公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
福岡行き当日。塚田(日下武史)から、マチ子(田中裕子)の売れた画のお金を渡される細谷(下條アトム)。細谷は女学生だったマチ子の成長を実感する。一方、最後までマリ子(熊谷真実)に想いを伝えられなかった大宗(渡辺篤史)も11年の月日を噛みしめる。しばらく千代(二木てるみ)を預かると言うタマ(星清子)や満州へ移ると言う三郷(山口崇)たちと、皆で別れの歌を歌う。だが、とうとうウメ(鈴木光枝)が泣き出し…。
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今日は東京編の総決算という感じで出演者も多い。
駅弁が買えた時代はとっくの昔に終わっておりました。
おにぎりを握るウメ、タマ、千代、はる。
ウメ「ハハハッ、何だか遠足に行くみたいですね、みんなして」
タマ「遠足ならその日のうちに帰ってくるもんですけどね」
江戸っ子らしく”ひ”が”し”になってる。
ウメ「エヘン! エヘンッ!」
わざと明るく言っていたのに、気分がそがれて咳払い。
はる「けどお千代、あなたには本当に悪かったわね」
タマ「そのことならもう話がつきましたから」
はる「えっ?」
タマ「この人、うちで預からしていただきますよ」
はる「天海さんで?」
千代「はい。うちは別に一人でお参りすれば晴れがましい例大祭なんちゅうとに出席させてもらわんでも高男さんの英霊とはお会いできますけん。この際、奥様とお供して福岡に帰ろうと思よったとですばってん…」
タマ「そういうもんじゃないって私が言い聞かせたんですよ。私たちがついていながらここの奥さんだって、後々、ね? お国のために戦死をなされた旦那さんに申し訳ないと思い続けなきゃならないでしょう。だったらひとつきぐらいうちに泊まってもらったって、どうってことはないし、ただ食べるもんがね…。まあ、ごちそうが何もできなくってさ」
千代「それは覚悟の上ですけん」
タマ「あら、割合にはっきり言うんだね、この人」
千代「そげんですか?」
当初の千代の予定では4月下旬の例大祭に出席&磯野家の疎開先を福岡にする説得のために早めに上京したものの、磯野家の疎開準備も終わっていたので、千代は例大祭に出席せず、靖国神社にお参りだけして、磯野家と一緒に福岡に帰ろうとしていたが、タマの説得により、例大祭に出席するまでタマの家にとどまることになった…ということですね?
ウメ「でもね、よかったよかった。ねえ、まるっきし身寄りのない信州なんか行かれるよりはさ、すっかり元のさやに収まって加津子が隣にいると思えば私はどれだけ安心だか」
はる「ええ、本当にいろいろとご心配おかけしまして」
細谷の部屋
細谷「今日…ですか」
塚田「ああ。それでな、昨日、マッちゃんが社に来てこれをお前に渡してほしいって預かってきた」
細谷「これは?」
塚田「60円入ってる」
細谷「60円?」
塚田「文部大臣賞を取ったマッちゃんの絵の代金さ。売れたんだ、あいつは」
細谷「塚田さん…」
塚田「ほんでな、君には世話かけるばっかりで何のお礼もできませんでした。信州行ったら少しでも体よくして静養してくれってさ」
細谷「…」
塚田「あの子の精いっぱいの感謝の気持ちなんだ。黙って受け取ってそのかわり必ず体を治せ」
細谷「しかし…」
塚田「金だと思うからいかんのだ。絵だと思えばいいじゃねえか。東京を離れるにあたってあの子が一生懸命描いたその絵だと思えよ」
細谷「いや、しかし…。九州は大丈夫なんですか? そりゃ生まれ故郷かもしれませんけど…九州には大工業地帯もあるし、これからもしアメリカが反撃したら…」
塚田「おい…貴様、病人なんだぞ? 今はお前が他人の心配する柄か」
細谷「いや、しかしですね…」
塚田「いいんだよ。何となくそんな気がしたんだ」
細谷「えっ?」
塚田「お前、あの子に会うのが少し早すぎたよな」
細谷「塚田さん…」
塚田「女学生だ、女学生だと思ってたら、いつの間にかサナギがチョウになってた。まあ、そういうこともあろうさ。しかし、今は何も考えるな。黙って信州へ行け。マッちゃんの気持ちに負担をかけさせたくなかったら、そいつが一番の道だぞ」
細谷「そうですね」
塚田「そうさ。有効に使えよ、その60円」
封筒を手にうなずく細谷。信州は細谷が静養するということで話がついたみたいでよかったー! 細谷さんはやっぱりマチ子の才能だけじゃなく愛してたということか。
↑田河先生に女の弟子を取ると報告された時はあきれ顔だった細谷さん。
↑しかし、マチ子の才能は認めていた。
↑この辺からグッとシリアスなキャラになったよな~。
長谷川町子さんが昭和19年に水彩画で文部大臣賞を取ったという事実はないそうなので、土壇場で疎開先を変えたことに対してエピソードを作ったということかな。
磯野家には三郷さんがトセさんと新しい奥さんを連れて挨拶に来ていた。
はる「どうも申し訳ございませんでした。わざわざ遠い所から皆様おそろいで」
トセ「いいえ。私の方こそ実はお別れのご挨拶に伺ったようなわけで」
はる「はあ?」
トセ「来月早々の船で満州へ渡ることになりまして」
隣の部屋にいたマリ子たちも驚く。
マリ子「満州へ?」
智正「はい。実はこの間、お伺いした時、それを申し上げに来たわけなんですが、こちらの方で疎開の話が出たもんですから言いだしにくくなりましてね」
マリ子もはるの隣に座る。
↑疎開の準備の手伝いに来た時じゃなく
↑久々に訪れてヨウ子との友情を確かめあった日かな?
はる「そうですか…どうして満州へ?」
トセ「はい。満鉄の方におります、この子の友達からお誘いを受けまして」
マリ子「でも遠いじゃありませんか」
智正「九州だって遠いですよ」
マリ子「でも…」
智正「今更体裁を繕ってもしかたありませんが、ご存じのように私、不器用なたちでして暮らしにくくなった東京で人様の顔色を見て暮らすよりも、むしろ…案外開拓団などで思いっきり汗を流して広々とした荒野でですね、時には詩などを作るような暮らしの方が似合ってるんじゃないか、そんな気がいたしましてね」
はる「そうですか…満州ですか…」
はる「それではどうぞお体にお気を付けになって」
トセ「奥様もですよ」
はる「はい」
いや~、満州はやめとけと言いたい。今、夕方に同じく再放送中の「純ちゃんの応援歌」も満州の話題がよく出ていた。以下、推察。
昭和4年? 純子、大阪で誕生
昭和22年 陽一郎、雄太を連れて帰国
小野家も満州で家族で暮らした時代もあったけど、ある時期から陽一郎が単独で満州に行っていたらしい。終戦後もしばらく帰国できなさそうだし。
しんみりムードの時、大造「そろそろ支度ができましたか?」と一平と訪ねてきた。
ウメ「そんなせっつくような言い方しなくたっていいだろ!」
マリ子は布団で寝ていたヨウ子を呼びに行った。
マリ子「じゃあ、あとはマー姉ちゃんが片づけるからヨウ子は下に行ってなさい。ハンドバッグ一つ持てばいいのよ」
ヨウ子「はい」
ヨウ子が下に行き、マリ子が布団を畳んでいると、均が来た。
均「マリ子さん、そんなことは僕がやりますよ」
マリ子「いいえ。大宗さんには何から何までお世話になってるんですもの」
均「そんな水くさいこと言わないでください。こんなことしかどうせ僕にはできないんですから」
マリ子「本当に長いことありがとうございました」
均「あっ…」頭を下げるマリ子に均も頭を下げる。
均「マリ子さん」
マリ子「はい」
均「本当にどうも申し訳ございませんでした。このとおりです」
マリ子「大宗さん…」
均「いや、僕はあんたたちのことを天海君にもくれぐれも頼まれてるし、それに東郷君には心おきなく戦ってもらおうと僕は僕なりにあなたたちへの滅私奉公を心に誓ったんですが、何しろ力が足りなくて…」
マリ子「何をおっしゃるの。お忙しい中を縫って買い出しやらなかなか手に入らないものを運んでくださったからこそ、ヨウ子だってこうして疎開できるだけの力がついたんじゃありませんか。私は何とお礼を申してもお礼のしようがないと思っているんです」
均「ありがとう、マリ子さん」
マリ子「いいえ。お礼を言うのはこちらの方ですわ」
均「そうじゃないんだ。僕はね…」
マリ子「はい?」
均「僕は…」
マリ子「何でもおっしゃってください。大宗さんは我が家にとって掛けがえのない人でした。ですからおっしゃることは何でも守ります」
均「そうですか。それじゃあ言います。(やや間があって)元気でやってくださいよね!」
マリ子「はい」
均「あの…あなたのその明るさをいつまでも失わないように」
マリ子「はい」
均「これはね、僕の妹弟子のマッちゃんのためにもお願いします。ヨウ子ちゃん、お母さんのためにもね」
マリ子「はい」
均「約束ですよ」
マリ子「はい!」
均「よかった~。いや、僕もねこの東京であなたがその笑顔を忘れずにやっているということをいつもいつも思ってますから」
マリ子「はい」
11年前、一目ぼれして以来、均はとうとうこの時もマリ子に胸の内を言いだすことができなかったのです。
↑初めて会ったのはマチ子弟子入りの時。
均「あっ、これ(布団のこと)ウラマドさんのでしたね。後で僕が運んでおきますからどうぞ行ってください。もう皆さん、見えてますから」
マリ子「そうですか? じゃあ後で」
均「はい」
一人2階に残った均は窓を開けて外を見る。
均・心の声「好きだったんだよ、マリ子さん。俺は…ず~っとず~っと思い続けてきたんですよ」
田河水泡の弟子で「あんみつ姫」の作者の倉金章介さんはwikiによれば、毬子さんと大恋愛したが仏教徒のため失恋、昭和16年に志願して従軍記者となったとあったけど、本当!? 田河の妻より家事が得意で子供好きだったらしい。
マリ子が1階に降りると、茶の間にはヨウ子とウメが手を取り合っていた。みんなはウラマド家へ。オルガンの音と歌声が聞こえてきた。演奏は三郷さん。キャー、三郷さんオルガン弾けるの?
♪春は名のみの風の寒さや
谷の鶯 歌は思えど
別れの歌です。はるはそれを聴きながら昨日、面会してきたオネストさんのことを思い出しておりました。
オネスト「私のこと、大丈夫です。トンテン、トンテン自分をたたいています」
♪氷解け去り 葦は角ぐむ
さては時ぞと 思うにあやにく
今日もきのうも 雪の空
今日もきのうも 雪の空
マリ子も加わり、歌う。みんなうまいね。
懐かしい人々との別れの時間はいやおうなくやって参りました。
はる「それでは天海さん、お千代のこと、くれぐれもよろしくお願いいたします」
タマ「はい、確かに預かりましたから。ねっ?」
千代「よろしくお願いいたします」
ウメは家から出てこない。植辰が「行かねえってよ」と家から出てきた。
植辰「ここんちで別れるんだからって、おめえ、頑として動かねえんだよ」
大造「カ~ッ、しょうがねえばあさんだな!」
はる「いいんです。ちょっとお待ちになって」
大造「しかし、出発間際にゴタゴタすることなんざ…!」
一平「まあまあ…」
ウメは玄関で丸くなって泣いていた。
はる「おばあちゃま」
ウメ「奥さんや…! 堪忍だよ。私は泣かないつもりだったんだから。泣かないつもりだったんだから…堪忍だよ…!」はるに抱きついて泣くウメ。
はる「おばあちゃま…」
一平「大丈夫たい。なあ、おばあちゃん。わしもな、この子たちと別れる時は、もう生きてるうちは二度と会えんと思うたら悲しゅうてつろうて泣けたもんたい」
マリ子「おじいちゃま…」
一平「ばってんそれが、こげんして会えたじゃないですか。おばあちゃんもな、元気で達者で長生きしておったらまたきっと会えます。わしがいい証拠じゃ!」
マチ子「おばあちゃま」
ウメは下を向いたまま、はるやマリ子、マチ子を手で払うような仕草をした。
均「分かりました。では…全員出発!」
ウメは一人家に残り、はるはウメに頭を下げ玄関を閉めた。
かくして桜にはまだ早い昭和19年3月の末、磯野一家再び九州へと帰っていったのです。
ウメが磯野家の玄関で一人いるところで今週はおしまい。
細谷さんは戦後も元気に編集者として活躍してほしいなあ~。みんなみんな元気で。しかし、三郷さんが満州とは…。それだけは心配。