NHK 1987年8月22日(土)
あらすじ
頼介(杉本哲太)を見送っている時、要(世良公則)が帰って来て、言葉を交わす。家で要が夕食を作る蝶子(古村比呂)に、頼介はずっと蝶子のことを思っていたんだな、と声をかけると、蝶子は東京に発つ前の日にそのことに気づいた、と言う。数日後、雅紀(相原千興)は遊んでいると、倒れて熱を出す。加津子(藤重麻奈美)のことを思い出して、気が気じゃない蝶子。病院に連れて行くと、敗血症の疑いがあるから入院と言われ…
2025.8.30 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
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岩崎要:世良公則
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中山音吉:片岡鶴太郎
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彦坂頼介:杉本哲太
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黒木医師:大門正明
中山はる:曽川留三子
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岩崎加津子:藤重麻奈美
岩崎雅紀(まさのり):相原千興
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神谷安乃:貝ますみ
横山里子:吉田やすこ
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医師:宮沢元
岩崎俊継:服部賢悟
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神谷容(いるる):役所広司
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野々村泰輔:前田吟
<出征を目前に控え、岩崎家に挨拶に来た頼介君は要さんに会えないまま帰ることになりました>
玄関から出てきた頼介、見送りに出た蝶子と子供たち。お向かいの中山夫婦も路地に出てきた。
はる「行くの?」
頼介「はい」
音吉「頼介さん、出征おめでとう」
頼介「ありがとうございます」
音吉「お国のために立派に戦ってください」
頼介「はい」
はる「体に気を付けてね」
うなずく頼介。「中山さんも」
うなずくはる。
頼介「自分や妹へのこれまでのご厚情、お礼申し上げます」
うなずくはる。
音吉「銃後は私らが守ります。心おきなく戦ってください」
頼介「はっ」
加津子「あ、お父さんだ!」
スーツ姿の要が歩いて帰ってきた。
敬礼する頼介。
蝶子「時間がないから帰るとこだったの」
要「うん」
頼介「岩崎さんには、これまで失礼の数々、お許しください」
うなずく要。「行くのかね?」
頼介「はい」
要「行く前に1つ、君に言いたいことがあるんだよ」
頼介「はい」
要「いつだったか君は『国のこういう非常時に文芸や笑いや音楽は不要だ』と言った」
頼介「…はい」
要「俺は違うと思うんだよ。こういう非常時だからこそ、余計、笑いや音楽が要るんだと思う」
やや間があり…ニヤリと笑う頼介! 要も微笑み返す。
頼介「今日、岩崎さんに会えてよかったです」
要「俺もだよ」
頼介「…はっ。では…」敬礼する。
歩き出した頼介を呼び止める要。「頼介君! 死ぬなよ」
隣で立っている蝶子もうなずく。
頼介「失礼します」
加津子「さようなら!」
雅紀・俊継「さようなら!」
<そして頼介君は戦地へと向かいました>
岩崎家
台所で野菜を刻む蝶子。
要「頼介君は、あれだね。ずっと君のことを思っていたんだね」
そのまま作業を続ける蝶子。
要「ま、そのことは初めて彼に会った時から気付いてた」
酔っぱらった要が岩崎家に来てた時に、上京した頼介と顔を合わせたんだった。
手を止める蝶子。「私が…頼介君の気持ち、初めて気付いたのは女学校卒業して、東京にたつ前の日だった。それまで頼介君は私への好意、示してたのに私は気付いてなかったの。そのあと、頼介君、すぐ東京に来たけど、私の頭の中は音楽のことでいっぱいだった。頼介君の気持ちなんて考える余裕なんてなかったの。だから、知らず知らずのうちに傷つけてたと思う」
笑顔で蝶子の近くに来た要。「傷つけるつもりじゃなかったんだから…」
蝶子「だけど…」
要「うん?」
蝶子「ずっと前、邦ちゃんに言われたことあったのよ。『気付かないのは一種の罪だ』って…」要に抱きついて泣く。
それにしても過去回を振り返ると、大体、道郎が出てきて、あぁ…ってなる。
蝶子「さっきね…」
要「うん」
蝶子「子供たちが頼介君のために歌、歌ったの」
要「うん」
蝶子「私も歌った…」
要「うん」
蝶子「それが私の…頼介さんへの精いっぱいのお礼だったの!」
笑顔でうなずく要。「大丈夫だ。頼介君、分かってくれるよ」
要に抱きついて泣く蝶子。
♬~(雅紀のバイオリン)
おお~! 今日は「ユーモレスク」だ~!
練習を見ている要が満足そうにうなずく。
蝶子の手紙「父さん、母さん、ご無沙汰しています。お変わりありませんか? 父さん、この前、2~3日、寝込んだそうですが、その後、いかがですか? この前、新聞で『昭和新山』というものが出来たと知りました。洞爺湖の近くだそうです。山が急に出来るなんて何だか不気味です。写真で見ると噴煙を上げていて恐ろしい姿です。何だか嫌なことが起こりそうで気味が悪くてしかたありません。現に落語家の夢助さん、邦ちゃんのご主人も相次いで応召し、先日は頼介さんも出征の挨拶に来ました。『死ぬ覚悟だ』と頼介さんは言いました。頼介さんのかたくなさは、いつまでも直りません。それが私には痛ましく思えるのです」
蝶子の手紙の朗読中、姿は見えなくても、ずっと雅紀の「ユーモレスク」が流れる。手紙を書き終え、縁側に立ち、雨の降る外を眺める蝶子。
蝶子の手紙「仕事がなくなって気落ちしていた泰輔叔父さんも神谷先生と安乃ちゃんが間借り人として来てから少し元気になりました。泰輔叔父さんも神谷先生も今、徴用で働きに行っています」
野々村家から泰輔、神谷先生、安乃が出てきて、安乃が神谷先生の身支度を整え、泰輔が神谷先生を引っ張って歩いていった。安乃に手を振る神谷先生。
前田吟さんや役所広司さんがほとんどセリフのない役なんて朝ドラだけだね。贅沢。
蝶子の手紙「それと子供たちは元気です」
岩崎家前の路地でけんけんぱする子供たち。
音吉「おっ! やってるなあ。おじさんも仲間に入れてもらいてえなあ」
俊継「いいよ」
音吉「いい?」
加津子「おじさんはマーちゃんの次」
音吉「はいよ! マーちゃんの次か」
雅紀が小石を投げる。
音吉「お~、いいとこ行った」
一同「ケンケン、パー、ケンケン、パー」
雅紀が小石を拾う。
一同「ケンケン、パー、ケン…」
突然、雅紀が倒れる。
音吉「どうした? 大丈夫か!」
岩崎家茶の間
蝶子が雅紀の脚をさする。
音吉「どうしたんだろうねえ」
蝶子「鳥肌立ってるじゃない」
音吉「寒いのかい?」
雅紀のおでこに手を当てる蝶子。「熱あるじゃない。具合悪いの?」
雅紀「う~ん…」首をひねる。
⚟︎玄関の戸が開く音
⚟︎要「ただいま!」
音吉「お帰りなさい!」
立ち上がる雅紀。
蝶子「マーちゃん!」
要「あ、いらっしゃい」
雅紀「お帰りなさい」
要「さ、練習しようか?」
雅紀「はい」
蝶子「マーちゃん、ちょっと変なのよ」
要「うん、どうしたんだ?」
雅紀「何でもない」
要「うん」
蝶子「熱あるの」
要「風邪じゃないのか?」
おでこに手を当てようとする要の手を避ける雅紀。「大丈夫だよ」
蝶子「駄目よ」
雅紀「1日休むと元に戻るのに3日かかるんだよ!」
蝶子「けどね…」
雅紀「お父さん、行こう!」
要「うん」
蝶子「マーちゃん!」
要「本人が『やる』って言ってるんだから」
蝶子「あんまり無理させないでよ」
要「うん、分かってる」
蝶子は元の場所に座り、俊継の肩を抱く。
音吉「3年前のこと思い出すねえ。加津(かっ)ちゃんが病気した時のこと。加津ちゃん、脚の調子がおかしくして分かったんだよね?」
加津子「そういえば、時々、マーちゃん元気ないことあるのよ」
練習室
♬~(雅紀のバイオリン)
辛そうにしていて、音が乱れる。
要「やめよう!」
雅紀「大丈夫です」また練習を再開する。
要が雅紀のおでこの汗を拭く。「もう、今日は、やめだ」
雅紀「大丈夫です!」また練習を続ける。
要が雅紀に背を向け、部屋のドアを開ける。「蝶子!」
⚟︎蝶子「はい!」
要「やっぱり寝かせた方がいいな」
雅紀のバイオリンの音が乱れ、倒れた。
蝶子「マーちゃん!」
椅子にもたれかかって呼吸の荒い雅紀。
布団に寝かされた雅紀の汗を拭く蝶子。
<その夜、雅紀君は高熱に見舞われました>
要が部屋に入って来た。「行ってきた」
蝶子「先生は?」
要「うん…明日の朝、来るって」
蝶子「そう…」
柱時計の時刻は2時42分。
雅紀のおでこに氷嚢を当て、蝶子と要が見守る。
朝になり、医師の診察を受けた。「風邪だと思いますよ」
要「そうですか」蝶子と顔を見合わせる。
<しかし、雅紀君の容体は3日たっても4日たっても治まらず、大きな病院で診てもらうことになりました>
小兒科
第二診察室
黒木「あ、そこに掛けてください」
要「すいません」
黒木「最初の様子から話してみてください」
蝶子「脚の調子がおかしくなったんです」
黒木「はい」
蝶子「先生、加津子の時も脚がおかしくなりましたけど、それと同じ病気でしょうか?」
黒木「…奥さん、話を」
蝶子「はい、あの…」
要「その時…熱が少し」
黒木「はい」
要「その夜、熱が高くなって…そのまま一向に下がらず」
黒木「頭痛は?」
要「はい。痛いと」
蝶子「…食欲もないんです」
黒木「はい」
蝶子「寝込んだ次の日、『膝が痛い』と言いだしました」
黒木「…腰が痛いとは?」
蝶子「はい。ゆうべ」
黒木「吐き気は?」
蝶子「それは…」
要「ああ、ちょっと分かりません」
黒木「そのほかの症状は何か?」
蝶子「…せきを少し」
黒木「うん…。すぐに入院させてください」
驚く蝶子と要。
黒木「手続きを」
里子「はい」
顔を見合わせる蝶子と要。
蝶子「あの…」
要「先生!」
黒木「『敗血症』の疑いがあります」
蝶子「『敗血症』?」
黒木「もし、そうだとしたら、ちょっとやっかいですね」
<チョッちゃんの不吉な予感が当たってしまいました>(つづく)
演技のできる子役ではなく、バイオリンのできる子を選んだのがすごいなあ! 音が乱れて倒れるとか、当て振りでは限界がある。本当にバイオリンのできる子がやってることにより、すごい練習したんだろうなとも思えるし。
ほのぼのした朝ドラと思ったらなかなかハード。

