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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(71)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

元子(原日出子)と正道(鹿賀丈史)の子供の名前は大介。戦死した兄・正大の一字を取って、正道が名付けた。正道はびっくりするほどの子ぼんのうぶりで、宗俊(津川雅彦)も孫が生まれて以来、常に上機嫌だ。巳代子(小柳英理子)と藤井(赤塚真人)の縁談も進み、めでたく結納の儀式も済んだ。ところが、藤井が急に結婚式を延期したいと言う。なんと、借りようとした家が借りられなくなり、住む場所がなくなってしまったのだ。

子供の名前は大介。学業半ばにして南方の戦場に散った正大の一字を取って正道が名付けたものでした。

 

命名 大介

 昭和二十五年四月十五日生

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荒木大輔さんが甲子園で活躍したのが1980年の夏で、そこからしばらく”大輔”という名前が男の子の名づけの1位になった時代がありましたが、昭和25年ではなく、ドラマが放送された昭和56年のブームにも引っ掛けた名前だったのかな。

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芋たこなんきん」でハンカチ王子ネタがあったみたいに。

 

裏庭

干し場にはおむつがたくさん干してある。

赤ちゃんを抱っこしている元子。「お~、よしよし。大ちゃんは、おんもが好きなのねえ。ん? どうしてそんなにおんもが好きなのかなあ? フフフ…」

 

三七、二十一日の元子の床上げを待ちきれないように宗俊と正道はこいのぼりを日本橋人形町の風にはためかせました。

 

泣き出す赤ちゃん。

元子「お~…」

 

正道「元子!」家の中から呼びかける。

 

元子「は~い!」

 

正道「お~い、元子!」

 

元子「あっ、おうちに入っても泣かないでね。お父さんがね『お~い、元子』ってお母さん呼んだの。ん?」

正道「お~い、出版計画書、机の上に置いてたのどこいったか知らないか」

元子「あっ、はい、すぐ行きます」

 

大原家

正道「お~、よしよし。それじゃあ、はい、お父さんのとこ来てごらん。はい」元子が赤ちゃんを抱かせる。

元子「はい。え~っと茶色い封筒でしたよね」

正道「ああ、そうだ。なあ、大介」

元子「これじゃあないんですか?」

正道「ああ、それだそれだ。かばんの中、入れといてくれないか。なあ、大介」

元子「大介大介って大介もいちいちおつきあいさせられるんじゃ大変よねえ、大介」

正道「ん?」

元子「あっ」

正道「ハハハ…。よしよし、それじゃあ、な、お母さんのとこ帰るか? うん?」

元子「あっ、それじゃあ、お母さん、お片づけがあるから、しばらくの間、ねんねしてもらおうかな」

正道「お~、よしよし。はい…はい。はい、よいしょ」布団に寝かせる。

元子「はい…。はい、はいはいはい」掛け布団をかける。

 

正道「しかし、こいつ見てると飽きないな。営業妨害も甚だしいぞ、うん?」

元子「そんなこと大ちゃんのせいにするもんじゃありませんよ」

正道「いやいや、我が子ながらね、それだけかわいいってことだよ」

元子「フフ…私、あなたがそんなに子ぼんのうだとは思ってもみなかったわ」

正道「それはそうだろ。自分でもそう思うんだから」

元子「まあ」

正道「ハハハハハ…。しかし、不思議だなあ」

元子「何がです?」

正道「ん? こんなかわいい子がね、一体どこから来たのかって、そう思うことないかい?」

元子「そりゃ、私は確かにおなかの中で育ててたんですもの。私が産んだんだっとは思ってますけど、時々ね、やっぱりそんなふうに思うことがあるわ」

 

赤ちゃん、泣きだす。

元子「はいはいはい」

正道「よしよしよし。それじゃあ、お父さんモリモリ頑張るからな。なあ、大介」

元子「ええ、お母さんもね、負けずに頑張ります…」

正道「フフ」

元子「あら嫌だ、そんなこと言って、ちっともさっきから、お出かけにならないじゃないですか、お父さん」

正道「あっ、あ~、そうだそうだ、ハハハハ…」

 

元子「あら、私も片づけ物があったんだわ」

正道「大介、お母さん、落第お母さんだね、ハハハハ」

元子「まあ、ひどい」

正道「よし、それじゃあね。行ってくるよ、大介。バイバイ。ハハ…」

元子「さあさあ、はい。(赤ちゃんぐずり出す)はいはい、はいはい…」寝かせていた大介を抱っこする。

 

正道「あっ、そうだ。モンパリのおじさんに巳代ちゃんの結納のこと言われたんだっけ」

元子「あっ、私もね、藤井さんから相談されたんですけどね、叔父さんと叔母さんに親代わりになっていただいて、仲人は私たちにやってほしいって」

正道「あっ、そう、藤井がそんなことを言ってたの」

元子「ええ」

正道「まあね、あいつとのつきあいも長いし、できればね、やってやりたいけども、僕らが仲人っていうこと、お義父(とう)さん、何て言うかな?」

元子「様子を見て、ちょっと私、言ってみます」

正道「うん、じゃあ、そうしてもらおうか」

元子「はい」

正道「ああ、大介、行ってくるよ」

元子「パパ、行ってらっしゃい」

正道「バイバイ」

元子「行ってらっしゃい」

正道「行ってきます」

赤ちゃんはだっこされてもずーっとぐずってたけど、構わず芝居を続けるところがいいよね。

 

ところが大介が生まれてからというもの宗俊のご機嫌、いつ、いかなる時でも上々でした。

 

桂木家茶の間

宗俊「そうか、え。そうか。しかしな、まあ巳代子もよ、え、吉宗の二番お嬢だ。姉夫婦の仲人ってんじゃ、ちょいと安直すぎてな、かわいそうな気もしねえでもねえが、まあ婿さんがよ、それだけ義理のお義兄(にい)さんを信頼してるってんじゃ、これは悪い話でもねえやな。なあ」

トシ江「ええ」

宗俊「それによ、元子だって、おめえ、子供が出来て、ようやく一人前(いちにんめえ)になったんだ。な。そりゃまあ任も重かろうが、この辺でよ、どなた様にお礼を申し上げるつもりで立派に仲人を務めりゃ、お前、世間様に信用がつく。いいじゃねえか。ひとつ正道っつぁんと2人で骨折ってみるか」

元子「はい」

宗俊「よし」

 

元子「そんじゃ、巳代子、そういうことでいいわね」

巳代子「エヘヘ…よろしくお願いします」

トシ江「まあ、何でしょうね。嫁に行こうって娘が」

宗俊「なに、おめえ、嫁に行くまでは、まだ娘だ。なあ」

トシ江「まあ、本当に甘いんだから」

宗俊「ハハハハ…。うん…。おい、大介、もうそろそろ目ぇ覚ますんじゃねえかな」

 

元子「駄目よ、抱き癖がつくから」

宗俊「ついちゃ、何が悪いんだい?」

元子「だって、人(しと)の顔見れば抱いて抱いてって泣くようになっちまうじゃないの」

宗俊「抱き癖がついたら、どうして悪いんだって聞いてるんじゃねえか、え。抱き癖がついて困るってのはな、誰もお前、抱いてくれるもんのいねえ手合いの言うことだ、え。うちじゃ、お前、ごまんと抱き手がいるんだ。しみったれたこと言うんじゃねえや、お前」

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トシ江「それにしたってほどってものがありますよ。朝起きて口開(しら)いた途端、大介はどうした、大介はどうしたって」

宗俊「大きなお世話だ、え。孫の名前を呼んでどこが悪いんだ!」

巳代子「けどさ、あんまり甘やかすと『年寄りっ子は三文安い』って言われるのよ」

 

宗俊「てめえ、この野郎、もう一度言ってみろ。はばかりながらな、俺ぁ、40半ばをちょいとまだ過ぎたばかりだ。どこが年寄りなんだ、言ってみろ」

巳代子「だけど大ちゃんが孫なら、お父さんは立派におじいちゃんでしょ」

宗俊「おじいちゃん!? この野郎! いいか? てめえなんかな、嫁に行くのはまだ10年早い!」

元子「お父さん!」

巳代子「そんなあ」

宗俊「うるせえ! 人の情が分からねえようならな、所帯なんか張っちゃいられねえんだ! テッ!」席を立つ。

元子「(巳代子に)バカ…ちょっとお父さん!」後を追う。

 

巳代子「お母さん」

トシ江「元子に任しておけば大丈夫だよ。あんなこと言っておきながらね、大介の顔見れば『じいじが高い高いしてやるぞ。じいじがな』って本当に意地っ張りなんだから」

巳代子「けど…」

トシ江「体裁が悪いだけなんだから深追いは禁物だよ。さて、結納はいつがいいんだろうね。フフ…。暦、暦っと…。え~っと日柄(しがら)のいい日はっと…」

 

トシ江の見通しどおり、意地っ張りの意地が収まれば五月の鯉の吹き流し。別段、腹ん中には何にもない宗俊のこと、めでたく結納の儀式も済んだのですが…。

 

大原家

正道「えっ、式を延期したい?」

藤井「はい。今になってまことに申し訳ないんですが」

元子「だけど、一体どうして?」

巳代子「何か私に気に入らないところでもあったんですか?」

藤井「とんでもない。これはひとえに僕のドジからなんです」

元子「だから、何が一体どうなったのか、ちゃんと言ってくれなくちゃ」

 

藤井「家がパーになっちゃったんです」

正道「家が?」

巳代子「だって、田端の方にちょうどいい離れが借りられたって藤井さん」

藤井「大家のやつが二重契約してたんですよ」

元子「まあ」

藤井「今月中に引っ越すからとわざわざ手土産まで持って挨拶に行ったら、大原さん、離れにはもう、別の人が住んでるじゃありませんか。こんなバカな話ないから一体どういうことなんだって談じ込んだんですが、とにかく先に住まれちゃってるもんですから、どうにもこうにもらちが明かないんです」

巳代子「ひどいわ…私、もうお友達にしゃべっちゃったのに」

藤井「すいません。だからって住む家もないのに巳代子さんと結婚するわけには」

 

元子「けど、今のうちがあるじゃありませんか」

正道「ああ、そうだよ。確か3畳のアパートだって聞いてたけども、家はゆっくり探せばいいんだし、巳代子ちゃんの荷物だってね最小限度にとどめておいて、今、6畳に2世帯なんていうのは、いくらだってあるんだよ」

藤井「ところがそうはいかないんですよ」

巳代子「どうして? 私はまだ3畳じゃ嫌だとも何とも言ってないわ」

藤井「本当にすみません。こっちの方は今月いっぱいに出るからって言っちゃったもんですから次に入る人が決まっちゃってるんです」

巳代子「え~、それじゃあ…」

 

正道「何だ、住む場所がないんじゃないか」

藤井「そうなんです…」

正道「そうなんですって、藤井君」

藤井「だから全力を挙げて家は探します。それまで待ってください。このとおりです」

巳代子「けど、その間、藤井さんは一体どうするつもりなんですか」

藤井「僕は会社の方へ転がり込みます」

正道「おいおい」

藤井「いや、ソファー1つあれば僕は十分寝られます。はい、倉庫みたいなところで暮らせるのは僕の特技の一つですから。でも、巳代子さんには初めからそんないいかげんな暮らし方をしてもらうなんて、男として断固、お願いするわけにはいかないんです」

 

元子「でも、延期するとなるとお式は秋っていうことになりますね」

巳代子「どうして?」

元子「6月に入ったらあわせの振り袖ってわけにはいかないのよ」

巳代子「いいわよ、そんなもの着なくたって」

元子「あんたはよくてもね、夏の式服は持ってない人の方が多いんだし」←なかなか現実的な理由。確かにね~。

藤井「分かりました。それでは、もう一度、家を探してきます」

大原「探してきますって、藤井君」

 

とはいえ、戦後5年がたっても、まだまだ住宅事情は解決されず、ついに新居探しはリミットを越えて梅雨の6月へ突入してしまいました。

 

珈琲モンパリ

絹子「だけど本当にどういうつもりなのかしらね、藤井さんは」

巳代子「いいのよ。慌てたって始まらないし」

絹子「あら、案外のんきなのね、巳代ちゃん」

巳代子「フフ。だってさ、本当のことを言うと、私、お嫁さんになるっていう実感が全然ないのよ」

絹子「えっ?」

洋三「おいおい」

巳代子「だから、こうやってモンパリを手伝っていれば、それだけお小遣いが貯金できるし、お料理は習えるし、おいしいものは食べられるし」

洋三「へえ~、のんきというのか、それともちゃっかりしてるっていうのか、どっちかね、こりゃ」

絹子「さあ、どっちに似たのか知らないけど、その両方かもしれませんよ」

巳代子「だって藤井さん、毎晩迎えに来てくれるから家まで送ってもらう間、ランデブーはできるしさ」

洋三「あ~あ、俺たちはとんでもないやつの親代わりになっちまったぞ」

絹子「あっ、それで河内山は何て言ってんの?」

洋三「決まってんだろ。もっちゃんの時とおんなじだよ。めでたいめでたいなんて言いながら一日でも長く自分の手元に置いときたいんだから」

巳代子「だから親孝行もできてるわけよ」

絹子「まあ、あきれた、もう」

笑い声

 

ドアが開く音

絹子「いらっしゃいませ」

巳代子「あらぁ、今日は早かったんですね」

正道「戦争が始まったんだよ」

洋三「えっ、何だって!?」

正道「戦争が始まったんです」

洋三「どこで!」

藤井「朝鮮半島です」

洋三「朝鮮半島…」

正道「今、ラジオの臨時ニュースでやってたんですけれども…」

 

男性客「おい、ラジオラジオ!」

男性客「早くつけて、ラジオ!」

 

正道「…戦争状態に入って、日本からも続々と米軍機が飛び立ってるそうです」

 

男性客「マスター、ラジオつけてくれ!」

洋三「ああ…」

 

桂木家

ラジオ「25日、午前4時ごろ南北朝鮮の境界線になっている北緯38度線付近で北朝鮮軍と韓国軍の間で戦闘が開始されました」

 

彦造「それでどういうことになるんですかい」

宗俊「さあなあ」

キン「善吉はまた兵隊にとられるんでしょうか」

トシ江「そんなむちゃな。善さんはやっとの思いで復員してきたばかりじゃないか」

元子「そうよ。日本はもう二度と戦争しなくてもいいのよ」

 

順平「そんなこと言ったって日本は、まだ占領されているんだぜ」

彦造「だったらどうなるっていうんです」

順平「占領軍が戦えと言ったら、やっぱり日本はアメリカの言うことを聞かなくちゃいけないんだろ」

トシ江「冗談じゃないわよ。戦争に行くなんてことになったら、順平、お母ちゃん絶対に承知しないからね。もう二度と殺しっこはごめんだよ。そうだろ、善さん」

真剣な顔でラジオに聞き入る善吉は無言のまま。

キン「善吉」

彦造「行くんじゃねえぞ、善吉。来いって言ってきたら今度は構わねえから逃げるんだ」

宗俊「逃げるったってな、今度の戦争が起きたら、みんな、ピカで死んじまうんだとよ。今度の戦争ってのは、そういうもんだそうだ。チキショー、正道っつぁんはどうしてるんだ、え。こういう時にお前、士官学校出がいねえんじゃ、様子も何も分からねえじゃねえか」

 

元子「嫌よ…私は嫌よ。この子を原爆で殺されるなんてこと絶対に嫌」

トシ江「元子」

元子「だって、もう二度と戦争はしないっていうから、そういうから安心して産んだんじゃないの。それなのに…それなのに…」

 

昭和25年6月25日、朝鮮戦争が勃発。29日には北九州4都市に警戒警報が発令され、当時の日本人にまざまざと空襲の恐怖を思い起こさせたのでした。

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つづく

 

明日も

 このつづきを

  どうぞ……

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マー姉ちゃん」でもヨウ子の見合いの話がありつつ朝鮮戦争のことは扱っていた。ヨウ子は元子よりひとつ上くらいかな。

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この映画の主人公・ウォルトは朝鮮戦争で人を殺したのがトラウマになって偏屈ジジイになったという話だった。

 

巳代子が前向きでいいね。