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【連続テレビ小説】純ちゃんの応援歌 (58)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

純子(山口智子)と秀平(髙嶋政宏)が付き添って、雄太(高岡俊広)は昌代(日色ともゑ)に会いに行く。昌代は満州に置き去りにしたことを雄太に泣いて謝るが、雄太は昌代と口をきかず部屋を出る。純子が、なぜひと言も話をしない、と雄太に聞くが、雄太は約束通り会ったんだからいいだろう、と言い返し、秀平は、お母さんの気持ちはわかってるはずだ、と叱り飛ばす。帰り道、お母さんに会わなかったほうが良かったか聞くと…。

昌代が泊まっている旅館に純子、秀平、雄太が訪ねた。雄太は下を向いたまま。昌代が「雄ちゃん」と語りかけても下を向いて黙っている。

 

秀平は自己紹介をし、野球を教えているときに引き揚げの時の話を聞いていたのでぶしつけながら同席すると言った。純子は席を外すか聞くが、昌代はとどまるよう言った。

 

昌代「雄ちゃん、怒ってるんでしょう? あの時、お母さん死ぬつもりだったの。でも雄ちゃん道連れにできないと思って、それで…。でも、お母さん死ねなかった。でも雄ちゃんが日本に帰っていて、今日こうして会えてうれしかった、とっても」

雄太「…」

昌代「小野さんのお父さんに助けてもらったんだって?」

純子「いえ、あの私の父が雄太に…。あの…雄ちゃんに助けてもろたんです」

昌代「今は小野雄太っていうんだってね」

雄太「…」

 

外から女の子の歌が聞こえてきた。

♪梅は酸いとて戻されて

桜はよいとて ほめられた

桃栗三年 柿八年

柚は九年の花ざかり

kotobank.jp

沈黙の中、昌代が机に突っ伏して泣き出した。

昌代「雄ちゃん、許して、お母さん。お母さん、雄ちゃんに謝りたかった。引き揚げてからずっとそのこと考えてたの。こうやって生きて帰れるんだったら雄ちゃんと離れるんじゃなかった。雄ちゃんと一緒に帰りたかった。お母さん、許して」

秀平「雄太君。お母さん、ああ、おっしゃってるんだから」

純子「私、お母さんのあの時の立場やお気持ちは雄太に話しました。それを知ったうえで雄太はここに来てるんです」

 

昌代「小野さんのうちでかわいがってもらってるんだって? お母さん、ほっとした。新しいお母さんやお姉さんや同い年の弟ができたんだって? 野球、ピッチャーだって?」

雄太「…」

昌代「お母さんね、雄ちゃんがもし会いに来てくれたらいろんなこといっぱい話そうと思って待ってたの。でも…顔見たら何にも言えない…」

 

秀平「引き揚げの時のこととか引き揚げてからのこととか君の方からもお母さんに話すことがあるんじゃないのか?」

純子「学校の成績もええんです。もう一人の弟の昭よりもええくらいなんです」

昌代「ありがとうございます」

 

昌代「(雄太の顔を見て)大きくなった…」

雄太「もう帰ってもいい?」

純子「雄太…」

 

ぬひと一緒にいたあきも大きなため息をついた。

ぬひ「まあ、ええ香(かざ)してまんなあ。これあのビスケット…。クッキーいいましたかいな? あの…奥さんも一緒に行きはったらよろしおましたのに」

あき「ほんまはな、会いに行かなあかんのやろけど、何やあちらのお母さんに会うのがつろうて」

ぬひ「そら、まあなあ…」

バットを肩に担いだ昭が家を出て行く。

 

あき「向こうのお母さんもうちに会うのがおつらいやろと思うし…」

ぬひ「まあなあ…」

家の前で一人素振りをする昭。

 

昌代「ありがとう。お母さん、うれしかった。雄ちゃんに会えてほっとした」

雄太「…」

昌代「お手数(てかず)かけました。もう結構です。気が済みました」

純子「お母さんはこれからどないしはるんですか?」

昌代「飯塚に帰ります」

純子「それじゃあ、私たちは…」

昌代「本当にありがとうございました」

雄太は学帽をかぶり急いで部屋の外に出ようとした。

 

昌代「雄ちゃん!」

雄太「(振り向いて昌代の顔を見て)さようなら」

顔を覆って泣く昌代。

昌代「いいんです。一度はあの子を捨てたんですから」

秀平「失礼します」

純子「あの…お元気で」

 

玄関に座っていた雄太。

純子「雄太、何やの? 何でお母さんに何も言うてあげへんかったの? お母さん、かわいそうやんか」

秀平「お母さんだってね、君に分かってほしくてああやって九州から出てらしたんだろ。お母さんがどんな気持ちでいるかくらいのことは君だってもう中学の2年なんだから分かってるはずだ。そうだろ」

純子「雄太」と肩を抱く。

その手を振り払って立ち上がった雄太。

雄太「うるせえな! 会うたんだから文句ないやろ!」

秀平「雄太君!」

雄太「会えって言うから会うたんやないか!」

秀平「ばか野郎…」と殴る。え!

 

純子「秀平さん!」

秀平「もう一遍言ってみろ! 会ったんだから文句はないだろとは何だ!」

秀平にとびかかる雄太。つかみ合いになる。

秀平「分かんないのか、ばか野郎!」

雄太「うるせえ!」

秀平「お母さんだぞ。お前はお母さんに…」

 

純子「やめて! やめて!」

旅館の人も出てくる。

秀平「(英語で)かかって来い! ヒヨッ子野郎。度胸はないのか!」

純子「雄太、あかん! なにも殴らんかてええやないですか! 雄太かてつらかったんやないですか! 何で…何で分かってあげられへんのですか。殴るやなんて野蛮やないですか!」

秀平「僕は彼がふてくされてんのを怒ってんだ。お母さんとひと言も口を利かなかったのを怒ってんだ」

純子「雄太の姉は私です! 叱る時は私が叱ります! 何で余計なことをしはるんですか!」

 

旅館の人に奥へと言われたが、僕は帰りますと怒って帰った秀平。純子と雄太はしょんぼり歩いて帰った。

純子「お母さんに会わん方がよかった?」

雄太「(黙って首を振る)会ってよかった。でも俺は…。お母さんに謝ってほしくなんかなかったんや」

純子に抱きついて泣く雄太。

 

あきは帰ってきた純子にあれこれ聞こうとする。どうやった? 速水さんは? 夜ごはんうちで食べるんじゃなかったの? 純子はいろいろあった。とても一口では言われへんわと早々に部屋に引きあげた。

 

殴るなんてひどい!とも思ったけど、秀平はもう両親もいないし、またいつかなんて言えないと思っていたのかな。雄太、純子の前で泣けて良かった。つらいけど。

 

日色ともゑさんは1967年の朝ドラ「旅路」のヒロインだそうです。白黒作品

www2.nhk.or.jp

朝ドラヒロインが母親役として戻ってくるパターンって結構あるのね。