公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
昭和29年の2月、雄太(唐沢寿明)が突然、進学せずに就職する、と言いだし、純子(山口智子)とあき(伊藤榮子)は考え直すよう説得する。食堂の手伝いに来ていた恭子(松本友里)は、西川(北京一)が借金の返済の話をしているところに鉢合わせる。西川と話すうち、恭子は宝塚を辞めようと思っていると、悩みを打ち明ける。大学進学までは昭(西川弘志)と雄太を同じように育てたい、と思っていたあきと雄太は話が合わず…。
年が明けて昭和29年の2月、純子の家ではちょっとしたいさかいが起きていました。大学に行くものとばかり思っていた雄太がこの時になって突然就職すると言いだしたのです。
前回が8月だったのに急に半年たった。
新聞を読んでいる雄太。
あき「何でやの。お母ちゃんにはどうにも分からんわ」
雄太「ええやんか。僕が自分で決めたんやから」
あき「ええことない。あんた、現に受験勉強してたやないか」
純子「そうや。お姉ちゃんかて雄太は昭と一緒に大学に行くもんとばっかり思てたわ。なあ何で急にそんなこと」
雄太「はようから就職する言うたらお姉ちゃんもお母ちゃんも騒ぐやろ。そやからギリギリまで待ってたんや。僕の心の中ではもう去年から決めてたんや」
あき「お母ちゃんはな、昭と雄太は2人そろうて大学へやりたいと思てたんや。それで今日まで頑張ってきたんやないか」
雄太「よう分かってる」
純子「昭はどない思てんの?」
昭「僕はどうこう言える立場やない。これは雄太の問題なんやから」
純子「それはちょっと冷たいんと違うか? そういう言い方は」
昭「そやかてこれは雄太が自分で決めることや。僕がどうこう言われへんやろ」
あき「雄太。亡くならはったお父ちゃんかて雄太には進学してほしいと思てはるよ。お金やったらちゃんと用意してあるんやから」
純子「なっ、もう一遍考えたらどないや?」
雄太「なんぼ考えたかて同じや。もう決めてしもたんやから」
あき「就職先のあてはあるの?」
雄太「まだ決めてないねんけど機械関係の仕事に就きたいと思てる」
あき「雄太。こんなこと言いたないんやけど…。雄太がもし養子やいうことで大学行かへん言うのやったら、お母ちゃんほんまに怒るで」
雄太「そやない」
昭「僕、ええやろ」席を立つ。
雄太「何で僕の思いどおりにしたらあかんのや」←なんかこういう感じ、ふいに昔の雄太を思い出した。
あき「なあ、もう一遍考えてみ」
純子「なっ、お母ちゃんもこう言うてはんのやから、もう一遍考えるぐらい考えても、えやないの」
雄太「うん」
純子「なっ?」
雄太「うん」
雄太もいなくなり、あきは涙を流す。
純子「雄太には私からもう一回よう話するさかい」
あき「(うなずき)何でやろな…。そない思いたないんやけど、やっぱり気兼ねしとるんやろか」
純子「そんなことないと思うで」
昭は上着をかぶって単語帳を見、雄太は火鉢に手をかざす。
雄太「ああいうふうに言われるのが一番つらいわ」
純ちゃん食堂の前を焼き芋屋が通る。今日は恭子が店を手伝っていた。
もも「純ちゃんの妹さんや。きれいやろ。宝塚のスターやで」
客「ほう~、宝塚の」
恭子「そんな、スターやなんて。その他大勢です」
もも「芸名な、美山はるかいう」
店の前を西川が通りかかった。純子は秀平と新居探し、恭子の組も休み。西川は村山の所へ行くと言った。
もも「新所帯か。ええなあ。♪あなァたと呼べば」
恭子「♪あなたと こたえるう」
昭和10年のヒット曲、梅木も歌ってた。
ナレーションの杉浦直樹さんが門倉役をやった「あ・うん」でも女給たちと歌ってました。
しかし、村山はきもの店の久代から責められている西川の声が聞こえてきた。
西川「すんません。来月きっと返しますさかい」
しかしもう4か月も前からそう言っていて、久代に頭を下げる西川を見てしまった恭子。「村山さんにお金借りてはんの?」
西川は去年の夏に正太夫プロデュースで京都でパントマイムの公演をやったが、入りがさんざんで大赤字になったが、村山に借金して正太夫にお金を返した。
↑この回は京都の中学校の講堂でパントマイムを見せるといっていたけど、それとはまた別!?
小雪がぱらついてきたので西川をさりげなく引っ張って店の中に入れる恭子。
恭子「そんなことせんかて正太夫さんはお金持ちなんやからちょっとぐらいの赤字、何とも思てはらへんのと違うの?」
西川「そうかもしれんけど、僕そんなん嫌いやねん。向こうがお金持ちやからええやろと甘えんのは僕の気性が許さんわ」
恭子「西川さんて見かけによらず頑固なんやね」
西川「こないしてるけども僕にかてプライドちゅうのがあるさかいな」
恭子「そやね…。私もそれで悩んでんねや」
西川「恭子ちゃん、悩みあるのかいな」
恭子「あるがな。私なまだ誰にも言うてないけど宝塚やめようかと思てんねん」
西川「何でや?」
恭子「このまま宝塚におっても先は見えてるし、思い切ってジャズで一旗揚げようかと思てる」
西川「ほんま。恭子ちゃんにかてそんな悩みがあったんや…」
恭子「そいでな…」
もも「悩みて何な?」
とっさにごまかす西川。
もも「悩みか、ええもんやなあ。うちも悩み欲しいわ。ほら、ええ歌あらよ。ほれほれほれ、ほれほれ」
ももは客と歌いだす♪宵やみせまれば 悩みは果なし
もも「はあ~、ええなあ」
客と笑い合うもも。地元にいるより今の暮らしがあっていたんだろうな。しかし、西川の借金問題は正太夫の方がお金あるんだし、村山はきもの店から借りるよりは正太夫に借金しといた方がよかったんじゃないかと思ってしまう。
雪の降る中、帰ってきた純子。なかなか手頃な家がない。郵便受けには昭の受験票が届いていた。浪南(ろうなん)大学の受験票で番号は1355番。あんなに早く出したのにと文句を言っていた昭だったが、1355で「イザゴーゴー」で縁起がいいという。
純子「縁起かついでどないするの。試験は実力やで」
昭「分かってるて。甲陽(こうよう)大学のなんか794番で『ナクヨ』やで。普通やったらがっくりするとこやけど僕は何とも思てへんもん」←こういうところ昭だな~。
夕食で上にいる雄太を呼ぶ。
純子「今日は何?」
あき「寒いさかいな、お鍋や。山家(やまが)鍋」
純子「ほんま。うれしい」
昭が雄太に浪南大学の受験票を見せたところで、また再燃。
あき「雄太。あんた、どないするつもりなんや?」
雄太「どないて?」
あき「大学やがな」
大学には行かないという雄太ともう一遍考えてみというあき。
あき「あのな、大学ぐらい行ったかて損はないと思うで」
純子「勉強かてできるのやから」
雄太「えやないか。本人が行かへんと言ってんのやから。もうその話やったらおしまいにしてえな」
あき「ほんまにええのんか?」
雄太「ひつこいで。ごはん、後で食べるわ」と上に行ってしまった。
戸惑うあき。昭は何もいうことはない、僕は僕、雄太は雄太というスタンス。でもこっちの方がいいと思うけどな。昭だけ大学、雄太が就職というのはつらいというあき。
昭「何でや? 実の子だけ大学にやって養子は行かさへんかったて言われんのがつらいんか?」
純子「昭!」
あき「それは確かにあるかもしれへん。けど、お母ちゃんが思てるのは大学を出るまでは昭と雄太とそっくり同じように育てたいと思てるんや。お父ちゃんかてそうなるように望んではったと思う」
昭「とにかく僕はこの問題にはノータッチや」
昭に冷たい子だと言い、雄太の所に行く純子。雄太はハーモニカを吹いていた。
雄太「何しに来たかは分かってるわ。僕の決心は変わらへんさかいな」
純子「なあ雄太。お姉ちゃんな、お母ちゃんの気持ちにもなってほしいねん。お姉ちゃんにはまるで意地を張って大学に行かんて言うてるように聞こえるけど」
雄太「そんなふうに取られたら僕かて困んねんけど」
純子「それに世間の人はいろいろと言うやろな。養子さんは大学へも行かしてもらえんのやそうですね、いうて。そない言われたら、お母ちゃんがどれだけつらい思いをしはるか雄太かて分かると思うんやけど」
雄太「それは分かるけど。そやかて、そやからいうて自分の考えを変えるわけにはいかんのや! お母ちゃんの気持ちもお姉ちゃんの気持ちもありがたいとは思うてるけど」
昭が入ってきて、純子はこれ以上何も言わないと雄太に言い、部屋を出ていった。
雄太「あかん。だんだん居づろうなってきた」
昭「僕は何にも言わへんさかい」
雄太「おおきに。やっぱり僕のことを分かってくれるのは昭だけやな。お姉ちゃんもお母ちゃんもあかん。構い過ぎるねん」
本当に就職したいんだったら秋ごろに仕事決めてきた!って雄太が言えばもう文句言いようもなかったんじゃないか。はっきり就きたい仕事があるという感じじゃないから遠慮してるんじゃないかという話になるんでは。でも、昭のスタンスでいいんじゃないかな。