NHK 1987年5月2日(土)
あらすじ
女学校に戻った蝶子(古村比呂)は、寄宿舎の舎監で音楽教師の川村先生(中原理恵)に東京の音楽学校に進学することを決意したことを報告する。これからは進学先を相談したいと頼み、川村も快諾する。日曜日、蝶子は親友・田所邦子(宮崎萬純)ら学友たちとともに斉藤峰子(江馬小百合)の父が営む写真館を訪れ、源吉(小野武彦)に卒業の記念写真を撮影してもらう。そこで蝶子はある絵を取り出し源吉に頼みごとをする。
2025.4.19 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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北山蝶子:古村比呂…字幕黄色
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川村市子:中原理恵
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田所邦子:宮崎萬純
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熊田剛造:津嘉山正種
斉藤源吉:小野武彦
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遠山伊佐子:紘川淳
斉藤峰子:江馬小百合
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石井スエノ:仁科扶紀
山口フサ:土屋里織
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森川とみ子:久野翔子
石野スズ:加藤麻里
劇団いろは
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神谷容(いるる):役所広司
教員室
蝶子「ただいま帰りました」
川村「お帰りなさい。で、どうだったの? 話し合い」
蝶子「私は音楽の道へ行きます!」
川村「お父様は?」
蝶子「反対には変わりありませんが、私の決意も変わりません」
川村「お父様を説得できたの?」
蝶子「説得はできませんが、私は話すだけのことは話しました。音楽の思いば話しました! 私はもう東京の音楽学校へ行くと決めました!」
川村「そう」
蝶子「先生、どういう音楽学校があるのか、どこへ行ったらいいのか、いろいろ相談に乗ってください」
川村「いいよ」
蝶子「お願いします!」
蝶子たちの部屋
邦子「決めた?」
蝶子「そう! 東京に行くんだ。何としても音楽学校に行くことにしたんだ。私、ちょっと東京の叔父さんに手紙書くから」
邦子と伊佐子は、うなずき合う。
講堂で輪になってバレーボールをする蝶子たち。
峰子「いた、いた!」
蝶子「入りなさいよ」
邦子「峰ちゃんは下手だもん!」
峰子が蝶子たちに何か配る。
スエノ「何、何?」
フサ「絵葉書かい?」
峰子「写真だわ」
邦子「自分の写真でない?」
蝶子「なしたの?」
峰子「卒業して別れ別れになっても、私のこと忘れないでもらいたくてさ」
蝶子「写真なんかなくたって、峰ちゃんのこと忘れないわ」
邦子「忘れようとしたって、思い出すわ」
フサ「そうそう」
スエノ「夜中、峰ちゃんの夢にうなされたりして!」
峰子「とにかくもらってよ。岩見沢以外から来てる友達に配ってんだから」
絵葉書くらいの大きさの峰子の写真。証明写真の大きいやつ。
フサ「したけど、どこで撮ってもらったのさ?」
峰子「うち、写真屋だ!」
蝶子「したら、お父さんに撮ってもらったんかい?」
峰子「そうだ」
フサ「いいなあ!」
蝶子「峰ちゃん、私、撮ってもらいたい! 昭和3年3月、将来を夢みて輝く、乙女の姿を!」
スエノ「チョッちゃんのことかい?」
蝶子「そうだよ」
スエノ・フサ「え~!」
邦子「私、写真、写してもらうわ。卒業の記念に」
スエノやフサも「私も!」
蝶子「よし、決まり!」
斎藤寫眞館
源吉「邦子ちゃん、あんまり硬くなっては、うまくないよ。笑顔、笑顔、はい!」ストロボをたく。
源吉「力、抜いてな。チョッちゃん、女っぽく」
邦子「ほっぺたに手、当てたらいいんでない?」
蝶子「こうかい? こう?」
源吉「面白くない」
邦子「日傘なんかさしたらどうだい?」
峰子「竹久夢二の絵みたいでない?」
一同「わ~!」
伊佐子「私も! 私もそうして撮ってもらえばよかった!」
源吉「本当、ぺちゃらくちゃらうるさいもな! 蝶子ちゃん撮るまで、お前の部屋に行ってれ」
峰子「お父さん、いつもそうだ」
源吉「いいから、いいから! ハハハッ。いやいやいや、これで落ち着く」
蝶子「おじさん、ちょこっとお願いあるんだ」
源吉「おしっこかい?」
蝶子「あ、なんもだ」着物の裾から絵葉書を取り出す。「私の写真、蕗谷虹児の絵に似せて写してほしいんだ」
源吉「この形、いいんでないかい?」
蝶子「…私も気に入ってんだ」
源吉「したら、これだ!」
蝶子「うん!」
源吉「立ってみれ!」
蝶子「うん」カメラの前に立つ。
源吉「蝶子ちゃん、これ、持ってみれ」
蝶子「これ? じゃあ、こうかな。これは?」ハンカチを手に持つ。
源吉「代わりにこれだ」本を持たせる。
蝶子「じゃ…こう」
源吉「首、ひねって」
蝶子「こうか?」
源吉「ひねり過ぎ。自然に、自然に。何か面白くないなあ」
蝶子「じゃ、こう」本を広げる。
源吉「本はダメだ。蝶子ちゃんには何が似合うんだべ?」
蝶子「あ、髪をこう。これ、どうだい?」束ねた髪を前にする。
源吉「うん。うん、じゃ、そのまま。あ~、あ~、その形、なかなかいいんでないかい?」
蝶子「そうかい?」
源吉「手、自然に添えて」
蝶子「そうだ、そうだ。体ひねって動かない!」
源吉「はい!」ストロボをたく。
私が小野武彦さんを知ったのは1995年の「王様のレストラン」。その後は「踊る大捜査線」とかコメディタッチな役が多いように思ったけど、1985年の「澪つくし」だと、きりっとした海軍さんを演じてたし、それ以前の古いドラマでも二枚目役が多かったように思う。もしかして、「チョッちゃん」辺りから人のいいおじさん役にシフトしたのかな…なんて思ったりして。
神谷の下宿先
蝶子たち「先生! 神谷先生!」
神谷「さあ、みんな、座れ座れ。はい」
一同「お邪魔します」
伊佐子「先生、日曜日だっていうのに何してたんですか?」
神谷「この前の試験の採点だ」
一同「えっ!」
スエノ「先生、私、どうだべ?」
フサ「私は?」
神谷「そんなこと、しゃべるわけいかないの。こんなもんはな、学校だけのことでいいんだ。休みは休み。学校のことは忘れろ」
一同「はい!」
神谷「そうだ。函館の飯島加代から手紙来たんだわ」
蝶子「あ、私たちにも来ました」
神谷「あ、そうかい」
峰子「読んでいいべか?」
神谷「あ、いいよ」
峰子たちが手紙を読み始める。
え~、私信じゃないのぉ!?
神谷「いや~、飯島君、大したことにならなくてよかったなあ。よ~し、リンゴでもごちそうするか」
一同「うわ~!」
神谷が部屋を出ていった。
すかさず邦子が蝶子の腕をたたく。
蝶子「うん?」
邦子「答案用紙」
2人はこっそり神谷の文机の前へ。
峰子「いやいや、加代ちゃん、元気そうで何よりだわ」
伊佐子「うん」
スエノ「何してるのさ?」
蝶子「答案用紙」
みんなも文机に集まるが、物音がして座り直す。
神谷がリンゴを持ってきた。
伊佐子「あ、私、むきます」
神谷「なんも、なんも。私は皮むきは、うまいんだ。見てれ。え?」立って皮をむき始める。「よし、誰か机の脇の物差し取ってみれ」
蝶子「はい」
神谷「測ってみれ」
蝶子「はい。うわ! 78.5です」
神谷「いやいや、いやいや! 2センチ足りないか」
邦子「え、何ですか?」
神谷「今までの最長記録は80.5センチなんだ」
一同、笑う。
峰子「私たち乙女を前にしてあがったんでないですか?」
神谷「ハハハッ、そうだべな。ハハッ」リンゴを丸かじり。
みんなのためにむいたんじゃないのかい! でもリンゴって八等分とかある程度、切ってから皮むいたほうがいいと思う。
邦子「先生、手が…」
神谷「いやいや、ヒビなんだわ」
蝶子「いやぁ~!」
神谷「下宿のおばさん、2~3日寝込んでるから炊事だの洗濯だのしたら、もう、ほら、いっぺんにこうだ」
スエノ「いやいや、痛そうだ」
神谷「痛いんだわ」
峰子「父のこう薬、持ってきてあげるかな」
神谷「こう薬は、あかぎれだべや」
伊佐子「先生には、こう薬は似合わないっしょ」
邦子「早く奥さんもらったらいいんだわ」
神谷「奥さんねぇ…フフッ」
邦子「卒業したら伊佐子は見合いだもね」
フサ「そうなのかい!」
伊佐子「したけど、結婚するとは限らないっしょ」
邦子「いや、あんたは、すると思う」
伊佐子「なして!」
邦子「すんなり結婚して子供産んで穏やかに暮らす人だわ」
伊佐子「…決めつけることないっしょ!」ほかのリンゴをむいている。
邦子「したら、見合いするんでない。やだったら、そんなもん、せんばいいっしょ」
蝶子「どうしたの、邦ちゃん?」
邦子「私は親の持ってきた見合い話に目ぇ向けないから、私は私のための人生ば送るつもりだ」
神谷「それは、それでいいと思うさ」
邦子「はい!」
神谷「したけども、人には人それぞれの道っちゅうもんがあんだから、人の行く道ば他人がとやかく言うもんでない」
蝶子は納得してうなずくが、邦子は「はい」と言って下を向く。
鐘の音
邦子と蝶子が階段を降りてくるが、後ずさる。
神谷「写真をくれるっていうのは、あれだ、うれしいとは思うんだ。したけど、こういうあれは困るわ。その君だけから、こういう…受け取るというのは、いろいろやっぱしうまくないんだわ」封筒に入った手紙?を返す。
伊佐子は受け取って去っていく。
階段の踊り場にいた邦子、蝶子と目が合った神谷は何も言わずに廊下を歩いていった。
蝶子は封筒を持って寮の部屋に入っていった。「東京の叔父さんからの手紙! 音楽学校のこと! 伊佐子、聞いて! 『拝啓 先日、お話ししました上野の音楽学校は叔父さんのいる千駄木から通うには、ちょうどよいのですが入学するのは非常に難しいという話です。知り合いの楽士に話を聞くと、小石川音楽学校とか東和音楽学校とかもあるそうです。東和音楽学校は雑司が谷という所にあり、ちょっと遠くではありますが、『チョッちゃんの力なら入れるはずではないか』と道郎君も言ってます』。川村先生に知らせてくる!」
失恋ショックで上の空の伊佐子。
邦子が誰もいない教員室に入り、神谷の机の引き出しに手紙を入れようとしていると、川村が入って来た。「何してるの?」
邦子は手紙を破いて屑籠へ。
川村「田所さん!」
屑籠の中には手紙と邦子の写真。
川村「こういうことは、うまくないんでないの? こういう…」
邦子「先生は、やきもちで言ってる。先生が神谷先生、好きだってことは知ってます。したから…」
川村「したけど、やきもちではない。神谷先生には恋とか愛とかそういうあれでないの。ううん、そうかもしれない…分からないの。私、28だもね…もう結婚してもいい年だのに、むしろ、いき遅れだね。焦らないこともない。結婚したいっていうより…な~んかねぇ、支えが欲しいんだわ。神谷先生なら、ひょっとして…なんて。したけど、私は、こんなコソコソしたことはしない。堂々と」
邦子は教員室を飛び出した。
蝶子「やあ、邦ちゃん! 川村先生!」何も言わずに去っていた邦子に驚き、教員室を見て窓の外を見ていた川村先生を見て、引き返す。
教室
蝶子「何だって?」
とみ子「したから、農学校や中学の男子生徒が蝶子さんの写真ば持ってるのさ」
蝶子「なして?」
スズ「蝶子さんにもらったもんだって自慢してしゃべって回ってるんだ」
蝶子「ええ~っ!?」
とみ子「2年の平沼トキエの兄さんも持ってたって!」
蝶子「ええ~っ!?」
多分、右側の子がとみ子で左がスズだと思うなあ。どちらも三つ編みの長身美人。
校長室
蝶子「そんなもん、人にやった覚えありません。ばらまいた覚えもありません!」
熊田「したら、なして他校の男子生徒がこれば持ってるんだ!」
蝶子「知りません」
<チョッちゃんには本当に身に覚えのないことでした>(つづく)
また新たな騒動が…。しかし、邦ちゃん性格悪いな!

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