NHK 1987年9月8日(火)
あらすじ
泰輔(前田吟)と富子(佐藤オリエ)がみんなで夕食を、と食材を持って来た。泰輔が元気が無いので、蝶子(古村比呂)がどうしたのかと聞くと、神谷(役所広司)が疎開することに決めて元気がない、と言う。神谷と安乃(貝ますみ)が挨拶に来て、蝶子たちも早く決めた方がいい、自分は東京でやることはもうない、と話すと加津子(藤重麻奈美)は、先生の読んでくれた童話はよく覚えている、将来は童話を読む人になる、と言い…。
2025.9.16 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
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北山みさ:由紀さおり
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中山音吉:片岡鶴太郎
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中山はる:曽川留三子
神谷安乃:貝ますみ
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岩崎加津子:藤重麻奈美
岩崎俊継:服部賢悟
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男:今西正男
小池幸次
在郷軍人:山崎満
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疎開の一族:神田正夫
木村翠
区役所の男:田嶋基吉
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鳳プロ
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神谷容(いるる):役所広司
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野々村富子:佐藤オリエ
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野々村泰輔:前田吟
蝶子とはるが買い出し帰りで歩いていると、知り合いに会った。
はる「植原さん」
植原「ああ、おかみさん」
女性「やっぱり疎開することにしたわ」
はる「そう」
植原「福島の方に親戚があるのでそっちへ」
はる「気を付けてね」
女性「あんたも。東京は危ないらしいから」
はる「ありがとう」
植原「お世話になりました」
女性「じゃあ」
はる「こちらこそ」
疎開の一族・植原夫婦(おばあちゃんもいたけど)の神田正夫さん、木村翠さんは偶然にも「不良少女によばれて」の別々の回に出演。キャストクレジット書いとくもんだねえ。検索するといろんな作品が出てくる。
植原一家が去っていき、野々村夫婦が歩いてきた。
はる「こんちは」
富子「こんちは」
蝶子「どうしたの?」
泰輔「たまには一緒に飯でも食おうと思ってさ。フフフ」
岩崎家茶の間
一同「ワア~!」
新聞紙を広げると茶色い物体。切り干し大根? パッと見、柿の種っぽい色合い。
泰輔「おいしいぞ! ハハハッ」
蝶子が小さな風呂敷包みを見せる。「これが今日の配給分」
買い出しじゃなく配給を取りに行ってたのかな?
みさ「いや~、今日の夕食は久しぶりににぎやかだねえ」
加津子「うん!」
富子「楽しいこと、ほかにないし、たまには義姉(ねえ)さんのご機嫌伺いもしないと」
みさ「あ、いやいや、ありがとう」
加津子「今日は何ができるの?」
蝶子「そうねえ…」
俊継「僕は何でも食べられるもん」
加津子「フフ~ン」
俊継「何だよ~!」
加津子「この前ね、俊ちゃん、お母さんに…」
俊継「言っちゃダメ!」
富子「どうした?」
加津子「怒られたんだよねえ」
みさ「いやいや、うん、もういいんでない、加津(かっ)ちゃんね」
蝶子「叔父さん?」
泰輔「うん?」
蝶子「どうしたの。元気ないわよ」
泰輔「そ…そうかい?」
蝶子「ね!」
富子「チョッちゃん、神谷先生から話聞いてない?」
蝶子「何?」
泰輔「神谷先生、疎開することに決めたんだよ」
富子「それでね、この人、元気ないの」
蝶子「そう」
泰輔「うん」
蝶子「先生も疎開…」
みさ「そっかい」
泰輔「うん?」
みさ「?」
泰輔「う~ん」
富子「…あ、いや別に」
蝶子「みんな、いなくなっちゃうんだね」
<それから数日後、疎開を決めた神谷先生夫婦がチョッちゃんを訪れました>
岩崎家茶の間
神谷「ともかく札幌へ行くつもりだ」
みさ「先生のご実家、あちらでしたもねえ」
神谷「はい」
俊継「安乃おねえちゃんも?」
安乃「…うん」
加津子「当たり前なの」
俊継「どうして?」
蝶子「先生と安乃おねえちゃんは夫婦なの」
俊継「ふ~ん」
俊継に笑顔を向ける安乃。
神谷「いや~、実家には、まだ安乃、連れてってないし、連絡したら『是非来い』ってしゃべるもんだから」
蝶子「よかったね」
安乃「はい」
安乃ちゃんが北海道に帰るの上京以来、初めてだもんね~。神谷先生もかな?
番傘をさした音吉とはるが縁側から来た。
神谷「ああ!」
音吉「神谷さん、行くんだってね?」
神谷「はい」
お茶を出す蝶子。「どうぞ」
音吉「あ、すいません」
すぐに座布団を2つ持ってくる安乃。
蝶子「ありがとう」
神谷「皆さんと離れ離れになるのは寂しいけど」
音吉「ああ~」
はる「ま、しかたないよね」
音吉「すいません」
神谷「君は、ずっと残るつもりかい?」
蝶子「…要さんを待たないと」
神谷「いや、したけど」
蝶子「何か連絡あった時、残ってないといけないと思うし」
音吉「けど、そんなことは行き先さえ分かってりゃいいことだよ」
うなずく安乃。
神谷「そうだ。何べんもしゃべるけど、東京は危険だわ。帰ってくる人のためにも、より安全なとこ行って生きていてやるっていうのも残った者の務めでないかい? 違うかい?」
安乃「一緒に北海道行きませんか?」
音吉「ここは一番、考えた方がいいね」
蝶子「例えば…私一人残ることはできる。母さんと子供たちだけでも疎開して…だって東京に残ってないと、やっぱり…。私一人なら何とかできるし…」
加津子「お母さん! ウソつくの? この前、お母さん、『絶対、別々には暮らさない』って言ったじゃない!」
俊継「言った!」
加津子「疎開する時は、みんな一緒だって約束したじゃない!」
俊継「お母さんが残るんなら、僕も残る」
加津子や俊継の顔を見る蝶子。
みさ「先生は、いつ?」
神谷「明日、たちます」
みさ「したらねえ、今日決めるっちゅうわけにもねえ」
うなずく蝶子。
神谷「…したら、私らは明日、先にたつけど、蝶子君たちもなるべく早い方がいい」
蝶子「はい」
音吉「明日か…」
神谷「はい」
はる「北海道?」
安乃「札幌に」
うなずくはる。
音吉「また来るよね?」
神谷先生の顔を見る安乃。
神谷「さあ」
加津子「来ないの?」
神谷「うん?」
蝶子「どうして?」
神谷「したって、東京に何しに来たらいいんか。東京では私のやることは何もないんでないかい? 実際、17年間、東京出てきて、一体全体、私は何をしたんか。何ができたんか。逃げるように北海道を出てきてだ、邦子君との同せい、半年で失敗。教職にも就けず、童話を書き、絵本作り。したけど、大成せずだもねえ」
小さく首を横に振る蝶子。
神谷「そうやって17年たっただけだ」
蝶子「『何ができたか』って、先生、おっしゃいますけど」
神谷「うん?」
蝶子「いつも大切な時、相談に乗ってくれたじゃないですか」
神谷「いや~」
蝶子「私は…ありがたかったんですよ。子供たちに童話も話してくれました」
神谷「いや、あれは自分の作った話に興味を持つかどうか反応ば見てたんだ」
蝶子「けど、子供たちは楽しんでました」
うなずく加津子。
蝶子「喜んでました」
加津子「先生!」
神谷「うん?」
加津子「先生の作った童話、加津子、覚えてるのよ」
俊継「僕も」
加津子「『白い少年』でしょ? 『泳ぎの下手な蛙の子』『流れ星と狐』『ピョン太の冒険』。加津子が入院した時も先生、話してくれたもん」
うなずく神谷先生。
加津子「だからね、加津子、大きくなったら、童話を話す人になろうと思うの」
神谷「そうかい」
音吉「あれかい? 加津ちゃん、もう建具屋になる気は全くないのかい?」
加津子「ないの」
音吉「ないの?」
はる「それは、とっくだよね!」
みさ「先生」
神谷「はい」
みさ「『東京に来て17年が何だったか』って、しゃべられましたけど…いやいや、そりゃ、あんまりだ。安乃ちゃんに失礼でしょや。結婚ちゅう、人生の一大事ば成し遂げたんでないんですか」
神谷「はい」
みさ「それだけでも、東京へ来たかいがあったちゅうもんでないですか?」
蝶子「そうそう!」
音吉「そうだよ、ねえ!」
神谷「いやいやいや…」
恥ずかしそうにうつむく安乃。
みさ「あれ、雨上がったよ」
蝶子「ああ」
音吉「ああ、本当だ」
みさ「ねえ」
音吉「う~ん」
はる「ああ、よかった」
神谷「したら、そろそろ行くかい?」
安乃「はい」
立ち上がろうとする神谷先生。
安乃「蝶子さん」
蝶子「何?」
安乃「これまでいろいろとありがとうございました」頭を下げる。
蝶子「私の方こそ…」
玄関に出て、神谷夫婦を見送る蝶子たち。
みさ「お二人とも、お達者で」
神谷「はい、お母さんも」
みさ「はい」
蝶子「また、会えますよね?」
神谷「うん」
はる「お元気で」
神谷「はるさんも音吉さんも」
音吉「ええ!」
神谷「加津ちゃん、俊ちゃん、元気でな!」
加津子「はい!」
俊継「はい!」
神谷「したら」安乃と頭を下げ、去っていった。
蝶子「気ぃ付けて!」手を振る。
俊継・蝶子「さようなら!」
ふり向いて手を振る神谷先生。「さようなら!」
安乃は頭を下げる。
<神谷先生と安乃ちゃんも東京を去っていきました>
これを機会にと東京を引き払う人もいたんだろうな。
在郷軍人「ヤア~!」←お! 今日は山崎満さんのお姿が! 竹やりで突く見本を見せる。
<その後、4月1日、アメリカ軍は、ついに沖縄上陸>
みさ、蝶子たちの竹やり訓練。
夜、岩崎家
蝶子「母さん!」
飛行機のごう音
<そして5月25日>
音吉「そろった? よし行くよ! 退避! 退避!」蝶子たちと一緒に防空壕へ。
音吉「恐れ入りやす、恐れ入りやす」
子供の泣き声がする。
音吉「さあ、ここです!」
飛行機のごう音と子供の泣き声
音吉「恐れ入りやす」はるたちを座らせる。
飛行機のごう音と子供の泣き声
音吉「お、こりゃ、溝口の旦那!」
溝口「おう、おう、おう」
音吉「どうだい、様子は?」
溝口「今度は、いけねえな」
男「宮城(きゅうじょう)の辺りもやられてるらしい」
蝶子「っていうと、神田とか池之端辺りも?」
溝口「恐らくねえ」
蝶子「千駄木の方は?」
溝口「近いからねえ」
溝口役が今西正男さんだろうな。
みさ「千駄木ちゅうと?」
うなずく蝶子。「…叔父さんたち!」
⚟︎飛行機のごう音とサイレン
<前夜の空襲では皇居も炎上し、都区内の大半が焼失したのです>
とぼとぼ家路につく人々。
蝶子は出かけようとしていた。
音吉「危ねえよ!」
蝶子「けど!」
はる「千駄木に行く途中だって、ひどくやられてるっていうしさ!」
音吉やはるが蝶子を止める。
蝶子「でも、叔父さんたちが…」
音吉「気持ちは分かるけど、今、出歩くのは危ねえよ!」
はる「もしものことがあったら、お母さんたちどうするの!?」
蝶子が振り向くと玄関の前でみさ、加津子、俊継が見ていた。
思い止まり、台所で料理をする蝶子。物音がし、玄関へ出た蝶子は玄関の前で真っ黒になり座り込む泰輔と富子を見つけた。「叔父さん!」
みさ「富子さん!」
泰輔「ハハハッ、家、焼けちゃった」
茶の間
お茶を出す蝶子。
富子「警報が鳴って、すぐ防空ごうに入ったんですよ」
蝶子「どうぞ」
音吉「いただきます」
富子が泰輔にもお茶を勧めるが、泰輔は首を横に振る。
富子「防空ごうの中にいても…生きた心地しなかったよ。ズシン、ズシンて地鳴りはする…砂は落ちる、煙は入り込む。そのうち、火が迫ってきて、防空ごう出て、あっちこっち逃げ回って、明け方近く、うち、行ったら、ないんだよ」
蝶子「そう…」
富子「跡形なし」
みさ「…あれ~」
富子「台所の跡に鍋釜がススかぶって真っ黒。柱がブスブス煙(けむ)吐いて…」ため息をつく。「…チクショウ!」
みさ「泰ちゃん、うん?」
泰輔「ああ」
蝶子「叔父さん、しっかりしてよ!」
うなずくみさ。
泰輔「うん…。こっち来る道々、『泰明座』にも寄ってみたんだよ。がれきになってた。喫茶店・泉も壁だけだった」
蝶子「そう」
うなずくみさ。
立ち上がる泰輔。「ハハッ、もう、住むとこがなくなっちゃったか…」部屋の隅に座り込み泣き出す。
蝶子「ここがあるじゃない」
富子「いいの?」
蝶子「当たり前よ。何、言ってんの!?」
富子「ありがとう」泣き出す。
蝶子「おばさん!」←字幕的には”叔母さん”、じゃないの?
みさ「…泰ちゃん!」
手拭いで涙を拭く富子。
泰輔「よろしく頼むよ」
蝶子「かえってね、にぎやかになっていいじゃない!」
音吉「…俺は決めた。東京、もうダメだよ。疎開するしかねえや」
泰輔「逃げんのか?」
音吉「逃げますよ」
泰輔「戦争、戦争って、あおってたくせしやがって『一億火の玉』だの『撃ちてし止まん』だのって言ってたくせに、真っ先に逃げんのか!?」
蝶子「叔父さん!」
音吉「何とでも言ってくださいよ!」
泰輔「開き直ったな、この野郎!」
富子「八つ当たりするんじゃないよ!」
⚟︎玄関の戸が開く音
⚟︎男「ごめんください! 岩崎さん!」
蝶子「はい!」
玄関
蝶子「何か?」
男「岩崎さん、この辺りも強制疎開ということになりましてね。6月1日までに疎開してください。これは命令です」封筒を渡す。
<ついにそういうことになってしまいました>(つづく)
急に疎開しろって言われてもなぁ…
