TBS 1970年7月30日
あらすじ
万吉(林隆三)が村預けになってから五年の歳月が過ぎた。その万吉が夏のある日、無罪放免、それも母親を養おうとして罪を犯した孝子としてお上から表彰された。
2025.2.20 時代劇専門チャンネル録画
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原作:司馬遼太郎
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脚本:山田太一
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音楽:木下忠司
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万吉:林隆三…字幕黄色
小左門(こさもん):藤村志保…字幕水色
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いく:初音礼子
お鹿:七尾伶子
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丸屋:野々村潔
吟味与力:天田俊明
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胴元:上田吉二郎
はな:田中筆子
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平助:常田富士男
旦那:浮田左武郎
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庄屋:五藤雅博
博徒A:田村保
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浪人者:大前均
博徒B:尾田義男
髪結の儀イ:橋口忠夫
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エースプロ
あらくれ
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雁高(がんだか):辰己柳太郎
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プロデューサー:飯島敏宏
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技闘:大沢慎吾
イラスト:沼田彩
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演出:鈴木利正
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制作:木下恵介プロダクション
TBS
「俄(にわか)」とは路上などでやる
即興喜劇のことである
この奇妙な題は物語の主人公が
自分の半生をふりかえり
一場(いちじょう)の俄のようなものだと
いった言葉からとっている
この男のやることなすことに
一場一席の俄を感じてもらえば
作者の主題はつらぬけたことに
なる
嘉永六年夏
自室で三味線の稽古をする小左門
小左門<ひと飛びに5年の歳月を越えて、時は夏…と申しますのも、その間、私は万吉の消息も知らず、会うこともなく過ごしたからでございます。そして、あの日、表の格子戸ががらりと開く音がして…>
戸が開く音がしたので、お鹿だと思って話しかける小左門だが、返事がない。
万吉「お暑うございます」
小左門「誰? 一体」
万吉「万吉だす」
北野の万吉だと入って来た万吉に「あのどづかれ屋の万吉っつぁんかい?」と驚く小左門。5年経ち、すっかり大きくなった。小左門は上がるように言うが、万吉は遠慮した。小左門は京都のおいしい干菓子があるんだと勧める。しかし、干菓子がなくなっており、お鹿に食べられていた。万吉はまだお鹿がいることに気付く。
小左門「あのばあさん、私に死に水取らせるつもりだもの」とお茶をいれようとし、万吉の顔をよく見ようとする。照れて目をつぶって顔を上げた万吉にいい男になったと感心する。
あれから長いこと村に引っ込んでいたが、無罪放免になった。庄屋の下男など長く勤まらないと思っていた小左門だったが、万吉は母も食うに困らないし、慌てて稼ぐこともないのでお奉行さんの言うとおり勤め上げたと語る。無給じゃないんだ?
一本立ちすることになり、母や妹のことは考えず、己の思うままに生きてこまそうと思っている。一度ぼろい稼ぎをしてしまうと、なかなか地道な商売には落ち着けないものだと小左門が言うと、万吉は体を張って生きるのが性に合っている、やくざのようなごちゃごちゃ面倒なのは苦手で極道みたいなものになりたいと語る。
やくざと極道って違うの?
ある時、東町の奉行所から庄屋さまの所へ「万吉を同道のうえ、出頭すべし」という差し紙が来て、驚いた庄屋に覚悟だけは決めてけと言われ、出頭した。
回想
吟味与力「そのほう、なみなみならぬ孝心の儀、お上に聞こえ、殊勝のしかたにつき、恐れながら青差し20貫文を差しくださる」
庄屋・弥右衛門も万吉もなぜ万吉が20貫文もの褒美がもらえるのか分からない。庄屋は、万吉は悪事をはたらき、村預かりとなって勤めを果たしておる者で、悪いことをした者がご褒美をいただくはずはない、何かの間違いだと拝察すると言うと、吟味与力は、「お上のなさることに間違いなどということは存ぜぬ」と怒鳴りつけた。いかさま博打をして多額の金銭を取っていたことは知っていて、その科(とが)は村預かりで済んでいる。万吉が母親のために罪を犯したということで孝行者で、考子(こうし)・万吉として青差し20貫文がもらえる。
万吉いわく、毎年、孝行者に金をやることになっていて、今年は大阪にめぼしい者がいないので、お古の万吉を誰かが思い出したようだと言う。母にお金をそっくり渡して、ひとまず縁を切った。何になるか分からないので巻き添えを食わないように無理を言った。
そそくさと帰ろうとした万吉に何か用があったんじゃないのかい?と聞く小左門。万吉は村を出たら真っ先に姐はんとこ顔出そうと決めていたと言い、気が済んだと帰っていった。
夕方、薄暗い部屋に寝転がっているといくが2階に上がってきた。万吉は一本立ちし、これからは大人を相手にどづかれ屋をするつもりでいると話す。いくは大人相手では殺されてしまうと心配し、止める。万吉は大人の賭場はどこで開いているのか聞く。知らないと言ういくに「今晩楽しみに眠り込まんと待っといてくれや」とニヤリ。
夜、ある屋敷の前を見張っていた万吉は屋敷に入って行こうとする旦那に声をかけた。シッシッ!と追い払う旦那にさらに屋敷前を見張る。だいぶ大きそうな賭場と感じた万吉は初仕事として屋敷に入っていった。
賭場に入り、勢いよく障子を開けた万吉。「おら! わいは北野村の万吉っちゅう者や! 小遣い借りに来たで!」胴元のもとへ行き、小銭を奪った。当然、男たちに取り押さえられるが、「この万吉が銭盗むと思うか!? 不浄の銭を借りたいと申したんじゃい!」と叫ぶ。胴元は万吉を土場(どば)荒らしだと指し、手下につまみ出すよう命じた。
屋敷からつまみ出された万吉は大きな声で「どつかんかい!」と叫ぶが、手下たちは大きな声を出されると困る。「ご禁制の賭場やさかいな!」と叫ぶ万吉につかみかかる。刀を持った浪人に殺すぞと言われ、ビビりながらも「おお? 殺せ。おっ…きき…斬るなら斬れ!」
手下は裏庭で殺しがあったら言い訳ができないと浪人を止めた。
万吉「ヘヘッ…どないしたんや、ええ? 早よう斬らんかい。博打は天下のご法度や。ご禁制の銭もろて、なんで悪いんや」
しかし、手下たちにボコボコにされる。万吉はその度に「ご禁制の博打」と叫び、手下たちはあきれて銭はやると言うので、フラフラで屋敷を出た。
手下「ほんまにもうなんちゅうガキ…やないわ。大人や!」
万吉の土場荒らしの日々。
数ヶ月がすぎて
いくは寝ている万吉を起こしに来た。男性が訪ねてきたが、いくは起こしても起きないと男を帰した。しかし、万吉が起きたので、いくは男を引き止め、布団を畳み始めた。
1階から「万吉兄ぃ」と呼びかける男。万吉が返事をすると、階段を上って来た男は「平助いいま。しがねえ極道者だす」と挨拶した。ほ~、「まんが日本昔ばなし」の!
万吉は部屋に上がるように言い、いくにお茶を持ってくるよう命じた。噂どおりやとニッコリ笑う平助。兄ぃにあやかりたくて捜し当ててお訪ねしたと言う。土場荒らしのことを知っていて、平助もまた傷だらけで鉄火場に乗り込んできたと語る。
鉄火場もまた賭場のこと。
平助は半殺しの目に遭い、兄ぃの偉さが分かった。照れる万吉に平助は身内にしてほしいと頼んだが、万吉はそんなのは嫌い、群れを作りたくないと断った。万吉の真似をする者は他にもいるが、腕をへし折られた者、指を潰された者、土手っ腹に刃物刺されて医者の玄関で死んだ者もいる。平助は「兄ぃは男の中の男や!」と褒め、ぞくぞくしてくると言うと、万吉も思わずニヤニヤ。
<万吉の稼業は確かに人が真似てできることではございませんでした。痛いだけではなく、命を落としかねないだけでもありません。相手を一瞬、あっけに取らせる気合いと殴られながらも、一種の愛嬌が万吉にはございました。度胸と人徳が途方もない賭場荒らし稼業を万吉だけに許したのでごさいます>
雪がちらつく日。部屋の隅に万吉が座っていると、お鹿が部屋に入って来た。小左門は長湯でちょっとやそっとで帰ってこないと言う。万吉は知り合いの所へ来たときにお鹿さんはどうしてるかと寄った。「姐さん、大体、わいのことなんぞ忘れとるやろ」
お鹿は小左門がゆうべも寄って帰ってきて、「万吉っつぁん、どないしてはるやろなぁ」と気にしていたと話す。お鹿は万吉を女子(おなご)などはなも引っ掛けんような面して歩くのが好きなのに、よう寄ったなあ、若いなあとしきりに言う。
照れた万吉はお鹿の顔を見に来ただけと帰ろうとしたが、お鹿が止め、甘酒を温めに部屋を出た。直後、小左門が湯から帰ってきた。髪おろしてる~。万吉は小左門に近くに来るように言われて照れ照れ。小左門にも万吉の噂が届いており、万吉の真似をして死んだ者もいると言う。
小左門は万吉の髪を見て、「元服おしよ」と勧めた。「大売出しの万吉っつぁんが前髪つけてちゃ締まらないやね」。そして、小左門はお鹿に甘酒ではなくお酒を持ってくるように言う。
酔っ払って帰ってきた万吉。いくは前髪のある子供に酒を飲ませたと怒っている。万吉は立派な座布団を買って帰ってきた。いっぱしの極道屋は誰だって緋(ひ)の座布団に座っているとどや顔し、元服すると宣言した。万吉は「大売出しの万吉っつぁん」と言われたんやとご機嫌。
なおもいくに絡み、元服するなら一本立ちするということで家を買うつもりでいる。家1軒なんぼや?と聞く。10両も出したら、いい家が帰ると聞いた万吉は1000両ほどするもんかと思っていたと拍子抜けした。大人っちゅうもんはあほらしい。いくに家を探すよう頼み、駄賃はずむでと眠ってしまった。いくはあきれつつ、布団をかぶせた。
♪花は霧島
さざんか 難波の皐月は今宮に
萩 ぎょうさんな
菊 大源寺
<万吉が家を買い、前髪を落としたのは、それから10日もたたぬうちでございました。派手にやるといっても集まる者は駄菓子屋のおばんどもと私だけ。それでも万吉は、いっぱしの極道屋を気取って、ただただ楽しげににこにこ笑い続けておりました>
万吉の新居で小左門が三味線で歌い、いくが踊る。
♪菊 大源寺
菖蒲(あやめ) 杜若(かきつばた) 女郎花(おみなえし)
万吉は髪結を呼び、いよいよ前髪を落とすことになった。今度は小左門にしんみりした曲をリクエストした。はなは元服に親兄弟がいないのは寂しかろうというが、万吉は姐さんやおばんたちに囲まれて、いい気持ちだという。
小左門は三味線を弾き「昔、九郎判官義経公もまだ牛若丸といった幼少のみぎり、金売吉次に伴われて奥州へ下るとき、尾張の熱田に足をとどめ、熱田の神前に詣でて、そこでひとり元服をなされた。やがては平家を壇ノ浦に追い詰め、ことごとく西海の渦潮の中に沈めしお方なれど元はと申せば万吉っつぁんと同じ、ただ一人きりの元服なり」と弾き語り…? 活弁士みたいなさぁ…みんなで拍手を送る。
ちょんまげになった万吉は長火鉢の前で緋の座布団に座り、煙管をふかしてみるが、まずいわ、こんなもんとむせた。
そこへ鰻谷(うなぎだに)の雁高が訪ねてきた。万吉は慌てて煙管をしまって玄関へ出て、上がるように言う。雁高は丸屋と一緒に来ていて、家に上がった。
<船場の雁高といえば大阪の遊侠でも指折りの親分でございました。その親分が駆け出しの万吉の家を訪ねるということは異例のことであり、万吉は引けを取らぬためには精いっぱいの礼を尽くすしかないと考えたそうでございます>
お茶を運んできた万吉は「わてのような走りのもとに何事でございまっしゃろ?」と聞いた。雁高は万吉のことを度胸日本一の極道者だと笑う。まだまだひよっこで、親分は鶴だと例えた万吉に命仕事を頼んだ。命がなくなるかもしれない仕事。平気そうな万吉に「さすがは日本一の度胸や」と言われ、ニヤニヤ。
<おだてに乗りやすい男でもございました。けれど、万吉の名前が大阪はおろか堺や京にまで響くことになったのは、この命を懸けた大仕事からでございました>
ナレーター<大阪で指折りの侠客・雁高の親分が万吉に頼んだのは大変な命仕事。ほかでもない堂島の米相場破りでした。「よろしおま、この万吉、命を懸けてやってこまそう」。頼まれたら、あとへは引けぬ男、万吉。早速200余名の人足を集め、翌朝、まだ日も昇らぬ時刻、大江橋を攻め、堂島に踏み込みました。「これなるは明石屋万吉である。天下の貧民に成り代わり、儀によって不浄相場をたたき壊してくれる!」。それからは人足たち、用心棒、合わせての大立ち回り。次回『俄』をどうぞご期待ください>
出演は
初音礼子
野々村潔
ほか
予告ナレーションが一気に長くなったな~! オープニングが”辰己”、エンディングが”辰巳”。正しいのは”辰巳”でした。
丸屋の野々村潔さんも同時期に「あしたからの恋」出演中。
男同士でつるむのが嫌で周りが年上女性ばっかりってのも面白い男だ。


