NHK 1987年8月31日(月)
あらすじ
11月、俊道(佐藤慶)危篤の知らせを受け、蝶子(古村比呂)と泰輔(前田吟)たちは、滝川へ帰る。みさ(由紀さおり)に病名を聞くと、すい臓がんだった。なぜ教えてくれなかったのか、と蝶子が聞くと、俊道が知らせるなと言ったという。加津子(藤重麻奈美)が俊道の傍で俊継(服部賢悟)に絵本を読んで聞かせていると、俊道が「蝶子」と声をかける。俊継に蝶子を呼びに行かせると、俊道は蝶子と要の様子などの会話を交わして…
2025.9.8 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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演奏:新室内楽協会
テーマ演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:円光寺雅彦
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考証:小野一成
医事指導:白石幸治郎
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タイトル画:安野光雅
方言指導:曽川留三子
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岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
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北山みさ:由紀さおり
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石沢嘉一:レオナルド熊
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たみ:立原ちえみ
品子:大滝久美
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岩崎加津子:藤重麻奈美
岩崎俊継:服部賢悟
中川:宮川洋一
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野々村泰輔:前田吟
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北山俊道:佐藤慶
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制作:小林猛
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演出:清水満
三井智一
<11月の半ば。チョッちゃんは父・俊道さんが危篤との知らせを聞き、泰輔さんや2人の子供と共にふるさと・滝川へやって来ました>
リュックを背負って急ぎ足で北山医院の戸を開け、家に入る蝶子たち。
布団に寝ている俊道を医師が診察し、みさが傍らで見守る。
たみ「奥さん、蝶子さんたちが…」
みさ「や、着いたかい?」
俊道の寝ている姿を受け、ショックを受ける蝶子。「どう?」
みさ「今、眠ってる」
蝶子と泰輔も布団の脇に座る。
たみ「したら、加津(かっ)ちゃん、向こうに連れてくかい?」
蝶子「悪いね」
たみ「なんも」子供たちを連れ、襖を閉める。
蝶子「どうなんさ?」
みさ「ん?…うん」
中川「危篤状態は一応、脱した。したが…楽観は許されない」
蝶子「意識は?」
みさ「うん…。ある時とない時の繰り返しなんだわ…」
蝶子「いやいやいや…」
泰輔「急に倒れたのかい?」
みさ「ん? いや…」
蝶子「何ちゅう病気なんですか?」
中川「ん? それは、お母さんから」
うなずくみさ。
中川「したら、何かあったら」
みさ「はい」
みさ・蝶子・泰輔「ありがとうございました」手をついて頭を下げる。
茶の間
蝶子「父さん、いつから?」
みさ「うん、寝込んだのは先月の半ばだ」
蝶子「急にかい?」
みさ「ん? 夏の少し前から様子は変ではあったんだ」
泰輔「そんな前からか?」
みさ「『体がだるい』って言いだして、食欲なくなって…『腹が張る』とも言ってたんだ」
蝶子「何ちゅう病気さ」
みさ「ん?」
泰輔「ん?」
みさ「うん…。『スイ臓がん』とか」
蝶子「『がん』?」
泰輔「『がん』っていや、あの不治の病っていう…」
みさ「糖尿病も出てるっちゅうことだ」
蝶子「なして知らせてくれなかったんさ」
みさ「したけど、お父さんが『知らせるんでない』って」
蝶子「したけど!」
みさ「雅紀ちゃんが死んで、要さん出征して、蝶ちゃんだって大してゆるくなかったしょ? したから、お父さん『これ以上、蝶ちゃんに心配かけることないべ』ってしゃべったんだ」
蝶子「したけど、急に危篤の知らせ聞く方の身にも…!」
泰輔「チョッちゃん」肩をたたいて止める。
みさ「私もね…急にこんなふうになるなんて」
⚟︎石沢「石沢でした!」
⚟︎品子「品子です!」
蝶子「どうぞ!」廊下へ出る。
石沢「あ! チョッちゃん来てたのかい?」
蝶子「おじさん!」
品子「蝶子さん」
頭を下げる蝶子。
⚟︎泰輔「石沢さん、お久しぶりでございます」
茶の間
石沢「いやいやいや、どうも、これはわざわざ」
蝶子「いや、品子さんにも大した迷惑かけたね?」
品子「なんも」
石沢「びっくりしたっしょ?」
みさ「病気のこと、なして前もって知らせなかったかって叱られてたとこなんだ」
蝶子「それは分かったから」
石沢「したけど、もう、危篤は抜け出したんだ。うん。まあ、大丈夫だ。少々のことでくたばる先生じゃない。俺より3つも年下だべさ」
みさ「そうだね…」
実年齢は佐藤慶さんが昭和3/1928年生まれ、レオナルド熊さんが昭和10/1935年生まれなので、レオナルド熊さんの方が若いです。見た目から、まあ、分かるけど。
北山家の廊下にある電話で話している泰輔。「いや、大丈夫だ。持ち直してたけど、話はしてねえんだよ。いやいや、眠ってんだ。目、覚ましても話すことができないかもしれねえな。意識ない時があるって言ってたから。うん…。ま、そういうことだから、急にどうこうってことはないだろ。…うん」
茶の間の隣の台所の脇の板の間
石沢「そうかい。チョッちゃんの旦那、大陸かい?」
蝶子「そうだ」
たみ「うちの人もだ」
蝶子「そうかい」
たみ「ひょっとしたらすぐ近くにいるかもしれないね」
蝶子「そうだね!」
品子「うちのは南方だ」
蝶子、品子、たみでジャガイモの皮むきをしている。
たみ「南方っちゅったら暑いとこでしょ?」
品子「冬でも暑いって」
石沢「便りあるかい?」
品子「うん、来ないんだ」
たみ「うちもだ」
蝶子「私のとこも」
品子「いやいや、生きてるか死んでるかも分からんもね」
ギョッとして品子を見る蝶子とたみ。
品子「あ…すいません」
蝶子「ゆるくないね」
たみ「ホント」
寝ている俊道。
加津子「『野原や荒れ地や一日中、あてもなく迷い、歩いているうちに、エリザは大きな森の中へ来た。彼女は、どこへ行けばよいのか分からなかったけれども、そうやって歩いてるうちに、きっと神様が兄さんたちに会わせてくださるに違いないと思ったのであった』」
目を覚ました俊道。
加津子「『森へ着いた時は、もう夜になっていて道が分からなくなった。エリザは柔らかいコケの上に横になって』」
俊道の視界にぼんやり映る加津子と俊継の姿。
加津子「『神様にお祈りをしてから木の切り株に頭をもたせかけた』」
俊道「蝶子?」
加津子「起きたの?」
ハッとする俊道。
加津子「私は加津子」
俊道「ああ、そうか…」
俊継「僕、分かる?」
俊道「いつ来た?」
加津子「今日」
俊道「そうかい。誰と来た?」
俊継「僕と…」
加津子「お母さんと泰輔おじさん」
俊道「そうかい。…したら、お母さんに『じいちゃん、目、覚ました』ってしゃべってきてくれないかい?」
俊継「僕、行く!」
残った加津子はニコニコ俊道の顔を見る。
俊道「何の本、読んでたんさ?」
加津子「童話。東京から持ってきたの」
俊道「そうかい」
俊継と手をつなぎ、俊道の部屋に来た蝶子、泰輔、みさ、石沢。
蝶子「父さん」
俊道「うん…」
泰輔「義兄(にい)さん、どうも」
俊道「わざわざ来たんかい?」
蝶子「したけど…」
俊道「危篤だとか何とか知らされたんだべ? 大げさなことして…」
石沢「したけど、ホントにあの日は、もうダメかと思った」
みさ「3日前、嘉市さん、一晩中、ついててくれたんだよ、お父さん」
俊道「悪かったね」
石沢「なんもだ」
蝶子「父さん。具合はどんなだ?」
俊道「今は…まあ、いい」
うなずく蝶子。
俊道「泰輔君」
泰輔「はい」
俊道「仕事の方は、いいんかい?」
泰輔「いやいや、今は仕事はしてないんですよ」
みさ「蝶ちゃんの手紙にもあったしょ? 泰輔は喫茶店も映画館もやめたって」
泰輔「何もかもご時勢でね。ハハハ。今は下宿屋のオヤジです。はい」
目を閉じる俊道。
みさ「眠いんかい?」
俊道「眠っていいかい?」
みさ「ああ、いいよ」
みんなが見ている中、眠ってしまう俊道。
夕方、石沢、品子、たみが北山家を出ていった。
蝶子が再び俊道の部屋へ。
俊道「蝶子かい?」
蝶子「目、覚めたんかい?」
俊道「うん…もう夕方かい?」
蝶子「うん」
俊道「雅紀は残念なことした」
うなずく蝶子。
俊道「敗血症か…。あれはなかなか…」
蝶子「あっという間だった」
俊道「うん…。親の不注意でああいう病気になったわけではないんだから、いつまでもしょげるんでない」
うなずく蝶子。「もう、大丈夫だから」
俊道「うん。要君から便りは?」
蝶子「めったに…」
俊道「うん…」
蝶子「『便りの無いのは、いい便り』って言うぐらいだから。ウフフ」
俊道「うん…。ちゃんとやっていけてんのかい?」
蝶子「うん。邦ちゃんも旦那さんが出征して1人だから、よく、うちに来るんだ。安乃ちゃんやお向かいのうちの奥さんと集まって、いろいろやってるんだわ。料理やら裁縫やら。にぎやかだよ。女学校の寄宿舎にいるみたいだもね」
俊道「結局…。お前たちのうちには行かずじまいだわ。母さんは…え~と、何とかアパート」
蝶子「乃木坂アパート?」
うなずく俊道。「そこにも…今のうちにも行ったっちゅうのに、ワシはとうとう」
蝶子「なんも! 先があるでない? 病気よくなったら東京来たらいいっしょ」
俊道「蝶子…」
蝶子「なんさ?」
俊道「父さん、もう長くはないわ」
蝶子「そんなことしゃべるんでない!」
俊道「いや…」
蝶子「聞く耳、持たんから!」
<「聞く耳、持たん」というのは俊道さんの口癖みたいなものでした。その言葉を自分が言ってしまって、チョッちゃんは少し悲しく、初めて弱音を吐いた父を見て寂しくもありました>
再び眠ってしまった俊道を見る蝶子。(つづく)
俊道の「聞く耳、持たん!」
佐藤慶さんの演技がまー、すごい。ホントに調子悪いんじゃ!?と思ってしまう…。
みんな服に名札を縫い付けだしたね。まだ蝶子や子供たち、泰輔の東京組はついてなかったけど。
「岸壁の母」は昭和18年に石田の兄が戦死し、一般市民も服に名札も縫い付けている。服に名札を縫い付けるのは作品によってバラバラ。
昭和18年公開の映画「愛の世界 山猫とみの話」ではモンペははいてるけど、名札はついてないな。
「別れて生きる時も」は美智がモンペ姿になるのも終戦のかなりギリギリだし、リアルを知らないのにリアリティないなと思ってたけど、案外「岸壁の母」の方が戦時色をより強調して描いていたのかも。軍事歌謡もいっぱい流れたな~。
「マー姉ちゃん」でも名札が縫い付けられているのに気づいたのは昭和19年になってからで「チョッちゃん」も同じくらい。
「岸壁の母」「別れて生きる時も」はTBS花王愛の劇場の昼ドラなので、朝ドラ民にも見てほしかったな~。どんな感想持つんだろ!?ってちょっと気になる。イヤ、でもホント、この作品を放送してくれた今は亡きBS松竹東急には感謝だよ。
哀しい出来事が続くので現実逃避気味。
