NHK 1987年9月9日(水)
あらすじ
5月、蝶子(古村比呂)たちは強制疎開ということになり、蝶子たちは滝川へ、泰輔(前田吟)たちは富子(佐藤オリエ)の親戚のいる茨城へ向かうことになった。信州へ向かう音吉(片岡鶴太郎)たちを見送り、みさ(由紀さおり)が富子に着物を分けてやっていると、別れ別れになる前の晩にこんな、としんみりしてしまう。泰輔と富子に別れを告げ、要宛てに「瀧川の石澤牧場にいます」と立札を残し、蝶子たちは夜行列車で北へ向かう。
2025.9.17 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
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北山みさ:由紀さおり
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中山音吉:片岡鶴太郎
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中山はる:曽川留三子
岩崎加津子:藤重麻奈美
岩崎俊継:服部賢悟
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鳳プロ
早川プロ
劇団いろは
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野々村富子:佐藤オリエ
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野々村泰輔:前田吟
<5月の空襲のあと、チョッちゃんは、ついに強制疎開を申し渡されました>
「あぐり」の時の”建物疎開”と同じことで”空襲による火災の拡大を防ぐために、住宅などを強制的に壊し、空地にした政策”ということね。駅に近い場所だったのかな。ただ、この利点は泰輔さんたちみたいに全て焼け出される前に荷物を運びだせるということ。
それでもねえ、戦前の「あぐり美容室」はめちゃくちゃオシャレな建物だったのに、戦後は普通のビルになっちゃったんだよねえ。
「本日も晴天なり」では宗俊たち40代のオヤジたちが建物疎開の家を壊す作業に従事していた。何とも辛い作業だ。資料映像も出てた。そういや、成人した子供が複数いる宗俊と神谷先生って同世代なんだな…
岩崎家茶の間
蝶子「滝川行くしかないわね」
富子「そうだね」
泰輔「義兄(にい)さんの甥っ子のとこかい?」
蝶子「三代治さんのとこか石沢のおじさんのとこ」
泰輔「うん」
みさ「蝶ちゃん」
蝶子「ん?」
みさ「三代治さんのとこ行くの、やめないかい? いや、三代治さんがどうこうっちゅうことではないんだ。そういうことではないんだ。三代治さんのとこっちゅうことは昔の我が家だべさ。…思い出、ありすぎるもね」
うなずく蝶子。
みさ「お父さんの部屋、蝶ちゃんの部屋、道郎さんの部屋、人が入れば違う使われ方してるべさ。様子も勝手も違うべさ。そういうもん見たらさみしくないかい? 悲しくないかい?」
うなずく蝶子。泰輔たちも納得。
みさ「そりゃ、あの、人のいい三代治さんのことだ。行くって言ったら、そりゃ喜んで迎えてくれると思う。したけど、かえって気ぃ遣わせるんでない?」
蝶子「そうだね」←字幕は”そうだね”だけど、古村比呂さんの言い方は流行語にもなった”そだね”に聞こえる。
みさ「そりゃ、三代治さん一人だったら、まだ、いい。したけど、奥さんもお子さんもいるしょ?」
うなずく蝶子。「石沢のおじさんのとこ行くかい?」
うなずくみさ。「嘉市さんのとこがいいしょ」
蝶子「牧舎もあるし、納屋もあるもね」
みさ「牛の世話やら羊の世話して、仕事の手伝いもできるしょ?」
蝶子「そうだね」
みさ「ねえ! したら泰ちゃんたちも遠慮なく来れるんでない?」
泰輔「いや、俺は北海道行かねえよ」
みさ「したけど…」
泰輔「いくら嘉市さんのとこだって、俺たちまで世話になるっていうのは…」
蝶子「けど、どうするの?」
富子「私の叔父が茨城にいることは、いるんだ。そこ、行こうじゃないか」
泰輔「嫌だよ! 俺は何としてもこのまま東京に残るんだ。東京に残って、もう一旗、揚げるんだよ! 田舎に行って、うずもれるなんてまっぴらだよ!」
富子「そんなこと言ったって、住むとこないじゃないか! 今、そんな、夢みたいなこと言ってる時じゃないだろ!」
お茶を飲み干す泰輔。
富子「東京…私だって離れたかないやね。東京以外、知らないんだから怖いさ。勝手、分かんないんだから。だけど、しかたないだろ」
ため息をつき、下を向く泰輔。
富子「義姉(ねえ)さん、私ら茨城行きますよ」
みさ「そうかい」
富子「北海道より東京に近いですから」
泰輔「ああ」
みさ「また別々になるんかい」
中山家
荷造りしている中山夫婦。
はる「加津(かっ)ちゃんちは片づけやってんのかい?」
加津子「やってる」
はる「そう」
俊継「おじさんたちは、どこ行くの?」
音吉「ん?」
はる「信州さ」
俊継「どこ?」
加津子「長野県」
はる「小諸ってとこ」
俊継「ふ~ん」
音吉「♬小諸なる、って知ってるかい?」
加津子「何?」
音吉「え? ♬小諸なる古城のほとり、ってやつだい。なあ!」
はる「え?」
音吉「いや、だから、そんなのあったろ?」
はる「俳句かい?」
音吉「いや、何つうんだ、あれ」
はる「川柳?」
音吉「かな?」
はる「♬小諸なる古城のほとり」
音吉「♬我泣きぬれて蟹とたわむる、ってやつだ。な!」
はる「何? それ」
音吉「だから! そういうもんだよ」
ポカ~ンな子供たち。
音吉「ま、いいか! な! そんなもんだ!」
島崎藤村の作った詩歌? ボニージャックスの歌と音吉の歌の感じは違うけど。音吉のは、浪曲?っぽい感じ。
我泣きぬれて…は石川啄木の短歌。
はる「加津ちゃんたちは北海道か」
加津子「うん」
はる「時々会うってわけ、いかないね」
加津子「寂しいね」
音吉「加津ちゃん、これ、やるよ」ノコギリ、鉋を手にする。「疎開ってことになったら、いろいろ不自由なことあるからさ。ね!」
加津子「うまく使えるかな…」
音吉「大丈夫だよ。小学校1年生の時におじさんの弟子になって建具屋になりてえって一度は言った腕だよ。やれるよ」
加津子「うん」
音吉「はい」
加津子「ありがとう」
音吉「いや…」
この間、ラジオから音楽が流れてるんだけど、元々知ってる曲じゃないと、よく分からないね~。童謡のような明るい曲調に思えた。
大音量でGoogleの曲検索したら「お山の杉の子」らしい。すげーな、曲検索!
そういや、小諸といやぁ、「マー姉ちゃん」も編集の細谷の口利きで小諸に疎開するかって話になりかけたんだった。マチ子と細谷さんのやり取り、妙にドキドキしたなぁ! これ、昭和19年の春先の話。就職先もないと徴用されちゃうんだよね。
岩崎家
荷造りする蝶子たち。
自宅前に荷物をまとめた音吉たちが岩崎家を訪れた。
茶の間
はる「これ、私らの行き先」
蝶子「これは私たちの」
お互いに住所を書いた紙を交換する。
富子「うちはまだ詳しい住所分かんないから」
音吉「ええ」
富子「落ち着いたら、そん時」
はる「はい」
紙を懐にしまう蝶子。「音吉さんとこには、ホントにお世話になりっぱなしで」
音吉「いいえ、そんな」
はる「こっちこそ」
蝶子「いろいろ迷惑もかけたわ」
音吉「モメましたしね」
うなずく蝶子。
みさ「モメたんかい?」
蝶子「ん? 要さんのバイオリンの練習の時」
音吉「木づちの音、止めろなんてね。ハハハハ!」
あ~…とうなずくみさ。
音吉「最近では、そういうこともなくなって何だか気が抜けたみたいになって」
泰輔「中山さん」姿勢を正す。「この家のことでは大変お世話になりまして、叔父の私からもお礼申します」手をついて頭を下げる。
音吉「いいえ、そんな…」
泰輔「同じ東京に住みながら、他人のあんたに世話になっちまって。何とお礼申してよいやら」
音吉「とんでもない、そんな」
蝶子「何よ! これが最後みたいに…」
富子「そうだよね。戦争終わりゃ、また、こうやってさ」
はる「はい!」
蝶子「また、ここでね!」
音吉「要の旦那の無事、祈ってますんで」
蝶子「ありがとう」頭を下げる。
音吉「おっかさんたちも達者で」
うなずくみさ。「お二人もね」
音吉・はる「はい」
岩崎家玄関
荷物を背負った中山夫婦。
泰輔「じゃ、気を付けてね」
音吉「野々村さんも」
<こうして音吉さんとはるさんも東京を去りました>
鶴太郎さん、元々役者志望だったらしく、うまかった。
加津子・俊継「さよなら!」
泰輔「元気でな!」
加津子・俊継「さよなら!」
岩崎家茶の間
荷造りする蝶子たち。俊継がリュックに荷物を詰めている。
富子「あらら、ちょっと俊ちゃん、これ、みんなは入りきらないよ。ん? これダメだ」…”ん? これダメだ”は字幕に出てたけど、誰がしゃべった?
泰輔は俊継の学帽をかぶっている。
蝶子「何でもかんでも持ってくのは無理よ。俊ちゃん」
富子「ね!」
加津子「ほら!」
俊継「だって!」
泰輔「ああ、これ、やり直しだな。ちょっとこれ出せ」
富子「そうだね。どうしてもいるってもんから入れよう。ね!」
蝶子「叔父さん、下着の着替えなんか、さっきので足りる?」
泰輔「ああ、足りる」
茶の間に入ってきたみさ。「富子さん」
富子「はい」
みさ「これ、持ってって」着物や足袋など。
富子「けど…」
みさ「いや、着替え、持ち出してないしょ」
うなずく富子。
みさ「ねえ、いくら疎開だからっていって着のみ着のままっちゅうわけにいかないしょ?」
富子「けど、こんないいもの…」
みさ「いざっちゅう時、お金になるんでない? いや、私の持ってく分は、ちゃんと取ってあるんだ。これ、富子さんにって取っといたもんなの。ね! したから遠慮なく」
富子「けど、何だか…」目を潤ませる。「ふだんならね、喜んで頂きますけど、別れ別れになる前の晩に、こんな…」
みさ「したけど、明日別れたらどうなるか分からないもね」
泰輔「何だかこれが最後っていう言い方だな」
みさ「なんも、そうなるってしゃべってるんでないの。したけど、そのぐらいの覚悟はしておいた方がいいんでない? 今は、そうした世の中だべさ」
蝶子も涙で目を潤ませる。しんみりした空気。
泰輔「もらっとけ。な!」
ありがたく受け取る富子。
蝶子「叔父さん、叔母さん、元気でね」
富子「チョッちゃんもね」
うなずく蝶子。
富子「義姉さんも」
うなずくみさも目が潤む。「ありがとう」
富子「加津ちゃんも俊ちゃんもね」
うなずく俊継、加津子。
涙を拭いた富子が明るく笑う。「アハハハハ、まさかね、こんなことでバラバラになるなんて思ってもいなかったもんね。ずっと東京でさ、暮らせるもんだと思ってたからさ」
泣きながらうなずく蝶子、みさ。
富子「は! 冗談じゃないよ。義姉さんが東京に来て半年。チョッちゃんが初めて東京に来て…」
蝶子「17年」
泰輔「そんなになるか…」
うなずく蝶子。
泰輔「音楽学校に通ってたと思ったら、結婚して、加津ちゃんが生まれて、マーちゃん、俊ちゃん」俊継に学帽をかぶせる。「いろんなこと、あったなあ」
蝶子「叔父さん、叔母さんには本当にお世話になりました」頭を下げる。
みさ「ありがとう」
首を横に振る富子。
泰輔「何言ってんだよ! 礼、言いたいのはこっちの方だよ!」
涙を拭く富子。
泰輔「楽しかったよな」
富子「うん!」
蝶子「また、みんなと会えるよね? 連平さん、夢助さん、頼介さん、神谷先生に安乃ちゃんに…邦ちゃん」
みさ「要さんにも…」
大きくうなずく蝶子は以前、撮影した家族写真が目に入った。
加津子の入学式前、要、蝶子、加津子、雅紀、まだ赤ちゃんの俊継。蝶子は部屋の隅に置いていた写真立てを拭く。
岩崎要様
わたしたちは瀧川の
石澤牧場にいます
蝶子
岩崎家の生け垣に泰輔が立札を立てた。蝶子たちはじっと家を見上げた。
蝶子「行こう」
泰輔「うん」
俊継が小さなバイオリンケース、加津子が要のバイオリンケースを背負っている。歩き出した蝶子がもう一度ふり返り、家を見る。
⚟︎汽笛
夜、蒸気機関車が走る。混雑する車内。
<昭和20年6月初め。約2か月後に何が起こるか知る由もなく、チョッちゃんたちは疎開していきました>
みさも子供たちも眠っているが、蝶子は起きている。顔はススで汚れている。
⚟︎汽笛(つづく)
「あぐり」も結局は疎開先を弟子の実家のある山梨にしたし、「マー姉ちゃん」も地元・福岡ではなく、最初は長野に行こうとしてたし、東京から離れている場所に住んでいた人ほど、このまま東京に戻れなくなるのではないかと恐れ、できれば地元に帰りたくないという思いが強かったんだということを今生きてる人は理解しなきゃならないんだろうな。「あぐり」の時もそうだったけど、何で地元に帰らないの?という人が大量に湧くよね。本当に最後の手段、なんだろうな。
2025年9月18日(木)19時からYouTubeの世良公則公式チャンネルにて世良公則 x 古村比呂の対談(ポッドキャスト形式)のプレミアム公開が決定!
— 世良公則 (@MseraOfficial) September 16, 2025
世良公則『KNOCKKNOCK Online』
第1回ゲスト: 古村比呂
2025年9月18日(木)19時
プレミアム配信URL:https://t.co/Mg4vFEduKt… https://t.co/4ueBCj7Vxz pic.twitter.com/gxl1N2ftrc
ほーう。
そういえば、「おしん」「マー姉ちゃん」「純ちゃんの応援歌」あたりはNHKでも15分くらいの短いインタビュー番組やってたよね!? 「おしん」はヒロインの田中裕子さんではなく、いつも子役時代のキャストばかりになりがちだけど…「チョッちゃん」でもそういう番組を作ってほしかったな。今、バイオリニストになったマーちゃんの裏話も聞きたい。

