公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
巳代子(小柳英理子)と藤井(赤塚真人)が先に式を挙げなければ、自分たちが結婚するわけにはいかない、というのが、善吉(小松政夫)と銀太郎(日向明子)を当て馬に、元子(原日出子)が考えた狂言だった。宗俊(津川雅彦)は一同が集まるなか、藤井になぜそうまでして家選びにこだわるのかを聞く。自分の理想の家に住む事は、早くに両親を亡くし、物心ついた時から親戚の家を転々として、自分の家がなかった藤井の夢だった。
吉宗前の路地
銀太郎「何ですって!?」
元子「だからとっさのことだったでしょ。あの…パッと浮かんだ顔っていうのかしら。そうなりゃ何たって、この辺じゃ、おねえさんの顔が一番パッと明るく派手だもの」
銀太郎「嫌よぉ。そんな真面目な顔して元子さんったら」
元子「だってさ、おねえさん」
銀太郎「ううん。殿方からそんなこといくらでも言われつけてるから、どうとも思わないんだけどさ元子さんみたいな人(しと)から言われるとゾクッときちゃうのよ、私」
元子「だったら、何かいい知恵貸してもらえないかしら」
銀太郎「ほら、また私の泣きどころ。三味線持たせりゃともかく、私にゃ誰も知恵袋なんてものあると思ってないんだもん」
元子が考え込むように下を向く。
銀太郎「任せてちょうだい。大船に乗った気で」
元子「じゃ、善さんともちゃんと仲直りしてくれますね?」
銀太郎「ええ、事情さえ分かれば、いつまでも根に持ってるの、やぼってもんだし」
元子「あっ…だったら改めてよろしくお願いいたします」
ほんと、日向明子さんかわいいなあ。肌も真っ白。
吉宗
友男と幸之助が来ている。
宗俊「おう、何だい? がん首そろえて」
幸之助「早速だけど。俺んちじゃどうだろうかな」
宗俊「何だよ? 俺んちってのは」
友男「だからさ、巳代ちゃんたちの新所帯だよ」
トシ江「巳代子のですか?」
幸之助「ああ、銀太郎が泣いてきたんだよ。これ以上、巳代ちゃんたちの祝言が延び延びになるようだったらば、銀太郎は善さんと駆け落ちするほか道はねえんだとよ」
宗俊「何だ? 駆け落ちだ!?」
友男「いやいや…だからさ、そういうことならばな、秀美堂がな、とりあえず2階の6畳を貸そうじゃねえかってことになってよ」
宗俊「ちょっと待て」
友男「ん?」
宗俊「おい、善吉!」
善吉「へい!」
宗俊「それから元子もだ!」
トシ江「あんた、あんまり荒っぽいこと嫌ですよ」
宗俊「大丈夫(でえじょうぶ)だよ」
幸之助「宗俊…」
宗俊「ちょっとすまねえがな、おめえ、ちょっと行って銀太郎、引(し)っ張ってきてくれねえか」
トシ江「あんた」
宗俊「行ってきてくれって言ってるだろ!」
そういうわけで、その晩は藤井と銀太郎も交えて家族会議です。
桂木家茶の間
藤井「いえ…本当にそれだけです。どうも家探しだけは、ついてなくて。やっと見つかったと思ったら『帯に短し襷に長し』で」
元子「だけど、巳代子の方にしたって、そんなぜいたく望んでるわけじゃないんでしょう」
巳代子「それはもちろん」
藤井「だからといって、これは僕の夢なんです」
元子「夢?」
藤井「あんまりぜいたくは望みませんが、せめて6畳に3畳ぐらいはあって、できれば赤い屋根がいいんですが。南向きに小さくてもいいから花なんか植えられそうな庭も欲しいし。そこで巳代子さんが真っ白なエプロンをかけて…」
元子「何言ってるんですか。このご時世にそんなぜいたくはありませんよ」
藤井「どうもすみません」
巳代子「お願い、お姉ちゃん、そんなふうに言わないで」
元子「でもね」
藤井「いえ、いつまででも待っててくれるという巳代子さんの言葉に甘えた僕のわがままなんです。でも僕は…僕は…。早く両親を亡くし、親戚の家で大きく育ってきたもんですから、今に必ず自分の家を持って、奥さんと子供と家族一緒に絵に描いたように楽しく暮らしたい。ず~っと、そう思ってきたもんですから」
元子「そうだったの…」
藤井「はい。だから巳代子さんと結婚したいなと思ったのは、そういううちで育ったお嬢さんですし、いつもニコニコなさってますから、僕は、この人とならきっと幸せな家庭が持てると」
元子「藤井さん…」
正道「分かった。でもね、藤井君、家庭ってのは入れ物がなきゃ築けないっていうもんじゃないでしょう。まあ、若い僕がこんなことを言うのも口はばったいんだけども、そういう家庭を持ちたいっていう気持ちがまず先じゃないかな」
藤井、うなずく。
正道「それで、巳代ちゃんはどうなの?」
巳代子「私は藤井さんさえ『うん』と言ってくれればどこでもいいの」
元子「じゃあ、格好な所が見つかれば2人ともそれでいいんですね?」
藤井「そりゃあ、もう」
トシ江「だったら初めはつましくやっていくことですよ。ねっ、藤井さん」
藤井「はい」
宗俊「よ~し、それじゃあ、おめえたちは秀美堂にやっかいになるっていうことで話は決まりだ。いいな?」
藤井「よろしくお願いします」
宗俊「よ~し。で、次は善吉だ」
善吉「へい」
宗俊「巳代子たちさえ祝言を挙げりゃあ、おめえたちは晴れて所帯を持つってのは本当なんだな?」
善吉「えっ…。へい、そりゃあ、もう」
宗俊「どうなんだ? 銀太郎は」
銀太郎「はいはい。これで巳代子ちゃんのお式も早くなれば皆さんもご安心ですしね」
宗俊「しかし、こうなりゃあ、おめえ、巳代子たちの祝言を待つことねえと思うんだがな」
善吉「いえ…それはできませんでござんすよ」
宗俊「ん? どうしてだ?」
銀太郎「だって、それが浮き世の義理ってもんでしょ」
善吉「そうそう…そのとおりでございます。物事には順序とけじめってもんがござんすからね」
宗俊「まあ、本当にすまなかった。娘のことばかり考えてよ、おめえたち2人の仲に気が付かなかったってのは、河内山宗俊、やぼな話よ。なあ」
銀太郎「全然そんなことありませんから」
宗俊「それでどうだい? 正道っつぁん」
正道「はい」
宗俊「物はついでだ。この2人の仲人もやっちゃあくれめえか」
正道「あっ、いや…ああ…喜んで」
銀太郎「いいんですよ。私たちは別にそんな…」
善吉「そうそう、そうでやんす。あの…どうぞお気遣いなく」
宗俊「バカ野郎! そうはいかねえや! なあ、ほかならぬ善吉に銀太郎だ。祝言のことだろう、え。なあ、元子」
元子「はい」
宗俊「よし、話は決まった。ハハ、めでてえ!」
宗俊のこの笑い。善吉たちのお芝居を果たしてどこまで知っているのでしょうか。
吉宗
金屏風の前に花が生けられる。
さて、話はトントンと進んで今日は大安吉日です。
大原家
紋付き袴の藤井がウロウロ。
洋三「みっともないから座ってらっしゃいよ」
藤井「はい」
絹子「あっ、駄目ですよ。はかまがシワになるじゃありませんか」
洋三「そんなこと言ったって…」
上條恒彦さんが教師、赤塚真人さんが卒業生という単発ドラマがあったな。赤塚真人さんは藤井と同じように家庭環境があまりよくない青年役。洋三叔父さんはこのドラマでは独身で生徒たちから独身いじりをされていた。
宗俊「ハハハハハハハ…。え? 男はおめえ、どこ行ったって『邪魔だ、邪魔だ』って言われるだけらしいな」
洋三「どうですか? 向こうの様子は」
正道「あ~、もうきれいですよ、とっても」
藤井「ああ」
宗俊「え~、慌てるな、慌てるな。なあ。それこそお前、今日から共白髪まで嫌ってほど顔見られんだ。なあ」
藤井「はい」
絹子「はい、どうぞ」お茶を持ってくる。「はい、どうぞ」
正道「すいません」
湯飲みには桜の花が浮かぶ。
宗俊「ほほう…。フフ。あ~」
正道「あ~」
宗俊「フッ、フフフフ…」
桂木家
元子に手を引かれて巳代子が茶の間へ。巳代子、キレイ! イスに座る。
キン「まあ! きれいだこと、ねえ、おかみさん!」
トシ江「ああ…」
元子「大丈夫?」
巳代子「大丈夫は大丈夫だけど」
キン「気分でも悪いんですか?」
巳代子「頭が重い」
笑い声
元子「しょうがないわよ、お嫁さんなんだから」
トシ江「やれやれ。何ですよ、今から意気地のない」
元子「だってね、思いっきり甘えられるのも今日までだもんね。ごめん」
トシ江「巳代子。そんな泣いたら、せっかくしたお化粧が台なしになってしまうじゃないか」
巳代子「そんなこと言ったって」
髪結「いいんですよ。そしたらもういっぺん塗り直しますからね」
髪結…由起艶子さん。wikiには「おしん」108話の産婆役、「はね駒」11話のおきん役とあるけど、11話の内容を見るに、こちらも産婆役かな? 新之助の妻もキンだけど、その人とは別。
キン「それじゃあ、旦那呼んでまいりましょうか?」
元子「私が行くわ。彦さん、上がってちゃんと見てやってよ。善さんも」
善吉「へ…へい、そうですか。そいじゃあ…」
元子「ほら」
善吉「いやぁ…」
トシ江「きれいだろ、彦さんと善さん。本当に今日までありがとう」
彦造「とんでもねえ。今日まで頑張ってきたおかげで、お嬢の晴れ姿、見さしていただきました。どうぞお幸せになっておくんなさいまし」
善吉「いや…よかった。本当によかった。どうもおめでとうございました!」
巳代子「ありがとう。善さん、彦さん」
宗俊たちが入ってくる。
善吉「へい」
洋三「ああ…。いや~、これはきれいに出来ましたね」
トシ江「おかげさまで」
絹子「おめでとう。本当に立派な花嫁さんだわ」
巳代子「ありがとう」
キン「(小声で)旦那」
宗俊「あ?」
キン「旦那ってば…」
宗俊「何だい?」
キン「旦那の番ですよ。何かひと言ぐらいあるでしょうよ」
宗俊「おう、元子の時もきれいだったよな」
元子「お父さん。巳代子」
巳代子が立ち上がる。
宗俊「あ~…俺は駄目なんだよ。こういうのは苦手なんだよ、俺は」
正道「いや、これは父親の儀式ですから、きっぱり受けてやってください。仲人の僕からもお願いしますよ、お義父(とう)さん」
巳代子、正座する。
宗俊「ああ…しょうがねえな、お前。おい、トシ江、こっちへ来いよ」
絹子「そいじゃ、私たち、先行ってますから」
洋三「そうそう。うん、お先に」
茶の間は宗俊、トシ江、元子、正道、巳代子のみ。
巳代子「お父さん、お母さん、長い間、本当にお世話になりました」
トシ江「達者でね。体に気ぃ付けるんだよ」
宗俊「バカ野郎、おめえ、目と鼻の先の秀美堂へお前、行くんじゃ…」
元子、無言で咎める。
宗俊「分かったよ。え~っとな、亭主、大事(でえじ)にしろ」
巳代子「はい」
宗俊「まあ、元子姉ちゃんに負けずにいい子、たくさん産め」
巳代子「はい」
宗俊「まあ、それから…きれいだよ。これはな、大事なことだからな。いつもニコニコしてるんだ。いいな? 『笑う門には福来る』。福々しいかみさんのうちにはな、必ずいいことがやって来る。まあ、その点、おっ母さんや元子姉ちゃん見習えりゃ間違いねえや。なあ。2人、力合わせておめえたちが欲しがってる赤い屋根の家、しっかりつくってくんだ」
巳代子「はい…」
吉宗前
こども「来るぞ! 来るぞ! お嫁さんがでてくるぞ!」
店先には子供も大人も大勢集まっている。
こども…斉藤優一さん。名前が出てたのは一人だったけど、子供は何人か出てたから、ある程度名の知られた子役だったのかな。
水天宮さんは目と鼻の先。当時、花嫁さんはこうしてご町内の人たちに祝福され、見物してもらいながらにぎにぎしく歩いていったものでした。
写真館?で藤井と巳代子の結婚写真を撮影。そういえばまだ藤井のフルネーム出てこないね。
無事に式も披露も終わって…。
大原家
正道「あ…あ~、終わったね」まだはかま姿。
元子「ご苦労さまでした。本当にありがとうございました」
正道「あ…仲人なんてのはね、まだまだ荷が重かったけども、元子がしっかりしてたからなんとか大任果たせた感じだな」
元子「ううん。正道さんのおかげだわ」
正道「お義父さんたち、どうしてらっしゃるかな」
元子「フッ…多分、おんなじような格好でおんなじようなことしてるんじゃないかしら」
正道「これで何年かたつと今度は順平君のお嫁さんか」
元子「いいえ。その前にね、もう一つありますよ」
正道「ん?」
元子「ねえ、善さんと銀太郎さん、なかなかいい組み合わせだと思いません?」
正道「だってあの2人はさ」
元子「ええ。巳代子のために打った芝居だけど、本気に考えてもいいんじゃないかしら。おめでたは続いた方がいいし」
正道「あ…」
元子「だけどね…」
正道「うん?」
元子「あの河内山、どこまであのお芝居に気が付いてんのかしら」
正道「ああ、そうだねえ」
元子「ねえ。まあ、いいわ。当たって砕けろ。怒られるかも分かんないけど相談してみます」
正道「うん」
元子「さあ、どうぞ」お茶を出す。
正道「うん。はい、ありがとう」
とはいえ、善吉と銀太郎のこの話、果たしてうまくまとまるものでしょうか。
つづく
宗俊はともかくも、キンさんは芸者の嫁を嫌がらないかな?
昔って結婚する人がほとんどだったというのがよく分かるドラマ。年格好が釣り合う人たちがあの人たちいいんじゃないとカジュアルにくっつけられる世の中…。本人たちの気持ちが重要だとドラマ内ではよく言ってるけど、結局、周りの雰囲気に空気読んでるだけって感じもあるし…。
12/15(木)~17(土)の放送は休止です。19(月)から再び放送します。
12月12日(月)第73話
12月13日(火)第74話
12月14日(水)第75話
12月15日(木)~17(土) 休止
12月19日(月)第76話
第73話~75話は初回放送時に3話分のみの週でした。
今回のアンコール放送では番組制作時の作品性を楽しんでいただくため、初回放送に準拠した週区切りでの放送を予定しております。
ふざけんなっ! 年内水曜日まで+年明け月曜日からという同じ編成の「おしん」は2019年の再放送時にそのまま休みなく放送したわ! しかも、「おしん」は年末年始の区切りで田中裕子さんから乙羽信子さんに切り替わる重要な週だったんだから。年内を水曜日(28日)終わりにすれば問題ないのに!!
ここで休止して年内を31日の土曜日まで放送する意味が分からない。年末年始そんなにギチギチつめることないだろー。「おしん」なんて2019年の再放送時は、年内は25日(水)で終わって、年明け6日(月)のスタートだったのに、今回は31日までやるのが確定で年明けは2日からやるのか9日からやるのか、あるいは2話連続の日があるのか…。せっかく10月スタートの朝ドラなんだから、こんな変なことしないでほしかった。