NHK 1987年6月11日(木)
あらすじ
岩崎要(世良公則)は蝶子(古村比呂)との距離を縮めようと、連平(春風亭小朝)に助けを乞う。それから蝶子は連平に度々誘われ、岩崎と寄席で落語を楽しんだり、レコードをもらったりする。一緒に入ったお化け屋敷では、ひとり岩崎だけが声を上げて怖がり、蝶子はおかしくてたまらない。岩崎の人間性が、どこか父に似ていると感じた蝶子は、はじめて化粧をしてみたいと邦子(宮崎萬純)に相談する。
2025.5.29 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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北山蝶子:古村比呂…字幕黄色
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岩崎要:世良公則
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国松連平:春風亭小朝
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田所邦子:宮崎萬純
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北山道郎:石田登星
梅花亭夢助:金原亭小駒
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彦坂安乃:近藤絵麻
幽霊:坂俊一
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出囃し:杉浦浩子社中
鳳プロ
早川プロ
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野々村富子:佐藤オリエ
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野々村泰輔:前田吟
野々村家
⚟連平「ねえ、チョッちゃん!」
蝶子「うん、何?」
⚟連平「13日の夜の歌劇の公演、休みだよねえ?」
蝶子「そう、昼だけ」台所にいて戸棚からお茶菓子を出している。
茶の間
連平「ふ~ん」
富子「よく知ってるね」
連平「あたしはね、何でもお見通しなの。ヘヘヘッ」
泰輔「ハハッ」
富子「何だい、気色悪い」
蝶子「13日の夜がどうかしたの?」
連平「ん? うん、ちょっとね」
泰輔「連平君、夏、暑いんだからさ、のたのたしないでピッと行こう、ピッと」
連平「いや、久しぶりに夢助の落語でも聴きに行こうと思いましてね」
泰輔「なんだ」
連平「いや、あいつがね、上野の鈴本なんですよ」
蝶子「私だけ?」
連平「いやいや、社長ご夫婦とチョッちゃんとあたしで総見」
泰輔「おお、たまには、そういうのもいいね」
蝶子「夢助さんの落語、しばらく聴いてないし、たまには寄席もいいね」
連平「でしょう?」
富子「鈴本なら近いし」
連平「社長、ようございます?」
泰輔「ああ、いいよ、いいよ」
連平「ヘヘッ! あたしの友達も来るかもしれない~」
富子「え?」
連平「いえいえ、お気になさらずに。ヘヘヘッ」
♬~(出囃子)
拍手
蝶子、富子、連平も拍手を送る。中央の座布団が並んだ席じゃなく、舞台の右側の手すりのある桟敷席にいる。
辺りをうかがう連平。
富子「何だい?」
蝶子「次だよ、次」
富子「うん」
要「あ、どうも」蝶子の後ろに座る。
連平「来ないかと思ったよ」
富子「来ることになってたの?」
要「いや『もしかしたら』とは言ってたんですけど、はい」
♬~(出囃子)
後ろを向けない蝶子。
夢助が出てきた。
連平「夢助!」
要「夢さん!」
拍手を送る。
夢助「『ね、あの若旦那、あちら参りましょう』。『寄らないでください。寄っちゃ嫌だ…ふっ』」
連平も要も大笑いだけど、スンッとしている富子と蝶子。
夢助「『そんなことおっしゃらずに、あちらの方へ』。『いいかげんにしてください、あなた方。いい年をして、そもそも二宮金次郎という方は…』。『聞いたかい? おい、二宮金次郎だってよ。冗談じゃ…。おばさん、早くなんとかして』。『はいはい、分かりました。さあ、若旦那…』」
要が気になり落語どころではない蝶子。
野々村家前の路地を子供たちが「わ~い」と言いながら通り過ぎていく。連平と要が野々村家へ。
連平「こんちは! こんちは!」
富子「はい! 先日は、どうも」
連平「チョッちゃん、今日は休みだよね?」
富子「う、うん」
連平「要さんがね、『要らないレコードがあるから、それをチョッちゃんにあげよう』って」
要は風呂敷包みを富子に見せる。
富子「ああ、そう…」
♬~(クラシック)
ウットリ聴き入る蝶子。部屋着は浴衣。聴いてる曲は「愛の喜び」。
連平「どう、チョッちゃん?」
蝶子「いや、本当にもらっていいんですか?」
要「うん」
蝶子「わざわざ今日じゃなくても、劇場で渡してもらってもよかったのに」
連平「公演中は、せわしいしね。ほかにいろいろ荷物もあったりするでしょ?」
蝶子「うん」
連平「はあ~、うちの中は落ち着いていいね」
要「うん」
連平「うん。それでほら、こうやってじっくりと、じっくりとお互いを…痛い」要につねられている。
蝶子「ん?」
連平「ううん」
富子「連平、ちょっと」
連平「あ、じゃ、ちょっと。ヘヘッ」
♬~(レコード)
連平がいなくなり、気まずい雰囲気。要はため息をつく。
蝶子「レコード、どうして要らないんですか?」
要「要らないから要らないんだ」
蝶子「へえ~」
要「うん」
台所
富子「何か変よね」
連平「何が?」
富子「岩崎要。最近、やたらと顔出すじゃないか」
連平「そうかな?」
富子「あんたもだけどね」
連平「あれ、顔見たくないってこと?」
富子「何だか変だって言ってんの。『ほおずき市に来たついで』と言っちゃ現れ、寄席には現れ、『レコードやる』と言っちゃ現れてさ、何か魂胆あるんじゃないの?」
要が夜道(?)を歩いている。「連平!」
(フクロウの鳴き声)
要「おい、連平!」
(鐘の音)
(フクロウの鳴き声)
(木魚をたたく音)
要の目の前には青白い火の玉が飛んでいる。
(鐘の音)
(木魚と鐘の音)
戸が開く音がし、祠?で正座していた人間の首が落ちた。
要「あ~っ!」
(驚いた鳥の鳴き声)
要「あ~、あ~、あ~!」座り込んでしまった背後の井戸から幽霊が出て来て、要をトントン。「あ~っ! あ~、あ~!」
幽霊「お客さん、物、壊されたら困りまんな!」
要「すいません!」
幽霊役の坂俊一さんは京都出身で出演作品に「芋たこなんきん」…喜八郎が面倒見ていたホームレスの牛山だそうです。ほ~。それと「あゝ野麦峠」。私が間違えていたのかキャストクレジットに”坂敏一”という名前は見つけた。
お化け屋敷から出てきた邦子と蝶子は笑っていた。
連平「ねえ、怖かった?」
蝶子「怖くない、怖くない!」
邦子「面白かったよね」
蝶子「笑ったもん」
連平「ねえ」
邦子「え? ギャッて声出したくせに」
連平「え? ギャッて声出したの私じゃないよ」
邦子「え?」
蝶子「男の声だったよ」
連平「あ! そういえば要さん、どうしたんだろう?」
(花火の音)
髪も服も乱れた要が出てきた。
連平「あ、いたいたいた。随分ごゆっくりでしたね」
要「お前ね…何でこんなとこ入ろうって言いだしたんだよ!」
連平「要さんも承知したでしょう」
要「こんなとこだとは知らないからさ!」
連平「初めて?」
要「どうして?」
連平「面白くなかった?」
要「あのね、お前は面白いかもしれないけどね…」
お化け屋敷から出てきた親子。
父「どうだった?」
娘「面白かった」
父「怖くなかったか?」
娘「全然!」
連平「ほら」と親子を指さす。
蝶子「怖かったの?」
要「ん?」
邦子「そ~う?」
連平「そうなんだ! 怖かった?」
要「俺が言いたいのはだな、浅草まで来てさ、どうしてお化け屋敷なんかに入らなきゃいかんかということだよ!」
連平「どうしてってことはないけどねえ」
要「仲見世、冷やかしたって、ほら、いいじゃないか。な! 鳩に豆やったっていいんだよ! 大川端行きゃあさ、川風か何か吹いて、ちったあ涼しいだろ! 何でお化け屋敷なんだ」
連平「だって…」
要「『だって』じゃない! お前な、俺を怖がらせて笑おうと思ったろう!」
連平「要さん!」
要「大体、連平、お前はな、そういう根性の曲がったところがあるんだ。だからして、その、バイオリンがなかなかうまく…」
蝶子「いいかげんにしなさい! 何なのさ、ピーピー、ピーピー! 連平さんは私たちを楽しませようとして、お化け屋敷入ったんでないの? 岩崎さんも一度は『うん』ってしゃべったっしょ! おっかなかったからって連平さんに当たるんは筋違いというもんでないかい!? ひきょうでないかい!」
蝶子の剣幕に人々が集まる。
蝶子「だよね?」
野々村家
笑顔で話を聞いている泰輔。「へえ~」
富子「よく言ったよ、チョッちゃん、偉いよ。あの人にはね、時にはピシッとそう言ってやんなきゃいけないよ、うん」
蝶子「だけどさ」
泰輔「何だい?」
蝶子「岩崎さんて父さんに似てると思わない? ねえ!」
道郎「うん?」
蝶子「子供みたいなとこあるでしょ」
道郎「う~ん」
富子「そう?」
泰輔「う~ん、そういえば滝川の義兄(にい)さん、子供っぽいとこあるな」
蝶子「でしょう?」
泰輔「物事を、こう率直に言わないところとか」
道郎「すぐすねたり…」
蝶子「弱みを見られたと思ったら、むきになって怒る」
富子「へえ~」
蝶子「岩崎さんていう人もそういうとこあるのよね」
恋する乙女の表情に道郎も泰輔も富子も気付いた!?
蝶子の部屋
鏡台の前で髪をとかす蝶子。後ろは蚊帳かあ。
邦子「よいしょ。あ、何してるの?」
蝶子「ん?」
邦子「吹き出物?」
蝶子「邦ちゃん」
邦子「ん?」
蝶子「私、口紅つけてみようかな。邦ちゃんなんか化粧品、いつもどこで買うの?」
邦子「銀座の…」
蝶子「今度、私についてきて」
邦子「いいわよ」
蝶子「化粧のしかたも教えて」
邦子「いいけど。チョッちゃん」
蝶子「うん?」
邦子「岩崎要のこと好きなんじゃないの? そんな気がする」
蝶子「そんなことないわよ」
邦子「岩崎要の話、してる時、楽しそうだったし」
蝶子「父さんのこと思い出したからよ」
邦子「『お父さんに似てる』って言ったわよね? 『似てて、いいなあ』とか思ったんじゃないの?」
蝶子「違うわよ! 何言ってんのよ。私がどうして好きになるのよ!」
邦子「お化粧に関心を持ち始めたってことは、恋をしているからよ」
蝶子「私、化粧なんかしない」
邦子「しなさいよ」
蝶子「口紅もつけない!」
<子供っぽく、むきになるのは、やはり、父親譲りでしょうね>
野々村家前の路地で遊ぶ子供たち。
<8月も末になりました。この日、行方の分からなかった彦坂頼介から手紙が届きました>
泰輔「『野々村様。鋳物工場をやめさせられたことは、もうとっくにご存じだと思います。身元引受人の野々村様に報告もせず、行方をくらませたこと申し訳なく心苦しく思っています。私は東京にいます』」手紙を読むのをやめ、富子と顔を見合わせる。せきばらいし、続ける。「『働き口を見つけ、なんとか生活しています。どこにいるかは今は言えません。私は、まだまだ未熟です。そんな自分から抜け出したら改めて、おわびに伺おうと思います。勝手を言って、すみません。お元気でお過ごしください。彦坂頼介』」
手紙の文面は平仮名多め。
野々村様、ゐものこうばをやめさせ
られたことは、もうとっくにご存じだ…
思ひます。
身元ひきうけ人の野々村様に…
もせず、ゆくへをくらませたこと申…
なく、心ぐるしく思っています。
わたしは東京にいます。
働き口をみつけ、なんとか生…
います。どこにいるかは、今は言…
下の方は見切れてました。
富子「東京にいるの…」
畳に寝っ転がる泰輔。「どうする?」
富子「何が?」
泰輔「それ、チョッちゃんに」
富子「…見せないの?」
泰輔「だって、今、見せない方がいいんじゃないか?」
富子「どうして?」
泰輔「今は、ちょっと」
富子「だから、どうして?」
泰輔「今さ、ちょっとチョッちゃん変だと思わないか? 要さんの名前聞いたら、急に慌てたりさ落ち着かなくなったりするだろう」
は、は~んみたいな富子。
泰輔「だから」
うなずく富子。
舞台衣装でカツラを取った状態の蝶子。「頼介君、東京に?」
うなずく安乃。
蝶子「手紙はどこから?」
安乃「住所は書いてないんです。手紙には『岩崎さんにケガをさせたことは悪かった』と書いてありました。『蝶子さんが怒るのも無理はない』って」
蝶子「そう」
安乃「蝶子さん。兄のことは気にしないでください。兄のことは蝶子さんのせいではないですから」
⚟女「北山さん、そろそろよ!」
蝶子「安乃ちゃん、今日、千秋楽なの。見ていかない?」
安乃「5時には戻らんきゃいけないから」
蝶子「じゃ、また千駄木の方においで」
うなずく安乃。
夜道を「蝶々夫人 ある晴れた日に」のハミングしながら歩く蝶子。
バラの花束を持って歩く蝶子と少し後ろを歩いている要。
野々村家前
蝶子「今日は、わざわざ送っていただいて」頭を下げる。
要「…いや。う~ん…」
蝶子「叔父さんもいると思うし、寄っていきませんか?」
要「君ね」
蝶子「はい?」
せきばらいし、蝶子に近づく要。「君は俺とだな!」
蝶子「?」
要「結婚するだろ!?」
蝶子「!!」
要「僕とだ!」
ビンタで返す蝶子は、慌てて玄関に入った。
<結婚だって、チョッちゃん!>
蝶子「じょ…冗談でないわ!」(つづく)
このビンタのシーン、短い予告でよく流れてた。昭和的表現だよね~、ビンタ。
実際の方がすごい…ということもそうだけど(今なら犯罪だけど、結婚したからいいのか!?)、蝶子って実際は兄弟いたのかな? 道郎は面白くするための架空の存在かな?と思っていたから、実際、兄はいたんだね。しかし、伯父伯母表記だから、母の弟という設定は架空なのか?
朝ドラ「チョッちゃん」より実際のほうが過激だった…家族中が大騒ぎした黒柳徹子の母「人さらい婚」のいきさつ 「僕の奥さんになるしかないよ」と閉じ込められた https://t.co/4T7sPT05qR
— PRESIDENT WOMAN (@Pre_Woman) May 28, 2025
黒柳朝さんの原作本も読みたいんだけどな~。出版社の人は、こういうのを目ざとく電子書籍化とかすりゃいいのにな~。「あぐり」のころは、いろいろ買って読んだよ。
しかし、こういう昔のやべーエピソードって盛って話してるのか、結婚もしてるし、子供もいるから、女性の方も少なからず気持ちがあってのことなのか!? エピソードだけ聞くと外から鍵かけるとか「別れて生きる時も」の小野木じゃーん!

