TBS 1974年7月3日
あらすじ
どことなく元気のない紀子(音無美紀子)を気遣い、大吉(松山省二)はふたりで外食をしようと紀子を誘う。出かけようとすると雨が降ってきた。そんな雨の中、「遊びに来たの」と晃(吉田友紀)がやってくる。
2024.5.13 BS松竹東急録画。
福山大吉:松山省二…太陽カッター社長。字幕黄色。
福山紀子:音無美紀子…大吉の妻。字幕緑。
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和泉和子:林美智子…元の妻。
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滝沢春生(はるみ):高沢順子…和子の姪。
福山隆:喜久川清…大吉の弟。浪人生。
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田口:桐原新…隆の友人。
和泉晃:吉田友紀…元、和子の息子。小学1年生。
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原周造:森幹太…元の教え子・原京子の母の再婚相手。
原葉子:阿部百合子…元の教え子・原京子の母。
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川島:鶴ひろみ…元の教え子。
吉川:鈴木陽子…元の教え子。
ナレーター:矢島正明
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和泉元(げん):杉浦直樹…中学校教師。
取り違え事件が起こってから、もう3か月が過ぎていました。その間、紀子は何度か絶望を味わったのです。その思いから多少とも抜け出せたのは、親戚づきあいを始めたからではないでしょうか。たとえ、そこに不安があったとしても母親である紀子とすれば苦しみの末に産んだわが子に会えるのは、やはり言葉には言い尽くせない喜びであったのです。
太陽カッター事務所の掃除、洗濯物を取り込む紀子。大吉が仕事から帰ってきて、夕方になったら一雨くるかもしれないとラジオで聞き、出かけているゆきたちのことを心配している。紀子は一郎も一緒だからタクシーで帰ってくると返した。
大吉「うん、叔父さんの法事もいいけどさ、寺が遠いのは困っちゃうよな」
ゆきがちらっと大吉が荒れてる時代があったという話をしたときに出てきた”叔父さん”だろうか。後々出てくるのかなと思ったけど、もう故人だったの!?
紀子「でも、お義母(かあ)さん楽しそうだったわよ」
大吉「仏様よりおしゃべりが目的だからな、みんな。まあ、余計なことしゃべってこなきゃいいけどな」
まあ、ゆきさんは言わないでしょう。
大吉は物干し場から隆の部屋を覗く。「ちゃんと予備校に行ってんだろうな、隆は」
場面は変わり、車が走っている。田口が運転、隆が助手席、後部座席に春生。このドラマは、日産提供じゃないので両家ともマイカーがなく、車のシーンが出てこないんだろうと思っていたけど、普通にドライブシーンが出てきた。
ですが、旧ツイッターによるとマツダルーチェですって! 1973年発売の2代目ルーチェでしょうか。日産車じゃないんだ。
茶の間で洗濯物をたたむ紀子。扇風機にあたっていた大吉が「どっか出かけるか?」と提案。「久しぶりにさ、2人っきりだから」
紀子「でも、うちを空っぽにすることできないわ。仕事の電話だってかかってくるし」
大吉「あしたの現場は、もう打ち合わせ済みだよ。それに母さんだって夜まで帰ってきやしねえよ」
紀子「そうねえ」
大吉「外で晩飯でも食おうぜ、なっ? この2~3か月、俺たちの時間ってのは全然なかったからさ。しかし、まあ、よくここまで来たもんだよ」
紀子「まだまだこれからね」
大吉「だからさ、ここらでうまい物(もん)でも食ってだな。元気をつけんだ」
笑いだす紀子。「昔は食べる話なんかしなかったわね、あなた」
大吉「えっ?」
紀子「公園行って、夜の噴水を見ようとか映画に行こうなんて言ってたじゃない。晩ご飯なんか食べないことだってあったわ」
大吉「それじゃあ、そうしてもいいぞ」
紀子「いいのよ。私だっておいしい物(もん)食べたいもの」
大吉「何言ってんだ、お前」
紀子は飲んでいた麦茶などを片づけると席を立った。
大吉「俺が飯でも食おうっつったのはな、お前と2人で外へ出たいからなんだよ。食べ物のことばっかり考えてるわけじゃないぞ」
紀子「分かってるわよ」
大吉は立ち上がり、台所で洗い物をする紀子を見て、何か言おうとするが、なかなか言い出せないでいる。
紀子「あっ…でもさ、隆さんのご飯、どうしましょうか?」
大吉「隆のことなんか、もうどうでもいいよ」
字幕は♪(カーステレオ:フォークソング)
と書かれていましたが、女性声であることは分かったものの、また旧ツイッターのお世話になりました。
チェリッシュ「ふたりの急行列車」1974年4月25日発売
隆「どう? このフォーク」
春生「いいんじゃない?」
隆「そう。親戚づきあいも俺たちみたいにいけばいいのにね」
春生「そんなにうまくいってる? 私たち」
隆「そ…そういう意味じゃないけど」
春生「あんたにはまだ親の気持ちが分かってないのよね」
隆「でもさ、すぐ仲良くなれないっつうのは理性的じゃないよ」
春生「まあ、大人は古いからね」
隆「そうそう」
田口がくしゃみをする。
隆「どうしたんだよ? 寒いのか?」
田口「暑いんだよ」
隆「後ろ、座りづらい?」
春生「快適よ」
隆「そう。(田口に)快適だって。快適だってさ」
田口「運転中は話しかけるなよ」
隆「まっすぐな道じゃない。もったいぶるなよ。大体さ、俺に黙って免許は取るし、車は買うしさ、ずるいぞ、お前」
春生「仲がいいのね、2人とも」
隆「俺たち? 全然よくないよ。(田口に)なあ?」
田口「うん」
春生「のんきね、浪人だっていうのに」
隆「今日は特別だよ。(田口に)なっ?」
春生「うちの人はきっと驚いてるわよ」
隆「平気さ。こっちは子供じゃないんだからね」
春生「そういえば、叔父さんもあんたのこと高校生だと思ってたんだって」
隆「くさるな、あの先生」
くさってる場合じゃないでしょ! 田口は役者名が出てなきゃ、「太陽の涙」で「愛するって、どういうことですか?」と聞いてた清とは結び付かなかっただろうな~。薄い色のサングラスで顔もはっきり映らず、セリフも少ない。
中学校の渡り廊下
元「君たち、原君とは仲がいいほうだし本人から何か聞いてない?」
吉川「あの人、あんまりしゃべらないものね」
川島「うん、でも私、何度か聞いたことがあるわ」
元「ほう、どんなこと?」
川島「原さんはね、なんでもお母さんが嫌いらしいの。再婚したでしょ? それもあるしね。前からヤなことがあったらしいの」
元「うん、そうか」
川島「この前の前の日曜日ね、先生の家へ行こうかなって言ってたんです」
元「ほう、それは知らなかったな」
川島「あのとき会えればよかったんですね。私が一緒に行こうかって言ったら、1人で行くって言ったんですもの。何か相談したいことがあったんだと思います」
吉川「ホント言うと原さんは先生が好きなんです。そう言ってました」
元「いや、そんなことはないよ」
川島「ホントですよ、私も知ってるわ。だから、あの日曜日に会っていればよかったんですよ」
元「あの日はね、どうしても用事があって三浦半島へ行っていたんだよ。他に何か知らないかね?」
吉川「あのことは言っていい?」
川島「うん…分かんないわ、私」
元「どんなこと?」
吉川「よく分からないんですけど、原さん、つきあってる男の人もいるらしいんです」
元「どうして分かったの?」
吉川「一度、見たことがあるんです。ねっ?」
川島「うん」
元「どんな男の人?」
吉川「髪の長い子。高校生ぐらいかな?」
川島「もう卒業してる感じよ」
吉川「そう?」
川島「そうよ。私はね、絶対分かるんだから」
元「どこで見たの?」
吉川「横浜の元町で。ねっ?」
川島「うん」
元「で、そのことを原君に言わなかったの?」
川島「言いました」
元「そしたら?」
川島「黙ってました。でも、あの人、いつもあの辺にいるみたいね」
吉川「でもさ、結局はお父さんのせいだと思うわ。あの人のお父さん、義理のお父さんでしょ? だから」
ショックを受けてる元のアップ。鶴ひろみさんが再び登場。
私はツインテールで元の隣に立ってる川島さんが鶴ひろみさんだと思ったんだけど、違うかな? 吉川さんは一つにくくってて、川島さんはツインテールなんだけど、背格好も同じくらいで顔も声も似てる感じがして見分けがつかない! 原さん役の女の子はこの2人と顔立ちが全然違うので分かりやすいんだけどね。
それにしても、元は以前、伊勢佐木町で原さんを見てたよね? あのときも男の子と一緒だったよね? 元は原を見かけたから晃を見失ったんじゃないのかな。
車から降りた隆たちはヨットハーバーにいる? 缶ジュースを飲んでいる。
春生「もう夏ね」
隆「夏か…あと7か月」
春生「2人とも来年はどこの大学受けるつもり?」
隆「まあ、いろいろだよな?」
田口「うん」
文科系か理科系か聞かれて俺はどこでもいいと答える田口。
隆「俺は理科系に行きたいんだけど、数学系統が弱いから考えてるんだ」
春生「数学が弱けりゃ、理科系はダメね」
隆「ヘヘッ、そうだよね」
春生「まあ、頑張るのね。ドライブなんかしてないで。遊び半分じゃ入れないわよ」
隆「分かってるんだ」
春生「今、おうちだって大変なんだから。来年は合格して喜ばしてあげなさい」
隆「俺のこと、お説教しやすいのかな」
春生「そうね」
隆「兄貴だってうれしそうに文句言うからね。やんなっちゃうよ」
田口の全身ピンクコーデすごいな。
福山家
紀子は髪を巻いて出かける準備。
大吉「おい、早くしろよ」
紀子「せっかく出かけるんですもん。急がせないでよ」
大吉「もう2時間も待ってんだぞ」
紀子「大げさね」
大吉「待つ身にもなってみろよ」
紀子「だって突然言うんですもの。出かけようなんて」
大吉「いいじゃないか。お前、喜ばせようと思ったんだから」
紀子「はい、お待ちどおさま。全部戸締まりしてくれた?」
大吉「あっ、いけねえ。今、開けちゃったよ」
縁側の掃き出し窓を閉めようとした大吉は雨が降りだしたのに気付き、がっかり。紀子は出かける前に雨が降ったのだからツイてると言う。
しかし、大吉がふと玄関を見ると、ずぶ濡れの晃が立っていた。「晃ちゃん」
紀子「どうしたの?」
大吉は紀子にタオルを持ってくるように言う。大吉は目を丸くしながら自身のハンカチで晃の頭を拭く。「なんかあったの?」
晃「遊びに来たの」
大吉「そう、遊びに…へえ、ハハッ」
紀子「一体どうしたの? こんなにずぶ濡れで」タオルで晃の頭を拭く。
大吉「遊びに来たんだってよ」
紀子「よく分かったわね、うちが。とにかく上げたほうがいいわ」
大吉「そうだな」
晃を家に上げる。
大吉「しかし、まあ、こんなずぶ濡れで…どうする? おい」
紀子「決まってるじゃないの。全部脱がせなかったら風邪ひいちゃうわよ。今、着替え持ってくるから」
大吉「お母さんにちゃんと言ってきたか?」
首を横に振る晃。
大吉「じゃあ、怒られたのか?」
首を横に振る晃。
大吉「そうか、じゃ遊びに来たかっただけなんだね」
晃「うん」
大吉「そう。どうもありがとう、うん。ありがとう、ありがとう」
着替えを持って紀子が入ってきた。「さあ、早く脱がせて」
大吉「あっ、そうだな」
晃「いいよ、脱がなくても」
大吉「いや、どうして? 脱がないと風邪ひいちゃうだろ。困るだろ、それじゃ」
晃「やだよ~」
紀子「さあ、ダメです。さあ、全部脱ぎましょう、はい。さあ…」大吉に「早く電話してよ。奥さん心配してるわ」と指示。
大吉「あっ、そうだな」
紀子は慣れた手つきで上半身裸にする。まあ、親戚の人(と思っている)の前で裸になるのはイヤだよね。
大吉は喜びを隠せないニコニコ顔で電話。「あっ、もしもし福山ですけど、奥さんですか?」
和子「はい、私です。あっ、どうも。は? お宅に? ハァ…そうですか」ゆっくり座り込む。「いえ、雨が降ってきたのに帰ってこないもんで、どこへ行っちゃったかと思って…」
大吉「遊びに来たらしいんですね。いや、それが途中で雨に降られて。は? あっ、今、着替えてますからもう安心です。いや、しかし、一度来ただけでよく分かるもんですね。感心してたんですよ、女房と」
和子「そうですか。どうもご迷惑をおかけしました。はい、はい」
大吉「もしもし? もしもし? あっ、雨が小降りになりましたらね、こっちから送っていきますよ、ええ。いや、あっ、もう仕事はもう終わりましてね、ええ。大丈夫ですよ、ご安心ください。こっちからちゃんと送り届けます。ええ。はいはい、はい。では後ほど」
受話器を置くと、晃は着替えを終えていた。
大吉「おお? 着替えたな。ハハハッ、少しダブダブだね」
紀子「一郎のほうが大きいのよ」
大吉「でも、いいやな。乾いてるから」
晃「うん」
大吉「今ね、お母さんに電話しといたからね、もう安心だよ。ゆっくりしていきなさいね」
晃「うん、一郎ちゃんは?」
大吉「あっ、そうか、一郎か。いや、一郎はね、今、おばあちゃんとちょっと出かけてるんだ」
晃「ふ~ん」
大吉「でもいいじゃないか。おじさんとおばさんがいるから」
晃「うん」
大吉「今日はね、思いっ切り遊ぼうね」
晃「うん」
紀子「はい、もういいわよ。ねえ、あなた、今日はもう出かけないわね?」
大吉「当たり前だよ」
紀子「ゲンキンね、フフッ」
大吉「お前出かけたいのか?」
紀子「いいえ」
大吉「今度、ちゃんと連れてくから。いいだろ?」
紀子「出かけたいって言ったのは、あなたのほうじゃない。フフフフッ」
大吉「だって、お前がさ、そんなような顔してるからさ」
紀子「変な話」
大吉「それじゃ、この子連れて今から出かけてもいいんだぞ。行きたいなら」
紀子「もういいのよ。(晃に)ねえ、おなかすいてる?」
晃「うん」
紀子「じゃ、なんか作ってあげるわね」
大吉「あっ、お前、着替えたほうがいいんじゃないか、料理作るんだったら」
紀子「いやに気がつくわね」
大吉「冴えてんだよ、この子が来たから」
しかし、紀子は緑のワンピースにそのままエプロンをあてて台所に立った。
大吉「よし、それじゃ、何から始めようか」
晃「汽車を走らせようよ」
大吉「OK! さあ、おいで」
すっかり雨も上がり、ちゃぶ台で何か食べながら汽車が走っているのを見ている大吉たち。平たい皿にスプーンだからチャーハンかな?
紀子「おいしい?」
晃「うん、おいしい」
大吉「またね、時々遊びに来なさいね」
晃「うん」
紀子「でも踏切越えてくるから1人じゃ危ないわよ」
大吉「そうだな。それじゃね、今度遊びに来るときは電話しなさい。すぐ迎えに行ってあげるからね」
晃「うん」
食事を終えた晃はプラレールのそばへ行き、汽車を見ている。
大吉「やっぱり分かるのかな? 本能的に」
紀子「何が?」
大吉「血のつながりっていうのかな、まあ、そういうことがさ」
紀子「そういうことはあるかもしれないわね」
大吉「なんだか全てうまくいきそうな気がしてきたよ」
紀子「ええ」
首を傾げ目をこすっている晃。
大吉「どうした? 目にゴミ入ったか?」
晃「うん」
大吉は晃を呼んで近くに来させて目のゴミを取ろうとしている。
ちょうど太陽カッターの扉を開けた和子は、その姿を目撃。
大吉「よいしょ、ほら取れた」
紀子「ああ、取れた。よかったわね」晃の頭をなでなで。
晃「うん」
和子「ごめんください」
ハッとする大吉と紀子。「あら、奥さん」
和子「すいません、ホントにもう」
紀子「いいんですよ。さあどうぞ、お上がりになって」
和子「いえ、すぐ失礼しますから」
大吉「いやまあ、そうおっしゃらずにさあどうぞ」
紀子「どうぞ」
大吉「いや、もう少ししたらお送りしようと思ってたとこなんですよ」
紀子「ええ」
和子「どうもご迷惑をおかけしました」
大吉「いやいや、奥さん。もうお互いに親戚みたいなもんですから遠慮はよしにしましょうよ」
和子「ええ。でも、初めてなんですよ。この子が踏切を1人で越えたのは」
大吉「えっ…」
和子「ダメじゃないの。お母さんに黙ってこんな遠くまで来ちゃ。車にでもひかれたらどうするの?」
大吉も紀子も上がるように勧める。ちょっとだけ失礼してと上がる和子。
大吉たちはそのとき、和子の真剣さに圧倒されているのを感じました。6年間育ててきた和子のそれは美しさでもあったのです。
ちゃぶ台の食器を片づける紀子と大吉。
まだプラレールに夢中の晃。
大吉「晃ちゃんもこれだけ遊びたがってるんですから、日曜ごとなんて言わないで、まあ、週に2回ぐらい子供が一緒に遊べる日を作ったらどうでしょうか? まあ、例えば火曜日がお宅で木曜あたりがうちだとか」
和子「そうですね」
大吉「あの…子供の送り迎えはうちがしてもいいですよ。人手がありますから」
和子「はあ。一応、主人とも相談しまして」
大吉「せっかく親戚づきあい始めたんですから、できるとこまでやってみましょうよ」
和子「ええ」
大吉「今までは、ちょっと深刻に考えすぎていたのかもしれませんね。いや…もっとこうなんていうのかな、え~、冷静にとでもいうんですか。もっと素直な気持ちでつきあえば、かなりうまくいくんじゃないですか。いや、私なんか単純なほうだから、ついカッとなってしまいますけどね。ホントはそんなもんじゃないんですね。まあ、お互い苦しい立場なんですから協力し合うより、ほかありませんよ」
和子「ええ」
大吉は調子がいいと饒舌になるタイプだね。
原家…急に思ったけど、原さんは親が再婚して苗字が変わったのかな。
元「どうして義理とか血のつながりがそんな問題なんですか? お宅のお子さんじゃありませんか」
周造「もちろん京子はうちの子ですよ。だから私も京子にはできるだけのことをしているつもりです。ところがね、やっぱり誠意なんてものは双方の気持ちがあって、初めて成立するものでしょ? 難しいんですよ、随分努力しましたけど」
葉子「主人の言うことはウソじゃありません。どちらかといえば、あの子が勝ち気なんです。初めっから親の気持ちなんか理解しようとしないんです」
元「でもね、お母さん。お嬢さんは14歳ですよ。まだ義務教育を受けてるんですよ。親の気持ちよりも、まず子供の気持ちを考えてやらなくちゃ問題は解決しませんよ」
葉子「はい」
元「もし、お嬢さんに万一のことがあったらどうしますか? それこそ親の責任ですよ」
周造「それは先生の立場なら、当然そうおっしゃるでしょうけど、現実にね、義理の父親になれば人には言えない苦労があるもんですよ。ホントの父親なら手を上げるところでも、つい鈍るんですよ」
元「そういうことが逆にお嬢さんを苦しめていたんじゃないでしょうかね」
周造「じゃあ、私に手を上げろというんですか? そんなことをしていたら、もっと大変なことになっていましたよ」
元「そうでしょうか」
周造「あの子のことは私が一番よく知ってます」←なんでそう言える!?
元「でも子供だって時には親に怒られたいと思うことだってあるんですよ。怒る親を真剣だなと思うことだってあるでしょう」
周造「それができるのは、血のつながった本当の父親だけですよ。それは学校では理想を教えられるでしょうけど現実は理想通りにはいきませんからね。先生には義理の父親の立場なんか理解してもらえませんな」
元「どうやら、ご両親のほうが義理とか血のつながりを気にしてらっしゃるようですね。苦しみはご両親ばかりじゃありません。お嬢さんにだってありましたよ。私は直接聞いてますからね」
周造「じゃあ、先生は私たちにどうしろというんです? いいですか? この問題で一番悩んでるのは私たちですよ。その私たちが必死に努力してもこんな結果になったんです。あなたは京子に何を聞いたか知らないけど無責任な憶測はやめてくださいよ。大体、先生にはご理解できないことなんですから。先生のような幸せなご家庭を持ってる人には、とても分かりゃしませんよ」
元「私だって義理の父親です。うちの子は…病院で取り違えられたんです。そのことに6年間も気がつかずに育ててきました。今年の春、それが分かったんです。うちの子は私とは血がつながってません。しかし、急にそんなことを言われて、その日からわが子は他人だと思えますか? あれは私の子です。どうして血のつながりだけがホントの親子なんですか? なぜ義理だと世間が騒ぐというんですか? それは世間が騒いでるんじゃないんだ。私たち自身が騒いでるんですよ。私はね、そんな自分を情けないと思ってますよ。他人(ひと)の子だの自分の子だの、そんなことばかり考えてるなんて卑しいと思いませんか? 赤ん坊はね、生まれたときは自分の親は分からないんですよ。誰が抱いてやったっていいじゃありませんか。一日も早く捜すべきです」
深くうなずく周造。
再婚家庭と取り違えは全然違うケースだと思っていたけど、今まで元もまた血のつながりについてこだわっていて、周造たちの話をするうち、血のつながりなんて関係ないと思えたのかな。
夕方、和子と晃、大吉と紀子が歩いている。
和子「暑くなってきましたね」
紀子「ええ」
和子「一郎ちゃんに会えなくて残念でしたわ」
紀子「今度来るときにはちゃんといるようにしとくわね」
晃「うん」
和子「うちのほうへも遊びに来てくださいね」
紀子「ええ。じゃ、この辺で。これから晩ご飯の買い物に行くんです」
和子「いいですわね、ご主人と一緒で」
紀子「フフフッ」
大吉「は? なんですか?」晃のほうを向いていて聞いてなかった。
和子「いえ、別に」
晃もさよならを言い、別れた。
大吉「このままうまく進めばいいけどな」
紀子「これから先どうなるのかしら」
橋の上を歩く大吉たちに晃が「おじさん!」と声をかけ手を振る。和子は頭を下げ、帰って行った。見送る大吉と紀子。(つづく)
原さんの両親は中学生の親とは思えない落ち着き。母役の阿部百合子さんはwikiに「わが子は他人」のことは書いてなかったけど、金八先生の第2シリーズでは小川正の母とあった。小川正って父が高校の先生の人だね。1話で一郎にケガさせられた子の母が高橋健の母。今、再放送を見ている「赤い疑惑」の原知佐子さんは石川祐子の母。
ああ…先日は小山内美江子さんの訃報があったばかり。ご冥福をお祈りいたします。
義理の父の森幹太さんは木下恵介アワーでは「3人家族」では敬子と明子の父。このドラマより前なのに社会人と大学生の娘の父だもんね。
2021年は森幹太さん出演作品を続けざまに見た。「日本沈没」では防衛庁長官役。
この映画では森幹太さんと松山省二さんが同僚役で共演。
今回、初めて一郎が出てなかったけど、「砂の器」撮影中だったのだろうか。「砂の器」はこのドラマが終わって、10月に公開されたんだってね。
「おやじ太鼓」31話。木下恵介アワーを何本か見てきて、やっぱりお金持ちは出かける回が多くて、当時の観光地が見られたりするのが楽しい。手洗い励行。
何回も読み返して投稿してるのに意味の分からない言葉があったので確かめてみよう。
週末は「兄弟」9、10話。ノーヘル、飲酒運転回。そりゃ、交通戦争とかいって交通事故が多かったのも納得。この時代を経た人が飲酒運転に寛大なのも納得。
今回の隆たちももちろんシートベルトしてなかった。