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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(73)「年越し しんしんと...」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

クリスマスが近づく中、原稿を書こうとする町子(藤山直美)は筆が進まない。そんなとき健次郎(國村隼)の兄・昭一(火野正平)が現れ、子どもたちにサンタと会わせる約束をする。また、昭一は町子に、健次郎との夫婦の話を書くよう勧める。「カモカのおっちゃん」を主人公に、町子は自分たちの出会いから夫婦模様、そして家族とそこに集まる人々の波乱万丈、抱腹絶倒のエピソードを、全国の読者に披露することにした。

貞男「♪ジングルベル ジングルベル」

配達の自転車を押して歩いている。町はクリスマスの飾りつけ。

 

クリスマスが近づき、町はいつもよりほんの少し浮かれています。ところが…

 

仕事部屋

町子「♪ジングル ジングルベル ジングルベル ジングルベル ジングル ジングルベル」真っ白な原稿に向かって指揮をしている。

 

純子「失礼します。あの…」

町子「♪『見ないでくださいよ』や」原稿を隠し、頭を抱える。

純子「編集の矢口さんからお電話ございました」

町子「怒ってはりましたか?」

純子「電話口であの…涙ぐんでらっしゃいまして…」

町子「私は本当に男泣かせの女なんですね」

純子「あの…新連載のことなんですけど…」

 

町子「私もね、その新連載ものすごく楽しみにしてるんです。今からね、胸がドキドキするほどね楽しみにしてるんですよ。あっ、でもその前に短編小説1つとエッセーを2つ書かなあかんのんですよね。あっ、矢木沢さん、その目、驚いてますよね。驚かなくても大丈夫ですよ。今、あなたには、これ真っ白に見えるでしょう? けど、この私にはね、すばらしい文字がず~っと連なって書いてあるのが見えてるんですよ」

 

廊下でため息をつく純子。そこに健次郎が通りかかった。

純子「あっ!」

健次郎「珍しいね、ため息やなんて」

純子「先生、ご無理なさってるんです」

健次郎「無理?」

 

純子「私がお勧めしたんです、週刊誌のエッセー。そしたら、お引き受けになったんですけど…」

健次郎「けど?」

純子「年末年始の一番お忙しい時と重なってしまって…。はあ~、まだタイトルも決まらないみたいで」

 

仕事部屋

町子「あ~あ~…」

 

中庭から声がする。

登「いてる!」

清志「いてへん!」

登「いてるんやから!」

清志「いてへん!」

 

登「いてる!」

清志「いてへん! サンタクロースなんかいてへんね!」

登「いてる! ほんなら去年、お兄ちゃん誰に新しいグローブもろたん?」

清志「誰にて…。なあ、おばちゃん」

 

町子「うん?」

清志「サンタさんなんていてへんよな?」

登「いてるよな?」

町子「登君はいてると思てるの?」

登「当たり前やん!」

町子「ほな、サンタクロースはいてるわ」

登「ほら!」

 

たこ芳

俊平「町子さん。町子さんは一体いつまでサンタさんを信じてたんですか?」

町子「私ね、そうやね…結構早うから大人の本、読んでたでしょ。ちっちゃい時から本当のことは知ってたね。けど、ほれ、信じてるふりしとかんとお父ちゃんに気の毒でしょ?」

一同の笑い声

町子「ねえ、健次郎さんは?」

 

健次郎「僕はな、ある年に兄貴がな近所の牛にこんなでっかい角つけて『トナカイ捕まえた~!』言うて、それで大騒ぎになって、それから知ってる」

町子「牛!?」

健次郎「牛に」

一同の笑い声

 

健次郎「あかん!」

町子「え?」

健次郎「あかん、あかん! こんなうわさ話してたらまた帰ってきよる」

 

たこ芳を出た町子と健次郎の前にアムールから裸で服を抱えた昭一が出てきた。

昭一「ほな、また来るわ」

晴美「うん。風邪ひかんようにな。じゃあね」

昭一「『風邪ひかんように』言うんやったら脱がすな! 何や! 大阪の冬、全然寒ない! 汗かくし! あっ…」

 

健次郎「何してんねん?」

昭一「見つかった?」

この場面は、ドラマが始まる前の事前番組で見たな。

 

茶の間

昭一は頭にクリスマスツリーに飾る綿を乗せながらツリーを飾りつけしている。

健次郎「野球拳?」

町子「ほれ、健次郎さん、あれですやん。♪『アウト セーフ ヨヨイのヨイッ』ていうやつ」昭一も町子もチョキを出す。

健次郎「知ってます」

町子「あ…」

 

昭一「店の女の子に負けた」

健次郎「何で裸で出てこなあかんの?」

昭一「それがやで、女の子が一緒に帰りたそうにしてんねやんか。こらあかんなと思たからやな、もう、ス~ッと逃げてきたんや」

町子「いつ帰ってきはったんですの?」

昭一「夕方ごろや」

健次郎「何でいつもまっすぐ帰ってこられへんねん?」

昭一「それやねえ」

 

登「あっ、伯父ちゃんや!」

昭一「お~、登、元気か?」

登「何しに来たん?」

昭一「それはご挨拶でしょう。見てみなさい。クリスマスでしょ。サンタクロースやないか」

健次郎のむせる声

町子「ちょっと…」

 

登「伯父ちゃん、サンタさんていてるんやんな?」

昭一「当たり前やんか、いてるで。おっちゃんはスペインで会うたなあ。真っ赤なマント翻してやで、雪がフワ~ッとこの聖夜にな来たがな、ソリに乗って、鈴鳴らしてシャンシャンシャン、シャンシャンシャン言うて」

健次郎「何がシャンシャンシャンや」

 

登「お兄ちゃんは『サンタなんかいてへん』言うねんで」

昭一「登、座れ。おっちゃんがみんな本物のサンタに会わしてるわ」

健次郎「え?」

登「ほんま?」

 

昭一「ほんまや。そやから欲しいもんがあったら紙に書いて靴下に入れときなさい。何でも買う…。あっ! 何でももらえるようにサンタ君に連絡しとく」

健次郎「兄貴!」

町子「はあ~。登君。ねっ、遅いから、もう寝ましょ。ねっ」

 

昭一「寝るか?」

登「約束やで!」

昭一「約束やで! おやすみ!」

 

健次郎「『サンタに会わしたる』やて?」

昭一「子供の夢、壊したらかわいそうでしょ」

町子「『何でももらえる』て?」

昭一「その点もご心配なく! 実はですね、臨時収入がありました。競馬でえらいものを当ててしまいました! 君たちも欲しいものがあったら紙に書いて靴下にスッと入れときなさい。うん! それとなく入れときなさい。フフフフフ!」

テーブルの上に置かれた分厚い財布。

 

朝、応接間

健次郎「お父ちゃんは靴下に入れる係なんやから。はいはいはい」

子供たちから紙を渡される。

清志「はい、お願いな」

由利子「はい、お願いね」

登「お父ちゃん、お願いな!」

健次郎「ああ。フフフ」

 

喜八郎やイシのいる茶の間に移動しながら紙に書かれたものを読む健次郎。「あっ、隆はプラモデルやて」

喜八郎「うん。おうおうおう」

健次郎「これ、亜紀や。クマの縫いぐるみやて」

喜八郎「かわいいな」

健次郎「由利子が…白い運動靴。22.5」

3人の笑い声

健次郎「清志は顕微鏡な。登が…ステレオ?」

 

仕事部屋

町子は原稿用紙に大きく「アイデアください」と書いていた。「私はもうこれを靴下の中に入れますわ」

昭一「どう? 仕事」

町子・純子「ああ」

昭一「うわ~、これが…これが小説家の仕事場か。本、ぎょうさんあんな、これ」

純子「あの『サンタクロースに会わせてあげる』っておっしゃったんですって?」

昭一「はい。もう手配済みです」

 

町子「どっちみち衣装着はるんでしょ? ケンムンの時のように」

昭一「聞いてた? 参ったなあ」

町子「兄がケンムンで弟がカモカやもん」

昭一「カモカ?」

町子「子供脅かす大阪の怖い妖怪」

 

階段下

健次郎「ステレオみたいな大きいもん、サンタさん一人では運ばれへんやろ。なっ。分かったか?」

登「はい」

その会話を聞いていた昭一。

 

そしてクリスマスイブがやって来ました。

 

たこ芳

たくさんの紙袋を受け取る健次郎。「おつりは結構ですから」

男「ありがとうございます」

 

りん「いや~、ほんま絵本で見るサンタさんやな。よう、こんな人、見つけてきはったわ」

昭一の隣にはサンタクロースの格好をした外国人男性がビールを飲んでいた。

昭一「この人ね、本業は船乗り。日本海でね、船の上で一緒やったん。今日、アルバイトで来てもろたんや。なっ」

りん「わざわざ雇いはったん?」

昭一「うん。暗なったら出番やで。それまでゆっくり飲んで」

 

りん「これやったら子供は本物やと思うわ」

昭一「明日になったらステレオも届くしな」

りん「ステレオ!?」

 

財布を見せびらかす昭一。「おう…これ、重たいねん」

りん「気前のええこと」

昭一「いや、もう、おう…重とうて重とうて持ってんの手がだるい。しもうとこ」

コートのポケットに財布をしまう。

 

茶の間

一同「♪笑い声を 雪にまけば 明るい光の花になるよ 

ジングルベル ジングルベル 鈴がなる 

鈴のリズムに 光の輪が舞う 

ジングルベル ジングルベル 鈴がなる

今日は楽しいクリスマス へーい」

純子も交え、クリスマスパーティー。子供たちは三角帽子をかぶり、登、亜紀は鼻眼鏡をかけている。歌い終わって拍手。

 

たこ芳

昭一「ああ…ちょっと早いな。ええタイミングで出したいからな。なあ、ニール、もう一軒飲みに行こか?」

うなずくニール。

昭一「オーケー。よっしゃ」

 

茶の間

サンドイッチやチキンなどごちそうを食べている。

純子「たくさん食べてね。いかがですか?」

町子「ものすごくおいしいです」

純子「よかった~」

 

健次郎「登! 登、何をソワソワしてんの? お前は」

登「サンタさん、そろそろ来るで」

町子「サンタさんはね、いい子が寝てから来はるのよ」

登「けど、伯父ちゃんが『会わしたる』て言うたもん」

 

たこ芳前

のれんをしまおうと外に出たりんが寝ている昭一とサンタを発見。「ちょっと! ちょっと、あんたら! ちょっと言うてんのにもう…」

昭一「え? あれ? 真っ暗…」

りん「ここで何してんの? あんたたち」

昭一「こんな時間。もう行かないかん。サンタさん、起きよう」

りん「あっ、もう…」

昭一「ウェイク…ウェイク アップ ニール!」

 

りん「あかんな、もう完全に潰れてるわ。どこまで飲んだんよ! ほんまにどんだけ…あっ! ちょっと」

昭一「はい?」

りん「コートは? あんたのコート。どないしたん?」

昭一「あっ、あれへん。あれ? コート…。あら? コート…」

りん「あっ、ちょっとちょっと、これこれこれ」

そのまま立ち去ろうとする昭一にプレゼント袋を渡すりん。

 

昭一「あっ、これもそやし…」

りん「はい」

昭一「コート…。コ…。え~っ!」

りんはため息をつき、サンタはそのまま寝ている。

 

そして、クリスマスの朝です。

 

応接間

プレゼントを開ける子供たち。

由利子「はい」亜紀にクマの縫いぐるみを渡す。

隆「やった~!」

 

茶の間

亜紀「これ、もらった~!」

喜八郎「あら。まあ、よかったなあ!」

昭一「ごめんな、登」

登「『来たら起こして』言うたのに…」

昭一「うん」

 

町子「登君、よう寝てたんやもん。それにね、サンタさん急いではったみたいやから何か引き止めんの悪いなあと思って」

登「約束したのに…」

町子「けど、欲しいもん、ちゃんとくれはったでしょ?」

登の傍らには青いグローブ。「けど…」

 

健次郎「男のくせにいつまでもグズグズ言うな!」

グローブを抱えて走り去る登。

町子「お兄さん…2人で酔い潰れてはったんですか?」

昭一「はい。面目ない。お代わり」

健次郎も町子もあきれ気味だけど、イシはニコニコしてるんだよねえ。

 

そしてまた昭一はふらりと徳永家を出ていきました。その日の夕方

 

玄関

町子「ステレオや! 健次郎さん! 健次郎さん!」

 

大きな箱には”ソリッドステート・セパレートステレオ SBK-1400”と書かれていた。

 

健次郎「どないした? 大きな声出して…」

町子「ねえ、ステレオ買うたの?」

健次郎「え? いや…何かの間違い、違いますかね?」

電気屋「ご依頼主は徳永昭一様となってます」

町子・健次郎「はっ?」

 

町子「お兄さんからのプレゼントや」

電気屋「ほなこちらで間違いあらへんですね」

由利子「おばちゃん、電話」

町子「はい」

 

電気屋「13万2,000円になります」

健次郎「え?」

 

茶の間

町子「もしもし、お兄さん? 町子です。どうもありがとうございました、ステレオ。ええ。もう…。は?」

 

たこ芳前の赤電話

昭一「払わないかんと思てんねんけどな、それがあの…。大金が入った財布が入ったコートがどっか行ってしもたんや」

町子「いや、ちょちょちょっと待ってください。そしたら、お代金どないになるんですか? あの、ステレオの。ねえ。ねえ、ちょっと待ってください、お代金がどな…」

 

応接間にステレオが運び込まれる。

 

昭一「あ、そや! あんな、あんたのエッセーな、『カモカのおっちゃん かく語りき』ちゅうのどや? 夫婦の話を面白おかしゅう書くねんか」

町子「いや、今、そんな話やないんですよ、お兄さん。ちょっと、お兄さん、もしもし?」

健次郎が受話器をひったくる。「もしもし…」

しかし電話は切れていた。

 

町子「『お金は必ず返します』て」

健次郎「うそつけ!」

しかし、即金でステレオ買えるのすごいな~。

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今日のこのドラマは昭和42年のクリスマスだけど、「3人家族」では昭和44年3月に大学の合格祝いとしてステレオを買ってもらっていました。値段は出てこなかったけど、恐らく日立製。

 

同じように電気屋さんがセッティングをして、汽笛の音などサービス盤のレコードを聴かせていて面白いなと思いました。健はそれにハマって、曲の入ったレコードじゃなくて効果音ばっかり集めたレコードを買って友達や家族を集めて聞かせたりしてた。

 

登「ステレオや!」

清志・隆「ステレオや!」

子供たち「やった! やった! やった!」

子供たちの歓声に町子は笑顔になった。

 

応接間に置かれたステレオから音楽が流れる。

町子「♪サイレント・ナイト ホーリーナイト」

町子と健次郎は今日は応接間でワインを飲んでいる。

健次郎「ほんまに懲りん兄貴や」

町子「健次郎さん」

健次郎「うん?」

 

町子「お兄さん、無一文で大丈夫やろか?」

健次郎「まあ、なんとかしてきたんやからなんとかしよるやろ」

町子「『カモカのおっちゃん かく語りき』」

健次郎「え?」

 

町子「お兄さんね、私にものすごいプレゼントくれはったん」

健次郎「ふ~ん」

町子「はい、メリークリスマス。メリークリスマス。はい」ワインで乾杯。

 

探していた新連載のエッセーのテーマが決まりました。

 

健次郎を見ながら引き笑いをする町子。

ミニ予告

健次郎「コラコラコラコラ! あんた、危ないやろう!」

peachredrum.hateblo.jp

出会いのシーンかな? 

 

マー姉ちゃん」の時も身近にいる人がネタにされるのを嫌がったり、ネタに困って家族のことを描くというのは作者が楽しいと思って書いた話も本人にとっては知られたくない話だったり、諸刃の刃なんだろうなあ~。田辺聖子さんの本は楽しいんだろうけどね。