TBS 1978年1月19日
あらすじ
前科者の娘と知って愛してくれた石山(速水亮)が理由も告げずに去った。絶望した美智(松原智恵子)は小野木(伊藤孝雄)の求婚を受け入れた。が、小野木の性格は異常だった。美智を家にとじ込めて友人とのつき合いも禁じた。夫を愛そうとした美智だったが、彼が卑劣な手段で石山との間を裂き、その上、母をだまして満州に行かせたことを知って、美智は家を出た。
2024.9.3 BS松竹東急録画。
原作:田宮虎彦(角川文庫)
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小野木美智:松原智恵子…字幕黄色
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石山順吉:速水亮
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井村さき:津島道子
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森川房枝:関悦子
ナレーター:渡辺富美子
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小野木宗一:伊藤孝雄
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音楽:土田啓四郎
主題歌:島倉千代子
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脚本:中井多津夫
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監督:八木美津雄
前回の振り返り
美智「石山はん、ほんまに小野木から?」
さき「うん。みっちゃんと小野木はんが許婚の仲やったら、どうにもならんさかいに、そやさかいに石山はんのお父さんが来はって、2人を別れさせたんやろう? そやろ? みっちゃん」
美智「そんな…許婚やなんてウソや。ウソ、ウソ」
さき「みっちゃん、みっちゃん」
美智「ウソ…ウソや…」泣き崩れる。
小野木家 ビールを一気飲みしている小野木。「フゥー、そや、俺が石山に言うたんや。俺とお前は親が許した許婚やさかい、手ぇ出したら、ただじゃ済まないぞって。そしたら、石山のヤツは、びっくらこいて…」
美智「恐ろしいことする人や。あんたっていう人は」
小野木「恐ろしいこと? 惚れたおなごに言い寄るヤツを追い散らすのが、なんで恐ろしいことや?」
ここまで前回ラストをそのまま流してるように見えて、細かいセリフやカメラアングルが違うので、同じシーンをもう一度やったんだと思います。昔のドラマのあるある。
小野木「ハハッ。親たちが満州へ逃げていって、お前は独りぼっちになった。これで俺の思うようになる。お前が1人で生きていけるわけもなし、いくら意地を張ったって、必ず俺ん所に泣きついてくる。俺はそれを待ってたんや。ああ…んっ」空のコップを美智の前に差し出す。
片手でビールを注ぐ美智。
小野木「フフッ、ところがとんだ邪魔が入った。あの貧乏学生や。ここでトンビに油揚げさらわれてたまるか。俺は死に物狂いになって、お前らの仲を裂いたろう、そう思ったんや。そやけどな、これもお前のためやで。帝大に行ってるようなヤツが前科者(もん)の娘と一緒になるわけがあらへん。それが常識や。そやろ? フフッ」ビールを飲む。「ああ~。お前には、そのありがたみがまだ分かってへんな。俺が恐ろしいことをする人やて? よう言うわ。俺がほっといてみろ。お前、今頃、あの貧乏学生に捨てられて琵琶湖の疎水にでも飛び込んで、ほんまの土左衛門になってるとこや、ハッ。そやさかい、石山の父親を信州から呼びつけたんや」
美智「あんたが石山はんのお父さんを?」
小野木「そや。大ケガせんうちにお前から手ぇ引かそう、そう思って、石山の父親を呼びつけたんや」
美智「ひどい…ひどい人や」
部屋を出てふすまを閉めた美智。小野木は一人でビールを飲んでいる。
<これで美智は何もかも分かったような気がした。なぜ、突然に石山が自分の前から去ったのか、なぜ石山の父親が自分の前に現れたのか、あのとき生きる望みを失ったまま、自分を死の決意に追いやったのは自分の夫である小野木によって仕組まれたことだったのである>
ふすまが開き、小野木が入ってきた。「お前、あの貧乏学生がそんなに懐かしいんか? お前、今でもあいつのことを思っとるんやったら考え違いもええとこや。結局、あいつにだまされたんやないか。天下の帝大生ちゅうたかて、たわいのないもんや。あいつ、お前の父親がどんな人間かよく知ってて、その上で、お前と一緒になる。そない偉そうなこと言ってたそうやな。お前を嫁にしたら出世の妨げになる、すぐ手を切れ、親父のひと言で、お前から逃げ出していったやないか。俺やったら、そうはせんで。死んでも惚れたおなごを手放したりせん。なっ、美智」肩に手を触れ、頭をもたれかける。
美智「絶対にイヤや。二度とうちに触らんといて」
笑い出す小野木。「よう言う。ハハッ」美智を抱きしめようとして突き飛ばされる。
逃げ出す美智を追いかける小野木は玄関から出ようとした美智を捕まえて何度も殴った。「アホなまね、やめんかい! 近所の恥っさらしになるやないか」
荒い息遣いの美智。
小野木「俺に逆ろうて、なんの得があるんや。二度とこんなバカなまねはすんなよ! 分かったな!?」また殴る。「ちゃんと返事をせんかい! 女房ちゅうもんはな、亭主の言うことを『はい、はい』と素直に聞くもんや! ええな!?」
目も合わせず、返事もしない美智。
翌朝、小野木が目覚めると隣に美智の姿がなかった。縁側に座っていた美智。
小野木「こんなとこで何してたんや? 物分かりの悪いやっちゃな。ここを出て、どこ行く? 満州の国境くんだりまで母親を捜しに行くか? あの貧乏学生ん所にでも頼っていくつもりか。そら、殴ったのは悪かったけど、お前かて殴られるようなことをするからあかんのや。よう考えてみ。着る物(もん)かて食う物かて、お前に一度でも不自由な思いをさせたことがあったか? そやろ?」話しかけても無表情のまま返事をしない美智。
小野木は「ああ~、あ~、あ~あ」と伸びをして立ち上がり、「1、2、3、4! 2、2、3、4!」とデカい声で体操を始める。
玄関を出てカバンを手渡す美智。
小野木「ほな、行ってくるで。お前、いつまで仏頂面してるつもりや。早(はよ)う機嫌直すこっちゃ。それまではな…分かってるやろな。鍵は、みんな俺が持ってくよって、一歩もうちから外へは出さへん」美智を家に入れて外から鍵をかけた。「早う機嫌直すこっちゃ」
ここでこういうこと言うのもなんだけど…シャツ腕まくりで出勤していく小野木…いや、伊藤孝雄さんの後ろ姿がカッコいい。
閉じ込められた美智は、隣の壁に話しかける。やっぱり長屋でつながってるんだね。「奥さん、奥さん!」壁をたたく。「奥さん! 奥さん!」
⚟房枝「へえ、なんどす?」
美智「すんまへんけど、ちょっと来ておくれやす」
⚟房枝「へえ、ちょっと待っとくれやっしゃ」
房枝が自宅の玄関を出て、小野木家の玄関から呼びかける。「奥さん、どないしはったん?」
美智「主人が間違(まちご)うて鍵かけていってしもうたんどす。すんまへんけど、金具屋はん呼んでもらえまへんやろか」
房枝「へえ~、そら、あかんな。あっ、ほなな、駅の裏の金具屋はんに来てもろうたげるわ」
⚟美智「すんまへん」
房枝「へえ、待っといやすや」走り出す。
ご近所づきあいするもんやなあ。あのくらいの声で聞こえるなら、普段ちょっと大声出したりしたら丸聞こえじゃないの!?
美智はタンスから着物を取り出す。
<この家を飛び出して、どこへ行こうという当てがあるわけではなかった。ただ無性にそんな衝動に駆られてならなかったのである。そんな衝動に駆られることだけが小野木に対する精いっぱいの反逆だった>
区役所
小野木は家のことが気になって仕事が手につかない。「鈴木君、今日は、なんや気分が悪いよって早引きさしてもらうからな」
鈴木「いけまへんなあ」←君付けだけど白髪頭の同僚。
小野木「ハハッ、課長はんが帰ってきはったら、京都駅まで出征軍人の見送りに行ったって、そない言うといて」
鈴木「へえ」
鈴木役の人はノンクレジットなのね。
小野木家
美智は砂糖壺から紙袋に砂糖を入れていた。「おかげさんで助かりました」
房枝「いえ」
美智「奥さん、これ、ほんの気持ちだけやけど、お砂糖どす」紙袋を渡す。
房枝「そやけど、こないにぎょうさん頂いたら、あとでまた旦那はんに叱られて…」
美智「うちにはまだまだありますさかい」
房枝「ほんま? いや~、こんな貴重な物(もん)もろて帰ったら子供が大喜びや。早速おしるこでもこさえてやらんなんわ。おおきに。ああ、そやけど、奥さん、出かけはったあと玄関は?」
美智「開いたままでもかましまへん。泥棒さんに入ってもろたかて大してとられるような物(もん)は、あらしまへんさかい」
房枝「まあ、ハハッ。ほな、うちが気ぃつけて番しててあげるわ。おおきに。ほなな」
電車に乗ってる小野木。
歩いている美智
後ろの看板
××機器
上京区北野新町東小路東上ル
電話(九)二六四九
社長 中田武三
右から書かれてるけど、面倒なので左書き。
小野木が下車。美智は歩いていて、小野木を発見し、道端の植え込みに隠れて、小野木が歩いて行くのを見届けてから、バッグを持って駅まで走る。ああ、あの喜代枝がプレゼントしてくれた旅行カバンか。
帰ってきた小野木は鍵がなくなっていることに気付き、慌てて家の中へ。美智の名を呼ぶ。足音がして玄関のほうを見ると、房枝がいた。「ああ、旦那はんでしたか。うちは、また泥棒やないか思うて、びっくりしましたんや」
小野木「うちの家内…」
房枝「へえ。さっき、どっか出かけはりましたで」
小野木「ああ…」
電車に乗っている美智。
夜、既に店じまいしたさきの店を訪ね、戸をたたく小野木。
⚟さき「どなたはんどす?」
小野木「区役所の小野木です」
⚟さき「ちょっと待っておくれやす」鍵を開ける。
小野木「美智、来てへんか?」
さき「いえ」
勝手に店先に入る小野木。
さき「昨日のお昼過ぎにおみえになりましたけど、すぐに帰らはりましたえ」
小野木「2階にいた石山っちゅう学生、大学の寮に住んどるんやったな」
さき「へえ、そうどす」
旅館
女性「どうぞ。京都見物においでやしたんどすか?」
美智「はい」
女性「すぐ、お茶をお持ちしますさかいに」
この女性もノンクレジットだね。顔も映ってるし、セリフもあるのに。それにしても、この時代、女性1人でよく泊まれたね~。
<美智の脳裏には、子供のころの悲しかった思い出がよみがえっていた>
セピア色の回想シーン
たんすを漁る利周。
喜代枝<<あんた、一生のお願いやさかい行かんといて。なあ、あんた。うちが一生懸命、働きますさかい。ええ仕事が見つかるまで、う…うちにじっとおとなしいしててください>>
利周<<まだ分からんのか! うるさいな>>
喜代枝<<あんた…美智、あんたからもよう頼んで。あんた…>>
利周<<あ~、クソ>>カバンに荷物を詰めて出ていった。
喜代枝<<あんた!>>
回想終わり。
今回、喜代枝も利周もキャストクレジットになかったけど、ここ、新撮シーンじゃないのかな?
似たようなセピア色の回想シーンは2話にもあって、ツインテールの少女・美智が利周に殴られる喜代枝を見ていたけど、このときはシーン全体にセリフなし。
<自分もあの母と同じように夫に虐げられて生きる運命をたどるのだろうか。そう思うと、今、満州の果てに生きているはずの母が叫びたいほどに恋しく思えるのだった>
でも、喜代枝は好きで利周にくっついてる感じだからなあ。なんか違う。
帝大
小野木は石山に会っていた。
石山「僕にご用だそうですが…」
小野木「そうや。いろいろと尋ねたいことがあるよってな」
小野木はんと石山はんは並ぶと同じくらいの身長(プロフィールはどちらも175cm)。でもやっぱり、小野木はんのほうが顔が好きなんだよな~。だから、石山と美智がくっつかなくて悲しいみたいな思いもわかない。
ちょっと場所を変えて…今度は段差の分、石山はん、大きい。
小野木「お前、美智と会(お)うたそうやな」
石山「誰がそんなこと言ったんですか?」
小野木「会うたんやな?」
石山「いえ、あれ以降、二度とお会いしてません。その必要もないはずですから」
小野木「ええかげんなこと言うと、あとでひどい目に遭うだけやで」
石山「ですから、そんな事実無根のことを言ってるのは誰ですかって聞いてるんじゃないですか。これは僕自身に関係したことですから、お尋ねする権利があると思うんです」
小野木「権利やて? 人の女房に手ぇつけといて偉そうなこと言うな」
石山「その問題は全て解決されたはずだと思うんですが」
小野木「解決済みやて? 女房をおもちゃにされて、そう簡単に解決されてたまるか」
石山「一体、僕にどうしろっておっしゃるんですか?」
小野木「美智をどこへ隠した? 居所、知ってるやろ」
石山「とんでもない。そんなこと知りませんよ」
小野木「ほんまか?」
石山「ええ、失礼します」
石山の腕を引っ張り引き止める小野木。「元、住んでた下宿に何しに行ったんや? 人の女房が、今、どうしているか、のこのこ探りに行ったんやろ。なんで黙ってるんや。はっきり言うてみ。よう言えんやないか!」
石山「じゃ、言います。あのとき、僕は、あなたから美智さんとあなたが婚約者の間柄だっていうことを初めて聞きました。しかし…美智さんがどうしてそのことを僕に黙っていたのか、どうしても僕には理解できなかった。あのとき以来2か月ほど信州に帰っていました。しかし、どうしてもそのことが気がかりで…そんな事情とは知らずに僕は美智さんのことを真剣に愛してましたし、ですから、一度はそのことを…あなたの一方的なお話じゃなく美智さん自身の口から、はっきり聞いておきたい、そう思って」
小野木「そう思って、美智と会うたんやな」
石山「違います。お二人がご結婚なされたのを聞いて、僕には、よく納得できましたから」
小野木「納得やて? ふざけるな! 許婚同士が結婚するのに、なんで、お前が納得せんならんのや。美智を真剣に愛していたやて? お前がいつまでもうろちょろするさかい…ええか? 人の女に手ぇ出したら、どういうことになるか、よう教えたる!」4発ビンタと腹にパンチ一発。そこまでするか!
蒸気機関車が走る。列車に揺られる美智。
<美智は、そのころ列車に乗り込んでいた。初めからこんなことになることは、もちろん予想もしていなかった。ただ美智は、どうしても、あの家には帰りたくなかったのである。そうかといって他に帰る所もないまま、美智は衝動的に列車に飛び乗ってしまっていた>
蒸気機関車の下からのアングル。(つづく)
ホーッ! ようやく逃げてくれた。次回がリアルタイムだと金曜日回だから、また気になる展開になりそう。
