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【ネタバレ】別れて生きる時も🈡第四十三章「永遠の愛」その五

TBS 1978年3月3日

 

あらすじ

最愛の夫を奪い戦争は終わった。美智(松原智恵子)はせっけんの行商で必死に麻子を育てたが、松本(織本順吉)の印刷工場が再開され、やっと生活が落ち着いた。井波と暮らした家に今は満州から帰った母が同居。留守を預かっている。ある日、美智を思い独身を守る石山(速水亮)が求婚した。が、美智の心には死にへだてられた今もなお、井波が生き続けていた。

愛の花

愛の花

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2024.10.16 BS松竹東急録画。

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原作:田宮虎彦(角川文庫)

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井波美智:松原智恵子…字幕黄色

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松本:織本順吉

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塩崎喜代枝:利根はる恵

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井波麻子:羽田直美

ナレーター:渡辺富美子

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石山順吉:速水亮

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音楽:土田啓四郎

主題歌:島倉千代子

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脚本:中井多津夫

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監督:八木美津雄

 

前回の振り返りから

松本「君が井波さんに惹かれて結婚したのは井波さんが初恋の石山さんと似ていたからじゃないのかな」

美智「いいえ」動揺したように首を横に振る。

振り返りここまで

 

大体同じセリフだけど、あんた→君になってるから新撮影なんだろうな。

 

松本「いや、急にこんなこと言うのは変かもしれないがね。私は前々から考えていたんだ。いつか君と石山さんを結び合わせるのは私の役目かもしれないって」

美智「社長。私はもう結婚はしません」

松本「いやね、君が私の話を素直に聞けない気持ちは、よく分かるよ。しかし、石山さんだったら君だけじゃなく麻子ちゃんだって幸せにできるしね」

美智「社長が私にそんなお話なさるなんて、あんまりです。社長がそんなことおっしゃるなんて、なんだかとても悔しくて…私の夫は、いつまでも井波一人です。麻子の父親は井波の他、誰もいないってことがどうして分かっていただけないんですか」

松本「美智さん、まあ、落ち着きなさい。そりゃね、夫に先立たれて残った女の人が一生を一人で生きるってことは、それはそれで立派なことなんだよ。しかしね、そりゃ大変なことなんだよ。よしんば、それができたにしたって、これから育っていく麻子ちゃんにどういう影響を与えるか」

 

美智「社長。帰らせていただきます」

松本「まあ、聞きたまえ」美智の腕をつかむ。

美智「いえ」

松本「美智さん。いや、これはね、前から一度、あんたに話そうと思っていたんだ。ちょうど出征する2~3日前に井波さんに会って頼まれたんだよ。あとに残った君と麻子ちゃんのことをくれぐれもよろしくって。もし、自分の身に万一のことがあったら君のことをよろしく頼むって。どういう意味か分かるかね? 井波さんははっきりこうおっしゃったんだよ。君のためにいい伴侶を見つけてやってほしいって」

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美智「そんな…井波がそんな…」

松本「本当なんだ。そのとき、私はこう思った。なんて心の広い方なんだろう。本当の愛情というのはこういうものかもしれない。自分のことより相手のことしか考えない」

社長に背を向け、泣き出す美智。

 

松本「しかしね、君はほんとに幸せな人だ。井波さんといい、石山さんといい、立派な人に愛されて。ねえ、美智さん。石山さんがなぜ独りでいるか分かるかい? みんな君のせいなんだよ。これだけは言っとくよ。君が石山さんと結婚したら、井波さん、あの世からきっと祝福してくれるよ」

 

石山が独身でいることを美智のせいにするなよ、社長~! 終盤にガッカリなキャラ付け。井波さんだってそんなに急いで伴侶を見つけてほしいなんて思ってないわ!

 

夜、家に帰った美智。「ただいま」

喜代枝「おかえり。ご苦労さん」

美智「堪忍。遅くなって。お食事、ごちそうになってたもんやから」

喜代枝「そうやろうな思うてたわ」

美智「麻子、寝たのね」

喜代枝「うん。あっ、お弁当」

美智「あっ、はい」空の弁当箱を渡す。

喜代枝「お茶入れような」

美智「うん」寝ている麻子の頭をなで、仏壇に手を合わせる。

 

喜代枝「ゆんべ、石山はん、遅うまで社長はんとお酒飲まはったんやてな」

美智「お母ちゃん、また石山さんとこ行ったの?」

喜代枝「あっ、お母ちゃん、なんや、あの石山はん、自分のほんまの息子のように思えてなあ。母親やったら息子が不自由な1人暮らししてんの黙って見てられへんやろ?」

 

そんなこと言うなら長年、1人暮らし(と思われる)松本社長はどうなのよ?

 

喜代枝「それよりな、社長はん、なんか言うてへんかった?」

美智「別になんにも」

喜代枝「ふ~ん」

美智「なあ、お母ちゃん」

喜代枝「なんえ?」

美智「お母ちゃん、いつか石山さんのことで…」

喜代枝「石山はんがどないしたん?」

美智「ううん。なんでもあらへんのやけど、いつやったか石山さんが結婚されんのは、うちのせいや言うたことがあったやろ?」

喜代枝「うん」

美智「誰から聞いたん?」

喜代枝「お母ちゃんがそう思うただけのことや」

 

美智「なんで?」

喜代枝「なんでて…吉岡の奥さんかて同じようなこと言うてはったえ。戦争中、石山はんが海軍の寮にいはったときな、なんとかいう偉いはんのお嬢はんと縁談が決まってたんやて。それをあんたと偶然に巡り合(お)うた途端、その縁談を断ってしもうたんやて」

美智「そんな…」

喜代枝「いや、ほんまにそない言うてはったえ」

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俊子が石山が美智と偶然に会ったことと結び付けて喜代枝に話した??

 

美智「お弁当箱、洗おう」

喜代枝「美智。石山はんがな、結婚しはらへんのが、あんたのせいやったら、あんた、一層、罪なことしてることになるえ」

美智「お母ちゃん…」

喜代枝「なあ、美智。社長はんも言うてはったけど、あんた、石山はんと…」

 

美智「ちょっと待って。お母ちゃんが何を言おうとしてるか、よう分かってる。そやけどな、お母ちゃん。うちのことほっといてほしいわ。そりゃ石山さんは、ええお方や。できることなら一生おつきあいしていきたいと思うてる。そやけどな…ううん、あかんわ。お母ちゃん、はっきり言うとくえ。もう、石山さんとこ行ってほしくないの」

喜代枝「なんでやの? あんたかて、石山はんを嫌いなはずないやろ。前に結婚の約束し合うた仲やないの」

美智「お母ちゃん、うちの夫は井波謙吾、たった一人や。これからもうちが死ぬまでずっと」

喜代枝「そやけどな、美智…」

美智「もう、なんにも言わんといて。あっ、お母ちゃん。ほんまに石山さんとこ行ったらあかんえ。ええな?」

溜息をつく喜代枝。

 

外で待ち合わせしていた松本社長と喜代枝。「すんまへん。電話でお呼び立てするなんて、ほんまに失礼なんどすけど、美智に聞かれとうなかったんどす」

松本「どんなお話ですか?」

喜代枝「石山はんのことどす。石山はんのことというと美智は意地になって、話を避けよう、避けようとしますのやわ。ほんまは石山はんが好きやさかい。逆なこと言うて心を抑えつけているに違いない。そない思いまして」←何言うてんの?

松本「そうですか」

喜代枝「長い間、母親らしいことは何一つしてやれまへんどした。そやさかい、好き合うてんのやったら、一日も早(はよ)う、石山はんと…そない思いまして」

松本「ええ、私もそう思ってはいるんですが…」

喜代枝「お願いどす。まともに言うたかて、美智は石山はんに会わしまへん。社長はんのお知恵でなんとか石山はんと美智を…」

松本「うん…」

 

夜、石山の部屋を訪ねた松本社長。

石山「あっ、いらっしゃい」

松本「またやろうと思いましてね。あっ、お勉強中ですか」

石山「あっ、いや、ちょっと一休みしていたとこなんですよ。それじゃ、遠慮なく頂きますか」

松本「今日はね、つまみも持ってきましたよ。南京豆」

石山「ああ。そりゃ何から何まですいません」

松本「石山さんがいける口なんで助かりましたよ。これからもちょいちょいお願いしますよ」

 

石山「いえ、こちらこそ。お仕事の具合はどうですか?」

松本「ええ、おかげさまで順調に。じゃ、早速いきますか。石山さんと美智さんの幸せをお祈りして」

石山「松本さん。もう、その話は…」

松本「いや、私は本気ですよ。石山さん、美智さんにとってはね、あんたが一日も早く必要なんですよ。あの人のおっ母(か)さんが言ってましたがね。美智さんは寝ながら、ちょっちゅううなされるんだそうですよ。寝汗をいっぱいかいて。口じゃ強がり言ってますがね。やっぱりそりゃあつらいんですよ。石山さんにそのところを察していただいて、私からもひとつお願いします。それじゃ、まあ、その日が一日も早く来ることを願って乾杯といきましょうか」

暗い表情でどぶろくを飲む石山。

 

いや~、しつこいって。嫌になる。美智がうなされていることが石山はんと結婚して治るのか? 石山はんとの思い出にはどうしたって小野木がついてくるのに。

 

井波家

美智「麻子、これ、おみかん?」

麻子「うん」絵を描いている。

美智「フフッ。おっきいおみかんね」

 

喜代枝「なあ、美智」

美智「うん?」

喜代枝「あんた、今度の日曜日、お休みなんやろ?」

美智「ええ、どうして?」

喜代枝「どこか行きたいわ。お弁当持って」

美智「闇市でも見に行こうか」

喜代枝「ん~、あないなゴチャゴチャしたとこ…もっと夢のあるとこ行きたいわ」

美智「焼け跡ばっかりやないの」

 

喜代枝「少し遠いけど海へ行こう」←行きたいところが決まってるなら最初から言え!

美智「海?」

喜代枝「うん、麻子が言うたんやわ。どこか行きたいとこないか言うたら、海へ行きたい言うて」

美智「麻子、海へ行きたいの?」

麻子「うん」

喜代枝「おばあちゃんも行きたいわ、ちっちゃいころから海見て育ったんやもん。なあ、ええやろう?」

美智「そやなあ」

喜代枝「ほな、そうしよう。なっ? フフフッ」

 

美智「麻子、ほら、おみかんのおへそ描かなくちゃ」

 

浜辺とオープニング曲が流れる。ここの海は、オープニングの灯台や井波を送り出した長崎の海(という設定)の静岡県沼津市の戸田灯台のある御浜海水浴場ではないかな? もしかしら海のシーン全部まとめ撮りだったりして。

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美智「麻子、海がきれいね。ねえ、麻子、お母ちゃんとかけっこしようか」

麻子「うん!」

美智「おばあちゃん、号令かけて」

喜代枝「うん。麻子ちゃん、頑張ってや」

麻子「うん!」

喜代枝「よ~い、ドン!」

 

走り出す美智と麻子。

 

喜代枝「これ! 麻子ちゃん!」

 

一生懸命走ってる麻子ちゃん、かわいい!

美智「麻子、速いのね。フフフッ」

 

笑顔で見守る喜代枝。

 

美智「フフッ。麻子、お母ちゃん負けたわ。早いのね、麻子は」麻子を抱き上げてグルグル回る。

 

岩場を歩く美智と麻子と喜代枝。

美智「気をつけてね」麻子を抱き上げる。

喜代枝「大丈夫か?」

美智「麻子、カニさん捕りましょうか」

麻子「うん」

 

美智「ちょっと待ってね」スカートとパンプスで岩場を移動するのは大変。

 

喜代枝は背後を気にして、石段を登り、辺りを見る。「美智! 美智! ちょっと…ちょっと来て」男性に駆け寄る。「石山はん、よう来てくれはりましたな」

石山「はあ。迷いましたが来てしまいました」

喜代枝「あっ…美智は今、意固地になってますさかい、よう話したっておくれやす」

石山「お役に立てるかどうか分かりませんが…」

喜代枝「ほな」

 

美智が麻子と石段を登ってきた。

喜代枝「美智」

美智「なあに?」石山に気付き、さっと表情が曇り、軽く頭を下げた。

喜代枝「お母ちゃんが松本社長はんにお願いしてたことや。どない叱られてもかまへん。そやけどな、あんたと麻子ちゃんの幸せのためにしたことやさかい。石山はんとよう話し合うてな。麻子ちゃん、おばあちゃんとカニさん捕りに行こう。なっ?」

 

美智に近づく石山。「ご迷惑だったようですね。やっぱり昔の僕の裏切りが許せないんですか?」

美智「いいえ」

石山「じゃ、どうして故意に僕を遠ざけようとするんですか? おばさんまで僕のアパートに来ることを禁じたりして」

美智「石山さん、昔の私とのことは、もう忘れてください。あのことが心の傷になって、それがもとで今でも独身でおられるとしたら、私、心苦しいんです。早くいい方見つけて結婚してください」

石山「あなた以外とは結婚しません。誤解しないでください。あなたと結婚したいというのは罪の償いをしたいからじゃないんだ。あなたが好きだから。今のあなたが。松本さんは美智さんには僕が必要だと言ったが、僕はそうは思わない。あなたの中には井波さんが生きている。そうでしょ?」

 

美智「ええ。麻子の中にも生きてるんです。麻子が海に行きたいと言いだしたのは、海には父親との思い出があるからなんです。あの子が物心ついて初めて父親に抱かれたのは長崎の海でした。海が父親との出会いで、そして、別れだったんです」

石山「そうでしたか。ですから、僕は松本さんに言ったんです。今の美智さんに僕は必要ない。ほんとは僕にこそ美智さんが必要なんだ」

美智「石山さん、どうか困らせないで。井波は生涯、心の中から消えないと思います」

石山「ええ。ですから僕も生涯あなたを待ちます」そのまま石段を下りて、喜代枝と麻子の所へ。

 

<美智の中には石山の言葉に揺れる自分とそれを許さない自分とがあった>

 

1人、崖に立つ美智。「あなた。もう二度とあなたに会えなくても、あなたの中に私がいる。私の中にあなたがいる。そうよね?」

 

回想

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海に浮かぶ小船。井波が美智を発見して目を見開かせる。

 

モンペ姿の美智<<あなた!>>大きく手を振る。<<あなた!>>

井波も手を振り返した。船着き場まで走る美智。メチャクチャ揺れてる小船と笑顔で手を振る井波。

回想ここまで

 

美智は涙を浮かべて海を見ている。ようやく回想に井波さんが出た。

 

麻子「お母ちゃん!」美智の元に駆け寄り、美智は涙を拭いて麻子を抱き上げた。

美智「麻子。海がね、とってもきれいよ。うん?」麻子を抱っこして海を見つめる。

 

喜代枝「美智は、ほんまに幸せになれますやろか」

石山「ええ、きっと」

 

海を見つめる美智と麻子のアップ。(終)

 

このドラマ、ホント、完とか終とか出ない。終わりの合図の歌もなくなって、あっけなく終わってしまった。中途半端な43回終了に変な勘ぐりをする人もいたけど、このドラマは年明け水曜日から始まってるから中途半端なだけで、オープニングの映像からいっても放送のころにはドラマを撮り終えてたんじゃないかと思う。

 

それにしても、やっぱり結婚結婚しつこいって! 喜代枝は美智の幸せというより、単純に石山はんを個人的に気に入ってるとしか思えないし、松本社長も”父親”の立場を貫いたのはよかったけど、美智が独身で同じ会社にいると、前みたいに変な噂を立てられるから、やたら結婚させたがるのかなあ。

 

ただ、美智には石山のことは終わったことで、ここから始まることってないんじゃないのかな。それなのに、喜代枝も松本社長も美智が素直になってないだけと思うだけで、全然寄り添おうとしない。

 

で、石山はん的には美智のことが分かってるから諦めてたのに、2人に押されて無理やり求婚させられてフラれて…さすがにちょっとかわいそう。もっと長いこと時間をかけていたら…でも、美智に喜代枝と会うように強要したのが印象悪すぎる。やっぱりただのお坊ちゃんとしか思えなくて。

 

あと、戦時中は美智となにかと支え合ってきたのに喜代枝出現により雑にフェードアウトさせられた俊子もかわいそう。

 

しかし、このドラマは何といっても小野木だった。

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伊藤孝雄さんは「署名のない風景画」での女将を支える寡黙な板前がかっこよく、印象に残っていたので、下衆な男を演じていて、その演技力に驚いた。あと昔っからこの手の人がいたんだな、と。

 

しかし、あまりに伊藤孝雄さんが熱演したせいなのか小野木が美智に許される場面があったけど、それは余計だったな~。下衆は下衆らしく散ってほしかった。

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映画版のほうは今のところ配信もDVD化もされてないそうですが、2019年3月に日本映画専門チャンネルで放送されてたということはフィルム自体は残ってる。

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このあらすじの感じだと映画版のほうが原作に近い感じ? 松原智恵子さんも当時33歳だったのだから、もう少し幅の広い年齢を演じるのかと思ったら、昭和15年21歳から最終回でも20代のままだった。映画では上京して5年で井波と出会って結婚だもん。短い映画のほうが長い期間を描いてたんだね。

 

最初は、美智が木下恵介アワーの「思い橋」の幸子に似てるなと思っていた。美人、父親と不仲、フラれて自殺未遂、別の男に言い寄られて結婚…だけど、美智は最後まで井波への思いを貫いたし、麻子と生きていくという強い意志が感じられたのはよかった。幸子は物語の主人公ではないから自分の思いを吐露する場面も少なかったし、最後までお人形みたいに周りの男の言うがままな感じだったのがどうもね…。

 

麻子役の羽田直美さんも上手だったね。

今日だけは

今日だけは

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石井ふく子プロデュース「今日だけは」が見たい。羽田直美さんと「ほんとうに」の明ちゃんこと羽田勉さんがきょうだい役らしい。松原智恵子さんも出てるし。

 

ああ~、これで来年までこの枠とはお別れです。悲しい。また昭和ドラマが戻ってきますように。どうせ録画で見るので、どんな時間帯でもいいから残りの木下恵介アワー&木下恵介劇場をやってくれますように。