公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
井関(和田一壮)が来ると、台所ではお菓子を作りながらマリ子(熊谷真実)や道子(光丘真理)たちが歌っている。応接間では、はる(藤田弓子)やウメ(鈴木光枝)や植辰(江戸家猫八)たちが集まって、今度、ウララ(楠田薫)たちのいる自然に囲まれた老人ホームにピクニックに行こうと盛り上がっている。そこへ、オネスト神父(ラットバウト・モリン)も遅れて合流し、はるたちの同窓会はより一層、話に花が咲くのだが…。
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陽談社の編集者・井関が磯野家を訪れた。道子はいつもの応接間に案内しなかった。応接間からは賑やかな笑い声が聞こえる。応接間にはウラマド姉妹、タマ、ウメ、植辰、はるが揃っていた。
春です。同窓会の季節です。とはいえ、集まった面々、多少うば桜ばかりの気味がないとは申せませんが…
ウメ「とんでもない。んなこたぁありませんよ。ねえ、植辰さん」
植辰「ん? ああ、全く全く!」笑い
雑談風にナレーションにツッコミを入れるスタイル、面白い。
井関が通されたのはダイニング。いつの間にかダイニングも洋風になってる。
♪春のうららの隅田川
のぼりくだりの
マリ子たちは歌いながらフルーツみつ豆を作っている。マリ子は井関のもとへ。
マリ子「あっ、失礼いたしました。ごめんなさい。間もなく毎朝から原稿を取りに見えるので、マチ子は今、仕上げの真っ最中ですの。代わりに私が承っておくようにと申してましたので」
井関「あの、ですから、昨日、お電話でお願い申し上げていたようにですね…」
マリ子「ですから、昨日、お電話でお断りいたしましたように、マチ子はちょっと無理だと申しておりましたので」
井関「そこをなんとかお願いいたします。何しろうちの塚田のたっての依頼なもので」
マリ子「その名前を出されると弱いの、本当に」
井関「ですから、お願いいたします! このとおりでございます!」
マリ子「ええ、マチ子に余裕さえあれば塚田さんには個人的にも随分お世話になってるんだし…」
井関「ですから、お願いできないでしょうか? このとおりです!」
はるがダイニングに来て、植辰さんとおウメのおばあちゃまはお紅茶よりも日本茶がいいとヨウ子に話して去って行く。
マリ子「つまり、マチ子はあれでなかなか面倒な人間なんですよ。私たちから見ればひところあれだけの仕事をこなしてきたのにと思うんですけど、毎朝の夕刊に『サザエさん』を載せる時だって『週刊毎朝』に連載していた『似たもの一家』も気が散るからと言って断るほどなんですのよ」
井関「はあ…」
マリ子「すみません、塚田さんには私からも申し上げておきますので、マチ子にもう少し時間をやってはいただけませんでしょうか?」
井関「はあ…」
お千代ねえやが「うちの人がね、お刺身は何時ごろ持ってきたらいいかって」とマリ子に勝手口から声をかけた。あと1時間後とマリ子は答える。
台所
千代「今日はね、うちの人、頑張っちゃって暗いうちから河岸へ行って、そりゃあいい品を仕入れてきたんですよ。乞うご期待!」
マリ子「もちろん期待してますとも!」
千代「お琴さん、それから道子ちゃん。うちのことよろしくお願いします」
道子・琴「はい!」
千代「それじゃあ、後でね!」
すっかり魚屋のおかみが板についてるなあ。
ヨウ子「相変わらずの苦労性」
マリ子「というよりおせっかいなのよ。いつまでも先輩風、吹かせちゃって。ねっ、道子ちゃん?」
道子「ええ。もうこのうちのことは私とお琴さんさえいれば何にも心配することはありません!」
マリ子「はいはい」
道子「あっ! 私、お送りするんでしたね、井関さんを!」
道子はダイニングにいる井関の帽子と荷物を持って玄関へ。「どうもでした!」
応接間
ウメ「へえ~、すると植辰さんは姉妹出版の倉庫番長さんってわけか」
植辰「そうだとも。偉いんだよ、おばあちゃん、俺は…」
ウメ「おや、まあ、そうかい」
植辰「だけどね、『サザエさん』の評判がめっぽうすげえからさ、どれもこれもパ~ッと出ちまうんだよ。だからさ、肝心の倉庫番がさ、ええ? 番をするものが少なくなっちゃったんだから張り合いがねえことおびただしいよ」
タマ「何言ってんだい。売れて結構。あの時はね、このうちに足を踏み入れることもできなかった。あの時を思い出すと私は今でもゾッとするよ」
ウメ「でもね、お若いのにさ、マリ子さんも本当によくおやりになすったもんだね」
はる「はい、おかげさまで山積みされていました1巻目も全部売り切れましたところで買い取らせていただいた、このうちをゴロゴロゴロと引っ張ってきましたものですから、こうしていつでも皆様と寄って…お話ができるということでございますわ」
ウララ「本当にオルガンも飾り棚も、みんな昔のまんま使っていただいてて、ねえ、マドカさん、私たち一体どこにいるのかしらなんて錯覚してしまいますわよね」
マドカ「錯覚してしまいますわよね。本当に懐かしい…」
タマ「けどね、ウラマドさん、顔色がよくなったというか日に焼けたというか、とにかく元気そうでいいじゃありませんか」
ウララ「ええ、あちらに行ってからは、もう、お天気でさえあれば、お庭や畑へ出てますでしょう」
植辰「おっ! それじゃあ、俺と同じじゃねえか」
マドカ「そのとおり! お野菜はもちろんのこと、ぼちぼちおミカンもなり始めましたのよ」
ウメ「まあ、おミカンって、あの…酸っぱいあのおミカンですか?」
ウララ「いいえ。もう一生懸命かわいがってますから甘い甘いおミカンですわよ」
植辰「へえ! そりゃあ大したもんだ」
マドカ「はい、おかげさまでホームのお野菜は自給自足。青い空と青い海を前にして、私たち、それは満ち足りた生活をしておりますのよ」
ウララ「本当にこのうちをマリ子さんに買っていただいたんで、私たちは本当に幸せですわ」
はる「いいえ、とんでもございませんわ」
タマ「あのねえ、ウラマドさん」
マドカ「はい」
タマ「今度、一度遊びに行ってもいいですか?」
マドカ「どうぞどうぞ! 本当にいらしてくださいましよ! お待ちしておりますわよ!」
タマ「そんなら奥さん、今度ね、いつかね、お供させてくださいな」
はる「ええええ、是非、ご一緒いたしましょう」
ウメ「それじゃあ、今度ね、植辰さんやみんなで遠足に行かないかい? ホームまで」
植辰「賛成。大賛成だよ。その時ね、ついでにあっしが植木の方、見てあげますよ」
ウララ「いいえ、今ではみんな専門家ですのよ」
マドカ「ですからね、ですからね、どうぞ温泉にゆっくりとつかってらっしゃいましよ」
植辰「冗談言っちゃいけませんよ。私はまだそんな年じゃありませんよ」
ウメ「そういうのをね、『年寄りの冷や水』っていうんだよ」笑い
道子が植辰とウメに日本茶、お琴さんはフルーツみつ豆を運んできた。
植辰「どうもどうも。すまないね」
ウメ「道子ちゃん。あの、三郷さんから時々お便りはあるの?」
道子「はい」
ウメ「あら、そう。それじゃあね、今度、あんたがお手紙書く時にこの私からもよろしくって添えといておくんなさいよ」
道子「はい!」
マドカ「まあね、本当にどうしていらっしゃいますのでしょうね。北海道なんて、あんな寒い所で」
ウララ「でも、シベリアの方がもっとお寒いんでございましょう?」
植辰「!」
タマ「植辰さん、大丈夫ですよ。うちの朝男だって帰ってきたんだもの。栄ちゃんだって必ずさ」
植辰「うん…」
ウメ「本当だよ! 三吉だってね、ちゃ~んと帰ってきてくれたんだもの」
植辰「ご隠居さん…」
ウメ「諦めちゃいけないよ。どんなことがあったってさ」
植辰「ああ、諦めるもんかい! こう見えたってね、植辰は江戸っ子だよ。ねっ? 岸壁の父は泣きはしねえよ」
ウメ「よっ! その意気だ!」
植辰「だけどさ、野郎が帰ってきたら浦島太郎だね。何しろだって千円の札が出てる世の中になっちまったんだからな」
昭和25(1950)年1月7日 発行開始日
タマ「お金に値打ちがなくなったもの」
ウメ「ねえ、私たちが商いしてた時は、あんた、10円がもうやっと。百円札なんてあんためったに拝めやしなかったんだから」
マドカ「でもね、何が何でもうれしいと思うことは、今年から年を満で数えることになったことですわ。ですからね、私、バースデーが来るまで2つも若くなるわ! オホホホホッ!」
1949年5月24日公布、1950年1月1日施行。
植辰「へえ~、そんなもんですかね」
ウララ「そうですわよ。女性ならみんな若くなるのはうれしいものですもの」
植辰「私はまあ女性なんてのは、とっくの昔に卒業された方たちばかりだと思ってましたけどね」
ウメ「まあ!」
一同「まあ!」
植辰さんタジタジ。今なら大炎上案件だね。
マチ子「わあ、だいぶ話に花が咲いてるみたい。あれ? 私の分は?」
ドラマ開始10分にしてマチ子初登場。ダイニングでフルーツみつ豆を食べてるマリ子、ヨウ子。
マリ子「出来たの? 原稿は」
マチ子「出来た、出来た!」
ヨウ子「早く仲間入りなさりたくて筆が速く進んだんでしょう」
マチ子「まあ、そういうところかな」
マリ子「結構です」
マチ子はマリ子からフルーツみつ豆を取って食べている。
マリ子「私たちだけで先に行くと、またマッちゃんが怒るからって一刻も早く来るようにって祈ってたのよ」
マチ子「あら、わたしはそんなヤキモチ焼きではありませんよ」
ヨウ子「ヤキモチ焼きではなくても人に後れを取るのがお嫌なのよね」
マチ子「見抜かれちゃうのよね、ヨウ子ちゃんには、もう」
マリ子「だったら初めっから素直に言えばいいの。ねっ、道子ちゃん!」
道子「は~い!」
マチ子「まあ、道子ちゃんまで~!」
「ごめんくださ~い」
マリ子「あっ、オネスト様よ」
道子やお琴さんが出るより先にマリ子たちがオネストを迎えに行った。
マリ子「お母様! お待ちかね、オネスト様よ」
マチ子、ヨウ子も一緒に応接間に行った。
はる「まあ!」
オネスト「皆さん、こんにちは」
はる「まあ、ようこそ、おいでくださいました。さあ、どうぞ」
マドカ「まあ、一体どうしていらっしゃるのかと思って心配しておりましたのよ」
オネスト「あ~、ごめんなさい。遅くなりました」
ウメ「いいんですよ。別にね、みんな先急ぐ身じゃないし」
ウララ「いいえ、オネスト様は相変わらずお忙しいんでございますのよ。私どものホームにもいらしてくださいましてね、出かけられない方のために『聖書』をお読みくださったり畑を手伝ってくださったり」
ウメ「おやまあ」
タマ「相も変わらずそんなことをしていなさるんですか?」
はる「ええ。それがオネスト様のお仕事でいらっしゃいますもの」
オネスト「はい。これは遅刻のおわびです」
ウメ「あら、遅刻のおわびだなんて、そんなあなた…。あら、まあ…でもなんてきれいなお花なんでしょう」
はる「本当にかわいいこと。スイートピーだわ」
オネスト「はい。教会の畑に咲きました」
ウメ「へえ~、ピーってんですか、この花」
植辰「そうだよ、おばあちゃん。これは豆の花だよ。豆が取れるんだよ」
おお、ホントにマメ科なんだ。しかし、毒性があり食べられない。
タマ「またまた~!」
植辰「何だい、その言い方はよ」
タマ「あんたはね、何でも知ったかぶりするからさ。これは西洋の花ですよ」
植辰「そうだよ、分かってるよ、西洋の花だって。だって、おめえ…。あの…ピーってのは豆のことだよね? マリ子さん、そうでしょう?」
マリ子「ええ、だって、グリンピースといったら青豆のことですもの」
植辰「ほ~ら、見ろ!」笑い
植辰さんはスイートピーがマメ科の植物であることを知ってるけど、周りの人が信じてくれず、マリ子も植辰に加勢したけど、実はあんまり信じてないってこと!?
道子「じゃあ、私が生けてまいります」
はる「はい、お願いしますよ」
ヨウ子「じゃあ、私、花瓶を見ます」
マチ子「そうね。このお部屋にはかわいいお花がぴったりだわ」
ウメ「あら、嫌だよ、アハハハハッ!」
マチ子「えっ?」
ウメ「かわいい花だなんて言われたら、やっぱりてれちゃうじゃないのさ、私たち。ねえ?」笑い
マチ子「そんなことありませんわ」
マチ子はスイートピーの事を言っていたのに、ウメはかわいい花を自分たちだと勘違い。マチ子たちは笑いをこらえて部屋を後にした。
マチ子「ねえねえ、もっとこうパ~ッと華やかに生けてやってよ。この辺も膨らませて」
道子「でも、野生のピーですからあちこち勝手に折れ曲がっておりますもんで…」
マチ子「いえいえ、そのピーをなんとかするところが腕でございましょう」
ヨウ子「お願いだからもう、それ以上笑わせないでよ、もう…」笑い
マリ子「悪い子ね、あなたたちは、もう」
マチ子「とんでもない。日暮里のおばあちゃまにしろ何せ皆様、かわいい方ばかりですもの。これほど似つかわしい花はないと思って、ヨウ子だって最高の腕を振るってるのよ。ねえ?」
ヨウ子「それだけは本当です」
マリ子「でもよかったと思わない?」
マチ子「何が?」
マリ子「ウラマドのおば様の家、買わせていただいて」
ヨウ子「本当」
マチ子「そのかわり、マー姉ちゃんだって頑張ったじゃないの。ねえ?」
マリ子「ううん、それはみんなが協力してくれたからよ」
マチ子「まあ、長女らしいご発言。でも、もう少し威張ってもいいのよ。許すから」
マリ子「いいえ、お後が怖くてとてもとても…」
千代「へい、お待ち遠さまでした~!」
マリ子「あっ、は~い、ご苦労さま!」
千代「あの、酢の物から持ってまいりましたからね」
マリ子「はいはい」
千代「お刺身、後からすぐ持ってきますからね」
マチ子「お刺身って何の?」
千代「サザエさん」
マチ子「ええっ!?」
千代「サザエの刺身もたっぷり入ってますからね。それじゃあ!」
お千代ねえやが着物じゃないの、初めて!?
マリ子「天海さんのシャレかしら?」
マチ子「ねっ!」笑い
応接間からも笑い声が響く。
これを皮切りにはるに同窓会病が新たに加わったことは言うまでもありませんでした。
同窓会だけで15分だけど、マチ子は「サザエさん」以外の原稿依頼を断っている、千代のおかみさんぶり、岸壁の父、千円札、満年齢と情報は盛沢山。
先日、「ファミリーヒストリー」の前川清さん回を見ました。長崎の生まれで両親ともクリスチャン。母は熱心な信者で前川さんが売れて、旅行に行こうと行っても、それよりお金をくださいと言っていたそうです。慈善事業に夢中で、亡くなった時にはたくさんの人が母のために集まった。なんだかはるさんと重なるものがありました。