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【ネタバレ】岸壁の母 第三十章「生きて帰って!」その五

TBS 1977年12月16日

 

あらすじ

新二(大和田獏)はいせ(市原悦子)の知らぬ間に満州の軍需工場で働く手続きをとっていた。昭和十九年のサイパン島陥落後は空襲がいっそう激しくなり、いせの生きがいは新二の手紙だけとなる。

岸壁の母

岸壁の母

2024.8.2 BS松竹東急録画。

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冒頭はお決まりのシーン。青白画像。船が港に帰ってくる。

いせ「石頭(せきとう)教育、13981(いちさんきゅうはちいち)部隊、荒木連隊、第1大隊、第6中隊の端野新二(はしのしんじ)を知りませんか? 端野新二知りませんか? 端野新二を知りませんか? 端野…新二~!」

 

端野いせ:市原悦子…字幕黄色。

*

端野新二:大和田獏…字幕緑。

*

水野のぶ子:小畑あや

高間イワオ:陶隆司

*

兵長:土方弘

老婦人:大川万裕子

*

後藤泰子

久保:山口京子

土田桂司

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柴田信

唐仁原健

吉田照義

小池修

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音楽:木下忠司

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脚本:高岡尚平

   秋田佐知子

*

監督:高橋繁男

 

ポスターのアップ

 

神精民國

員動總

 

<「米英撃滅」「撃ちてし止(や)まん」「欲しがりません勝つまでは」>

 

雑誌記事?のアップ

 

斷じて勝つ

諸君が續く限りは…

 

う~ん、右から書くのと左から書くのが混在してるのね。

 

節米

 

<いろんな標語がありましたね。そうそう、敵機来襲のことを「お客さん」なんて呼んで強がっていたものでございます>

 

ポスターのアップ

 

感謝で守れ

勇士の遺族

 

  至必は襲空

進邁へ空防

 

学校の校庭

女性たちが一列に並び、頭にはハチマキ、手には竹槍を持っている。

高間「構え! 突け~!」

女性たち「ヤーッ!」

その繰り返し。

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高間さん、久しぶり!

 

高間「注目! こんなことでは敵は突けない! よく見てなさい! ヤーッ! ヤアーッ!」藁の束を突いていく。「こう腰を入れる。腰を入れて体ごと突っ込む。いいね? 戦地にいる兵隊さんのことを考えなさい。今や一億総決戦のとき!」

 

竹槍にすがりつくようにいせの隣に立っていた老婦人がヘナヘナと座り込む。

いせ「おばあちゃん、大丈夫ですか?」

高間「そこ、何やってる?」

いせ「この方、気分が…休ませたほうが」

 

高間「甘ったれたことを言うんじゃない。敵が目の前に現れたら、体の具合が悪いとかなんとか言ってはおられんのですぞ。では、今度は、わら人形を突く! 2列縦隊に整列! 本当の敵だと思って気合を入れなさい! 次!」

女性「ヤーッ!」どんどん女性たちが突っ込んでいき、老婦人の番で倒れるが、男たちが脇によけ、いせも突っ込む。

 

冒頭からずっと軍歌…戦時歌謡?が流れるけど、何度も聴き返し、ようやく“その気持ち”“国まもる”という歌詞が分かった。聞き取り、苦手だな〜。このドラマ、今までの戦争ドラマでは聞いたことないような曲ばっかり流れる。木下忠司さんのチョイスなんだろうか。

さうだその意気(国民総意の歌)

さうだその意気(国民総意の歌)

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作詞:西条八十/作曲:古賀政男「そうだその意気」1941/昭和16年5月25日発売

「海の進軍」のB面

海の進軍

海の進軍

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あー! スッキリした。

 

帰り道

竹槍を担いだ女性たちが歩いている。マイ竹槍?

女性「慣れないから腰が痛くて…」

女性「そうなのよね、あ~あ」

 

各々、「ご苦労さまでした」と言い合って別れていく。

 

いせが家に入ろうとしていると、老婦人から声を掛けられた。「さっきはどうもすいませんでした」

いせ「いいえ、大丈夫ですか? おばあちゃん、ホントに」

老婦人「ええ、どうもお世話になりまして」

いせ「おばあちゃん、あの…こんなこと言っちゃなんですけど、おなかがすいてるんじゃないんですか? どうぞ、ちょっとお寄りください」

老婦人「はあ、ありがとうございます」

いせ「どうぞ、ちょっとお茶でも」

老婦人「どうも」

 

<ろくな物も食べてないのに訓練、訓練で誰も彼もクタクタでした>

 

雑炊を食べる老婦人。

 

<あんなご老人にまで竹槍を教えてどうするのか気が知れませんでした>

 

いせ「あっ、おばあちゃん、お代わり」

老婦人「いえ、もう結構です」

いせ「いや、どうぞ。たくさん食べてください」

老婦人「ごちそうさま」

いせ「もうよろしいんですか?」

老婦人「ええ。あなたは?」

いせ「ええ、私はあとで。おばあちゃん、ご家族は?」

老婦人「あ…はあ、おじいさんと2人なんですが、おじいさんが病気がちで…息子が2人いたんですが、次男は昨年、サイパンで戦死しましてね。長男は南方に行っているんですが、無事でおりますかどうか…長男の嫁と同居してたんですが、東京では生活ができないと申しましてね、嫁と孫たちは嫁の実家に…農家だもんですから」

 

いせ「はあ」急須にお湯を入れに立ち上がる。

老婦人「私たちも来てはどうかって言ってくれますが…こんなときです。年寄りが2人で行っては迷惑ばかりかけますから。あっ…あなたは?」

いせ「一人息子が満州へ」いせは棚の上の新二の写真を見せる。

老婦人「ああ、そうですか。そりゃあ、ご心配ですね。まあ…立派な息子さんですねえ」

 

お茶を出すいせ。お茶を出してくれたこと、写真を返すとき、ありがとうございますとお礼を言う老婦人。

 

<年取った方が青い顔してらっしゃるのを見ると放っておけませんでした。函館の母ぐらいの方でした>

 

老婦人「もう、ごちそうさまでした。ありがとうございました」

いせ「お気をつけてね」

老婦人「はい、ありがとうございます」

いせ「ちょっと待ってください」紙にサツマイモ、ジャガイモ数個をくるんで渡した。

老婦人「もう、どうぞそんな…」

いせ「じゃ、おじいちゃまに」老婦人のカバンに入れる。

老婦人「まあ、そうですか。貴重な物をありがとうございます」

いせ「いいえ」

老婦人「おじいちゃんが喜びます。ありがとうございました」かばんと竹槍を持って端野家から出ていく。「どうもありがとうございました」

いせ「お気をつけて」

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老婦人役の大川万裕子さんは「本日は晴天なり」でも見た。陽子の仲人。

 

鍋に残ったほんの少しの雑炊を新二の写真の前に供えるいせ。

 

<新二からの手紙が途絶えていました。戦争は日に日に激しくなるばかりで、内地でもこんな老人まで駆り出されるほどでしたから、外地は…>

 

いせ「いただきます」と新二の写真に頭を下げ、すぐに供えていた雑炊を食べ始める。

 

<東京では食糧事情が悪くなる一方で配給物だけでは、とても生きていけませんでした。耕すことのできる場所なら、どんな狭い場所でも耕しました。議事堂の前は大根の畑でございました>

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いせも庭に里芋などを植えている。

 

のぶ子「おばさん! のぶ子ですけど」

いせ「はい、裏よ」

のぶこ「はい」裏口から入る。

 

いせ「いらっしゃい」

のぶ子「随分おっきくなったんですね。お手伝いします」

いせ「いいの。もう済んだからゆっくりしてて」

のぶ子「はい」

いせ「お宅じゃ食べ物どうしてるの?」

のぶ子「父の弟が千葉のほうで農家を。母と父で交代で買い出しに行ってるんですよ」

 

のぶ子の父は弟がいるのに婿養子になったの!? のぶ子の父が次男で弟が三男の可能性もあるけど。

 

いせ「あっ、そう。あっ、手が汚れるからやめなさい」

のぶ子「ええ」

いせ「もう済むからね」じょうろで水やり。「はい、これでいいわ」作業を終え、井戸の前に行くと、のぶ子がポンプを押して水を出した。「ありがとう」

 

のぶ子「ねえ、おばさん。こんなに食べ物に困るようじゃ、本土決戦の前にみんな餓死しちゃいますよね」

いせ「誰が聞いてるか分からないから、やたらなこと言っちゃダメよ。さあ、お上がんなさい」

のぶ子「はい。おばさん、新二さんから手紙来ました?」

首を横に振るいせ。

 

のぶ子「そうですか。そろそろ来てるんじゃないかなと思ったんだけど」

いせ「幹部候補生の試験はいつなのかしらね。それに合格すれば内地訓練で帰ってくるっていうから、それを楽しみにしてるんだけど」

のぶ子「会社の人の話では、満州は日本がロシアと不可侵条約を結んでるから安全だって」

いせ「不可侵条約って?」

のぶ子「お互いに侵さないっていう約束なの。それに食べ物なんかもたくさんあるんだそうですよ」

いせ「あらそう。食べ物があればいいわね」

のぶ子「訓練が忙しくって、手紙を書く時間がないのかもしれませんね」

いせ「できれば面会に行きたいけど、満州じゃね」

 

兵舎

手紙を書いている新二。

 

兵長「ああ~。おい、端野!」

新二「はい」

兵長「ちょっと来い!」

新二「はい」

兵長「また、おふくろに手紙か。『お母さん、元気ですか?』『はい、僕も元気です』」

回りにいた兵士たちが笑う。

兵長「おかしくない!」←ふざけた口調で笑わせようとしてたんじゃないの?

 

お酒をコップに注いだ兵長は新二の前に差し出す。「やれ」

新二「あっ、あの…」

兵長「『あの』も『この』もない!」

兵士「俺たちの酒が飲めねえのか」

新二「いただきます」一口飲んでせきこむ。

兵長「一息でやれ!」

一気飲みする新二。「ごちそうさまでした!」

兵長「飲んだら歌え」

新二「はっ、いや…」

 

兵長「軍歌演習をする」と立ち上がる。周りの兵士たちも立ち上がる。「軍歌演習、始め!」

 

♪万朶(ばんだ)の桜か襟の色

万朶の桜か襟の色

歩兵の本領

歩兵の本領

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「歩兵の本領」1911/明治44年に発表された軍歌。

 

兵士たちはぐるぐる机の周りを更新しながら歌う。酔いそう。

 

兵長「声が小さい!」

 

♪花は吉野に嵐吹く

花は吉野に嵐吹く

大和男子(やまとおのこ)と生まれなば

大和男子と生まれなば

散兵線(さんぺいせん)の花と散れ

散兵線の花と散れ

 

くっだらない体育会系。土方弘さんは昨日は上等兵、今日は兵長だった。

 

夜、サイレンが鳴る。

 

<あのころ空襲は、ひっきりなしでしたから着たまま寝たものです。昭和20年3月9日の夜中、大規模な空襲がありました。3月9日夜半から10日にかけて東京の下町はB29が150機も…もうまるで雨のように焼夷弾を落としました。皆さん、ご存じの東京大空襲です>

 

逃げ惑う人々。火事が起こり、それでも焼夷弾が降り続ける。

 

高間「空襲警報、解除~!」

 

人々は安心して、それぞれの家へ帰った。大森は家も大丈夫だったんだね。いせが家に入ろうとしているとき、男性たちの会話が耳に入った。

 

男性「いや~、今夜も助かったな」

男性「ああ」

男性「なんでも本所、深川、向島辺りは火の海だそうだ。だいぶ死人が出たらしい」

いせ「向島?」

 

いせは向島に向かって走った。

 

辺りは火の海。

のぶ子「お父さん! お母さん!」

 

いせ「あの…向島の水野商店、どうなってるでしょうか?」

男性「いや…あっ、やめなさい!」

いせ「いや、ちょっと離して」

男性「これから先は危ない!」

いせ「いや、離してください!」

 

逃げる人々を逆行して走っていったいせだが、夜が明けて、家まで戻ってきた。

 

高間「あっ、端野さん」

いせ「組長さん」

高間「どこ行ってたんだい?」

いせ「向島のほう、どうなってるか、ご存じないでしょうか? 知り合いが心配で」

高間「そんなこと言ってる場合じゃない。自分のとこが助かったからって、のんきなこと言ってないで、すぐ手伝ってください」

いせ「あの…何か?」

高間「こっちへ逃げてきた者は町内会で面倒を見なきゃならないんだよ。一緒に来なさい、さあ」

 

炊き出し

白いご飯のおにぎりとたくあん

 

久保「さあ、1人に1個よ。どうぞ」

警防団員「はい。大人も子供も1人1個」

高間「さあ、皆さん。救援物資を大量に放出してもらいました。米も十分にあります。戦争完遂のために滅私奉公、頑張ってください」せきばらいして出ていく。

 

女性「どうぞ。んっ、もう、自分で出したようなこと言っちゃって」

久保「聞こえるわよ」

 

大きな皿におにぎりをのせて配るいせ。「どうぞ。おにぎりどうぞ。1人1個ですから。よろしいですか? さあ、どうぞ。子供も大人も1人1個ですから」

 

それにしてもこの炊き出しの場面のご老人や子供たちが役者っぽくない。本当に焼きだされた人たちみたい。

 

いせが空になった大きな皿を持って調理場へ戻ってくると、久保がおにぎりをくるんで割烹着の下に隠したのを見てしまった。

 

久保「黙ってて、お願い。うちには小さい子が3人もいて、おなかすかして、毎日ピーピー泣いてんのよ。お願い、おにぎり3個だけ。お願い、組長さんには内緒にしといて。ちょっとうちまで、すぐ戻りますから」

 

いせは無言で見送り、釜の湯をやかんに入れた。

 

高間「こっちへ来なさい、さあ!」

久保「申し訳ありません。ごめんなさい、組長」

高間「さあ、来るんだ。なんてことだ。この一粒一粒の米は、お国の物だよ。お国の物を盗むっていうのは、なんたることだ。憲兵隊に突き出してやる」

女性「どうしたの? なんかあったんですか?」

高間「こういうことでは他の者に示しがつかん!」

 

いせ「組長さん、私があげたんです」

高間「あなた。何かにつけてわしに盾つくようだね。ヘッ、あんたがやった? いい気になるんじゃないよ! わしは見てたんだ。この人がこれをちょろまかそうとしてるのを。だから、わしはあそこで見張ってたんだよ」

いせ「組長さん、久保さんには3人も…」

高間「子供がいるのは、この人だけじゃない!」

いせ「毎日、ろくな物も食べてなくて、こんな白米のおにぎりが山ほどあったら誰だって」

久保が泣きだす。

いせ「親ってそんなもんじゃないですか」

泣き崩れる久保。

いせ「許してあげてください、組長さん。憲兵隊に突き出すのだけは」

 

見ていた主婦たちも久保に同情的になった!?

 

高間「あんたら、わしを鬼だと思ってるんだろ。だが、それもこれもお国のためなんだよ」おにぎりをいせの手に渡して「さあ、どけ」と去っていった。ツンデレ

 

泣いている久保に近付いておにぎりを渡すいせ。「持ってってあげなさいよ、ほら、早く。持ってってあげなさい。ねっ」

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久保役の山口京子さんは、7、8話では新二が疫痢で入院した病院の看護婦さんで、18話では三浦先生の家のご近所さん。後藤泰子さんも看護婦役で7、8話に出演。今回は久保さんと話してる主婦役かな。

 

いせが家に帰ると、家の前に包帯を巻いた女性が座っていた。

いせ「のぶ子さん」

のぶ子「おばさん…」

いせ「よかった。よかった。ホントによかった。のぶ子さん、よく…お父さんもお母さんも?」

のぶ子「死んだんです。うう…2人とも死んだんです」泣きだす。

 

茶の間

寝巻きに着替えたのぶ子がボンヤリ座っている。

いせ「さあ、出来たわ。さあ、おあがんなさい。おばさんも今朝からなんにも食べてないの。炊き出しに追い回されて食べるの忘れてたの。さあ、おあがんなさい。のぶ子さん、はい。おあがんなさい、ねっ? さあ、おあがんなさい」

 

のぶ子「あっという間に、うちに火が回って父と母が火だるまになって、父が叫んだんです。『バカ野郎、早く逃げろ! 新二君に惚れてんだろ』」泣きだす。「おばさん、私、一人っきりになっちゃった」泣き続ける。

 

<東京大空襲の3月9日がのぶ子さんのご両親の命日。何回かお墓参りをさせてもらいましたが「新二君に惚れてるんだろ、早く逃げろ」とどなりながら死んでしまった、のぶ子さんのお父さんの声が墓石から聞こえてくるようで、いっつも泣いてしまうんでございます>

 

少し乱れたのぶ子の髪を直すいせ。(つづく)

 

東京大空襲まで来たか。3月10日と思ってたけど、3月9日から攻撃は始まってたのか。のぶ子の父が向島界隈では~と言ってたときにイヤな予感はしたんだ。でも、のぶ子は、孫もいるおばあちゃんっていうのは、いせがネタバレしてたから安心してた。