NHK 1987年9月30日(水)
あらすじ
青森に帰ってきた蝶子(古村比呂)は富子(佐藤オリエ)に、泰輔(前田吟)は東京で皆を迎える準備をしている、富子も一緒に東京へ行こうと言い、みさ(由紀さおり)たちには小屋が出来たら東京へ行こうと話す。帰ってきた富子と一緒に来た蝶子に、泰輔が蝶子たちの家は材木がそろうまでもう少し待ってくれと話していると、たま(もたいまさこ)が連平(春風亭小朝)を訪ねてやってくる。たまは連平の言葉を支えに生き延びたと…。
2025.10.8 NHKBS録画
脚本:金子成人
*
*
音楽:坂田晃一
*
語り:西田敏行
*
岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
*
北山みさ:由紀さおり
*
国松連平:春風亭小朝
*
中山音吉:片岡鶴太郎
*
増田たま:もたいまさこ
中山はる:曽川留三子
*
岩崎加津子:藤重麻奈美
岩崎俊継:服部賢悟
*
鳳プロ
早川プロ
劇団いろは
*
野々村富子:佐藤オリエ
*
野々村泰輔:前田吟
諏訪ノ平驛
⚟︎汽笛
蝶子が駅から出て、倉庫へ。
俊継「あ、お帰りなさい!」蝶子に抱きつく。
加津子「お帰りなさい!」
蝶子「ただいま!」
富子が濡らした手拭いを蝶子に渡した。「はい」
蝶子「ありがとう」
富子「ねえ、うちのは?」
富子に向き直る蝶子。
富子「何さ?」
蝶子「叔父さんはね、東京に残ることになったから」
富子「『なった』って、そんな…!」
蝶子「叔母さんも、みんなも安心して。東京にはね、夢助さんも連平さんも、洗足には中山さんたちもいたのよ」
加津子「ホント!?」
蝶子「『加津(かっ)ちゃんたち元気か』って」
俊継「元気!」
加津子「うん!」
みさ「いやいや、そうかい。みんな、帰ってきてたんかい?」
富子「連平も?」
うなずく蝶子。
富子「夢ちゃんも?」
うなずく蝶子。「2人してフランスのせっけん売ってたわ」
富子「何がフランスだい!」涙を拭く。「けどさ、それと、うちの人が居残るのと、どういう関係があんの?」
蝶子「叔父さんたちが私が運ぶスルメを東京で売ってくれるっていうの」
富子「ん?」
蝶子「向こうで商売しながら、私たちを迎える準備をするって。叔父さん、早速、千駄木に小屋建てるって」
富子「小屋を?」
蝶子「そんな立派なうちなんか、今は無理よ。とにかく叔母さんには一足先に東京に帰ってもらうことになってるから」
富子「私?」
蝶子「今度、東京にスルメ運ぶ時、一緒に」
富子「私だけ?」
蝶子「私たちは洗足に小屋が建つまでは」
加津子「じゃ、洗足に小屋が出来たら帰れるのね?」
蝶子「うん」
俊継「いつ?」
蝶子「材木が集まったら、叔父さんや音吉さんたちで作ってくれるっていうから、そんな遠い話じゃないわよ」
俊継「帰れる、帰れる!」
笑い声
富子「けどさ…。私だけ先に行って、そのあと、その、いろいろ…大丈夫?」
蝶子「大丈夫よ」みさを見る。
みさ「あ? アハハハハ。いやいや、私なら大丈夫だ。炊事や洗濯もそこそこできるようになったもね」
蝶子「うん」
加津子「私もいるし」
蝶子「だから…」
嬉しそうにうなずく富子。
行商スタイルで海のそばを歩く蝶子。
倉庫
スルメなど荷物をリュックに詰める蝶子。
富子「義姉(ねえ)さん、私、先、行きますけど」
うなずくみさ。
富子「私ら夫婦が押しかけて、チョッちゃんにも義姉さんにも迷惑かけちゃって」
みさ「なんも。富子さんたちと一緒にいられたおかげでさみしいことなかったもね」
富子「そう言ってもらうと…」
みさ「楽しかったしょ?」
富子「はい」
みさ「ウフフ」
富子「いろいろありましたねえ」
みさ「そうだね」
富子「思い起こせば1年前、ヘトヘトになってチョッちゃん、頼って来たんだった」
約2週間前か…青森編もそこそこの長さだね。
富子「義姉さん、チョッちゃん、長い間、ありがとうございました。義姉さん…くれぐれもお達者で」
みさ「富子さんもね」
富子「きっと、また会えますから」
蝶子「叔母さん、何よ! 長のお別れみたいに。私たちもすぐに追いかけるんだから」
富子「うん」
加津子「じゃ、おばちゃん、私たち学校だから」
富子「ああ、行っといで!」
俊継「東京で待っててね」
富子「待ってるよ!」
加津子・俊継「行ってまいりま~す」
蝶子「はい、行ってらっしゃい」
みさ「行ってらっしゃい」
富子「それじゃ、義姉さん、東京で待ってますから」
みさ「はい」
蒸気機関車に乗る富子と蝶子。
汽笛
蝶子「眠れない?」
涙声の富子。「東京に近づいてるんだろうと思ったらさ」すすり泣く。
佐藤オリエさんのこういう自然な演技、すごくいい!
蝶子「ああ…」
富子「これ? ああ!」
真新しい小屋が建っていた。
蝶子「叔父さん! 叔父さん!」
戸を開けて泰輔が出てきた。「おう、来たか! 来たか!」
富子「出来たね~! あ~!」
泰輔「ああ」
中から連平が出てきた。「おかみさん…」
富子「連平!」
連平「帰ってきちゃった」
富子「よかったじゃないか!」
連平「鉄砲の弾もよけてくれたみたい」
富子「よかったじゃないか!」
連平「おかげでみんなでこうやって会えてる」
富子「よかったじゃないか…」泣き出し、連平の腕をバシバシたたく。
泰輔「さあさあさあ、中、入った! な! 入った、入った、入った! 入った、入った! どうだい? ん?」小屋の中へ。
富子「なかなか頑丈そうに出来てるじゃないか。はあ~」
蝶子「窓もちゃんとある」
富子「うんうん」
泰輔「リンゴ小屋よりはマシだろ?」
富子「ああ!」
連平「聞いたよ、チョッちゃん。台風で小屋が潰されたって話」
蝶子「これなら大丈夫ね」
泰輔「あの時の経験を生かして建てました。うん!」
富子「へえ、あの時は、しょげかえってただけじゃないのかい」
泰輔「何言ってんだよ。常日ごろからね、研究してるんだよ、俺は」
蝶子「叔父さんだって、やる時は、ちゃんとやるのね?」
泰輔「『だって』とは、どういうことだ? え!」
富子「ねえ!」
蝶子「うん!」
連平「何? 何?」
泰輔「さあね~」
富子「『さあ』だって! 茨城から青森にたどりついた時のあんたは、もう」
連平「ちょっと、何なのよ?」
泰輔「いや~、チョッちゃん、チョッちゃん。あの、小屋のことだけどもさ」
蝶子「何?」
泰輔「今だって…。(連平に)何でもないって。(蝶子に)今だって、4人だから要さんがもし帰った時のこと考えたら、この広さじゃ足りないと思うんだよ」
小屋を見回し、うなずく蝶子。
泰輔「そういうわけで材木が少し足りないんだ。小屋の方、待ってくれないか?」
蝶子「はい!」
泰輔「うん」
⚟︎女性「ごめんください!」
泰輔「はい! 誰だ?」
女性の声に焦る富子。「あれ?」
泰輔「何考えてんだよ」
連平「社長」泰輔を指さす。
泰輔「違うって、違うよ」
連平「え?」
戸が開き、入ってきたのは荷物を背負った、たま。「増田でございます」
連平「たまちゃん…」
たま「はい!」
蝶子「増田さん!」
たま「はい!」
富子「ああ!」
泰輔「ああ!」
たま「はい!」
蝶子「上がって、上がって!」
泰輔「どうぞどうぞ、入った入った」
<ご記憶の方もおられると思いますが、この人は加津子ちゃんが入院した時、ついてくれた看護婦の増田たまさんです>
たま「皆様、お懐かしゅうございます」頭を下げる。
泰輔「いやいやいや、全く…」蝶子たちも一斉に頭を下げる。
蝶子「従軍看護婦で戦地にいらしてたんですよね」
たま「はい、3日前、東京にたどりつきました」
蝶子「ご苦労さまです」
富子「ホントにねえ」
泰輔「ご苦労さま」
黙って頭を下げる連平。顔をあげ、たまと目が合う。
せきばらいする富子。
蝶子「私たちは…」立ち上がろうとする。
富子「ああ」
泰輔「そうだな」
連平「どこ行くの? ねえ」
蝶子「ちょっと…」
富子「天気いいし…」
連平「いや、雨降るかもしれない。ね!」
泰輔「だってさ」
連平「ちょっと、いて! いて、お願い!」泰輔の脚にすがりつく。「ちょっといてよ。いてよ」
たま「連平さん」
連平「はい?」
たま「捜しました」
連平「あたしを?」
たま「はい。岩崎さんのお宅に伺えば分かると思い、行ったところ、うちはなく、お向かいの中山さんにこの家のことを伺って、こうやって」
連平「あの、何か…何か用?」
たま「昭和19年、お別れする時の連平さんの言葉を忘れはしませんでした。『戦争終わっても生きていたら、また会いたいもんだ』。そのひと言を支えに私は生き抜いてきました!」
うなずく連平。
富子「よく無事にねえ」
たま「はい!」
泰輔「うれしいだろ?」
連平「社長!」
泰輔「女の人生、左右するようなセリフ吐きやがって、この色男が!」
連平「違うってば」
富子「何しろ、あんたのひと言が支えになったんだから」
たま「はい!」
連平「『はい』だって」
蝶子「そしたらね、最後まで責任取らないとね!」
富子「うん、そりゃそう!」
連平「チョッちゃん!」
富子と蝶子は顔を見合わせてうなずく。
「おい!」と連平を小突く泰輔。
連平「え?」
笑顔のたま。
岩崎家前
音吉「そう、あの人、行った?」
蝶子「たまさんね、来たわよ」
はる「連平さんの何なの?」
音吉「ひょっとして連平さんの?」
蝶子「あの二人、結婚するんじゃないかな?」
音吉「え?」
はる「へえ~」
蝶子「するわよ」
音吉「ふ~ん」
蝶子「させるわよ」
音吉「ま、材料さえ集まりゃ、俺や野々村さんたちで建て始めたら、あっという間だから」
はる「そうだね」
⚟︎電車の走行音
蝶子たちの前を復員兵が歩いてきた。じっと見つめる蝶子だったが、男は素通りしていった。
<要さんの消息は、いまだに分かっていません>
蝶子の住む倉庫に手紙が届けられた。
<昭和21年9月になりました>
手紙を広げる蝶子。
みさ「泰ちゃん、何だって?」
嬉しそうな蝶子。「洗足に小屋、出来たって!」
みさ「ホントかい?」
蝶子「『昨日出来たので、いつでも東京に来られたし』」
みさ「いやいや~! アハハハ」
蝶子「それに、連平さんとたまさんが所帯持ったって!」
みさ「あれ! アハハハ」
蝶子「アハハハ」
みさ「あ~、いやいや。よかったね」蝶子と手を取り合う。
蝶子「住むとこ出来たか!」
喜び合う2人。
加津子・俊継「ただいま!」
蝶子・みさ「お帰り!」
蝶子「加津ちゃんと俊ちゃん! 東京に、うち出来たのよ!」
俊継「ホント!?」
加津子「じゃ、東京に帰れるの!?」
うなずく蝶子。
加津子「うわ~!」
俊継「帰れる、帰れる!」
はしゃぐ子供たち。
蝶子とみさも手を取り合い、喜びを分かち合う。(つづく)
たまさん帰ってきてよかったねと思いつつ、連平は終始引き気味、でも、たまさんは連平にグイグイで見るのが嫌なカップルなんだよね。全体の脚本は素晴らしいんだけど、カップル萌えは全くないドラマなんだよな~。
私の場合は「ゲゲゲの女房」は全体の話も好きだったけど、ヒロイン夫婦にめちゃくちゃハマったし、これまでの再放送だと「あぐり」も「本日も晴天なり」もそう、「おしん」もヒロイン夫婦のほかに雄と初子の関係もツボだったし、「マー姉ちゃん」だと一瞬の話だけど、マチ子と編集の細谷さんのエピソードが切なくて好きだった。
「チョッちゃん」の登場人物は人としてはいいんだけど、男性としては、すごく嫌い。神谷先生は先生なら最高だけど、男としては、ホントに嫌。要も最後まで、あんまり…で終わりそうだし。
そういや、たまさんはマーちゃんのこと知らないよね…
