどこにいる』って、私たちのこと夫婦って認めてくれたんだ」
みさ「本当は、そんなことは、とっくの昔だ。心の中では、ず~っと前から許してたんだよ」
尺八の音が聴こえる。
診察室で尺八を吹く俊道。
誰かがノックする。
俊道「はい」
⚟︎要「岩崎です」
俊道「ああ…どうぞ」
頭を下げて、要が診察室に入って来た。「尺八の音がしたもんですから」
俊道「いや、お恥ずかしい」
要「なかなか」
俊道「いやいや…」
ストーブに手をかざしている要。「尺八は、いつもここで?」
俊道「いや、向こうで吹くと寝てる子が目ぇ覚ますでしょ」
要「ああ…」
俊道「ま、掛けませんか?」
要「あ…はあ」
俊道「どうです?」診察室の机から取り出したキャラメルを差し出す。
要「あ、では、いただきます。あの時…」
俊道「え?」
要「4年前、許しもなく結婚しまして申し訳ありませんでした。僕もですが、蝶子は、もっとずっと気にしてました」
尺八を触っている俊道。
要「いつか蝶子の気持ちをすっきりさせてやろうと思ってました。今、やっとかないました」
俊道「私は…私は似てるんかい? あんたと?」
要「…らしいです」
俊道「へえ…」
要「…はい」
俊道「蝶子は、どんなふうですか?」
要「よくやってくれてます」
俊道「向かってくることありませんか?」
要「きます」
俊道「きますか?」
要「…怒らせると怖いんです」
俊道「怖いんです」
要「はい。いや、何度、家出されたか分かりませんよ」
俊道「家出ですか?」
要「するんです。でも、まあ、大体、行き先は分かってますから。はい」
あきれたように首を横に振る俊道。
ノック
俊道「はい」
蝶子が顔を見せた。「要さん、お風呂」
要「…うん」
蝶子「何話してたの?」
俊道「風呂、どうぞ」
要「そうですか。では」蝶子から寝間着を受け取る。「ああ、ありがとう」俊道に会釈して出ていった。
蝶子「何、話してたの?」
俊道「お前のことだ」
蝶子「どんな?」
俊道「ちゃんとやってるかとか…」
蝶子「要さん、何て?」
俊道「う~ん。お前、家出は、うまくないんでないの?」
蝶子「そんなこと告げ口したんかい?」
俊道「よくも、まあ、家出なんぞ」
蝶子「いや、したって時には我慢ならないこともあるんだ。したけど、反省して謝りに来るんは要さんだもね」
俊道「岩崎さんが謝るんかい?」
蝶子「そう。ウフフッ」立ち上がり、「ユーモレスク」のハミングをする。
蝶子「うん?」
俊道「その曲、何ていう曲だ?」
蝶子「『ユーモレスク』だ」
俊道「『ユーモレスク』」
蝶子「そう」またハミングを続ける。
俊道「蝶子」
蝶子「うん?」
俊道「あれは…岩崎さんのバイオリンだったんだべな? みさが東京のお前たちの部屋ば訪ねたことがあったべや」
蝶子「乃木坂かい?」
俊道「うん。あの時、この曲、表に聞こえてたわ」
蝶子「お…表って?」
俊道「アパートの表さ」
布団を並べて横になっている要と蝶子。
要「お父さん、アパートの前にね」
蝶子「要さん、ありがとう」
要「うん?」
蝶子「滝川に連れてきてくれて」
要「感謝してるのか?」
蝶子「当たり前だ」
要「うん」
翌日
⚟︎加津子の声
⚟︎みさ「お父さん、今度は私だ」
⚟︎俊道「お前の母さんは、ちっこい頃からじっとしとらん娘だったんだ」
茶の間で聞いている蝶子と要。
廊下
加津子を抱っこして歩く俊道。「木登りはする。屋根には登って穴開ける。女らしいとこは何もない。ハハッ」
みさ「加津子ちゃ~ん!」
俊道「開けて、ほれ」
みさ「いや、そんなことないんでないですか? はい、診察室だよ」
俊道「お前はそんなふうになるんでない。な!」
茶の間で会話を聞いている蝶子と要。
⚟︎みさ「大丈夫だよね~、加津子ちゃん。今度、ばあちゃんとこ、おいで」
⚟︎俊道「まだ、いいべ」
⚟︎みさ「お父さん、今度、私ですよ」
蝶子と要も立ち上がり、茶の間を出て廊下へ。
⚟︎みさ「加津子ちゃ~ん、ほら、ばあちゃんだよ~」
診察室を覗く蝶子と要。
⚟︎みさ「ほらほら、今度、ばあちゃんとこおいで。ほら」
蝶子「父さん、老けたね」
笑顔で返す要。
<昭和9年も、あと僅かで暮れようとしていました>(つづく)
いい話、なんだけどさ~、要が偉い偉いと褒められると微妙な気持ちになる。蝶子が滝川に行きたがってたときは家を守るもんだと言ってたし、仙台の公演が中止にならなければ滝川行きはなかったでしょう? それを蝶子の気持ちをすっきりさせてやりたかったといい夫ぶっちゃってさ!…やっぱり要はちょっと苦手。
似てると言われてる俊道とは違うと感じる。俊道は何こいつ、嫌い!とはならない。

