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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(149)「ほな、また!」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

健次郎(國村隼)の治療が始まって2週間、コバルト治療のつらさは、健次郎の体力を徐々に奪っていたが、昭一(火野正平)や和代(香川京子)、徳永家の近所のみんなが見舞いに訪れ、健次郎を元気づける。そんなある日、町子(藤山直美)は病院から健次郎の外泊許可を取る。その日は健次郎の誕生日であった。徳永家に子どもたちが集まり、盛大に健次郎の誕生日を祝う。そして久しぶりに夫婦2人だけの時間を自宅で過ごす。

病室

食事をほとんど食べずに箸を置く健次郎。

町子「え? もう食べへんの?」

健次郎「うん。もうおなかいっぱいや」

 

健次郎が入院して2週間。懸命な治療にもかかわらず、病魔は健次郎の体力を少しずつ奪ってゆきました。

 

ノック

町子「はい!」

昭一「よっ!」

町子「あら!」

健次郎「ああ」

昭一「あ…偶然下で会うてな」

晴子「私も近くまで来たから」

町子「お仕事?」

晴子「うん。どない?」

健次郎「うん。見てのとおり元気やで」

 

晴子「これ、リンゴ持ってきたよ。お兄ちゃん好きでしょ?」

健次郎「ありがとう。今な、ちょうどお昼ごはん終わったとこやねん」

町子「あ…ありがとうございます。後から頂きます。うわ~、おいしそやわ。ねえ、そしたら健次郎さん、私、これ返して売店で新聞買うてきますわ。お願いします」病室を出ていく。

 

咳をする健次郎。「何や、兄貴は手ぶらかいな?」

昭一「何、言うてんね、お前。俺は真心持ってきとるでしょ」

健次郎「兄貴の真心もろてもな…」

昭一「退院したら、なんぼでもお酒ごちそうするがな。健、そや、奄美行ってな、みんな呼んで盛大に宴会しよ」

晴子「そや。みんなで行こ。費用はね、昭一兄ちゃん持ちで」

昭一「何でそうなんねん、お前!」

咳をする健次郎。

昭一「そうしよう」

健次郎「うん」

 

ノック

看護師「徳永さん。点滴の時間です」

健次郎「はい」自ら左の袖をまくり上げる。

看護師「はい、すいません」

点滴されてる健次郎を見ている昭一と晴子。

看護師「気分が悪くなったらすぐにおっしゃってくださいね」

健次郎「はい」

看護師、病室から出ていく。

 

晴子「大丈夫?」

健次郎「うん。すまんな、心配かけて」

昭一「絶対ようなるからな。健、諦めたらあかんぞ」

健次郎「諦めてなんかないで。やれることは全部やってる。けど、どうしようもないこともあるやろ。それが人生やがな」

泣き顔の昭一。

健次郎「なんちゅう顔してんねんな。僕は大丈夫やて」

昭一「(涙声)そない言うてもやな、お前…」

晴子「お兄ちゃん!」

昭一「あかん、俺、やっぱ…。すまんな。お前の顔見たら…。ほんまはな、1人でよう来んかて晴子についてきてもろたんや。情けないわ…」

健次郎「そんなことない。大丈夫や。ほれ」タオルを差し出す。

受け取ったタオルで涙を拭く昭一。

健次郎「心配せんでええて。僕にはこうやって兄貴も晴子もついてくれてんねやし」

晴子「お兄ちゃん…」

晴子も涙声になり、昭一はタオルが手放せない。

 

仕事部屋

原稿を書いている町子。

 

健次郎の看病の一方で、いつものように仕事にも力を注いでいる町子です。

 

茶の間

和代「純子さん」

純子「はい?」

和代「あの、ちょっとお願いがあるんですけど」

純子「はい」

 

病室

ベッドから起き上がり本を読んでいる健次郎。

ノック

健次郎「はい」

純子と和代が入ってきた。

健次郎「お母さん…」

和代「町子が忙しいもんやさかい、純子さんに無理言うて連れてきてもらいました」

健次郎「あの、もう、足はよろしいんですか?」

和代「はい、おかげさんで」

純子「お母様」

和代「あ…すんません」

健次郎「座ってください」咳き込む。「わざわざすいませんね」

和代「あ、いえ…」

純子「あの、私、ちょっと売店に行ってまいります」

 

和代「ご気分はどないです?」

健次郎「ええ。ここんとこは、もう落ち着いてます」

和代「そう。町子はもう仕事ばっかりで…。健次郎さんをこないして一人でほったらかして…」

健次郎「いやいや、そんなことないですよ。ちゃんと朝晩来てくれてます。それに二人でおると病室やろが、どこやろが、僕がずっとしゃべってるんでね、あんまり体にはようないかもしれないです」

和代「ほんまにようしゃべるご夫婦やもんね。健次郎さん」

健次郎「はい」

和代「頑張って!」健次郎の手を握る。「頑張ってちょうだいね」

健次郎「はい」

和代「ねっ」

 

それから、数日がたち…

 

病室

タッパーに入った関東煮き。

健次郎「うわ~、うれしいなあ、これ…」

りん、一真、工藤酒店の夫婦、みゆき館の夫婦が病室を訪れた。

りん「いや、そやけどね、お医者はんに見つかったら怒られるのと違う?」

健次郎「かまへんでしょ、これぐらいは」

一真「そうか」

りん「大丈夫かな」

健次郎「あ、コロも入ってる」

 

俊平「しかし何やね、おじゅっさんもりんさんもこう洋服着てたら何か違和感あるね」

一真「そうかいな」

りん「似合うてる思うよ」

一真「似合うてる、似合うてる」

健次郎「なあ、俊平はん、いっぺん聞きたかったんやけどな、キランキランのあんたの服、どこで買うの? いつも」

俊平「え? これ?」

貞男「俺もそれな、ずっと聞きたかってんや!」

佐和子「ほら、そやからボチボチ、シックなん着たらええて言うてんのに!」

俊平「おかしいか?」

佐和子「おかしいよ」

 

健次郎の病状は小康状態を保っていましたが、そんなある日のこと…

 

仕事部屋

原稿を書いていた町子の手が止まり、ため息。6月のスケジュール帳を見る。1日が日曜日なので1997年。「あぐり」やってる頃だな~。

町子「あっ! ああ…」

 

病室

健次郎「外泊許可?」

町子「そう。土日」

健次郎「土日?」

町子「フフッ。お誕生日、健次郎さんの」

健次郎「ああ…そうか」

 

そして…

 

茶の間

テーブルにはごちそうが並ぶ。

町子「はい、お待たせいたしました。お母ちゃん、これちょっとみんなかぶってもろて。健次郎さん、はいどうぞ」みんなには三角帽子、健次郎には紙のシルクハット。

健次郎「え? 僕もかいな」

純子「もちろんですよ」

健次郎「へえ。これ、わざわざ作ったの? これ」

純子「『シルクハットが似合う男になりたい』っておっしゃったじゃないですか」

健次郎「いや、けど、紙のやつとは言うてませんよ」

 

シルクハットをかぶる健次郎。「どう?」

町子「よう似合う」

純子「お似合いになります」

町子「よう似合うわ~。ねえ、おじいちゃん、似合うか? 似合う?」

「似合う!」←孫がいた!

一同の笑い声

 

由利子「は~い、用意できました!」火のついたろうそくの立ったケーキを渡す。

町子「はい、ありがとう! ちょっとここ置かしてもらいます。はい。あっ、ついた…。ないしょ。え~、皆さんよろしいでしょうか」

一同「はい」

一同の席に並んだ感じだと清志の妻の隣に女の子、登夫婦の間にも子供がいる?

 

町子「はい、それでは、さん、はい!」

一同「♪ハッピー バースデー トゥ ユー

ハッピー バースデー トゥ ユー

ハッピー バースデー ディア お父ちゃん

ハッピー バースデー トゥ ユー」

健次郎「では…」ろうそくの火を一息で消す。

拍手と歓声

町子「おめでとうございます」

健次郎「ありがとう、ありがとう」

 

健次郎「ほな、食べよか。はい、いただきま~す」

一同「いただきま~す!」

町子「健次郎さん。今日、健次郎さんの大好きな鯨のベーコンがありますから、たくさん食べてね」

健次郎「早速頂こう。いや~、これは懐かしいなあ」

町子「よう噛んでよ。ねえ」

健次郎「うまい! 懐かしいな、これはほんまに」

町子「昔はこういうの貴重品やなかったから、ぎょうさん食べたね」

健次郎「ほんまやな」

町子「うん。よう食べなさい。ねえ。お母ちゃん、ちゃんと見ててあげなあかんよ」

 

健次郎は、皆の顔を見ている。純子、由利子、亜紀、…の隣は夫?、登夫婦と男の子かな…

 

町子「亜紀ちゃん、子供の分まで食べんねんよ」

亜紀「うん」

町子「よう噛みなさいよ。よう噛んで食べなあかんねやで」

 

反対側は和代、清志夫婦と女の子、隆夫婦…ニコニコと眺める健次郎。

 

町子「健次郎さん、ほんまにおめでとうございます。これ、プレゼント」

健次郎「え?」

町子「プレゼント」

健次郎「ああ…おおきに。あららら」

亜紀「お父ちゃん、はよ開けて」

登「はよ開けて、お父ちゃん」←誰の声か分からないけど、亜紀の近くにいたから登?

健次郎「せかすなや。何やろ? ハハハハハハ…! ほら!」

一同の笑い声

 

黒い円柱形の箱から出てきたのは本物のシルクハット。

 

町子「かぶってよ~、はよ。かぶって、かぶって」

健次郎「こうやな。どや?」

町子「似合う! 似合うわ! 似合うよね!」

拍手が起こる。

孫の声「似合う~!」

町子「似合うわ~。二枚目やね、健次郎さん」

 

蘇州夜曲が流れ、町子と純子が赤い扇子を持って踊る。

蘇州夜曲

蘇州夜曲

  • provided courtesy of iTunes

♪君がみ胸に 抱かれて聞くは

夢の船歌 鳥の歌

水の蘇州の

 

見ている皆の顔が映った時、亜紀の隣にいる白いセーターの男性が亜紀の夫かな。パッと見、隆に似ている。

 

由利子「お父ちゃん」

健次郎「うん?」

由利子「何やの? これ」

健次郎「2人の十八番や。飲んだら必ずこうやって踊らはる」

 

♪惜しむが 柳がすすり泣く

 

町子「はっ!」

一同の笑い声

健次郎の笑顔が素敵。

 

音楽に合わせて踊る町子と純子。純子さんの照れながら踊る感じもいいな~。

町子「あ、それ! はっ!」

一同の笑い声

 

夜、茶の間

町子「しんどいことありませんか?」

健次郎「うん、まあな…」

町子「うん。そろそろお布団敷いてきますわね」

健次郎「いや、もうちょっとここにおるわ」

町子「あ、そう」

 

健次郎「町子」

町子「はい?」

健次郎「あれ、持ってきて」

町子「えっ、何?」

健次郎「残っとったやろ、まだ。いつもの」

町子「アホな。お酒なんかあきませんよ」

健次郎「格好だけや」

町子は仕方ないなあという感じで台所へ。健次郎はシルクハットを見ている。いつもの黒じょかセット。

町子「なめるだけにしといてくださいね」

健次郎「うん。ああ…。うまいなあ」

 

町子は立ち上がり、バーカモカの看板に灯りをともし、健次郎に笑顔を向ける。

 

健次郎は盃を町子へ。焼酎を注ぐ。

 

久しぶりの自宅での夫婦二人きりの時間でした。

 

ミニ予告

町子「『町子、愛してるよ』て…」

 

おだやかな日…物語の舞台になっていたのが、1997年の初夏だったので、そのころ放送された「あぐり」を思い出していたら田中美里さんの最近のインタビューが見つかりました。

fumufumunews.jp

あぐり」の話の中で”あぐりの両親を演じてくださった里見浩太朗さん、星由里子さんをはじめ、”と書いてあったけど、里見浩太朗さんと星由里子さんはエイスケさんの両親よー! まあ、全編に出てくるし、印象深いけどね。