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【ネタバレ】別れて生きる時も 第七章「初恋の詩」その四

TBS 1978年1月12日

 

あらすじ

美智(松原智恵子)の旅行中、父と母は満州に渡っていた。美智は置き去りにされたのだ。同じ家に下宿する帝大生・石山(速水亮)は父が前科七犯と知りながら、一人で生きる美智を愛し結婚を約束。が、市役所の福祉係・小野木(伊藤孝雄)は二人の間を裂くため石山の父親に美智の秘密を教えた。小野木は美しい美智が目的で塩崎母子の世話をしてきたのだ。

愛の花

愛の花

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2024.8.28 BS松竹東急録画。

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原作:田宮虎彦(角川文庫)

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塩崎美智:松原智恵子…字幕黄色

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石山順吉:速水亮

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井村さき:津島道子

石山の父:増田順司

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小川課長:阿木五郎

陽子:種谷アツ子

ナレーター:渡辺富美子

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小野木:伊藤孝雄

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音楽:土田啓四郎

主題歌:島倉千代子

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脚本:中井多津夫

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監督:八木美津雄

 

<家主の井村さきは、この日、泊まりがけの寺参りに出かけて留守であった>

 

美智が出かけようとすると、石山が階段を降りてきた。「あっ、おはよう」

美智「おはようさん。石山はん、今日、帰り遅うなりますか?」

石山「ええ、京極ホールで主任教授の講演会がありますので、9時ごろになるかな」

美智「残念やわ。今日、おばちゃん留守やさかい、なんぞごちそうこさえて、石山はんに食べてもらおう思うてたのに」

石山「ああ…あっ、出なくてもいいことはいいんだけど」

美智「ほな、早(はよ)う帰ってきてほしいわ。うち、おばちゃん留守やさかい、夜、1人でいるの怖いもん」

石山「ああ、なんだ。1人でいるのが怖いから晩飯で僕を引きつけようってわけか」

美智「ご名答やわ」

2人は笑う。

 

石山が玄関の戸を開け、美智を先に通した。

 

玄関を出たところに貼ってある”出せ! 一億の底力!”

 

美智が鍵をかけ、表札の上?に鍵を置いた。「これ、ここに置いときますさかい」

 

電車に乗ってる美智と石山。美智がドアにもたれかかって立っていて、石山が向き合うように立っている。「美智さん」

美智「何?」

石山「美智さんって、とてもきれいな人なんだね」

美智「イヤやわ、石山はんいうたら急に変なこと言いだして、うち知らんわ」

石山「あっ…」

 

京都理化工業

小川「会社にな、投書があったんや。これ」美智に手紙を渡す。「ちょっとこっちおいで。この前の日曜日、大学生と手ぇつないで歩いてたて、これほんまか? まさか、この大学生が君の許婚やないやろう。とすると、許婚があるにもかかわらず、君は他の男と逢びきしてたっちゅうことになるで。もし、そうやとしたら君も相当のしたたか者(もん)やな。なんで黙ってんねん?」

美智「うち、確かに散歩しました。けど、一緒にいた学生はんは近所の方です」

小川「ほんなら、なんで手ぇつないで歩かんならんのや?」

美智「手ぇつないで歩いてたんやありまへん」

小川「ええか? 君らが変な噂を立てられたら会社の信用に関わるこっちゃ。男と一緒に町を歩いたらいかんって、しょっちゅう言い聞かしとるやないか。二度とこういうことのないように厳重に注意しとくで」

 

何だよ、アイドルじゃあるまいし。

 

昼休み

陽子「誰やろな、そんな投書する人」

首を横に振る美智。

陽子「みっちゃんは美人やさかい、ちょっとのことでも妬まれるんやな」

美智「なんや、うち、会社辞めとうなったわ。陽子ちゃんもおらんようになるし」

陽子「辞めてどないすんの? そうか、結婚やね。2人で一緒に結婚式、挙げよか?」

うつむいたままの美智。

 

陽子「みっちゃん。うちら、すぐ離れ離れになってしまうんやさかい、ほんまのこと言うてくれたかてええやないの。一緒に歩いてた大学生いうのが、みっちゃんの許婚なんやろ?」

美智「ほんま言うたら、うちには許婚なんかいいひんの。あれはただ体裁繕うために課長はんにウソついただけやわ」

陽子「ウソ? なんでウソつかなあかんの」

美智「言うてみたら、うちの家庭の事情かもしれへん」

 

陽子「なんえ? 教えて」

美智「そのうちにな」

陽子「今、言うてえな」

美智「一口には言えへんさかい、いつかゆっくり」

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純ちゃんの応援歌」でも時々出てきた「一口では言われへん」。

 

陽子は物足りなく感じるかもしれないけど、美智は陽子を一番仲良しの同僚だと思ってるんだから、そのくらいの距離間で許してやって。

 

家の前の路地を歩いてきた美智は、表札の上の鍵がないので、パッと表情が明るくなり、玄関へ入って、石山を呼ぶ。「もう帰ってきてはったん?」

石山「ええ。ごちそうしてくれるって約束だったですからね。おなかすかせて急いで帰ってきました」

美智「うち、すぐ支度しますさかい、それまで勉強しててください」

石山「あっ、じゃ、ご飯、僕が炊きましょう」

美智「あっ、イヤやわ。石山はんは勉強しててくれはったらええのやさかい。さあ」

石山「じゃあ、おとなしく勉強してます」

 

せっかくご飯炊いてくれるっていうんだから、やる気の芽を摘まなくていいのに。

 

石山は自室に戻ってノートを広げるが、ノートに書いたのは”美智”

 

塩崎家でご飯を食べる石山。美智がお茶を運んできた。

石山「ごちそうさまでした」

美智「ほんまにもうよろしいんどすか?」

石山「ええ、たくさんいただきました。我ながらびっくりするぐらい。この煮物、とてもおいしかったです。うちから離れて暮らしてるせいか、家庭料理ごちそうになると、すぐ感激しちゃって」

美智「そんな喜んでくれはるんやったら、うち、いつでもごちそうします」

石山「あっ…毎日でもごちそうになりたいけど甘えすぎてはいけないから、年に一度くらいは、こうしてごちそうしてほしいな」

美智「年に一度やなんて、そんな…」

 

石山「ああ…こんなに親切にしていただくと、かえって張り詰めていた気持ちがだらけてしまうような気がして」

美智「石山はんは勉強ばっかりしてはるさかい。石山はんのこと、母がいつも言うてました。偉(えろ)うなるお人は、どっか違うって」

石山「ハハッ、さあ、偉くなるかどうかは分かりませんけど。美智さん、あの、食い逃げみたいで申し訳ないんですけど、あの…予定の調べ物がありますので、これで…」

 

さびしそうにうなずく美智。

石山「ごちそうさまでした」立ち上がって出ていこうとする。

 

美智「石山はん」

石山「は?」

美智「シュークリーム買(こ)うてきたさかい、あとでお持ちしてもよろしおすか?」

石山「はあ」

 

お盆にお茶セットとシュークリームを乗せた美智が1階から石山に呼びかけ、「お茶入りました」と階段を上る。

 

石山の部屋

石山「あっ、どうぞ。ああ、おいしそうですね」

美智「うち、張り込んで京極行って買うてきましたんえ」

石山「はあ。さあ、どうぞ」

 

テーブルを探す美智。

石山「あっ…じゃあ、ここへ」勉強机を片づける。

 

美智がお茶を入れ、石山は座布団を美智に勧める。遠慮して座布団を押し付け合う2人。

 

石山「じゃあ、いただきます。あっ、美智さんは?」

美智「勉強の邪魔になるさかい、長居したら悪い思うて」

石山「あっ…そんなに気を遣うことないですよ」シュークリームを食べる。

 

美智「ぎょうさんの本やわ。これ、みんな法律のご本どすか?」

石山「ええ、大体」

 

美智はふと、近くにあったノートを開く。ノートには”美智”と6回ほど書いてあった。

石山「あっ、それは…」

サッとノートを取り上げる美智。

石山「ダメだよ、それは。見ちゃダメだよ。美智さん」後ろ手にノートを隠した美智を抱きしめる形になって、体を離した。

 

美智はノートを返し、帰ろうとしたが、石山が呼び止めた。「美智さん、好きだった。ずっと前から。僕が大学を卒業したら結婚してほしい」

驚いて振り向く美智。

石山「それまで待っててほしい」美智を抱きしめキス! おお!

 

ずっと前から、っていつだよ!? 石山は今まで、美智には全く興味なさそうに挨拶する間柄と思ってたのにな。それと、チョコレートにシュークリームと連日、戦前とは思えないラインナップ。今川焼の店がすぐそばにあるっちゅうのに。

 

玄関が開いてるのをいいことに玄関に入ってきた小野木。下駄が並んでいることから美智が2階にいることを察した。不思議な構造だな~。まだ間取りを把握しきれてない。

 

さきが店を開けた。「アハハッ、おはようさんどす」

小野木「ああ、おはよう。2日ほど店が閉まっとったけど、どこぞ行ってたんか?」

さき「へえ、あの…お講があって、信貴山(しぎさん)行ってましたん」

www.sigisan.or.jp

ここかな?

 

小野木「泊まりがけでか?」

さき「そうどす。なんぞ…」

小野木「おばちゃん、しっかりせんかい。俺は塩崎さんの保証人になっとるんやで。若い男女をほったらかしにして、うちを空けるアホがおるかい。塩崎さん、いてはるか?」

さき「へえ」

 

出勤しようとしていた美智に庭から「おはよう」と声をかける小野木。「お邪魔しますよって」

美智「あっ、あの…うち、これから出勤せんならんのどすけど」

小野木「上がらしてもらいます」

 

美智「あの…何か?」

小野木「ゆうべ、おたくの課長さんから電話がありました。なんや、投書があって、美智さん、どこぞの大学生と手ぇつないでぶらついてたんやて、ほんまですか?」

美智「ほんまどす」

小野木「その学生というのは、この2階の?」

美智「ええ」

 

小野木「美智さん、この前も言ったとおり、早う、ここから出たほうがええ思うんです。そやないと保証人としての私の務めは果たせませんよってな」

美智「うち、ここから出る気ありまへん」

小野木「美智さん、今度ばかりは私の言うとおりにしてもらわんと困ります。あんな学生がなんで真面目な学生や言えるんです? 気ぃつけなあかん。結局、おもちゃにされて逃げていかれるに決まってるんやから」

美智「そんな人やありまへん。あの人は大学出たら、うちと結婚したい。そない言うてくれてます」

 

小野木「結婚? 美智さん、そんなうまい口車に乗ったらいかん。いかん。第一…今は、そんなこと言うたかて、あんたのお父さんのことを知ったらびっくりして…」

美智「父のことは、ちゃんと知ってはります。うちもありのまま、お話ししました。ほな、うち遅れますさかい」

 

小野木「あっ、美智さん、あの…」庭側の掃き出し窓から外に出る。「美智さん、私は心からあなたの幸せを思って…」←窓の鍵ぃー!

 

美智「石山はん、おはようさん」

石山「ああ、おはよう」

美智「一緒に行ってもよろしい?」

石山「ああ」

美智「ほな、小野木はん、失礼します」

 

玄関を出た2人。

石山「今の人、時々見かけるね」

美智「父のことでお世話になってる区役所の人。おばちゃん、いってきます」

さき「ああ、いっといやす」

石山「いってきます」

 

玄関から顔をのぞかせる小野木。

 

<それから半月ほどたったある日、石山の父が長野から来て、小野木を訪ねていた>

 

京都市

上京區役所

 

小野木「人の許婚に横恋慕するっちゅうのは、人妻に手ぇ出すのも同じや思いますな。姦通罪っちゅうのがおますやろ。そんな息子さんをほっぽっといて、よう小学校の校長はんが務まりますな。このままやったら私は引き下がりませんよってな。息子さんだけやない、あんたかって校長の座から引きずり下ろすくらいのことはやってみせますよってな」

石山の父「せがれにはきっと改悛せしまするように相努めまするので、どうかご寛大に」

dictionary.goo.ne.jp

小野木「それだけやおへん。息子さんは、なんや裁判官を目指しとるちゅうことやが、この子の父親は前科がいくつもありますよってな、裁判官との結婚が認められるわけがおへん。それなのに息子さんは『結婚してくれ』、そない言うとるらしい。人をからかうのもええかげんにせえ言いたいとこや」

 

小野木って区役所職員なのに、何なんだよ!?

 

石山の父は「謝ります」で有名な荒谷二中の校長先生。

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「本日も晴天なり」にも出てた。近所の人なのに途中でフェードアウトしたけど。

 

さきの店

さき「これどすけど」封筒を渡す

石山「この手紙、誰が持ってきたんですか?」

さき「なんや知らんお人どしたけど、石山はんに渡してほしいって」

 

手紙を読んだ石山。「親父が急用で京都に出てきてるらしいんです。あっ、僕、これから会いに行ってきます。しかし、なんの用で…」

さき「あっ、預かっておきまひょ」石山が持っていたカバンを持つ。

石山「ああ、どうもすいません」

さき「いっといやす」

 

吉乃という料理屋。いつもの店かな。今回初めて電線いっぱいの外観が映る。

石山の父「バカ者!」石山をビンタ。「小野木さんに謝れ」

石山「しかし、小野木さんと美智さんが許婚の間柄だったなんて、僕は一度も…」

石山の父「まだそんなことを言っとるのか。学生の分際で色恋沙汰にうつつを抜かしおって、謝れ! (小野木に)本当に申し訳ございません」

小野木「石山はん、あんたに言う必要もないことやけどな、念のため言うてあげまひょう。美智の母親、知ってますやろ? あの母親がなんでかわいい娘を捨てて満州に行ける思います? 私と美智が一緒になる、そういう約束が出来てたからこそ、美智を1人残していかはっただけのことや。まだ女学校のことやったかいな。母親が私ん所に来て、犯罪者の娘やよって、嫁のもらい手もないさかい、私にもろうてくれ、そない頼まれましてな」

 

石山「いえ、美智さん、一度だって、そんなこと…」

石山の父「順吉」

小野木「第一、あんた、将来裁判官にならはるそうやな。どうどす? お父さん」

石山の父「そのとおりでございます」

小野木「裁判官にならはるくらいのお人やったら、よう知ってはるな? 犯罪者の娘とは結婚できんちゅうしきたりがあるっちゅうことを、あんた、それ知ってて美智に結婚する言わはったんか? それやったら結婚詐欺ちゅうやつやな」

 

石山「いや、僕は決して、そんな…」

小野木「私が言いたいのは、それだけやない。あんた、もっとひどいことしてはる。あんた、美智に何をしてくれた? よう傷物にしてくれはったな。そんな澄ましたツラしよって、ただで済むと思うたら大間違いやで。人の許婚に手ぇつけたっちゅうことは人妻に手ぇ出したことより、もっとひどい罪になるんやで。ええか? 裁判所に訴えて、ちゃんと決着つけたるわ。裁判官になる? アホぬかせ。俺のほうがお前を裁判にかけたるわ」

 

石山の父「小野木さん、お腹立ちでしょうが、何分せがれは先のある身ですから、ここはひとつ…」

小野木「あんたかて同罪や。こんな息子さんを持って、よう校長先生が務まりますな」

 

<石山を待ちながら、美智は不吉な予感におびえずにはいられなかった。石山は父親にきっと自分のことを話したに違いない。自分の身の上が身の上であっただけに美智は不安だったのである>

 

暗くなった土間をウロウロする美智。

さき「みっちゃん。今日は、お父さんとご一緒やさかいに帰ってきはれへんかもしれへんえ」

美智「ちょっと見てきます」玄関を出て路地を歩く。

 

<しかし、その晩、石山はついに戻ってはこなかった>(つづく)

 

あんな気持ち悪い演技なのに、小野木はんの顔、割と好きなんだよな。端正な顔立ちだな~と見ちゃう。

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小野木が反対しなくても、美智と石山はんの結婚は、うまくいってたかな?

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この映画はハッピーエンドになったけど、まあ、難しいだろう。