1968年 日本
あらすじ
北大路欣也・星由里子コンビの純愛ドラマ第二弾。今回は山岳を舞台に、愛情と友情との間で揺れる男女が織り成すメロドラマ。東映一筋に、様々なスターと時代劇の可能性を広げてきた沢島忠が、任侠路線に移った古巣を離れて東京映画で撮ったドラマティックな現代劇。上京して親戚が経営する川崎の工場に勤める次郎(北大路)は、女工の志乃(星)と恋におちるが、同じく志乃に好意を寄せる親友と登った北穂高で事故に遭い、努力の甲斐なく彼を死なせてしまったショックで、記憶を失くしてしまう。

2025.3.1 日本映画専門チャンネル録画。写真は白黒だけどカラー作品。
北大路欣也と星由里子のメロドラマ第二弾!といっても監督が違う。
東宝株式会社 配給
東京映画作品
吹雪
瓶牛乳を一気飲みする作業員たち。北大路欣也さん、いろんな角度で何本も飲んだのかも。
製作:佐藤一郎
椎野英之
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脚本:清水邦夫
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音楽:佐藤勝
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紀井次郎:北大路欣也…字幕黄色
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水口志乃:星由里子
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中山健吉:田中邦衛
紀井かずみ:佐藤友美(松竹)
職長・岸本:三島雅夫
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中山哲:橋本功
中村医師:山崎直衛
原田功:小美野欣二
紀井大作:小笠原良智
看護婦長:三戸部スエ
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北村かね:千石規子
平川美津子
歌川千恵
木元章介
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青木君雄
志田健
佐々木久男
谷川修
田中一
西原純
入江くに子
石渡紀子
松浪志保
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監督:沢島忠
健吉がジョッキビールを受け取りながら、「山男の歌」を歌っている。
健吉は次郎に俺のパートナーはお前しかいないとご機嫌。
仕事終わり、健吉は「職長、脱がんでくださいよ、帽子」と突っ込み、周りの者が笑う。三島雅夫さん、「3人家族」でも頭髪いじりされてなかった!? 時期的に「3人家族」と同じくらいの時期だね。
次郎は社長と同じ”紀井”という苗字で健吉に次期社長とからかわれる。
紀井家に行った次郎は大作に社員にしてくださいと頼み、北海道から持ってきたニシン漬けの樽を渡した。ここ、話が前後してるのか!?
次郎は工場裏で風船を持っていた志乃に会い、風船を割る。何でよ!?
仕事終わり、今度は穂高に登ろうと次郎を誘う健吉。そこに健吉の弟・哲が訪ねてきて、2000円返してくれと健吉が書いた借用書を見せた。
田中邦衛さんと橋本功さんは「若者たち」でも兄弟だったんだよね。
以前は健吉と山に登っていた哲だったが、最近はトラックのテストドライバーになったのだと健吉が言う。次郎はトラックドライバーなんてつまらないと言うが、健吉の話ではトラックドライバーになると社宅がもらえるらしい。健吉の家は市営住宅の2DKに8人で暮らしているので気持ちが分からんでもないと話す。
「赤いドレスの女の子」で踊る健吉。次郎は見ているだけだったが、踊っている志乃を見つけて近づき、一緒に踊る。星由里子さんが激しく踊ってるとこなんてレア!
強引に踊りの輪から連れ出す次郎。え、志乃が嫌がっているのに無理やり外に連れ出してキス…酷すぎない!? でも、次の瞬間にはウットリ…はぁ…朝、すっかり仲よく肩を組んで歩き、名残惜しそうに別れた志乃。
家に入ると、すごい残業だったねと下宿のおばさんに言われた。
次郎も志乃もこのごろおかしいとそれぞれの同僚たちに突っ込まれている。
かずみが馬に乗って、坂上に写真を撮られていた。かずみは大作の妹かなんか? 次郎が紀井家にいたときにいた。
次郎、健吉、志乃が遊んでいて偶然、かずみと出会う。次郎を見つめるかずみ。
食堂で健吉は、かずみを褒めていた。志乃は、あんな女、嫌いとやけ食い。
店では職長が酔っ払って、「世界は二人のために」を歌っていた。
仕事が終わると、へべれけになるまで飲んでいる職長。
志乃の父は炭鉱爆発で亡くなった。犠牲者は380人。職長が志乃にお酌をするよう頼んだが、志乃がつけていた模造真珠のネックレスをバラしてしまい、健吉と次郎が床をはいつくばって探した。
紀井家
次郎の北海道の父から大量のジャガイモが送られていた。かずみは次郎を案外いい子ね、と大作に言う。
次郎の職場と志乃の職場は同じ所!? 仕事終わり、二人でデート。
次郎の職場に工場見学の外国人を案内するため、社長の大作とかずみが来た。チクショウ!と不機嫌になる次郎。苗字が同じで関係ないと健吉に言ってたけど、本当は親戚なんだろうか?
イライラした次郎は食堂でビール片手にやけ食い。
食堂で流れる曲は「恋をしようよジェニー」。
次郎は工員なんてバカにするので、健吉は諫め、殴り合いのけんかになった。食堂かと思いきや、後ろは踊ってる人たちがいるし、ダンスホールなのか?
哲がバケツの水をかけてケンカを終わらせ、皆様どうもすいませんと頭を下げた。
次郎と健吉がお互いに傷の手当てをし、志乃はほほ笑ましく見ていた。健吉が「世界は三人のために」と乾杯する。
北海道から出てきて、気持ちがすっきりしたと語る次郎。やっぱり大作とは親戚関係なのね。社員にしてくれるものかと思っていたと笑う。
夜中、建設中の社宅を見に行った志乃は炭鉱にいる子供のころから社宅に住むのが夢だったと楽しそうに語り、次郎がプロポーズ。新婚はシー坊と2人きりで暮らしたい。
次郎は健吉と山に登った。山小屋で一泊し、朝から頂上に向かって歩く。「ユーレイヒー」と叫んでいた健吉が足を滑らせ、滑落した。えー!
北穂高で会社員遭難
転落、二人重傷
身分証明書から
川崎市浜浦町二丁目
紀井トラックKKの…
新聞記事を目にした志乃は病院へ駆けつけた。看護婦長から亡くなられたのは中山健吉さんだと伝えられた。看護婦長は三戸部スエさんだ。
次郎の意識が戻ったと看護婦長に伝えられ、病室に行った志乃だが、次郎は黙ったまま。医師から何もかも覚えていないと伝えられた。自分の名前も過去も一切覚えていない。哲、職長、マスコミが駆けつけ、哲は、なぜザイルを切ったんだ、貴様が兄貴を殺したんだ!と責めたが、医師が記憶障害を起こしていると病室から出した。
志乃が呼びかけても、次郎はぼんやりした目で「君、誰?」と聞き、志乃は倒れた。
大作の元にカメラマンの坂上が行き、殺し合いだと言い、マスコミが押し掛けるだろうと笑っている。大作は事故で押し切り、付き添いをつけて北海道に返すと言うが、紀井家にやって来た次郎はぼんやりと庭を歩いている。
かずみは大作の妹なのね。かずみは次郎を病院に入れると言って、豪華な個室に入れ、バラの花束を見舞いに持ってきて世話を焼く。
志乃が見舞いに行っても、親族側の強い要望で面会謝絶だと断られた。記憶喪失には有効な手立てはなく、精神分析して脳細胞を刺激する。志乃は私を使ってくださいとお願いした。
精神科テスト室に医師に連れてこられた次郎と再会した志乃。医師は思いつくまま質問していいと言い、風船を割ったこと、ゴーゴーホールで踊ったこと、キューポラ、トラック…と今までの話をする。
次郎はトラックは僕が働いて工場。住所は川崎市浜浦町と答えたが、思い出したわけじゃなく、山の医者に教わったのだと医師が指摘した。
志乃は工事中の社宅に行ったことを聞くが、次郎は思い出せない。
健吉の葬式。哲は志乃に次郎が葬式や初七日に来ないことを責め、あんたもグルか?と聞く。志乃は何もかも覚えていないなんて、私だって信じたくないと泣く。
次郎の病室を見舞った志乃だったが、かずみが世話をしていた。志乃は下宿先に連れて行くと言うが、かずみは連れ帰ってどうするの?と志乃の目の前で次郎の世話をした。たまらず病室を飛び出した志乃は建設中の社宅を見て、これまでを思い出す。
あれから1年、手紙を出し続けている志乃だが、かずみが読んで破いていた。
次郎は紀井家の自宅プールで泳ぎ、かずみと乗馬していた。競馬場みたいなところで走るんだね。すっかりかずみに世話を焼いてもらっている次郎。坂上は「1年間、そうやって飼育したんですね」と、かずみに言う。
裸で次郎に抱きつくかずみ。「抱いて」と迫るが、人形みたいにじっとしている次郎。しかし、坂上から言われた「くだらない過去なんてないほうがいい」などが浮かび、かずみを抱いた。このシーン、長っ!
大型犬を連れて紀井家を出ようとしていた次郎と志乃が鉢合わせ。しかし、次郎は散歩に出ていき、紀井家の前にたたずんでいた志乃の前にかずみが車で入ってきて、志乃を家に入れた。志乃は次郎との愛を取り戻したいと話した。
次郎は犬に引っ張られて帰ってきて、紐を引っ張られ、手を傷つけ、何か思いだした!? 志乃は工場で働いていたと話すが、かずみが止めた。
それにしても大きな犬だなあ。なんていう種類だろう。ダルメシアンみたいな白黒だけど、耳は立ってる。それに何より大きい。
家の中に入っても傷ついた手を見ている次郎。
職長にも話す志乃。上司というより昔からの知り合いなんだろうかね。
スーツを着た次郎が雑踏を歩きながら、私の過去を教えてくれ!と心の中で叫ぶ。志乃から言われた”浜浦町”が心に残る。
次郎が工場に行き、職長や同僚たちに会ったが、覚えてない。職長は帽子をとって「これでも覚えてないか?」とみんなを笑わせるが、次郎は思い出せない。哲から呼び出され、殴られ、健吉が死んだことを知らされ、混乱する。志乃と職長が止めた。
志乃が下宿先に次郎を連れて行ったり、今は完成した社宅を見せたり…次郎は健吉を殺したのかもしれないと思い込んでいた。志乃は私はあなたと結婚したかったわと泣く。
スーツを着て出かけた次郎は汗をふきふき、街を歩く。
♪山の上においてきた心
人が去って 思いめぐれど
この歌、北大路欣也さん歌か?
街の掲示板の尋ね人、指名手配犯を見ている次郎。殺人という文字にドキッとしたり…鏡に向き合ったり、イメージシーンみたいなのが続くな。
かずみに本当に紀井次郎なんですか?と聞く次郎。どんなことをしても失ったものを探し続けますとかずみの元を去った。
家に帰ったかずみは「兄さん、私、疲れた。旅行でもしようかな」と大作に話す。手続きしてやるよと返す大作。
すっかり諦めモードの志乃のもとを哲が訪ねていた。哲は、兄貴はあんたを好きだったと話していると、次郎が訪ねてきた。哲は、次郎にザイルを切ったと責めたが、いくら説明しても無駄だと志乃が止め、過去のことなんか考えないでね、1人にしてと哲も次郎も追い出して、泣いた。
次郎は哲に頼んで一緒に山に登った。哲は健吉の書いた登(とう)はん日記があると言う。登攀(とうはん)=登山?
健吉の滑落した現場へ行った2人。次郎が落ちていたのは健吉の落ちた反対側の谷。哲は健吉に引っ張られてザイルを切ったのだと言うが、次郎は何かが違うと信じられない。
沈む夕陽を見た次郎は自ら谷に飛び込んだのだと思い出した。全てを思い出した次郎が滑落。哲に「飛べ!」と叫ぶ。その時、雪崩が…!
再び「赤いドレスの女の子」がかかる。ゴーゴークラブで沈んでいる志乃の前に全てを思い出した次郎が立っていた。「シー坊!」と志乃を抱きしめる次郎だった。(終)
え! 哲は助かったんだろうなあ!?
三島雅夫さんが見られてよかったな、という映画。
