公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
小百合の家にあいさつに行った雄太（唐沢寿明）とあき（伊藤榮子）が帰ってきて、結婚を認めてもらった、と言う。２人の結婚を初めて聞いた雜賀（桂枝雀）は、今書きあげたばかりの原稿を書き直す。浜風荘に泊まっている日本海高校が、センバツの一回戦を勝ち、純子（山口智子）たちは大喜び。皆ですき焼きを食べていると北川（細川俊之）が、出版できない秀平（髙嶋政宏）の写真集を、アメリカで出版したらどうか、と言い出し…。
板場
純子「はい、どうぞ」お茶を出す。
石田「すみません」
ヨシ子やももにもお茶出す純子。ももはお茶菓子を純子にすすめた。
あき「ただいま」
純子「お帰り」お菓子もぐもぐ。
もも「お帰りなさい。どうだった？」
あき「あのな、小百合ちゃんのお父さんとお母さんに会うてな、結婚認めてもらうように話、してきたで」
純子「OKやったんやね？」
雄太「いや、お父さんがな、ちょっと反対しはった」
あき「そやけどな、雄太とお父さんと二人きりで1時間ほど話、しはってな、結局ええやろいうことになったんや」
純子「いや～」
もも「雄ちゃん、お父さんとどんな話したんな？」
雄太「何も特別なことを話、したわけやないねん。満州におった頃のこと、陽さんと一緒に引き揚げてくるようになったいきさつ、小野の家の養子になったこと、昭と僕のこと、お姉ちゃんのこと。そんなことをありのまま正直に話、したんや。九州のお母ちゃんのことも言うた。向こうのお父さん黙って聞いてはったけど、苦労したんやなって言わはって、小百合を頼みますて言うてくれはった」
小百合のお父さん=静尾のお父さんでしょう？ 静尾の話によれば愛人と大阪で暮らしてたような人だし、そんな人に反対されるいわれはないぞ！ 高校教師だし。それにしても静尾ちゃんはもう出ることはないんだろうな。友達の純子と縁続きになったのに。
↑お弁当も持ってこられないほど困窮していた静尾ちゃん。
純子「ほんま。よかったな。おめでとう」
もも「おめでとう。雄ちゃんと小百合ちゃんやったら、お似合いの夫婦やな」
雄太がしゃべっているときからキョロキョロしていたヨシ子。「あれ？ 今日は小百合ちゃんは来はらしませんの？」
あき「今日はな、一日休んで明日また来る言うてはった」
もも「ハハハハ、そらそうや。今日は恥ずかしいてな、よう来んねらよ」笑い
純子「雄太、ほんまにおめでとう」
雄太「おおきに。お姉ちゃんのおかげや」
純子「ううん。私は何もしてへん」
雄太の手を両手で包み込む純子。何かイチャイチャしてるぅ～。
しかし、前回今回と雄太は”お父ちゃん”呼びではなく”陽さん”呼びに戻ったのはなぜだろう。
石田「ええなあ。僕も誰かおらんやろかな。ヨシ子ちゃん、どうや？ 売れ残ってんのやろ。僕、もろうたろか」
ヨシ子「もう～、嫌やわ」バシッと肩をどつく。
こういうセリフって今はアウトなんだろうけど、ここもくっつくのかなーと思っていたせいかあんまり何とも思わなかった。石田もヨシ子も純子が来た時は10代だったんじゃないのかなーと勝手に思ってます。8年くらい前だから、せいぜい20代半ばくらいの年じゃないかなと思うんだけど、まあ、当時としちゃ遅い？
客室
執筆している久助。山本もまだいる。
久助「山本さん、このグローブとミットはね…」
山本「先生、何べんも聞かしてもらいました。小野陽一郎と雑賀久助との友情の証し。それが雄太と昭の兄弟に引き継がれて」
久助「もうしてましたか。アハハハハハハ。もう15～16枚やからな。もうちょっと待っててもらいたい」
山本「いよいよ大詰めですな」
久助「ん？ うん。あ～、ついに甲子園に出ることのなかった甲南高校のエースがね、母校の監督になって再び甲子園を目指すというとこまで来てますからな」
純子「失礼します」
久助「純子ちゃんかな。はい。あ～、これはええとこへ来た、純子ちゃん」
純子「先生、お茶どうぞ」
久助「ありがとう。そこへ置いといてもろたら」
純子「ご苦労さんです」
山本「あ、いえ、私はもう楽させてもろてます」
久助「どうです？ 300枚まで来ましたで」
純子「いや～、読ましてもろてもかましません？」
久助「まだまだ。本になってからのお楽しみ」
純子「ナイスプレー もう一つの応援歌 作 雑賀久助」
久助「まあ、ぶっちゃけた話は、これは雄太君の話や。モデルは彼や。もちろん昭君のことも出てくるよ。雄太君と昭君の友情のところはな、殊に力を込めて書きました」
山本「先生な、ほんまに泣かせはりますのや。インクが涙でにじんでしもて」
純子「そうですか」
久助「これ見て。『この作品を亡き小野陽一郎君、小野昭君 父子(おやこ)に捧ぐ…』」涙声で話す様子に純子もしんみり。やっぱり雄太が裏主役なんだなー。
つや「久助ちゃん」
久助「あ、姉ちゃん」
純子「あ、奥さん」
襖を開けてつやが入ってきた。
つや「あら、あんた、また何、泣いてんの？」
久助「いや、何でもない。アハハ、何でもないねん」
北川「こんにちは。ご無沙汰してます」
久助「おっ、おそろいで」
つや「頑張ってんのかなと思て見に来たんや」
久助「いや、頑張ってることは頑張ってるよ。頑張ってる。まあまあ…あ、そうそう、こちら今度僕の本を出してくれます、出版社の山本景二さん。これね、私のたった一人の自慢の姉ですねん」
つや「いやいや…。弟がな、いろいろとお世話になっておりまして」
窓辺の椅子にちゃっかり座る北川さん。
山本「とんでもない」
つや「ありがとうございます。迷惑かけてますのやろな。すんまへん、もう」
山本「そんな。雑賀先生には大変お世話になっております」
久助「まあまあよろしゅうに」
つや「涙拭いて」
久助「えっと、おにいさん…というこっちゃな。え～、会社の方、どうです？ 貿易会社」
北川「ええまあ、おかげさまで、アメリカやヨーロッパでは、かなり知られるようになりました」
久助「ほう～」
つや「一年のうち、あっちこっち飛び回ってな、今度もな、イタリアから帰ってきたばっかりなんや」
純子「イタリアですか？」
つや「あんた、ええとこや。うちもな、今度、この秋な、一緒に連れてってもらおうと思てる」
久助「姉ちゃんも？」
つや「はい」
北川「純ちゃん、さっき、お母さんに聞いたんだけども、雄太君、小百合ちゃんと結婚することになったんだってね」
純子「はい、そうですねん」
北川「それはよかったね」
純子「おおきに」
久助「いや…いや、それ…。その話、僕まだ知らないよ。聞いてないよ」
純子「すんません。校長先生、お仕事してはったもんやさかい、はっきり決まってからお知らせしようと思いまして、ほんますんません」
久助「あ～、いや、それならちょっと後のとこ、書き直さないかんなあ」
山本「ああ、そうですか」
久助「うん」
山本「ほなちょっと遅なりますなあ」
久助「けど、まあ、これはしかたがないな」
板場
ラジオ「4回の表、日本海高校の攻撃はワンアウトでランナーが二塁。二塁ランナーは俊足の飯島、バッターボックスは2番の田畑。このあと、3番の野本は2打数2安打と当たっています。とにかく得点は1対1、大接戦です」
ヨシ子「あかん！ もう辛抱できへんわ。女将さん、テレビ見に行かせてもらいます」
板場を飛び出していくヨシ子。テレビ、あるんだね。
ラジオ「ちょっと右足を引きました。投球2球目、第2球目を投げた。いい当たり！ 一二塁間ボールが抜けていく。ボールはライト前に落ちた。二塁ランナーが三塁ベースを思い切って回った、回った」
純子「あかん、危ない！」
ラジオ「ライトがボールを捕った。そしてセカンドが中継してバックホーム。滑り込んでくる。タッチはどうでしょうか？ おっと、審判はボールを確認している。さあ、どうだ？ ボールを落としています。セーフ、セーフ！ 1点入りました！」
純子「やった～！ 田畑君、田畑君！」
石田と喜びを分かち合う。
従業員一同+久助が玄関で日本海高校一行を待っている。一行が来ると拍手で迎える純子たち。
北見「ありがとうございました！」
杉本「いや～、念願の甲子園での1勝ですよ」
純子「おめでとうございます。2回戦も頑張ってくださいね」
田畑「お母ちゃん、打ちました」
純子「よう打ったな。決勝点の二塁打、聴いてたで」
田畑「ありがとうございます」
杉本「さあ、上がろう」
一同「はい！」
清原「勝って兜の緒を締めよ、だよね」
久助「いや、本当本当。本当や本当や」
生徒達「♪雲は湧き 光あふれて」
純子「けどよかった。うちに泊まった学校、夏はええとこまで行くのやけど、センバツの時はいつも1回戦で負けてたんやもん」
あき「ほんまや。おめでとう」
純子「いや、ほんまにこんなうれしいもんとは思わへんかったわ」
久助「よかったな」
もも「よかったな。こいはもうお世話のしがいがあった」ももさん涙。
客室
つや、北川、純子、秀平、あき、雄太がすき焼きを囲む。
あき「今日はな、生徒さんたちもみんな、すき焼きにしましたんや」
純子「一人250グラムはペロリと平らげるんですもん。ほんま、たまらんわ」
北川「さあ、はい」つやのお皿によそう。
つや「おおきに」
あき「いや～、北川さん、優しいんですねえ」
つや「いや、そういうわけやないけど…嫌やわ」
北川「しかし、西川君が西ドイツに行ったというのは意外だったねえ」
秀平「そうなんですよ。向こうの小さな劇場と契約できたらしくてね」
つや「だけど何でそんなツテが出来たんやろ」
純子「何でも向こうのプロデューサーの人が大阪で西川さんの発表会を見はって決まったんやて。恭子が言うてましたけど」
北川「もともとパントマイムというのは向こうの芸だからね。日本よりも向こうで有名になれるかもしれないね」
あき、うなずく。
つや「久助はどないしたん？」
純子「原稿を書いてはります。もうちょっとやから頑張る言わはって」
秀平「しかし羨ましいですよ。僕も思い切って混血児の取材でアメリカへ行きたいんですけどね」
北川「行けばいいじゃないか」
秀平「いや、日本で引き受けてくれる出版社が見つからないんですよ。前に写真集出した所が倒産しましてね」
つや「そうなん」
秀平「いや、別に僕の写真集のせいじゃないんですよ。金のかかる美術出版続けるのがたたったらしいんですよ」
北川「じゃあ、アメリカの出版社に当たってみたらどうなの？」
秀平「アメリカですか。駄目ですね。日本じゃボツボツ知られてきたとは思いますけど、アメリカでは僕は全くの無名ですから」
北川「混血児の写真集なんだろ？」
秀平「そうです。アメリカに渡った混血児たちの姿を撮りたいんです。戦争って一体何だったのか。国家って何なのか。写真を通して考えてみたいんです」
北川「なるほどね」
秀平「それをやらないと僕の仕事は完結しないんです。と言って写真集ですからね、とても自費出版するというわけにはいかないし」
何かを考えるような北川の表情。
久助が部屋に入ってきた。「純子ちゃん、出来たで」
純子「出来ました？」
久助「うん、出来た」
純子「おめでとうございます」
あき「あの、山本さんは？」
久助「もう帰りました。ちょっともはよう印刷所へ入れておきたいから言うてね。皆にもよろしゅうに言うてました」
純子「校長先生、どうぞ」
秀平「ああ、どうぞ」
久助「はい、ありがとう。ハハハハハ。よいしょ。あ～、すき焼きか。ハハハハ」
あき「校長先生、どうぞ」
久助「あ、そうですか。はい、それじゃあ、頂戴します」
あきが久助にビールを注ぐのをみんなで微笑ましく見ている。
久助「うまい！ ハハハ。あ～、やることをやったあとの爽快感。肩の荷がすっと下りたような気がする。ハハハハハハ。いや、それもこれもな、みんなこのグローブとミットのおかげや」懐からグローブとミットを取り出す。
昭と雄太が引き継いで使ってたけど、久助に新しいのを買ってもらった時点で捨てるのかと思ってました。大正時代のグローブだし。だけど、雄太が大事に手入れしてとってたんだよね。
板場
もも「校長先生は純ちゃんのお母さん、好きやらよ。はたで見てても分かるわ。それやったらいっそのこと、結婚したらええのになと、うちは思いやんねんけどもな」
清原「僕は純ちゃんのお母さんと校長先生は、ずっと今のままだと思うよ」
もも「そやろか」
清原「うん。2人ともプラトニックラブだからね」
もも「プラトニックラブて何な？」
清原「心の中で思い合ってるだけの仲ということなんだ」
もも「心の中で…。そしたらうちもプラトニックラブやなあ」
清原「ん？ 誰と？」
もも「死んだうちの連れ合いや」
でも、あきさんは別に久助のことは何とも思ってないでしょー！？
しかし、ももさんと清原先生のサシ飲みというのもレアだね。向き合って思い出話を語ると「芋たこなんきん」だ。
またあきがお酌。
久助「おおきに、すんません。結構です」幸せそう。
つや「仲いいなあ。久助、頭、汗かいとるよ」笑い
じいっと見ている北川
秀平「何ですか？」
北川「いや…。何とか君の仕事を完成させたいね」
秀平「当分諦めてますよ」
北川「いや、ひょっとすると力になれるかもしれないな」
純子「ほんまですか？」
北川「うん、まだ分からないけどね」
純子「北川さん、お願いします。もし、お力になっていただけるんやったら、なんとかお願いします」
秀平からもなんとか言え！ 北川さんと秀平は一緒に偽進駐軍として美山村に来た相棒だしね。
明日で終わっちゃうのは寂しいなあ。
