【山田太一劇場】
— 日本映画専門チャンネル (@nihoneiga) December 19, 2017
■本日よる8時50分~#竹脇無我 #栗原小巻
「3人家族」第21~24話
TBS『木下惠介アワー』で歴代最高視聴率を記録した人気ホームドラマ!1960年代、大家族ドラマが流行る中で、シングルファザー、シングルマザーの世界がリアルに描かれた点も話題となった作品です。 pic.twitter.com/DxJ0r4jCRg
1968/10/15~1969/04/15 TBS
あらすじ
TBS『木下恵介アワー』で歴代最高視聴率を記録した人気ホームドラマ。偶然の出会いから始まる大人の恋と3人家族の心あたたまる交流を描く。男ばかりの柴田家と、女ばかりの稲葉家の二つの3人家族の交流を軸に、ロマンスやユーモアあふれるエピソードを盛り込んで話は展開する。山田太一が手掛けた連続ドラマ初脚本作。1960年代、大家族ドラマものが流行る中で、シングルファザー、シングルマザーの世界がリアルに描かれたのも話題となった。
23話
車に乗っている健が野菜を配達している昇に声をかけ、ステレオを買ったから後で来いよと誘った。ハマヤ電気商会の車。昇はそれを見て「チェッ! 俺もおやじに買ってもらおう。そうそう差をつけられちゃかなわないよ」。店の手伝いしていても小遣い程度しかもらってないのかな。
耕作も雄一も出かける準備をしている。今日は日曜日か。お祝いに1枚レコードおごるぞと雄一。耕作は健にステレオ代を渡し、雄一も健にレコード代を渡した。電気屋さんは高校でステレオは当たり前。大学に入って初めてステレオ買ってこんなに喜んでいるのを見るといじらしくなると健を褒めた。
耕作と雄一は出かけていき、セッティングを終えた電気屋さんがこれでも聴いて下さいとレコードをかけた。ファンファーレが流れて「これがステレオです」と女性の声。ちゃんと音が出るかの確認みたいなレコードなのかな。「とにかくまずお聴きください」と女性の声が続く。汽車の汽笛から走行音が右から左に流れるように聴こえる。電気屋さんのジェスチャー付きで面白い。
電気屋「どうです?」
健「しびれる~!」
多分だけど、箱の感じから日立かなと思います。
観覧車が映し出される。横浜のドリームランドと思われます。1964年開園、2002年閉園。屋外スケート場で手をつないでスケートをする雄一と敬子。
遅ればせな恋であった。別れの日の近いことが2人をなお離れがたくしていた。心の飢えを満たそうとするように2人はどんらんに2人だけの時間を楽しもうとしていた。
2人で手すりに寄りかかる。
敬子「よく滑った」
雄一「まだまだこれからいいとこ見せようと思ってるのに」
敬子は手袋を外し、雄一にハンカチを差し出した。額の汗を拭く雄一。
雄一「ハハ…ありがとう」
この間のドライブについては何もおとがめなしだったのかな!?
耕作は吉本と喫茶店に入った。ジュースを注文する耕作。オレンジ、グレープ、パインのうち、どちらもオレンジをチョイス。吉本は相手が「柴田さんを重役として迎えたい」と言いだしてる、重役ったって小っちゃな工場のことでどうってこともないが、せっかく柴田さんのように仕事のできる人が来てくれるんならと言っている。工場を拡張する腹があるので、退職金の中からいくらかでも出資してもらって、その代わり重役として力を振るってもらったらどうかと語る。
向こうにいいような話だけど、損ばかりということもない。
吉本「私も調べてみたんですよ。だって世話しといて退職金をパアにさせたんじゃ腹切っても済みませんからね」
いくらくらい出せばいいかという耕作に、そこまではまだと言うものの、まあ100万ってとこですかね、と吉本。
耕作の斜め後ろに偶然ハルが友達?とお茶していて、話を聞いていた。
柴田家では健が昇ともう一人呼んでステレオを聞かせていた。さっきのあの汽笛のやつ。次はガラスの割れる音、パトカーのサイレン。健はすっかり気に入っている。
雄一と敬子はゲームコーナーで遊んでいた。パチンコみたいなやつ。脇で見ていた若者に「若いね、お宅たち」と言われた。
坂道を「とんでもない、旦さん100万なんて」と言いながら歩くハル。ちょうど家から健と友達が出てきた。
健「あっ、おばさん」
ハル「あっ、坊ちゃん」
健「何急いでんの? せかせか」
ハル「何って大変なのよ、坊ちゃん」
友達は帰っていき、また聴きに来いよという健に「サービス盤1枚しかないくせに」、汽車ぽっぽの音なんかごめんだと行ってしまった。
ハルは坊ちゃんに言ってもしょうがなかったと言うのをやめた。まだそうだってはっきりしたわけじゃない。これから出かけるという健はレコードを買いに行くという。ハルも何か買ってあげたいが耕作が気にするんじゃないかと思っていた。今度何か買ってあげる!というもののこうしちゃいられないとハルはどこかへ急いで行ってしまった。
昼飯くらい一緒に食べましょうと耕作は誘うが、吉本は帰っていった。
定年のあと、小さい工場ではあったが重役として迎えるというのである。100万というカネを出資する以上、それほど甘い話ではなかったが重役という言葉は疲れた耕作の耳には快かった。目を閉じてその誘いに乗りたい気持ちであった。
「目を閉じて」といえば雄一と敬子もある意味では目を閉じていた。2人はまもなく来る別れと別れたあとの2年間の離れ離れの生活について努めて触れまいとしていた。考えてもしかたがないのだ。ともあれ好きなのだから今はその心を燃やすほかはないのだ。それが2人の暗黙の了解であった。開き直った思いであった。
ドリームランドでいろんなアトラクションで楽しむ雄一と敬子。竹脇無我さんを見ていると、今再放送中の「マー姉ちゃん」の山口崇さんと似たタイプの上品なイケメンだなあと思ったら、「大岡越前」とかで共演してるのね。
ハルは、家政婦先の一つである安造の家を訪れた。いつものように家の中でもマフラーまいてる安造さん。ハルは縁側から上がった。仕事じゃないと落ち着かないというハル。ほかに頼れる人がないもんで…と言われて金の無心だと勘違いする安造。仕事じゃないというのにお茶をいれてくれという。
ハルは恋人が100万を取られそうだという。
ハル「私の勘では…私の女の愛の勘では怪しいんですよ、どうも」
安造「うん…なんだかちっとも分からんがね」
恋人に直接言えばいいと言われても言えない。手をこまねいているしかないんですかとじれったいハル。
耕作は一人パチンコをしていた。立ってる。イスがないんだ。
飲み物を買ってきた雄一。敬子は外のイスを拭いていた。ぬれてる上にガムまでこすりつけてあった。
敬子「失礼しちゃうわ」←姉妹の口癖なのかも。
ゴミを捨てて帰ってきた敬子をじっと見つめる雄一。
敬子「イヤ、そんなに見ちゃ」
雄一「うんと見ておくんだ」
敬子「あっ! 冷たい。やだわ、面白がって。そんなに見てはイヤです。何かついてる?」
雄一「そんなんじゃないんですよ」
敬子「じゃ、何?」
雄一「実は昨日カイロへ行く日が正式に決まったんです」
敬子「いつ?」
雄一「来月の15日」
ドラマの最終回が1969年4月15日(火)
敬子「まあ…」
雄一「独り者の出発だから無論20日もあれば十分なんだけど」
敬子「15日ですか」
雄一「でもちょっと早いんで驚いたな。日が決まってなんとなく1か月ぐらいはあるような気がしてたから。もっとも考えてみれば20日も30日も大した違いはないんだけど」
敬子「どうしたらいいんでしょう? 私たち」
雄一「どうしたら?」
敬子「もちろん20日たったらお別れするだけね。ほんとに私バカでした。どうしてもっと早く『あなたを好き』って言えなかったのかしら。そうすればお別れするまでにもっともっとたくさんの時間があったのに」
雄一「それはあなたのせいじゃない。僕ですよ。僕がこうなることを極力抑えていたからですよ。留学試験は受けたかった。受けた以上受かりたかった。受かれば外国へ行くことは当然の成り行きです。だから、あなたを好きだなんて言っちゃいけなかった。最後まで自分を抑えなくちゃいけなかった」
敬子「今でもそう思っているんですか?」
雄一「だってそうじゃありませんか? あなたと親しくなればなるほどそのあとの会えない2年間が考えただけでも味気ないようなむなしいようなそんな気持ちになっていくんです」
敬子「私、このごろ思うんです。2年間ぐらいなんだろうって。2年間会えなくたって待ってられるって」
雄一「あなたにとっては24と25の2年間ですよ。縁談だって恋愛だって一番あるときじゃありませんか」
敬子「でも待てると思うんです。ですから…それはお別れはつらいけどあと20日しかなくても私…。それほど悲しく思わないことにしようって。変でしょうか? 私の思い方」
雄一「僕はただ今のカッとなった気持ちで2年あとの約束をしてもいいものかと思うだけです」
敬子「2年あとの気持ちなんて私だって分かりません。でも約束もしないでただ2年間お別れするんでは今の気持ちがたまらないんです」
雄一「…」
敬子「待ってます、2年間」
雄一「…」
敬子「いいでしょう? 待ってて」
雄一「ありがとう」
敬子「2年ぐらい何かしら」
確かに2年先の自分の愛情も信じられずにどうして人を愛することができるだろう。ためらう自分がおかしいのだと雄一は思った。
雄一「2年たったらまたここへ来ようね」
敬子「ええ」
雄一「そのときの僕たちも多分今の僕たちと変わらないと思う」
敬子「多分?」
雄一「いや、きっと。きっと変わらないと思う」
見つめ合って笑う。
雄一は自分の愛の言葉の威勢の悪さにあきれていた。人を愛するということからなんと今まで遠くにいたことだろう。しかし、今は確かに自分は愛の世界にいる。そう思うまでになんと多くの時間が必要だったことだろうか。
この日は1969年3月23日(日)かなあ? 敬子の手を握る雄一。
耕作が家に帰ると男物の靴が散乱していた。健は友達7人を呼んで大レコード大会を開いていた。耕作も加わる。健が雄一にもらったお金で買ったレコードはモーターボートの音、卵の割れる音、焼ける音、赤ちゃんの声、渡し舟の櫓の音が入った音源集だった。
夜、外に出ていた健はハルと会っていた。お父さんがこれから就職しようとしている会社の名前を今晩のうちに聞いてほしいとハルが言う。ハルは興信所でその会社を調べる。
耕作は100万を工面しようとそろばんをはじいていた。
敬子のマンション前まで送った雄一。
雄一「じゃ、またあしたの夕方」
敬子「まだ早いけど…」
雄一「たまには妹さんと食べてあげなくちゃ」
敬子「ええ」
雄一「その代わり、あしたのごはんは僕とですよ?」
敬子「もちろん」
雄一「じゃ、あした6時半に日比谷公園」
敬子「ええ」
雄一「僕もたまには親父や弟の相手をしないとね」
敬子「もうじきお別れなんですもんね」
雄一「うん」
敬子「じゃ…」
雄一「さようなら」
敬子「さようなら」
雄一「さあ」なかなか歩きださない敬子を促す。
敬子は歩き出したが、雄一の足音が止まったので振り返る。
雄一「あのね…」
敬子「えっ?」雄一は敬子のほうに歩み寄った。
雄一「あと10分くらいこの辺散歩してから別れようか」
敬子「ええ」
雄一「意志が弱くて困るよ」
敬子「お互い様」雄一の腕に絡みついた。
その日、敬子の家に1通の手紙が届いていた。アラスカにいる敬子の父からであった。厳しい冬もようやく峠を越してなお望郷の思いに耐えかねているという。妻・キクに許しをひたすら請う便りであった。
24話
キクは他の従業員が帰る中、ひとり帳簿付けをしていた。
アラスカにいる別れた夫・兼一からの手紙が来て4日がたっていた。この間、キクは次第に膨らむ訳の分からぬ腹正しさを自分で持て余していた。復縁を求める夫の自分勝手に腹を立てるというよりは、そんな男の勝手を許しかねない自分の孤独に腹を立てていた。
娘が2人もいるというのになぜ自分は心の隅で身勝手な男を許したいと思うのか。こんな自分の心の動きがキクは悔しく腹立たしかった。
遅くに帰ってきたキクを敬子が待っていた。敬子はキクに届いた父の手紙の内容を知りたがっていたが、キクは破いて捨てたと答えた。それより、この頃、行き違いで敬子とあまり話ができず、夕飯を家で食べてないことを指摘。
敬子は「やっぱり柴田さんがいい」と言った。キクは「子供の結婚相手にはケチつけたがるもんなの」と許していた。しかし、留学のことは気にしていて、帰ってきたら結婚すると言うと、やっぱり気に入らない。2年も外国に行くのに毎晩娘を誘うのは常識がないと怒った。
キク「お前だっていけませんよ。どうするの? なんかあったら」
敬子「なんかってなに?」
キク「なんかって言えばなんかですよ。そのあげく『はい、さようなら』って2年間も外国行かれちゃったら…約束なんか当てになりゃしないんだから」
敬子「そんな安っぽい恋愛じゃないわ」
キク「誰だってそう思ってだまされるんだよ」
敬子「だますなんて人じゃないのよ」
キク「だます気はなくても男って気が変わるもんなの」
敬子「気が変わるのは女だって同じよ。約束が当てになんないのはお互い様よ」
キク「それならどうして約束なんかするの?」
敬子「好きだからよ。今の気持ちは本当に好きだからよ」
キクは以前、雄一が敬子を友達だと言ったことを怒った。友達でいようと思ったけどダメだったと敬子は言った。好きな男ができれば、お母さんの気持ちなんかどうでもいいのかい?と言い争っていると明子が起きてきた。アラスカでもどこにでも行っちゃうから!と言ってしまうキク。
明子は健と会って「あなたと私がきょうだいになっちゃうかもしれないのよ」と雄一と敬子が結婚の約束をしたと言った。健は、めでたいと言うが、明子はきょうだいになったら結婚できると思う?と興奮してる。私と結婚したくてたまんないくせにと明子。健はあくまで友達っぽく見えるな。
キクは耕作の会社に行った。表門の守衛に聞くと、倉庫の裏で焚き火をしていると言った。今日で定年で自分のものを燃やしている。
耕作は目をしょぼしょぼさせながら書類を燃やしていた。今日で定年でお辞めになるんですってねと言われ、「ええ、まあ、しようことなしにね」。
しようことなし=なすべき方法がない。どうしようもない。
キクは棒が短いんじゃありません?と長い棒を見つけてくれて耕作に渡した。穏やかな雰囲気になるキク。中華街でハルと一緒だったのも家政婦にお礼をしただけと娘に聞かされたと言った。耕作はまた怒鳴られるんじゃないかと笑った。
キク「おたくのご長男とうちの娘とうとう約束しちゃいました」
2年間、日本を離れる人がどうして土壇場でそんな約束をするのか? もうちょっと自分を抑えてくれたら娘だって諦めたんじゃないかとキクは続けた。
耕作「そうですか。約束をねえ」ニヤニヤ。
キクは口約束だけでそれ以上のことはないように耕作からも言ってほしいといわれ、耕作も雄一も分かってるが言っておきますと言いながらも「う〜ん…約束をねえ」とニヤニヤ。
キク「親なんてつまんないもんですね。下の娘だってもう19ですもの。じきに結婚してどっかへ行っちゃう。そうすれば私は死ぬまで独り」
しんみりしているキクに耕作は笑う。
耕作「しかしまあ子供がいたことで楽しい思いもしたんだから、ねえ?」
キクは書類を燃やすのを手伝った。その内、昼休みのサイレンが鳴り、耕作はキクを昼食に誘った。
昼休み。雄一と敬子が食堂で隣り合って昼食をとっていた。キクが雄一の会社に行くかもしれない。
敬子「母が強いこと言っても撤回しちゃイヤよ。約束」
雄一「ハハ…信用してないんだな」
敬子「そう、信用してないの。あなたは仕事半分、恋愛半分。一生ダメよ、あなたなんか」
雄一「ハハ…悪いの選んじゃったな」
敬子「でもいいの。そういう人だからあなたが好きなの」
雄一「大きいよ、声が」
敬子「あら、好きな人、好きだって言うのが…」
雄一「分かった。すごいよ、このごろの女性は」
健と明子は屋外プール?でコッペパンを食べていた。明子は父に会いにアラスカに行きたいという話から、アラスカに行ったら悲しいか、どのくらい好きか聞いてきた。好き、恋してる、愛してる、死ぬほど愛してる、そのうちどれ? はっきり答えられない健をじーっと見ているこどもたち。
耕作とキクも隣り合って食堂にいた。
キク「毎日これのお世話になってたわけですね」と言ってるから社食だね。「大抵ここで大抵この席で」と言いかけた耕作は斜め前で食事をしていた社員に「君とはよくここであったよな」と話しかけた。社員もよくこの席にいた。
社員「課長、奥さんですか?」
耕作「いや、違う」
社員「そうですか? なかなかお似合いですよ」
耕作「いや、そんな失礼なことを、君」
社員「ハハハ…こりゃどうも。じゃお先に」と席を立った社員に声をかけた。
耕作「君とはここでしか会わなかったが、まあ元気でな」
社員「辞めるんですか? 課長」
耕作「定年だ」
社員「あっ、そうですか。そりゃ知らなかったな」
耕作「なかなかいい会社だ。頑張ってくれ」
社員「はあ…たまには遊びに来てください」
耕作「ありがとう」
社員「じゃ、お元気で。さようなら」
耕作「どうも。(キクに向かって)いい青年だ」
キク「若い人は気持ちがいいですね」
耕作「ええ」
隣に座っていた社員が食事を終え、立ち上がった時に「課長、お元気で」と言って去って行った。周りにいた他の社員たちも次々立ち上がり口々にお元気で、お世話になりましたなどと声をかけた。その光景に思わず涙を拭くキク。花束もらって、みたいなセレモニー的なものはなし? でもすごく慕われていたのは分かるな。
夜は親子で酒を飲む。37年間同じ道を通った工場で課長にしてくれたことやお元気でと言われたことに感謝していた。
耕作「お父さんの時代は終わったよ。今度はお前たちだ」
雄一「気の弱いこと言わないでよ」
健「そうだよ。平均に生き延びたって、まだ14年は生きるんだよ」
雄一「バカ! 14年で死んでたまるか」
健「あっ、そりゃそうだけど…。ちょっと失言だったな、こりゃ」
昭和40年の全国平均寿命は男性67.74歳。60代かあ〜。でも乳幼児の死亡率が高いと平均寿命が短くなると聞いたことがあるので、長生きする人はしてただろうけど。
耕作「エジプトへ行く前に一度お父さんに会わせろよな」と雄一に言った。結婚が決まったそうだなと言われ、取り乱して徳利を倒して、お酒をこぼした。会社にキクが来たこと「今更どう叱ってもしかたがない」と言っていたと伝えた。健も明子から聞いていた。
雄一「あの人をほかの人に取られるのはやっぱりイヤなんだ」
健にからかわれるが、とにかく一度会いたいと耕作。
耕作「ほかのことはお前を信用してなんにも言わん」
雄一「大丈夫だよ。僕だっていろいろ考えたうえだから」
定年の夜に息子の婚約を聞く。とうとう自分にもそんな役割が回ってきたかと思いながら、まだ耕作にはその役割がなじめない気持ちであった。とにかく子供をここまで育てた。あとは自分の生きたいように生きる。
♪ハアー 桑の中から 小唄が洩れる コリャ
小唄…と伊那節を歌う耕作。
冒険もしてみよう。楽しんでもみよう。はた目には滑稽かもしれないが、そんな欲望がまだ耕作の心に残っていた。いや、定年になってみて改めてそんな欲望に目覚めたような気持ちであった。
じっと伊那節を聴いていた息子たちが耕作に拍手を送るのがいい。
キクは耕作を訪ねたが、定年ですっかり気をそらされちゃってと「だからもうお母さんなんにも言わない。いいようにやりなさい。お前を信用するほかないもの」と結婚を許した。キクもどうしてもこの人と思って一緒になった。いきなり2年間も会えないのは大変なことだと言うと、敬子は貯金をおろしてエジプトに行くつもりでいた。キクも雄一を連れてくるように言った。
明子は雄一と敬子が結婚したら健とはきょうだいになることを気にしていた。キクには何のことだかピンと来てない。敬子は再びアラスカからの手紙のことを聞いた。
キク「お母さんだけじゃ不足だっていうのかい?」
敬子「自分のこと言ってるんじゃないの。お母さんのこと言ってるのよ」
キク「私がなんだっていうのよ?」
キクは再びお母さんだけじゃ不足なのかい?と尋ねた。敬子も明子もうつむいた。
キク「いえ…不足だろうさ。でもお母さん一生懸命やってきたよ。女手ひとつでマンション買うまでになったんだよ。少々不足だってお母さんの苦労考えたら、そんな文句言えないはずだよ」
敬子「そんなこと言ってるんじゃないの。私、お母さんの気持ちが聞きたいの」
キク「だからなんだっていうのよ?」
敬子「お母さん、お父さんが懐かしくないの?」
キク「バカなこと言うもんじゃないよ」席を立ってしまった。
敬子「お父さん謝ってるんでしょう? 何度も何度も謝ってるんでしょう?」
キク「謝って済むことじゃありませんよ」襖を閉めてしまった。
確かに裏切った夫を懐かしいと思うのである。娘が1人去り2人去り、そして自分1人でこの部屋に住むときを思うと、裏切りを許せぬと思いながら心は遠いアラスカを求めていた。そんな自分が情けなく悔しく、しかし、心はやはり飢えているのであった。
空港で飛行機を見ている健と明子。明子は父に手紙を書くと言う。「お母さんはほんとはお父さんが好きです。だから帰ってきてあげてください」。そんな勝手なことをして大丈夫かという健にお母さんが1人きりだと私たちが面倒見なきゃと結婚してる前提で語る。変なこと言わないでよと健。
明子の手紙「お父さん、帰ってきてください。明子だってお姉さんだって、もちろんお母さんが一番、お父さんのお帰りを待っているんです」
今週はこれで終わり。23日が祝日でなければ今日終わってたのにな〜。
父は再登場するのか!? 仕事人間のキクなので、その当時の女性とはまた違って孤独を感じてるのかな。女性は伴侶を亡くして一人暮らしでも、ご近所の人と仲良かったりして元気な人は多いけどね!