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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (133)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

昭和23年、春。型を変えて出した2巻目は飛ぶような売れ行きだ。道子(光丘真理)は磯野家のお手伝いさんのみならず、マチ子(田中裕子)が行き詰った時のお相手としても活躍中。磯野家に資金を借りて店を立て直した三吉(福田勝洋)は、ウメ(鈴木光枝)たちを東京に迎える。ウメは再び皆で東京に住める嬉しさに感極まる。そんな中、互いに惹かれ合う朝男(前田吟)と千代(二木てるみ)は結婚に向けて話し合うのだが…。

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土曜日回じゃなく金曜日回のラストと同じ時に撮影したであろう、リヤカーを止めた途端、取次店の店主たちが群がり、争うように「サザエさん」2巻を取り合う。均ちゃんはキャストに名前が出てたけど今日はここだけ。取次店の金子も浅香もここだけだったね。

 

呼べば応えてこだまのように返ってきた1年前とは反対に23年春、型を変えて出した第2巻は再版に次ぐ再版で羽が生えたごとき売れ行きでした。そのおかげで磯野家を占領していた第1巻の在庫の山もすっきりといなくなってくれました。

 

1巻がなくなったところはあっさりとお送りしたのね。ツイッターで処分費が出来たのか?と書いていた人がいたけど、2巻が売れたことで型が違っても1巻が欲しいと言われて売れたところもあった方が分かりやすかったように思う。

 

電話が鳴り、お千代ねえやより先に道子が出た。

道子「神田村の金子さんより2巻目をあと10本のご注文でした」

千代「はい、ご苦労様。じゃあ選手交代」

道子「はい!」

 

そういえば、道子を学校に行かせないのか?という感想を見かけました。昭和21年に16歳で今はもう高校を卒業するような年だし、そりゃないでしょう。

 

この時代、特に女性なら普通の家の子でも高校まで行かない人が多い時代、ヨウ子は戦前でも大学に行っていたとはいえ、あっさり辞めちゃったしね。お手伝いさんになるという選択はそんなおかしなことではないと思う。

 

道子はアイディアが出ないマチ子につきあって一緒に散歩に出た。お千代ねえやは植辰に電話をかけ、神田村の金子書店に本の配達を頼んだ。植辰さん、そんなことをしてたのか。

 

帰ってきたマリ子と電話を切ったお千代ねえやが玄関で話をする。

マリ子「マチ子、また難産のようね」

千代「はい。でも道子ちゃんが一緒だったらば元気で帰ってくること請け合いですたい」

マリ子「本当。マチ子のアイデアのお相手としては道子ちゃんは本当にまさに手品師ね。一体どんな才能があるんでしょう?」

千代「そんな上等なもんじゃなかですよ。あの子のは聞き魔ですけんね」

 

マリ子「聞き魔?」

千代「はい。まあ、よう種が尽きんと思うぐらい何でんかんでん聞いてくるとですよ」

マリ子「そうね…そういえばよく聞くわね」

千代「あら、お嬢様にもですか?」

マリ子「それよ。それそれ。この前も『お嬢様にはお嬢様と奥様とどちらをお呼びしたらいいんでしょう?』って」

千代「まあ!」笑い

 

マリ子「考えてみたら三十女をつかまえてお嬢様って言うのもおかしいし、それに私は確かに新八郎さんの奥さんですものね。以後、マリ子奥様と呼んでもらうことにしたわ」

千代「そういえばそうそう。うちには『一生再婚する気はなかか?』とかか『魚屋さんは嫌いか?』とか…」

マリ子「魚屋さん?」

 

千代「あ…あ、いえ…あの…。それからね、ヨウ子お嬢様はどうしてきれいかに始まって、え~っとオウムは人間の言葉をしゃべれるとに人間に近い猿がどうしてキャッキャッと言うか。それからお芋はふかすのと焼くのとはどう違うか、まあそれは際限もなく突拍子もないことを言いだすとですよ」

マリ子「結構じゃないの。マチ子の難産にはそういう関係のない話題が一番の特効薬なのよ」

 

千代「あっ、そうそうそう。神田の金子書店さんから2巻目10本、注文がありましたので植辰さんにお願いしておきました」

マリ子「まあ。またまた売れてるのね」

千代「はい、じゃんじゃんと」

マリ子「よかったわ。これでおかげさまで三ちゃんの店もバラックながらようやく格好がついてきたし」

千代「よろしかったですね」

 

マリ子「そうよ。これで出版をしたかいがあったっていうものね」

千代「はい。南京虫に食われ食われ」

マリ子「やだ~! その話はやめてよ! もう聞くだけで…」

千代「かいかいになりますよ、かいかいに」

マリ子「嫌~! お千代ねえやったら…」

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マチ子は一人で帰宅。今回から髪をまとめてすっきり。小顔が引き立つ。道子はタマとアヒルのヒヨコはどうしてあんなにかわいいのか意気投合している。道子みたいにくったくなく人にものを聞ける性格が羨ましい。

 

松屋良造が三吉の住む家に大きな風呂敷包みの布団を持ってきた。はるも手伝いに来ている。

松屋「いやいや…随分走り回ったんですがね、なかなか手ごろなのがございませんでね。ええ、おすすめしかねるひでえ代物かぐっと上等なこういったお品になってしまいましてね」

はる「ええええ、結構ですとも。お品が上等でいけないということはありませんからね」

三吉「とんでもない。上等すぎますですよ、こんな布団は」

 

はる「いいじゃありませんか。焼け出されてからのおばあちゃまのことを考えたら、せめてこれくらいの布団でゆっくりと体を休めていただかなくては」

三吉「ありがとうございます。しかし天松屋さん」

松屋「えっ?」

三吉「私のはいけません。私のだけは木綿のもっと普通のと取り替えてください」

松屋「いや、でもさ、その普通ってのがなかなかね…」

三吉「だったらその…おすすめしかねるという品で結構です」

 

はる「三吉さん…」

三吉「ご隠居様とおかみさんの分を用意していただいただけで私は涙が出るほどうれしいんですよ。その上、私までこんな布団で着たらバチが当たります」

はる「でもね…」

三吉「いえ、本当にお気持ちはありがたいです。でも今は一日も早く奥さんにこの家の借金を返すためには私はむしろにくるまったってつらいとは思いません。いえ、そうやって頑張りたいと思ってるんです」

 

松屋「いや、けどさ、せっかく奥様が…ええ? 上等なのって言ってくださってるのに何でそんな固いこと言うの、あんた!」

はる「いいえ…三吉さんの言うとおりかもしれませんね」

松屋「えっ?」

はる「今はとにかくスタート地点に立った三吉さんの気持ちを大事にしてあげるべきだと思いますよ」

三吉「ありがとうございます、奥様。このとおりです」頭を下げる

 

はる「いいえ、これはね、昔々、私たちが東京へ出た時、西も東も分からなかった時にいろいろと面倒見てくだすった酒田さんご一家へのご恩返しなんですからね」

三吉「はい…」

 

ともあれ、おばあちゃんが東京へ戻れる準備は着々と進行して…

 

三吉がウメを背負って、さよとともに磯野家へ。出かけようとしたマリ子は、家族を呼ぶ。さよさんは磯野家に来るのは初めてでは!? 

 

こんな時、多分、言葉なんてものは何もいらないのでしょう…。しかし…

 

ウメは涙を浮かべて黙って頭を下げる。

はる「おばあちゃま…」

さよ「おっ母さん。すいません。昨日、三吉が迎えに来てくれても支度を始めても、まだ夢じゃないか夢みたいだって言い続けておりましてね」

マリ子「夢じゃあるもんですか! ほらこのとおり凸凹3人娘が顔をそろえているでしょう?」

しゃべらずにうなずくだけのウメ。

 

マチ子「どうしたの? おばあちゃま。まさか言葉をお忘れになってしまったわけじゃないでしょう?」

三吉「へえ。私もそれが心配で…」

はる「まあ…それはどういうことなの?」

三吉「へえ。まあ汽車にお乗せすれば窓枠にただしがみついて外ばかりをご覧になっていましたし、いよいよこちらのご門が見えますと、ご隠居さんは私の背中をバタバタとただ足でお蹴りになるだけで…」

 

ウメ「とうへんぼく! 私はうれしくてさ…ありがたくてさ…。でも100万遍こんなこと言ったって今のこの私の気持ちは皆さんには伝えられっこないって思うからさ…」

マチ子「おばあちゃま…」

ウメ「うん、もうくだくだ言わないよ、私は。言ったってしゃべったって言い切れやしないもん。ねえそうでしょう? 奥さん。マリ子さん」

字幕は”くだくだ”だったけど”ぐだぐだ”に聞こえた。

 

はる「そうですとも。おばあちゃまに帰ってきてくだすってどんなにうれしいか…」

ウメ「私はね、本当にもう生きて二度と会えるとは思わなかったよ…」

はる「おばあちゃま…」

ウメ「本当だよ! ねっ、ヨウ子ちゃん!」

ヨウ子「はい」

 

ウメ「ほら、あの…みんながあの疎開した時さ、あん時に牛尾のご隠居さんが言ったっけさ。生きていれば必ずまた会えるから。だけど私は信じられなかったんだよ、もう私は年だもん。それがさ、マリ子さんが三吉と一緒に迎えに来てくれたんだもんね。私はもうもっともっと素直になんなきゃいけなかったんだよね。ねっ、さよさん」

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さよ「おっ母さん」

ウメ「本当にありがとうよ。あんたが一緒にいてくれなかったら私は生きてこんないい日、迎えることはできなかったんだからね。長い間、出来損ないの嫁だなんてさんぱんっぱら言ったけども本当にごめんだよ…!」

さよ「おっ母さん…」

ウメさんと加津子さんも再会してほしいなあ。ドラマ上一度も会ってないよね。

 

マリ子「三ちゃん、もう一度考え直した方がいいんじゃないの?」

三吉「はあ?」

ウメ「私を引き取るなんて言ったことさ」

三吉「えっ?」

ウメ「『後の後悔、先に立たず』ってんだよ」

三吉「いや…いや、それは…」

マチ子「しっかり三ちゃん!」

マリ子「そうよ! 物事初めが肝心よ!」

 

おばあちゃんが帰ってきました。磯野家の活気に触れて、かわいらしい憎まれ口とともに、おばあちゃんはまさによみがえったのです。

 

天海家

朝男「そうかい。それはよかった」

マリ子「本当。今度ばかりは私も母のばらまき病には大賛成でしたわ」

朝男「けど、三吉ってのはなかなかいいやつだよ。なっ?」

マリ子「ええ」

朝男「戦争に負けてからこっち、強えもんが価値の世の中だ。そんな時にそういう人情が生きてたとは…ヘッ!」

 

マリ子「そういう天海さんだっていい男じゃないの」

朝男「いやいや、あっしなんかね足元にも及びませんよ。天使だよ、お宅のおっ母さんはよ」

マリ子「まあ」

朝男「道子っぺだって見るたんびに明るくなってべっぴんになっていくしよ」

 

マリ子「あら? 天海さんは道子ちゃんがお好みのタイプだったの?」

朝男「ああそうだよ。けどあれだな、まあ俺は女房にするんなら、ヘヘッ、お千代さんの方がいいな。ハハハッ!」

ハッとした表情になる朝男。

マリ子「あら、お千代ねえや」

千代「あの、取次店さんからお電話です」走り去る。

朝男「おい! お千代さん!」

マリ子「お千代ねえや!?」

それにしても魚屋がいつもがらーんとしているのはなぜだろう?

 

マリ子「天海さん」

朝男「ああ」

マリ子「今の話…本当の気持ち?」

朝男「…」部屋をうろうろ。

マリ子「天海さん…」

 

朝男「マリ子さん。あの…道子さんも慣れたことだし、どうだろう? お千代さん、あっしにもらえねえだろうか?」

マリ子「もらえないかと言ったって…」

朝男「あっしも年だよ、あいつとならなんとかうまくやっていけるんじゃねえか、そう思うんだよ」

マリ子「そうね…本当にそうかもしれないわね」

朝男「ハハッ、マリ子さん!」

マリ子「大丈夫。私、母に相談してみます。でも何より大事なのは2人の気持ちだと思うけど」

朝男「それはそうだ」

 

ということに相なりまして…

 

夜。磯野家

はる「そのとおりですよ。大事なのは2人の気持ちですからね、私に異存はありませんよ。でも2人とももう子供じゃないんですからね。とっくりと2人でお話し合いなさいね」

千代「奥様…」

はる「じゃあ、天海さんよろしくお願いします」

朝男「へえ」

 

はるもマリ子も部屋を出る。

はる「何でしょう、あなたたちは。はしたない人ね」

廊下にいたマチ子、ヨウ子、道子。

マチ子「だって…」

マリ子「もう2人とも子供じゃないんだから」

ヨウ子「でも…」

マリ子「いいの」マチ子たちと廊下を歩いていく。

向かい合った朝男と千代でつづく。

 

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思えば、お千代ねえやと天海さんが知り合ったのは、お千代ねえやがお見合いをする前。最初からポンポン言い合える仲だったので、お見合いが壊れるのか?と余計な心配すらしていたけど、こうして長い年月を経て一緒になるのね。