NHK 1987年7月21日(火)
あらすじ
加津子(椎野愛)はもうすぐ小学生。進学の準備のために街に買い物に出た蝶子(古村比呂)だったが、雅紀(河野純平)が寝てしまい、急遽叔父・野々村泰輔(前田吟)の会社に立ち寄ることに。そこで泰輔の妻・富子(佐藤オリエ)が寂しがっていると聞いた蝶子は、久々に千駄木に顔を出す。そこで電話を借りた蝶子は、北海道・滝川の実家の父・俊道(佐藤慶)と母・みさ(由紀さおり)に家族の近況を報告する。
2025.7.29 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
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岩崎要:世良公則
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北山みさ:由紀さおり
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野々村富子:佐藤オリエ
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北山道郎:石田登星
岩崎加津子:椎野愛
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宮内:藤田啓而
桑山:真鍋敏
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彦坂安乃:貝ますみ
品子:大滝久美
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岩崎雅紀(まさのり):河野純平
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野々村泰輔:前田吟
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北山俊道:佐藤慶
あら? 今まで、泰輔と俊道が出る回は泰輔の方が最後だったのに。
岩崎家茶の間
要「はい、ほら、どいて、どいて!」
蝶子「何、これ?」
要「うん、これはね、子供たちのためにね、古いのをちょっともらってきたわけだ」
加津子「どうするの?」
要「これ? う~ん、フフフ~ン」
加津子「おっ!」
要「ほれ! この棒でだね、この銀の玉をね、見てろよ。こういうふうに…」
コリントゲームというらしく、↑こんな感じのボードで、木の棒で玉をつく。小さいビリヤード+パチンコみたいな感じ。
要「入れ、入れ! あ!」
蝶子「おお~!」
要「おお~、どうだ! これ、120点だよ」
蝶子「へえ!」
加津子「やりたい!」
要「あ、そうか? よし!」
雅紀「僕も!」
要「よし、じゃ、その次、な!」
手を挙げる蝶子。
要「その次、お母さん。よしよしよし」
加津子「えい!」
時間がたち…ゲームに夢中になる要。
加津子「お父さん、早く!」
要「うんうん」
雅紀「お父さん、早く!」
要「あ~、もうダメだよ!」膝に乗ってきた雅紀をどかし、泣かせる。
加津子「お母さん!」
蝶子「どうしたの?」
加津子「お父さんがやらしてくれない!」
蝶子「要さん!」
要「順番だろ?」
さらに時間経過…
加津子「次は加津子よ!」雅紀と取っ組み合いのケンカになる。
蝶子「もう、ケンカするんなら、そんなもん捨てますよ! 加津(かっ)ちゃん!」
寝間着姿の要。「こら、いつまでやってるんだ! お父さんね、明日、早いんだから、眠れないじゃないか!」
蝶子「そんなこと言ったってね、昼間は要さん独り占めしてたんだから、子供たち今しかできないでしょ。ねえ、加津ちゃん!」
<このうちには子供が4人いるみたいです>←ほほ笑ましい表現として使われてるんだろうけど、嫌いな表現。大の男がっ!
野々村商會
泰明座事務所
ドアが開き、加津子が入って来た。「こんにちは!」
泰輔「おお、どうした、どうした?」
蝶子「は~、やあ、加津子のね、入学の買い物に来たんだけど、マーちゃん、ぐずっちゃってね」
泰輔「ああ、そうかそうか。そりゃ、大変だな。まあまあ、そこへ寝かして寝かして、な! よしよし、大丈夫か。おお~、マーちゃん、いいか?」
桑山「じゃ、お茶でもいれます」
泰輔「そうだな。そうか、加津ちゃん、とうとう小学生か!」
加津子「はい!」
泰輔「よし、おじさんとこにちょっと来てみな。はい、どのくらい重くなったですか? おお、こりゃ重い。大したもんだ!」ソファに座った状態で加津子をお姫様抱っこする。「このごろ、加津ちゃん、千駄木に来ないね」
加津子「うん」
泰輔「あんまり加津ちゃんが来ないからさ、富子おばさん泣いてるよ」
加津子「本当?」
泰輔「ああ!」
加津子がびっくり顔で向かいのソファに座る蝶子の顔を見る。
蝶子「困ったわねえ」
加津子「加津子はね、いつでも千駄木に行きたいのよ。だけどね、電車に乗ったり、道もよく分からないから一人では行けないの」
泰輔「そうかあ」
加津子「もっと大きくなって一人で行けるようになったら毎日でも行く!」
泰輔「アッハハハ! よし、おばさんにな、そう言っとくよ」
加津子「うん、加津子、イッキョセンメイ大きくなるからね」
泰輔「イッキョ…何だ?」
蝶子「一生懸命」
泰輔「アッハハハ、そうかそうか」
お茶を運んできた桑山も納得したようにうなずいている。
加津子「あ! 邦子おばちゃん!」事務所に貼られたポスターを指さす。
泰輔「ああ、田所邦子も今や中堅だよ。フフッ」
「夜のバラ」という映画で邦子の顔は写真でなく絵。複雑な表情で見つめる蝶子。
加津子は泰輔の膝を降り、宮内のデスクへ。「宮内さんのお仕事は、どんなお仕事?」
宮内「おじさんの仕事はね、お金の計算すること」
加津子「ふ~ん。でも、お金ないわよ」
宮内「ほら、ここに数字書いてあるでしょ? これがお金」
加津子「ふ~ん」
宮内「金! 金! 金!」帳簿のページをめくる。
泰輔「ハハハハッ」
蝶子「叔父さん、景気の方は、どう?」
泰輔「ああ、まあまあだね」
蝶子「よくない?」
泰輔「うん。喫茶店の方が、どうもね」
蝶子「よくないんだ」
泰輔「いや、そういうんじゃなくてさ、品物がないんだよ。なかなか手に入らないんだ。コーヒー豆とか砂糖とかがさ」
蝶子「やっぱり…」
泰輔「品物がないと、ほら、ヤミってことになるだろう。原価が高くなっちゃってねえ」
蝶子「大変ね」
泰輔「これからの日本は、どうなるんだろうねえ!」
電話が鳴る。
宮内「電話、電話!」
加津子「もしもし? え~と…はい!」
泰輔「はいはいはい、ありがと、ありがと。はい! ああ、もしもし、え? 宮内さん」手招きする。
宮内「え、え?」
泰輔「(小声で)ちょっと早く! 俺、いない」
宮内「あ、もしもし? あの~、社長は、今、外出しておりまして」
加津子「いるのに!」宮内が口をふさぐ。
宮内「え、いやいやいや、あの~」
泰輔「神楽坂の芸者がさ、ここんとこ、うるさくてしょうがないんだよ。エッヘヘヘ」
蝶子「叔父さん、私、千駄木に行くわ」
泰輔「え?」
蝶子「叔母さんにもしばらく会ってないし、電話も借りたいのよ。滝川に加津子の入学の報告にね」
泰輔「アハハ…それだったらいいんだけどね」
宮内「さっきの人はね、最初に電話に出たお嬢さんのお父さん! お父さん! あ…」
泰輔「ハハハッ」
蝶子「フフン」
そういや、蝶子って女学生時代みたいに髪が長くなっておさげにしてる。今更…
野々村家
富子「あ、いいね、加津ちゃん! とってもいい。うん!」
ランドセルをしょった加津子がくるっと一回転。
蝶子「歌を歌って行進しましょう!」
加津子「は~い! ♬蛙が一匹おったとさ」
富子が手拍子しながら合の手を入れる。「ハイ!」
加津子「♬泳ぎの下手な蛙の子」
富子「ソレ!」
加津子「♬小川の岸辺におったとさ」
富子「オリャ!」
作詩:神谷容 作曲:岩崎要の「泳ぎの下手な蛙の子」だね。
電話が鳴る。
富子「つながったね。滝川」
蝶子が俊継を富子に預けて電話に出る。
富子「リ~ンリ~ンって」俊ちゃん泣いちゃった。
蝶子「はい、そうです。もしもし? え?」
北山家
品子「奥さん、早く!」
⚟︎みさ「はいはい」
受話器を取るみさ。「もしもし? 蝶ちゃん?」
野々村家
蝶子「何してたんさ?」
☎みさ「品子さんに呼ばれて、今、来たの。何事さ?」
蝶子「加津子がね、来週、小学校に入学するんだわ。したから、そのお知らせ」
☎みさ「ああ、いやいや、そうだったんかい」
蝶子「忘れてたっしょ?」
☎みさ「なんも。加津子ちゃん、いないんかい?」
蝶子「いや、いる。代わるかい?」
☎みさ「うん」
蝶子「あぁ、滝川のばあちゃん」
加津子と雅紀、キャッキャッしてて仲良さそう。
加津子「もしもし?」
☎みさ「あ、加津子ちゃんかい? 新入学おめでとう」
加津子「ありがとう」
北山家
みさ「大きくなったんだべねえ」
☎加津子「なった」
みさ「アハハッ、そうかい」
☎加津子「北海道は広いんでしょう?」
みさ「ああ、広いよ」
⚟︎ドアが開く音
みさ「6月にはね、花がきれいなんだよ」
みさの背後に立つ俊道。「そのぐらい知ってるべ!」
みさ「滝川に来てみないかい?」
☎加津子「行きたい!」
みさ「う~ん!」
俊道「代われ」
みさ「え?」
俊道「代われったら!」
みさ「はい」
俊道「…もしもし」
☎加津子「あ、じいちゃん!」
驚いた俊道が振り向き、みさに「…加津子でないか!」
みさ「そうですよ」
☎加津子「もしもし!」
俊道「あ、はい!」
☎加津子「加津子ね、来週、小学校に入るのよ」
俊道「ああ、したら、あれだ。よく勉強して、先生の言うこともよく聞いて、あれだ…う~、規則をよく守り…」
茶の間
みさ「お父さん、入学祝ね、何がいいだろか?」
新聞を広げる俊道。「なして、お前の方が多くしゃべるんだ?」
みさ「は?」
俊道「電話だ! 電話。お前一人で3分以上は、しゃべったべ」
みさ「お父さんも同じくらい」
俊道「なんもだ。ワシは1分ぐらいだわ」
みさ「なんも…」
俊道「お前は初めから出てたべや」
みさ「はい」
俊道「ワシが診察室から来た時には既に1~2分しゃべってたんでないのか?」
みさ「いや、そんなことないです。20~30秒くらいだと…」
⚟︎品子「先生! 石山さんです」茶の間に顔を出した。
俊道「品子さん、ちょ…ちょっと」手招きする。
品子「はい!?」
俊道「電話でしゃべってた時間、どっちが長かった?」
品子「はあ、先生です」
みさ「ほれ」
俊道「確かかい?」
品子「まあ、先生の方は時間の割に会話が少なかったんでないかい?」
みさ「ほれ!」
ムッとして立ち上がり、茶の間を出ていく俊道とあとに続く品子。気楽に俊道を小突ける品子さん、最強だな。
野々村家
台所で野菜を刻んでいる富子。「要さん、何だって?」
俊継を抱っこしている蝶子。「(小声で)し~っ、もう少しで寝そうだから。稽古終わったら寄るって」
富子「うん。道郎さんも来りゃいいのにねえ」
蝶子「会社の方に電話してみるわ」
富子「あ、そうだ!」
富子の声に泣いてしまう俊継。
蝶子「あ~、よしよしよし!」
⚟︎戸が開く音
⚟︎安乃「こんにちは! 安乃です」
蝶子「安乃ちゃんだ!」
玄関
蝶子「安乃ちゃん!」
安乃「蝶子さん! いらしてたんですか」
蝶子「し~っ、寝そうだから」
安乃「(小声で)はい」
茶の間
蝶子「いや~、しばらくね」
安乃「はい」
蝶子「元気だった?」
安乃「はい」
富子「あ~、いらっしゃい! この前はリンゴをどうも…」
安乃・蝶子「し~っ!」
俊継、泣きだす。
富子「(小声で)ありがとう」
蝶子「よしよしよし! こっちの方で仕事?」
安乃「ええ。4~5日前から小石川の大学教授のお宅に通ってるんです」
蝶子「あ、そう」
富子「食事してくね?」
安乃「いいんですか?」
うなずく富子。
蝶子「要さんも来るし、道郎兄さんも呼ぶつもりだから」
富子「久しぶりににぎやかな晩ごはんだ!」
安乃「手伝います!」富子が立ち上がると、すかさず立ち上がる。
<もう、お分かりでしょう。頼介さんの妹の、あの安乃ちゃんなんです。上京以来、働いていたところは、あちら側の事情で去年やめ、今は家政婦の仕事をしています>
貝ますみさん…「チョッちゃん」と「仮面ライダーBLACK」のゲスト、「プリティエグゼクター」というオリジナル特撮ビデオくらいしか出演作は探せなかった。すべて1987年の作品で、すぐに辞めちゃったのかな? 前の安乃ちゃんの面影を残して、そのまま大きくなったような絶妙なキャスト。
夜、野々村家からにぎやかな話し声が聞こえる。
台所から出てきた蝶子。「はい、出来ました。いただきましょう!」
道郎「おい、滝川の様子、どうだった?」
蝶子「うん? 変わりはないみたいね」
道郎「あ~、何年帰ってないかな」
泰輔「もう随分になるだろう」
道郎「ええ」
昭和2年の年末から泰輔と一緒に帰省して、昭和3年の年明けに泰輔と一緒に帰って以来、そのあとは俊道とみさが上京した時に会ったくらい? 前回から昭和15年の3月だから10年以上帰ってないってこと!? 蝶子たちもその後、帰省したのかな?
蝶子「今日はね、加津ちゃんも電話に出たのよねえ」
加津子「うん」
要「あ、そうか。何、話、したんだ?」
加津子「うんとねえ…まあ、いろいろね」
要「何だ!」
笑い声
富子「さあ、大したもんないけど。あ~、食べた食べた!」
一同「いただきま~す!」
要「はい、加津ちゃん、取ってあげるからね」
加津子 道郎
要 富子
蝶子 雅紀
安乃 泰輔
玄関側 台所側
泰輔のいる方が上座ってことよね。
泰輔が雅紀を膝に乗せ、食べさせている。前田吟さん、手慣れた感じ。
⚟︎俊継の泣き声
蝶子「起きた」
すぐ箸を置く安乃。「私が」
蝶子「いいのよ」
安乃「蝶子さんは食べててください」
蝶子「安乃ちゃん、ごめんね」
⚟︎俊継の泣き声
俊継の寝かされた部屋に入っていく安乃。
泰輔「ああ、俊ちゃんの泣き声、元気がいいねえ! 安乃ちゃんで大丈夫かな? お母さんが行かなきゃ泣きやまないんじゃないかな、え?」
俊継の泣き声が止まる。
雅紀「泣きやんだ」
要「ハハ!」
安乃が部屋から出てきた。「大丈夫」
蝶子「ありがとう」
要「すまないねえ」
安乃「なんも」
泰輔「大したもんだねえ、安乃ちゃん」
安乃「家政婦行く先で子守りしたりもしますから」
泰輔「なるほどね」
富子「さすが本職。ね」
要「安乃ちゃんみたいな人がいてくれるとうちも随分と静かなんだろうね」蝶子の顔を見る。
富子「うるさいの?」
要「いや、そりゃあ、もう!」
蝶子「要さんは特にうるさがりなのよ」
泰輔「バイオリンのあれもあったりするから」
蝶子「それもあるけどね」
道郎「そうか、加津子が騒ぐのか?」
加津子「騒がないもん!」
道郎「じゃ、弟たちか?」
加津子「そう」
笑い声
泰輔「子供が3人もいたら大変だよ、そりゃあ」
富子「加津ちゃん、学校に行くようになったらさ、楽になるんじゃないの?」
蝶子「いや、逆」
富子「どうして?」
蝶子「今まではね、加津ちゃんがマーちゃんの相手したり、子守りしててくれたのよ」
富子「ああ、そうか。加津ちゃん学校に行くようになると、うちの中は人手不足だ」
蝶子「その上、要さんまでいるとね」
要「何だよ、じゃ、俺、うちにいない方がいいみたいじゃないか」
蝶子「いや、そう思う時もあるのよね」
要「何だって!?」
富子「私なんかさ、子育ての経験ないけど、ちっちゃいの2人いただけで目ぇ回しちゃうよ」
安乃「子守りだけでも大変ですよねえ」
蝶子「いや、しかたないわよ」
蝶子「あ、マー…!」
お銚子をひっくり返す雅紀。
一同「あ~!」
加津子「もったいない!」
要「お前は黙って食べてなさい!」
蝶子や安乃がテーブルを拭く。
泰輔「しょうがない、しょうがない、子供だから。はい、こっち行った! 大丈夫か?」
富子「おじちゃん、目ぇ離したから」
泰輔「あ~あ、はいはいはい」
蝶子「ごめんなさいね!」
泰輔「ぬれちゃった」
安乃「私…蝶子さんの家にお手伝いに伺いましょうか? 私でよければ」
泰輔「いいね、それ!」
富子「いいね!」
泰輔「ダメか?」
蝶子「いや、ダメじゃないけど…」
要「何でも自分で面倒見たいんだろう?」
蝶子「いや、それもあるけど…」
道郎「他人にうちの中、見られるのが嫌とか?」
泰輔「安乃ちゃんだったらいいだろう?」
蝶子「そりゃあ、いいけど…」
富子「けど、何?」
蝶子「いや、人を雇えるほどの身じゃないし」
泰輔「ああ、そんなこと関係ないよ。連平君からも聞いたけど、子供たち、家の中、ひっかき回してるらしいじゃないか」
要「それはそうなんですけどね」
富子「要さんの世話もあるし」
要「私はそんな!」
加津子「大変だもん」
要「え!?」
一同の笑い声
泰輔「だからさ、この際、思い切って、安乃ちゃんに来てもらったら、どうだ?」
蝶子「やあ、けど、そんな余裕は…」
安乃「お金はいいんです」
蝶子「そんなわけ、いかないわよ」
要「ああ、そうだよ」
道郎「けど、洗足じゃ通うのに遠いな」
蝶子「そうよ」
安乃「もし、私でよければ近くに引っ越しますから、お願いします」
蝶子「いや、そんな…」要を見る。「気持ちだけで、本当、うれしいんだから」
安乃「でも、考えてください」
<チョッちゃん夫婦は考えることにしました>(つづく)
家電もない時代、人手は欲しいよね。

