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【ネタバレ】岸壁の母 第三十七章「この母の戦争は終らない」その二

TBS 1977年12月27日

 

あらすじ

船が港に入るたび、いせ(市原悦子)は舞鶴の岸壁に立っていた。最後の引き揚げ船にも新二(大和田獏)の姿はなかった。待ち続けて二十七年、ある日、中国で新二を見たという噂が立つ。

岸壁の母

岸壁の母

2024.8.13 BS松竹東急録画。

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冒頭はお決まりのシーン。青白画像。船が港に帰ってくる。

いせ「石頭(せきとう)教育、13981(いちさんきゅうはちいち)部隊、荒木連隊、第1大隊、第6中隊の端野新二(はしのしんじ)を知りませんか? 端野新二知りませんか? 端野新二を知りませんか? 端野…新二~!」

 

端野いせ:市原悦子…字幕黄色。

*

のぶ子:小畑あや

*

大田:大林丈史

刑事A:高木二朗

*

須芽万紗子

刑事B:山崎之也

吉田照義

*

三浦文雄:山本耕一

*

音楽:木下忠司

*

脚本:高岡尚平

   秋田佐知子

*

監督:高橋繁男

 

闇市

 

お、今日は曲名が出てる。

港が見える丘

港が見える丘

  • 平野愛子
  • 謡曲
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

平野愛子「港が見える丘」1947/昭和22年4月発売

 

コートに手袋、帽子をかぶった三浦先生が梯子を上る。

異国の丘

異国の丘

  • 竹山逸郎 & 中村耕造
  • 謡曲
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

竹山逸郎、中村耕造「異国の丘」1948/昭和23年9月発売

 

屋上で寝ていたサングラスの男と何やら取り引きしている!?

 

端野家

仕立物をしているいせはラジオを聴いている。

 

ラジオ「引き揚げ者の時間です。あさって正午ごろ、舞鶴港に入港する予定の復員船・白山(はくさん)丸は今、ふるさとに思いをはせる2200名の人々を乗せて日本海を故国に向かって急いでいます」

 

作業をやめてラジオに聴き入るいせ。

 

ラジオ「復員局では、これでソビエトからの引き揚げ業務は一応終わったものとみており、このあと復員船の運航は行わないと言っています。文字どおり最後の復員船となる白山丸に望みを託して留守家族たちは次々と舞鶴終結しており、家族の帰郷を待ち受けています」←”終結”ではなく”集結”のような気もする。

 

いせは列車の通路に座って舞鶴へ向かう。白髪がさらに増えたし、白髪の増え方がリアルだな~。そうそう前から白くなるのよ。

 

舞鶴港

日の丸の旗や名前の大きく書かれた旗を振って出迎える人々。いせは「荒木連隊第1大隊、第6中隊の端野新二、知りませんか?」と復員兵に聞いたり、担架で運ばれた人の布をめくったり。

 

三浦「満州からですか?」

復員兵「そうです」

三浦「端野新二君、知りませんか?」

復員兵「さあ、知りません」

三浦「そうですか。ご苦労さまでした」

 

別の人にも「お宅、満州でした?」と聞いてるところをいせが目撃した。三浦先生と目が合ったいせは「先生! 来てくださったんですね」と泣き崩れる。しかし、いせを振り払うように「許してください」と走り去った。

 

いせ「先生! 先生!」

 

三浦先生は人混みの中を駆けて、いせの前から消えた。岸壁の前でがっくりうなだれるいせ。帰りの列車は座席に座れた。

 

端野家

真っ暗な家で座布団を抱きしめて泣き崩れる。

 

呉服店から出てきたいせ。河島屋呉服店とは違う!?

 

<外地には、まだ多くの日本人が残っていたのに引き揚げ打ち切りとは悲しいことでした。もう船が入らないのだと思うと元気がなくなりましてね。よく、あんなに涙が出るもんだと自分でも不思議でした。よく泣きましたから>

 

端野家前の路地を歩いていたいせは「どちら様ですか?」と声をかけた。

刑事A「端野いせさんですか?」

いせ「はい」

刑事A「警察の者ですが」

いせ「何か?」

刑事B「三浦文雄をご存じですか?」

いせ「はい。出征している息子が小さいときからお世話になってる学校の先生です」

刑事A「三浦の持ち物にあなたの住所と名前だけが書いてあったもんですから」

いせ「あの…先生が何か?」

刑事A「ちょっと署まで来てもらえますか? 今、都合いいですか?」

いせ「はあ」

刑事A「じゃ」

 

警察署

荷物を抱えて震えている三浦先生。

 

刑事A「端野さん、三浦文雄を知ってますね?」

三浦「なんで、この人を…なんでこんな人を呼んだんだ!」

いせ「先生、どうしたんですか? ねえ、先生」

刑事A「ポン中ですよ」

いせ「ポン中?」

刑事A「ヒロポン麻薬中毒ですよ」

いせ「麻薬中毒?」

刑事A「この男に金をとられましたね?」

いせ「いいえ。私からお願いしたんです。息子のために」

刑事A「変にかばうのは困りますよ。その手口であっちこっち詐欺をやってるんですから。常習犯でね。ヒロポンのためらしいが…端野さん、三浦にとられたのはいくらぐらいですか? 三浦、教師までした男が…」机をたたく。「なんていうザマだ!」

 

いせをチラ見した三浦先生。「帰れ! 帰ってくれ!」

いせ「三浦先生」

三浦「うるさい!」いせを突き飛ばす。

いせ「まあ…」

 

刑事A「外で待っててもらえ」

刑事B「はい。さあ」

 

三浦先生の豹変ぶりに驚きながら部屋を出るいせ。

 

三浦「頼む。ヤクをくれ」

刑事A「これ以上やったら死んでしまうぞ」

三浦「死なせてくれ! 死なせてくれ、もう!」

刑事A「バカ!」

三浦「うう~うう…」机の脚にしがみついている。「ハァハァ、ハァハァ…うう…うう…」

 

いせは驚きを持って三浦先生を見つめている。

 

刑事A「すぐ警察病院から迎えが来るからな」

震えが止まらない三浦先生。

 

刑事B「相当、重症でね。脅かしでなく、あのままだと長くないと医者も言ってるんですよ」

 

たまらず部屋に戻り、三浦先生に駆け寄るいせ。「先生、こんなことで死んでどうするんですか? しっかりしてくださいよ。奥様にお会いしました。先生がどんなつらい思いしたかよく分かりました」

三浦「同情なんかやめてくれ!」

いせ「同情じゃありませんよ、先生。先生は私たち親子の支えだったじゃありませんか。こんな病気、早く治してください。新二が帰ってきたら、どんなに悲しむか…ねっ、先生。病気を治して元の元気な先生に返ってくださいよ。お願いします、先生」

 

白衣を着た男たちが入ってきて、三浦先生を連れ出す。

三浦「やだ! やだ! やだ! やだ…」

いせ「先生!」

三浦「やだ~!」

いせ「三浦先生!」

刑事A「端野さん」

いせ「三浦先生、大丈夫でしょうか?」

刑事A「警察病院に移して治療します」

いせ「私が引き取るわけにはいきませんか?」

 

刑事A「しばらくは無理ですね。病院のほうに任しといたほうがいいですよ。さあ、どうぞ」

いせ「どうぞよろしくお願いいたします。三浦先生は私たち親子の恩人なんですから。私たち親子が生きるか死ぬかっていう瀬戸際に一方ならぬお世話になりました。頼る人もない東京で私たち親子がこうやって生きてこられたのは三浦先生のおかげです」

刑事A「そういうあなたの気持ちにあの男がつけ込んで金をだまし取った。腹は立たないんですか?」

いせ「だまされたんじゃありません。さっきも言いましたように私がお願いして受け取っていただいたお金です。戦死の公報が来て、田舎にお墓まで出来ていたそうです」

刑事A「生きていた英霊ですか? ヤツは」

いせ「奥様は再婚されて、お子さんまで…命懸けで戦って、やっと帰ってきたら…おつらかったでしょう」

 

刑事A「あの男だけじゃないんです。近頃の犯罪には大なり小なり戦争とは無関係じゃないんです。世の中も人間の気持ちも変わりましたからね。息子さん、出征なされたっておっしゃってましたね」

いせ「はい。まだ消息がありません」

刑事A「そうですか。私の息子は沖縄で戦死しました。息子さん、早く帰ってくるといいですね。今日は結構です。どうもご苦労さんでした」

 

端野家

すっかり暗くなった家に帰ってきたいせは三浦先生のことを思い出す。

 

三浦<<死なせてくれ、もう!>>

刑事A<<バカ!>>

三浦<<うう...うう…>>

 

警察病院

格子につかまって叫ぶ三浦先生。「出してくれ。こ…こっから出してくれ。ハァハァハァ…出してくれ…出してくれ。出してくれ。ハァハァ…出してくれ、出してくれ!」

 

平然としている監視員。

 

看護師が看守に目で合図した。監視員が解錠し、看護師が風呂敷包みを持って入ってきた。「どう?」

監視員「ええ、少し落ち着いてます」

看護師「そう。三浦さん。端野さんがみえてね、これを」風呂敷包みを格子の間に挟む。三浦先生は手を組んだまま、じっとしている。「三浦さん、あんなに心配してくださる方がいるのにダメじゃないの」

 

女「ギャー! あ~! うあ…」

 

三浦先生の隣の部屋が女性。

 

女「ん~んあ~」看護師に唾を吐く。

看護師「んっ…」

女「てめえ、この野郎!」格子を登る。「ハァハァハァ…んっ! んっ!」格子の間から足を出して看護師を蹴ろうとする。

看護師「いいかげんにしなさい、あなた」

女「ん~ねえ~。ねえって…あ…」

 

三浦先生も熱演だけど、この女性もすごい。ただ、キャストクレジットに出てる女性の名前が1人だけで看護師か女性の名前か分からない。

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吉田照義さんは監視員だろうか? 30話にも出演していた。

 

端野家

帰ってきたいせが人の気配がして縁側を見ると、のぶ子がいた。

いせ「のぶ子さん。まあ、しばらくね。よく来てくれたわね」

のぶ子「おばさん」

いせ「奥様らしくなって。お上がんなさい。さあ、さあ。まあ、よく来てくれたわね。会いたかった。ハハハハッ。うれしいわ、ホントに。さあ、どうぞ」と縁側から家の中へ、座布団を出す。

 

落ち着いた和服の奥様スタイルののぶ子。「いいえ、おばさん。ホントにしばらくでした。ご無沙汰ばっかり」座布団に座らず、手をついて頭を下げる。

いせ「そんな固いこと…お互いさまじゃないの。さあさあ、敷いてちょうだい」

のぶ子「あっ、おばさん、これ。つまらない物なんですけれども」箱を差し出す。

いせ「ありがとう」

のぶ子「どうぞ」

いせ「それじゃ新ちゃんに」

 

のぶ子「新二さんは?」

いせ「ええ、生きてることだけは分かったんですけどね、それ以上のことはなんにも。東京に用事があったの?」

のぶ子「いいえ」

 

いせ「赤ちゃん、まだ?」←今、この質問アウト。

のぶ子「ええ。おばさん」

いせ「はい」

のぶ子「私、他に行くとこがないもんで、おばさんの所に来ちゃったんですけれども」

いせ「なんかあったの?」

のぶ子「主人は、とってもいい人なんです。それが…このごろ新二さんと私のことに妙に神経質になって」

 

いせ「だって、あんた、それは…」

のぶ子「あっ、はい。それは初めに話してあったんです」

いせ「うん」

のぶ子「でも、このごろ、何かにつけて、またそのことを言い始めるんです」

いせ「うん、うん」

のぶ子「とうとうゆうべ…」

いせ「ケンカしたの?」

うなずき、泣き出すのぶ子。

いせ「まあ…黙って出てきたの?」

 

のぶ子「おばさん…私、親戚も何もないし、おばさんが心配すること分かってたんですけど、もう帰らないつもりで出てきたんです」←千葉の叔父さん…

いせ「ダメダメ。とんでもない、何を言ってるの」

のぶ子「でも、もう帰れないんです」

いせ「ダメダメ。そんなことダメよ。今度、日を改めて2人で出てらっしゃい。よく話をしてあげるから」

のぶ子「話してもダメです」

いせ「何を言ってるの。そんなことで出てきて。問題にならないわよ。お帰んなさい」縁側に置いてあるのぶ子の草履を手にし、「お帰んなさい」とまた言う。

のぶ子「おばさん」

 

いせ「ダメダメ」玄関に草履を置く。「さあ、お帰んなさい。あんたは大田さんの奥さんでしょ? 気持ちは分かるけど、新二は死んだと思いなさい。さあ、お帰んなさい。帰るのよ、のぶ子さん、はい」のぶ子を立たせて玄関へ。

のぶ子「おばさん…」

いせ「お帰んなさいね。はい」

玄関を出て頭を下げて帰っていくのぶ子。強引だね~。

 

たんすの上の新二の写真立てを見るいせ。「新ちゃん」

 

夜、端野家の前の路地を男性が歩いてきて、勝子さんちの表札”島田”を確認し、向かいの”端野新二”の表札を見て、「ごめんください」と声をかけた。

いせ「はい、開いてますけど」

 

玄関に入ってきた男性。

いせ「あの…どちら様で?」

男性「あの…」

いせ「何か?」

男性「のぶ子は伺ってませんか?」

いせ「あら、のぶ子さんのご主人?」

男性「はい、大田と申します」

 

いせ「まあ、そうですか。どうぞ、お上がりください」

大田「あの…のぶ子は?」

いせ「帰りましたよ、さっき」

大田「そうですか。それじゃいいんです。どうも」

いせ「いや、どうぞ、お上がりください。お茶でもちょっと」

大田「はあ」

いせ「さあ、どうぞ」

 

新二の写真とせんべい?

 

茶の間に座る大田は新二の写真をチラ見。

いせ「息子です。どうぞ」お茶を出す。

大田「どうも」

 

いせ「お似合いね、のぶ子さんと。大田さん、もうお聞きでしょうけど、私とのぶ子さんはしばらく一緒に暮らしてたんです。正直言って、のぶ子さん手放したくなかったんだけど、いつ帰るか分からない新二のためにいつまでものぶ子さんを引き止めておくわけにはいかなくて…大田さん。のぶ子と新二は普通の仲じゃなかったと思ってるんじゃないの?」

うつむく大田。

いせ「そうよね。そう思われてもしかたないけど」

 

大田「僕はのぶ子とは見合いでしたから、初めはそんなに…でも、日がたつにつれて、だんだん…お恥ずかしいんですが、のぶ子が好きになって。だから、あいつが時々、わけもなく涙ぐんだりしてるのを見るとたまらなくなったんですよ。のぶ子さんの心には僕じゃない、端野さんがまだ…」

いせ「大田さんの気持ちは、よく分かるわ。さっき、のぶ子さんによく話しました。新二は死んだと思いなさいって。大田さん、ホントのこと言うと、のぶ子さんと新二のことで私、がっかりしたことがあるの。新二が出征する前にのぶ子さんと2人きりにしたの。私、気を利かせたつもりなのに2人ったらなんにもなかったのよ。がっかりするやらホッとするやら。人間ってね、誰でもいろいろあるものよ。でもね、一番大事なのは今。今よ。今を一番大切にしなくちゃ。あんた、新二より男前だし自信持ちなさいよ。あなた、のぶ子さんのことが好きならぐんぐん引っ張っていかなくちゃ。ねっ」

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そこまでぶっちゃけるか!

 

大田「ハッ…」笑みがこぼれる。

いせ「私からもお願いします。のぶ子さんはなんてったって独りぼっちだから幸せにしてあげてちょうだい。早く子供つくんなさいよ」←また言ってる。

 

玄関を出ていく大田。

いせ「今度は2人でいらっしゃいね。赤ちゃんと3人一緒なら大歓迎」

大田「はい。いろいろありがとうございました」

いせ「お気をつけて。のぶ子さんにどうぞよろしく」

大田「はい、伝えます。おばさん、新二さんが帰ってきたら知らしてください。僕、会いたくなりました」

いせ「どうもありがとう」

大田「じゃ、お邪魔しました」

いせ「ごめんください」

 

<32年。32年、待たされてます。長い長い毎日でしたが、どのこともみんな昨日のようにありありと覚えております>

 

玄関に座っているいせ。(つづく)

 

今日の話は最初の闇市のときに流れた曲からして前回の続きの昭和24年のまま? 

 

でも最終引き揚げ船は1958/昭和33年9月7日だから昭和33年?

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いせは還暦近くということになるし、のぶ子も30は過ぎてるってことかな。しかし、初回のころから考えられない三浦先生の変わりよう。悲しい。