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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (86)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

ヨウ子(早川里美)の見舞いにきた三郷(山口崇)とマリ子(熊谷真実)が、磯野家の疎開先について話していると、塚田(日下武史)が訪ねてきた。細谷(下條アトム)が、信州で小学校の美術の先生として働き口がある疎開先を見つけたと言う。マチ子(田中裕子)がお礼のために細谷を訪ねると、独り病床で空咳をしていた。マチ子が介抱しようとすると、細谷は漫画家としてのプライドを持てと断り、ただの風邪だと言うのだが…。

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しばらくぶりで三郷智正がヨウ子の見舞いにやって来てくれました。

 

昨日あたりから部屋中の窓ガラスにテープが貼られるようになっていた。

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この世界の片隅に」の監督さんのコラム。戦時中を描くドラマなどでは定番の窓ガラスに紙テープは実はそれほど一般家庭では行われていなかったという話でなかなか面白かった。

 

智正「この前、お伺いした時よりずっとお元気そうです。それに顔色がいいので写真屋さん安心しました。ねえ、奥様」

はる「はい、おかげさまで」

ヨウ子は今度疎開することになったと話した。少し表情が曇る智正だったが、「その方がよいかもしれませんね」と、昔々、大磯の海辺の方で転地療養したことを話す。

 

智正「それで九州の方へお帰りですか?」

はる「いえ、別段、福岡と決めてるわけではないんですのよ。幸い、マリ子とマチ子が働いてくれたお金が多少ございますので、それで土地でも買ってお百姓仕事をしてみようと思っておりますの」

智正「でも、奥様達にそのようなことがおできになるんですか?」

はる「はい、きっと思ってるよりは、ずっと大変なことだと思うんですけれども、でも空気がよくて一家4人が食べていけるだけの作物が取れさえすればこんな結構なことはございませんからね。それでまああちこち問い合わせてはいるんですけれども、三郷さんにもお心当たりがございましたら是非ご紹介していただきたいんですけれども」

 

お金が多少ある…で土地が買えるというのはすごい。それに別に福岡に帰ると言うわけでもないと思ってるところもすごい。あぐりみたいに東京から離れたくないという気持ちもあったのかな。

 

智正「ああ…まあ何しろ急な話ですから…。でも母にもよく話しまして心掛けておくようにいたしましょう」

はる「よろしくお願いいたします」

智正「承知いたしました。じゃあ、あのヨウ子ちゃんお大事にね。また伺います。それまでにはきっとすばらしい所を探しておきましょう」

ヨウ子「ありがとう。皆さんによろしく」

智正「はい。お伝えいたします。それじゃあ」

 

1階に降りて、マリ子お茶を出しながら挨拶。このままでは食料が窮屈になるばかりだし、何よりもヨウ子には栄養が必要だという。マリ子を気遣う智正。

マリ子「畑をやってニワトリを飼って、近くに小川でもあれば魚も捕れて申し分ないってみんなで勝手に想像しあって結構楽しんでいるんですよ」

智正「そうですか。何だか羨ましいようですね」

マリ子「えっ?」

智正「いや、こちらへ伺うといつもですが私の方が勇気づけられるような気がしましてね」

はる「まあ」

 

智正「そうですね。人間いつでもどこでも頑張って生きていかなければいけないんですね」

マリ子「三郷さん…?」

智正「大丈夫です。ヨウ子ちゃんがそうやってじっくり健康を取り戻している間にこの戦争はきっと終わります。そしたらマリ子さん、またいい絵を描いてください」

マリ子「はい」

 

しかし、この時期、既に米軍はマーシャル群島に上陸。日本本土空襲の準備を着々と進めていたのです。

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そこに訪ねてきたのが塚田。そのまま同席する智正。

はる「信州…と申しますと、長野でございますわね」

塚田「そう、その長野県のこの佐久という所にいいあんばいに小学校の先生の口が見つかったんですよ。それで早速問い合わせてみたらそこの校長が田河先生のファンでしてね。磯野マチ子って名前も知ってたし絵の先生だったら採用してもいいってことになったもんだから」

 

マリ子「でもどうして?」

塚田「どうしてって…マッちゃんから細谷が頼まれてたらしいんだけど違ったのか?」

はる「いえ、今、こちら様にもそのことでお願い申し上げていたところなんですの。そうですか。それではマチ子が細谷さんに」

智正「いや~、これはしかしいいお話ですね。せっかくいい所へ疎開なさっても、マチ子さん、女子挺身隊に徴用されるお年ですから東京にでも動員されたらそれこそ何もならないということになりますからね」

はる「本当ですわ」

 

塚田「その点を細谷も気ぃ遣ってましてね、まあ就職付きの疎開地を探したらしいんだけれども小学校の絵の先生ってのはやつにしてはヒット、いやあいつらしくない快打だな」

マリ子「本当! マチ子は私より子供好きですし、この話、どんなに喜ぶか分かりませんわ」

塚田「それじゃあ、まあマッちゃんが帰ってきたら早急にご一家の意見をまとめていただいて僕ん所へ連絡くれ。後々の段取りのこともあるしな」

 

マリ子「後の段取りって?」

塚田「何だい~、いつになっても君って人は…」

はる「まことに申し訳ございまっしぇん」←あら? 字幕が黄色になってる。

塚田「いえいえ…。まあ学校ってところは決まって4月が新学期ですからね。それにこの4月1日からどうやら寝台も特急も廃止になるそうですよ」

はる「まあ…」

 

智正「そうですか。となるとあれですね。ご病人をお移しするのが第一目的ですから少しでも楽な列車にお乗せした方が体に対する影響も少ないってことになりますね」

塚田「それそれ。それでまあこの話できるだけ今月中、もうそれもできるだけ早い方がいいって細谷が気ぃもんでたもんですからね」

はる「何から何まで本当にありがたいことですわ」

 

昨日、昭和19年早春と出ていたので、3月頃ということですかね。

 

細谷のことを聞いたマリ子。塚田は手の放せない仕事につかまってると何となく濁す。マリ子はお礼を言い、2階に行き、ヨウ子に報告。

ヨウ子「信州の佐久?」

マリ子「小諸から小海線で少し入るらしいの」

新幹線なら2時間くらいだけど当時ならもっとかかるか。

 

ヨウ子「雪が降るのかしら? スキーができたらいいわね」

マリ子「まあ、やる気?」

ヨウ子「あらゆる可能性に挑戦せずして何の生きがいがありますかと小学校の校長先生がおっしゃったわ」

マリ子「尻餅ついてもついても起こしてあげないから」

ヨウ子「フフフフッ」

 

マリ子「雪もいいけど、リンゴがあるんじゃないかな。信州ですもの」

ヨウ子「それにおそばも名物なんでしょう?」

マリ子「そうよ! これで決定的に決心がついた!」

ヨウ子「え~?」

マリ子「スキーもいいけど私はまずおなかいっぱい天ぷらそばが食べたいわ。だって…ああ~唾が湧いてきちゃう」

ヨウ子「さあ、天ぷらそばのなる木ってどんな木なんでしょうね?」

マリ子「ヨウ子ったら」

 

マチ子が帰ってきて、細谷にお礼を言うために陽談社に電話したが、休みを取っていると言われ、病気だというのでマチ子が1人、細谷のアパートに見舞いに行った。細谷は床について薬を飲んでいた。

 

細谷「そばに来るな!」

マチ子「細谷さん…!」

細谷「(せき込み)えらい風邪に見舞われちまったんだ。うつったら大変だぞ」

マチ子「大丈夫よ。私はそんな弱虫じゃないもの」

細谷「そりゃあ、マッちゃんは大丈夫かもしれない。けどな、もし、こんなものを持ち帰ったら大変だぞ…ヨウ子ちゃん、どうなる?」

マチ子「細谷さん…」

 

細谷「それにな、お姉さんやお母さんが今倒れたらえらいことになるじゃないか。やだな…こんなとこに来てほしくなかったのに」

マチ子「本当に風邪なんですか?」

細谷「そうだよ。で、どうした? 塚田さんから聞いてくれたかい?」

マチ子「はい。それでお礼に飛んできたんです」

細谷「気に入りさえすれば、そんなことはいいんだ」

 

マチ子「でも…」

細谷「職場込みの疎開先なんてのはめったにありゃしないんだからありがたく思えよ」

マチ子「もちろんです」

細谷「信州といってもそれほど北じゃないんだから、まあこれからはあったかくなるし、そうつらくもないだろう。そりゃ、ヨウ子ちゃんだってきっと元気になる」

マチ子「ええ」

 

マチ子に対して背を向ける細谷。「頑張るんだぞ」

マチ子「はい」

細谷「いつかまた…楽しい漫画が描けるような時がきっと来る」

マチ子「ええ」

細谷「じゃあ、ご苦労さん」

 

マチ子「あの…ちょっと待ってください。お食事なさったの?」

細谷「ああ、食ったよ」

マチ子「洗濯は?」

細谷「そんなもんないよ」

マチ子「うそ!」

 

細谷「マッちゃん」

マチ子「私だって絵描きです。昨日から寝たのか10日も寝ているのか見れば分かります!」

細谷「それがどうだっていうんだ! 男の部屋に来て雑炊作ったり、洗濯したりする君の姿なんてのは俺は見たくもないんだ。いいか? 君はプロの漫画家なんだぞ」

マチ子「細谷さん…」

細谷「もっとプライドを持って、そしてしたたかに生きていくんだ! 分かったか…!(せきこみ)」

 

そばに寄って背中をさするマチ子を手で払いのける細谷。「嫌いなんだよ…そういうの…。そのかわりな…秋になったら…リンゴが手に入ったら…1箱送ってくれ。お礼はそれで十分だ」

 

細谷はやっとマチ子の方を向く。「ほら、風邪がうつったらどうするんだって。マチクロ二等兵さん」

 

細谷の不可解な冷淡さとともにやつれたその様子が、ただの風邪ではないようにマチ子には思えてなりませんでした。

 

マチ子は元気なく帰宅。マリ子は大きな本?を広げて何かを書いていた。

マリ子「細谷さん、どんな具合だった?」

マチ子はぼんやり立ちつくす。

 

マリ子「何かあったの?」

何も言わないマチ子のもとに行ったマリ子にマチ子はもたれかかった。

マリ子「マッちゃん」

マチ子「何も聞かないで…。今はお願いだから何も聞かないで…」

 

何だか細谷さんがかっこよく見えてきた…。新八郎同様、戦前にしてはありえない長髪なんだけど、細谷さんは許せてしまう。演技力の差!?