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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(106)「カーテンコール」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

町子(藤山直美)は、廃刊の危機にある「上方文化」の畑山(平泉成)のことが気になってしかたがない。一方、工藤酒店からの紹介でお見合いに出かけた徳永医院の鯛子(小西美帆)が、ケーキの食べ過ぎで胃けいれんを起こして診療所に帰ってくる。だが、見合い相手からは、おつきあいをしたいとの電話が入り、周りは安どする。また、健次郎(國村隼)は笑楽亭米三郎(曽我廼家玉太呂)に、「師匠を再検査したい」と伝えるのだが…。

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振り返り

町子「『上方文化』?」

みすず「私が書いてる料理雑誌の編集長が畑山さんと親しいねけど…お金のことで相談しはってんて。危ないらしいよ」

町子「へえ…」

 

花岡家を出て歩いていく畑山に池内のセリフがかぶる。

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池内「休刊やいう声もチラホラ聞こえてて…。この世界で休刊いうことは廃刊いうことやからなあ」

町子「廃刊!?」

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回想

畑山「ここんとこ不細工な話でお恥ずかしいかぎりなんですが、まあ、今後はね、そのようなご心配をしていただくことはありません」

 

町子「けど、私もいつかは畑山さんが『参った』言うもん書いたろ思て、一生懸命頑張ってきたとこがあったんですよ。『好きなことやるんや』言うて出版社作らはったんやけどね…」

回想ここまで

 

雑誌「上方文化」が廃刊するといううわさが立っていました。

 

仕事部屋

「月刊上方文化」の表紙をじっと見る町子。

 

そして日曜日。鯛子のお見合いの日です。

 

茶の間

町子に帯をなおしてもらっている鯛子。

町子「よいしょ。苦しないか?」

鯛子「はい」

町子「我慢してな。ちょっと鯛ちゃんこっち向いて、こっち向いて! まあ、ほんまに鯛ちゃんきれいやわ!」

 

テーブルの向こうには健次郎や子供たちが見ている。

由利子「きれい!」

鯛子「いや、そんな見んといてください!」

亜紀「ここでお見合いすんの?」

健次郎「まさか! 外でお食事や」

 

隆「お好み焼き屋さん?」

清志「アホ! 梅田のホテルでフランス料理や」

由利子「ええなあ! ムール貝のスープとかあんねんで」

登「お兄ちゃん、ムール貝のスープて知ってる?」

 

清志「うん、テレビでやってた。アサリのお吸い物に毛が生えたようなもんや」

登「え? 毛、生えてんの? 気色悪!」

健次郎「アホ。そんな料理がどこにあんねん。おまえ、ほんまに国語力ないな!」

町子「いっぺん、あの、みんな実物食べさせてあげるからね」

 

鯛子「私はお好み焼き屋さんの方がええんですけど。何か緊張しますやん」

町子「けど、お好み焼き屋さんでお見合いした人て、私、聞いたことないもん」

 

晴子「あっ、今日やったん?」

鯛子「はい」

清志「晴子叔母ちゃんもお見合いしたらええのに」

晴子「え?」

登「毛、生えた貝食べれんで」

晴子「毛?」

 

玄関

正装した貞男とタエ。

タエ「はよ、はよ、言いな!」

貞男「あ…。おはようございます!」

 

茶の間

町子「は~い!」

健次郎「来た、来た!」

由利子「行ってらっしゃい! 頑張ってね!」

鯛子は子供たちにガッツポーズを見せる。

 

子供たちもいなくなり、町子、健次郎、晴子だけ茶の間に残る。

晴子「お見合いかあ…。鯛子ちゃん結婚したら、ここ辞めんのかな?」

健次郎「え? 鯛ちゃんそんなこと言うとったか?」

晴子「ううん。言うてへんけど」

健次郎「びっくりさしないな…」

 

町子「結婚したからて仕事辞めんのはもったいないわ」

晴子「けど、相手の人が『辞めて』て言うたらどないする?」

町子「そういうこと言う男て大したことないよ」

晴子「そやね。そのとおり。私かて嫌やわ」

 

ただ、健次郎と町子は特殊パターンよね。町子は仕事もバリバリ、家事も好きというタイプだけど、正直、そんなにいないタイプのパワフルな女性だと思う。健次郎は相手の仕事に対してリスペクトはあるものの、診療所のお医者さんが忙しいのは分かるけど家事は一切ノータッチ。町子くらいハイスペックじゃないと務まりません。純子さん込みで成り立っている感じもある。

 

健次郎「お前、そんな話あんのか?」

晴子「ないよ」

健次郎「何やそれ。そんなあっさり言われると寂しいな」

晴子「ほっといて。病院行ってくるわ」

健次郎「日曜やのに?」

晴子「ヘルニアの術後の患者さん気になってんの」部屋を出ていく。

 

町子「ねえ」

健次郎「うん?」

町子「晴子さん、仕事楽しそやね」

健次郎「あ~、神戸の県立病院から『来てくれへんか』いう話があんのやて」

町子「うん?」

健次郎「外科の常勤医師や」

 

町子「よかったねえ!」

健次郎「う~ん…けどな、今よりも責任が重たなるし忙しいし。大丈夫かな、あいつで」

町子「何を言うてんの。今までやってきたことが評価されてんねんよ」

健次郎「うん。まあ、そやけど」

 

町子「あ~! 何か私までうれしなってきたな。よっしゃ! 頑張ろう!」

健次郎「まだ頑張んの?」

町子「フフフフフフ…!」

 

仕事部屋

原稿を書いている町子。

 

しかし、一方で町子には気になってしかたないことがありました。廃刊の危機にある雑誌の編集長・畑山のことです。

 

仕事部屋の掃き出し窓から庭を眺める町子。今までなかったショットだな。

 

台所

やかんを火にかける町子。

 

茶の間

町子の様子を気にする健次郎。

茶の間にやって来てため息をつく町子。

健次郎「どないした?」

町子「やっぱり危ないみたいやの『上方文化』。畑山さんとこ」

 

健次郎「うん…その話か。けど自分では『大丈夫や』て言うてはったんやろ?」

町子「うん。私の前ではね」

健次郎「ふ~ん…」

 

戸が開く音

貞男「大丈夫か? おい、鯛ちゃん、しっかりしいて!」

 

玄関

貞男「座ろ、座ろ、座ろ…。健さん健さん! 大丈夫か? うん? 大丈夫か?」

町子「鯛子ちゃん!」

健次郎「どないしたんや?」

貞男「いや、帰りのタクシーで急に『おなか痛い』言いだして…」

 

健次郎「食あたりか?」

タエ「いや、けど、私らどうもあれへんねけどな」

健次郎「とにかく診察室へ」

町子「大丈夫?」

 

診察室

診察台の上の鯛子。「イタタタタタ! 痛い…。イタタタタ…」

診察室の外から様子をうかがう貞男とタエ。

 

健次郎「こりゃ、胃やな」

町子「え? 胃?」

健次郎「胃けいれんや。食べ過ぎたやろ?」

町子「はあ!?」

 

鯛子「デザートのケーキ、あんまりおいしかったから2個ほど追加頼んで…」

 

タエ「ちょっと! フルコース食べたあとにケーキ追加!?」

貞男「いつの間に!?」

鯛子「お二人が席を外してから」

 

タエ「あっ、そんでやわ…。あの子、帰りしな『頼もしい方ですね』言うて笑てた」

健次郎「そんなもん2個どころやないやろ? 正直に言うてみ」

鯛子「そこのお店『デザート好きなだけ食べてください』て言うんですもん」

町子「はあ!?」

 

そして翌日、先方から電話が入りました。

 

待合室

藪下「『おつきあいしたい』て? よかったやないですか!」

健次郎「だいぶ変わってるな」

藪下「ほんまですね!」

鯛子、微妙な表情。

 

藪下「あっ! あ~、私そろそろお昼行ってきます。鯛子さんは?」

健次郎「鯛ちゃんは今日は絶食。ええな?」

鯛子「分かってます」

健次郎「はい」

 

茶の間

純子「お見合いでケーキ3個なんてすごいですね!」

健次郎「あげくに胃けいれんやて。ほんまに何考えとんのやろな。病院に勤めてる人間が…。相手もよう気に入ってくれたこっちゃな」

町子「それぐらい食べる女の人の方が魅力的だっちゅうことですよ! 見る目あるわ! 生命力のある証拠です!」豪快にうどんをすする。

健次郎も純子もじっと見ている。

 

工藤酒店

俊平「何で断れへんねやろな? その男」

貞男「てっきり断られる思たんやで。倒れるまでケーキ食ったんやで!」

 

タエ「ちょっとあんた! 次の日曜、空けといてや! 1回目から成立するなんてさい先ええやないの。ねえ! 続いてまた一件いくで! 留め袖も新調したしなあ!」

貞男「え!?」

タエ「このペースやとすぐに50組ぐらいいくわ! ハハハ! ハハハ! ハハハハハハ!」

 

貞男「勘弁してえな!」

俊平「ハハハハ! 笑てなしゃあないがな」

貞男「俊平ちゃん…」

 

診察室

レントゲンを真剣に見ている健次郎。

晴子「ごめん。外科の分厚い本、ここに置き忘れてへん?」

鯛子「そこです」

晴子「あ…」

 

健次郎「晴子」

晴子「うん?」

健次郎「ちょっと」

晴子「はい」

 

健次郎「これ、どう診る?」

晴子「胃のガスの形がね…」

健次郎「64歳、男性」

晴子「血液検査の数値は?」

健次郎「赤血球が393万」

 

晴子「アネミーが強いね。それにこのガスシャッテンとなると…。進行してる可能性がある」

健次郎「やっぱりそう思うか」

晴子「精密検査必要やね」

健次郎「同じ意見や。触診でも気になった」

晴子「そう…」診察室を出ていく。

 

鯛子「どうぞ!」

米三郎「あ…はい。すんません。先生、こんにちは」

健次郎「ああ。あれ? あの…米春さんは?」

米三郎「え~、師匠ね、どうしても都合がつかへんので私に行ってこいて」

健次郎「ああ、そう…。いや、ご家族の方ならともかくな…」

 

米三郎「大丈夫ですよ。私ね、17の年に師匠に内弟子に入りまして、それからず~っと師匠の身の回りのお世話さしてもろてるんです。まあ、言うたら親子や夫婦みたいなもんですよって」

健次郎「…」

米三郎「お薬もらうだけですやろ?」

 

健次郎「いやいや、あの…こないだ撮ったレントゲンの結果お知らせせなあかんのでね」

米三郎「ほな、伺います」

健次郎「う~ん…」

米三郎「先生?」

 

健次郎「いやそれがな、あの…再検査が必要なんや」

米三郎「再検査? 風邪と違うんですか? どっか悪いんですか?」

健次郎「いや…まあな…」

 

米三郎「師匠来週ね、落語会で大ネタかけるんです。体調悪かったらえらいことです!」

健次郎「ああ…。いやあのな、ちょっと胃潰瘍の疑いがあるんでね、もうちょっと詳しい写真撮りたいなと思て」

米三郎「胃潰瘍?」

健次郎「うん。あのそう言うて米春さんにも伝えといてくれるかな」

米三郎「はい、分かりました。よろしゅうお願いいたします」

健次郎「はい」

 

徳永医院

「本日の診療は終わりました」の札がかかる。

 

待合室

帰ろうとしている鯛子。

健次郎「お疲れさん」

鯛子「お先に失礼します」

健次郎「胃の具合どや?」

鯛子「もう大丈夫です。ご迷惑おかけしました」

健次郎「えらい目に遭うたけど結果はよかったな」

鯛子「はい。ほな失礼します」

 

ドアを開けた鯛子が後ろを向いたまま健次郎に話しかける。「先生」

健次郎「うん?」

鯛子「私ね…母が孫の顔見たがってるからいうだけの理由でお見合いしたんやないんですよ」

健次郎「うん」

鯛子「私『憧れてる人がいてる』て言いましたでしょ?」

健次郎「ああ、言うとったな」

 

振り向いて健次郎の顔を見る鯛子。「先生なんです」

健次郎、何も言えない。

鯛子、笑顔を見せる。「いいえ。正確に言うと先生と町子先生のお二人の姿に憧れてるんです」

健次郎「はあ…」

 

鯛子「お二人見てて『あ~、こんな夫婦やったら毎日毎日面白いんやろな』て思うようになったんです。『私が結婚する相手は、どんな人なんやろ? どんな夫婦になんねやろ?』て、想像するのが楽しなってきたんです」

健次郎「僕ら見てて?」

鯛子「はい」

健次郎「そう…」

 

鯛子「今までは『仕事もして家のこともするやなんてしんどいことばっかりや』て思てたんですけどね」

健次郎「そう…」

再び笑顔を見せる鯛子。夫婦へのあこがれもあったけど、健次郎個人へのあこがれももちろんありそう。

 

月夜

茶の間

町子「え? 鯛子ちゃんがそんなことを?」

酒を飲みながらうなずく健次郎。

町子「え~!」

健次郎「うまいこといったらええな」

町子「うん。けど待ってたら、ちゃんと現れるもんなんやね」

 

健次郎「え? あんたも待ってたの?」

町子「いや、私、待ってなかったよ。けど、ちゃんと現れたの。で、まあね、うん…。『そこそこやな』て『この辺で手打ちましょか』て思て」

健次郎「『手、打ちましょか』て、あんた…」


町子「え? 覚えてる? ねえ」

健次郎「忘れた」

町子「またそんなこと…。何で忘れんの?」

健次郎「恥ずかしいことをいつまでも覚えてる」

町子「私はちゃんと覚えてる」

健次郎「はいはい」

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改めてこの回もいいねえ。

 

その2日後のことでした。

 

仕事部屋

町子「え? 昨日から編集長と連絡取られへんて、あの畑山さんとですか? はい」

 

雑誌「上方文化」の編集部からかかってきた電話でした。

 

町子「ああ~…」

 

ミニ予告

米三郎「私まだセメント飲んだことおまへんね」

米春「当たり前や!」

 

鯛子さん、気持ちを伝えた。町子も鋭い人だからその鯛子の本心も気付いたのかな~。ケーキを食べ過ぎた鯛子さんを「頼もしい」と評した見合い相手の人もいいね。