公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
手術後、まだ目覚めない健次郎（國村隼）は深い眠りのなか脳裏に過去の出来事がよみがえっていた。前妻の澄子を亡くした徳永家は、徐々に明るさを取り戻す。そんなとき、健次郎は町子（藤山直美）と出会う。町子と出会ってからのさまざまな楽しい出来事を思い出し、集中治療室で眠っている健次郎は、うっすらと目を覚ます。付き添っていた町子が声をかけると、健次郎が何かを言っている。町子が健次郎の口もとに耳を寄せると…。
集中治療室
心電図モニターの音
町子「健次郎さん…？」
ここって昨日のラストシーンかも？ 今週、町子はほぼこんな感じだもんねえ。
手術後、まだ覚醒しない健次郎。深い眠りの中、健次郎の脳裏に過去の出来事がよみがえっていました。
昭和38年12月
白衣姿の健次郎が廊下を歩いていると、縁側で泣いている隆を見つけた。
健次郎「隆…」
隆は涙をぬぐうと立ち去ってしまった。
玄関
健次郎「はい。ご苦労さま」
配達員「はい、どうも！」
段ボール箱の宛名
送り先
大阪市北区天満北1-3-19
宛名
藤木澄子殿
差出人 月島書房株式会社
東京都文京区音羽町6-28
電話 03-359-9770
箱を開けると、本が入っていた。
赤い鼻緒のじょじょ
藤木澄子
赤い鼻緒のじょじょが呼び起こす
遠い記憶。過去と現代が交錯
しながら紡ぎだす親と子の
情愛を描いた傑作。
イシ「あ…あんた、これ。清志、畳んだままズボンのポケットに入れてあった」
健次郎「何や？ これ」
イシ「返してもろた算数の試験」
健次郎「点数悪かったから怒られる思て、よう見せへんのやろ」
算数テスト 97点
健次郎「97点」
イシ「こんなええ点、取ってんのに…」
健次郎「何で隠しとんのや？ あいつ」
戸が開く音
登・清志「ただいま！」
イシ「帰ってきた」
健次郎「清志、ちょっとおいで」
清志「ただいま」
イシ「ああ、お帰り！」
健次郎「お前、これ何で見せへんね？」
清志「ああ…」
イシ「ええ点数やないの！」
清志「おとといの理科も98点やった」
健次郎「何で言わへんねん？ そういうことを」
清志「『何で』て…」
ムスッとしたままの健次郎。
イシ「ああ…清志、よう頑張ったね！ えらい、えらい！ うん！」
登「お兄ちゃん、キャッチボール」
清志「うん」
健次郎「何や、あいつ！」
イシ「あんた、最近、ずっとむつかし顔してますで！」
健次郎「え？」
イシ「ピーピー泣けへんだけで隆と一緒ですわ」
イシさんの髪が前より短く感じるので、この辺のシーンは、あとからというか、新たに撮ったんだろうか？ 子供たちの変わらなさがすごい。
たこ芳
りんにお酌してもらう健次郎。
一真「こんばんは」
健次郎「お～、こんばんは」
一真「おお…。ワシも熱かんや」
りん「はい」
一真「どないや？ 落ち着いたか？」
健次郎「う～ん、いや…。まだ何か家ん中バタバタしてますなあ」
一真「子供らは？」
健次郎「隆はまだ何かあったらすぐ泣いてますわ」
一真「そやろな。亡くなったことを受け入れられへんねんで…。昨日までいた人が急に自分のそばからいてへんようになる。自分は何にも悪いことしてへんのに罰を受けたようにな…。こんな不条理なことあれへんで」
健次郎「ほんまですわ…」
一真「けど…それは罰やない。教えや。人間は必ず死ぬということを教えてくれてるんや。人間は、いつか死がやってくる。それを知って、毎日を生きることは大事なことや。まっ、小さな隆君には、そこまで理解せえちゅうのは無理やけどな。このつらさと向き合うことは決して無駄なことではない。自分や他人を大事にしよと思うようになる」
仏間の澄子の祭壇
健次郎は箱から「赤い鼻緒のじょじょ」を1冊取り出して読み始める。
昭和40年8月
青空とセミの声
茶の間
台所から由利子がお椀を運んでくる。
由利子「はい、清志」
清志「ありがとう」
由利子「はい、登」
登「ありがとう」
由利子「はい、隆」
隆「はい、ありがとう」
喜八郎「あ～、はい、おおきにおおきに」
亜紀「ありがとう」
健次郎「ありがとう」
イシ「はい、お待ち遠さま」
健次郎「ほな、食べようか」
一同「いただきま～す！」
由利子「今日の買い物当番、清志やからね。帰ってきたらメモ見て買うてきて」
清志「は～い！」
由利子「お風呂掃除は登。忘れたらあかんで」
登「分かってる」
喜八郎「ちょっとしょうゆ取ってくんなはれ」
隆「はい」
由利子「登、あんた、Tシャツ、前後ろ逆やんか」
登「え？ あ、ほんま…」
隆「ほんまや！」
イシ「慌てもんやねんから！」
登「何か動きにくい思た」
健次郎「アホ…。お前、もうそれちょっと小さいん違うか？」
イシ「こないだ買うたとこやのに。すぐ大きなるんやから、もう…」
喜八郎「ワシは縮むばっかり…」
健次郎「何を言ってんの！」
喜八郎「なあ、お前、なんぼほど大きなった？」
隆「2センチ」
喜八郎「ワシは2センチ縮んだ」
一同の笑い声
たこ芳
小川「ハハハハ！ 縮むばっかりって、お父さん、それ…。いや～、ハハッ！ いや、笑たらあかんけど…」
健次郎「ほんまやけんの…。子供の頃はおやじて大きいなあて思たけど。それに反してね、子供の伸びるのて早いよ～」
どうでもいいことだけど、健次郎さんが”ほんまやけんの”なんて言う？ 小声で聞き取りづらくはあるけど、なんか違う。
小川「へえ！」
健次郎「夜、寝てる間にな、5人それぞれがニュ～ッて伸びてんのか思たら、怖いで」
小川「ハハハハハ！ いや、けど…ようやく元の徳永家が戻ってきたっていう感じですよね」
健次郎「う～ん、そやね…。ようやくちょっとずつみんなの顔が明るうなってきたわ」
りんさんの微笑み
健次郎「それは何？」
小川「あ、これ？」
カウンターの置かれた本
木偶の詩池内幸三
並木賞作家池内幸三
受賞後 第一作！
小川「池内幸三さんいうてね、並木賞とった作家」
健次郎「ああ、知ってるわ」
小川「そうですか！ いや、いつか機会があったら、いっぺん会うてほしいなあ」
健次郎「うん」
小川「池内さんね、澄子さんのこと手ごわいライバルやと思てはったみたいですね」
健次郎「ふ～ん…。あ～、そう。で、小川君自身は最近どうなの？」
小川「あ、僕？」
健次郎「うん」
小川「文学学校の卒業制作がそろそろなんですわ。毎日、仕事終わって夜明けまで書いてますねんで。けど、僕にもね…手ごわい女の子のライバルがいましてね」
健次郎「あ、そう。へえ…」
独り、カウンターで飲んでいる健次郎。
りん「澄子さんの話になっても、もう、泣けへんのやね」
健次郎「ああ、隆が？ もうさすがにね」
りん「違う、先生が」
健次郎「僕？」
りん「うん」
健次郎「僕は人前では泣きませんよ」
りん「いやいや、ここ(胸をたたく)で泣いてましたんや、ずっと。やっぱりお父さんが心の底から楽しそうにしてなあかんで。そやないと子供たち笑て暮らされしまへんねんで」
徳永医院
受付
電話をしている健次郎。「うん、小川君。え？ うん、もうすぐ終わるよ。え？ あ、池内幸三さんと？ うん。ああ、そやなあ。そしたら、前に行った、ほれ、あの道頓堀のバーで待ち合わせしよか」
ここで1話につながる。夜の町を散歩していた町子が川を眺めていた。
回想
小川「しょうもないもんばっかりや。昔を忘れてしもたと違いますか」
池内「何や？ おら！」
町子「えっ？ 何やの？」
池内「待て！」
小川「な…何をすんねん！」
池内「まだ話は終わってないぞ！」小川に馬乗り。
町子「小川君！ けんかしたらあかん！ もうちょっと待ちなさい、あんたら！」
健次郎「コラコラ…！」町子の右手を押さえる。
町子「ちょっと痛い痛い痛い…！」
健次郎「あんた、危ないやろ！」
町子「ねえ、痛い！」
健次郎「女のくせにこんなもん振り回してからに」町子の右手を押さえる。
町子「手、痛いちゅうてんのに！」振りほどく。 健次郎は橋の擬宝珠に頭をぶつける。
町子「ちょっと皆さん、けんかですよ～！」
池内「けんか？」
町子「池内先生…」
町子「すいません」
池内「いいえ」
町子「ほんまにすいません」
池内「あの、小説の話、してたら、ついカッとなってしもて…。こいつ大学の後輩なんですけど、何か生意気なやつなんですわ」
町子「ほんまに慌てもんで申し訳ございませんでした」
健次郎「あの…えらい目に遭うたんは僕なんやけどね。でぼちん、割れるかと思うた」 町子「何ですって？ 人の手首、ひねっといて…。私の命より大事な右手なんですよ！」
健次郎「アホ！ 命より大事なもんがあるかいな」
町子「アホ？」
健次郎「遊びましょ！」焼酎の入った風呂敷包みを掲げる。
町子「え？」
町子「ええ加減なおっさんやな、せやけど。このカモカ」
町子「カモカ…」
回想ここまで
たこ芳
りん「カモカ？ アハハハ！ そんなこと言われたん？」
健次郎「そやねん。面白い子でなあ。しゃべっとったら時間がなんぼあっても足らんねん」
りん「へえ～！」
健次郎「あ、そうや。今度いっぺん、ここに連れてくるわ」
茶の間
電話している健次郎。「ハハハハ！ そら、面白いね！ うん。え？ ああ、そう。うん。ほな、また今度ゆっくり。はい、はい」受話器を置く。
後ろで見ていた晴子。「楽しそやね」
健次郎「そうか？」
晴子「何や最近しょっちゅう笑てる。あの人のおかげ？」
健次郎「さあ、今度は何を食べに行こかな…」
イシ「はい、お茶」
健次郎「あ～、ありがとう」
初回から見てる者としては、晴子ってこんなに町子を最初から好意的に見てた～？と思わんでもない。
登「お父ちゃん！」
健次郎「うん？」
清志「キャッチボールやろう！」
隆「やろう、やろう！」
健次郎「よっしゃ！ やろか！」
回想
町子「今度はどこに連れてってくれはるんですか？」
健次郎「ああ、そうやなあ…。結婚しませんか？」
町子「結婚！？」
回想ここまで
集中治療室
心電図モニターの音
健次郎の手を握り続けていた町子。健次郎の手が動く。
町子「健次郎さん…！」
心電図モニターの音
町子「健次郎さん…」
健次郎の目が開く。
町子「気ぃ付いたの？ 健次郎さん！ 健次郎さん！」
町子の声は待合室にいた由利子の耳にも届く。
由利子「お父ちゃん…」
昭一、他の子供たちも反応。
集中治療室
目が開いた健次郎。
毛利「心電図、安定してるね」
看護師「はい」
町子「健次郎さん、分かる？」
由利子「おばちゃん？」昭一とともに帽子、ガウン姿で集中治療室に入ってくる。
町子「気が付いたみたいやの！」
昭一・由利子「えっ！？」
町子「何？ 何て？ 何？」健次郎の顔に耳を寄せる。
昭一「健、何て！？」
泣き笑いの町子。「『僕と結婚しませんか？』やて！」
昭一「ええっ！？」
こうして健次郎は町子たちのもとへ帰ってきました。
ミニ予告
毛利「残念ですが…」
何が残念！？
しかし、ここまでツイッターや掲示板でも好評で、次の10月から新作BK作品が始まるとなると、「本日も晴天なり」は、これだからAKは…の理不尽な叩きに遭いそうな感じがするな～。終わってしまって淋しくて次の作品を受け入れられないというもありそうだし。それを今から恐れている。
理不尽な叩きというのは当時の価値観さえ批判すること。昭和45年に描いた昭和40年と平成18年に描いた昭和40年は全然違う。いつも楽しく見たいけど…それは無理なんだということを半年ごとに思い知る。
