公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
デートが続く町子（藤山直美）と健次郎（國村隼）。ドライブに出かけたある日「僕と結婚したらおもしろい小説、どんどん書けるで」と健次郎に口説かれる。物書きとして、主婦として、どちらも中途半端になることで結婚を拒む町子に「中途半端と中途半端が２つ寄ってトータルしたら、人生満タンや」の健次郎の大らかさに、ついに結婚を決意する。結婚式に向けて準備を始めた２人だが、町子たちにはまだ解決すべき問題が残っていた。
振り返り
町子「あ～あ～何で目ぇ回ってんねやろう？」畳に仰向けになる。
町子が目を開けると、町子の顔を覗き込む健次郎がいた。
町子「べ～！」
健次郎「はいはい、もうちょい上向いて。上、上…」
注射をされそうになり渋い顔をする町子。「う～ん…」
健次郎「食欲が出てきたら、もう安心や」
町子「はよ、お酒飲みたいな」
振り返りここまで。
夜、徳永家
晴子「ただいま」
喜八郎「お帰り」
イシ「お帰り。ごはんは？」
晴子「病院の近くで食べてきた。お兄ちゃん、また飲みに行ってんの？」
喜八郎「ああ。ええ飲み相手のおなごができて楽しそうじゃ」
晴子「ああ…。映画見るわけでなし、お酒飲んでしゃべってるだけで何が楽しいんかしらね」
イシ「ほんまになあ。町なかには2人きりで星空眺めたり、歌出会いを語り合うたりでけへんもんねえ」うっとりして頬杖をつく。
晴子「歌で？ お母ちゃんら、そんなデートしてたん？」
喜八郎「漬物…漬物あったなあ」ソワソワしている。
たこ芳
町子「このごろ、粋な生き方ってのは難しいもんやねえ」
りん「ほんまや。粋な男はん減ってきたもんね」
健次郎「僕が思うにやたらとスピーチとか講演のうまい人はヤボ」
町子「私もそう思う。しどろもどろでモタモタしてる方が美学あると思う」
健次郎「まあ、時と場合によるけどな」
町子「この間ね、若い女の子たちと話してたんやけどもね『ハゲがヤボでカツラが粋や』て言うのよ。けど、私はハゲを出してる方が粋で人工的に繕うてる方がヤボやと思うねんけどね」
健次郎「いや、それは違うな。カツラかぶっとっても、その本人さえ納得してたら、それは粋や」
町子「そやろか」
健次郎「心の問題や」
それは人にあれこれ言われることじゃないと思うな。私自身、以前、円形脱毛症になったことがあって、人に見つかったら恥ずかしいなあと思ってた。幸い、他の髪で隠せるレベルだったし、今は何ともないから何とでも言えるけど、隠したいって思ったっていいし、逆にツルツルにそり上げるのでも何だろうといいじゃないか！
町子「女にいちいち逆らうのがヤボ！」
健次郎「何をアホなこと。女の言うこといちいち聞いとったら増長して手に負えんようになります」
町子「増長？」
健次郎「そうや。そうなってから困る男がヤボ。初めに女の鼻っ柱ポンと折る男の方が粋や」
町子「何やの！」
りん「はいはいはいはいはいはい。ここで食べんとしゃべってばっかしいるのもヤボでっせ」笑い
町子「あら、もうこんな時間や。私、そろそろ行かなあかん。先生と話してたら時間忘れてしまうねん。ごちそうさまでした」
健次郎「いいえ」
町子「お先…」
健次郎「気ぃ付けて」
帰りかけたが戻ってきた町子。「帰り際、次の約束するのはヤボ？」
健次郎「『ほなまたな』で帰るのが粋」
町子「よかった。同じ意見やった。お先…」
健次郎「気ぃ付けて」
それにしても、夕方の「純ちゃんの応援歌」のももさんとは別人。ミニ予告は「よかった。同じ意見やった」のところ。
そして、そんな2人の次のデートは…
山道を健次郎の運転でドライブ。
町子「うわ～、気持ちええわ～！」
この時代なら当然シートベルトしてない。でも今はクレーム対策か「ゲゲゲの女房」で布美枝が初めて上京した時(昭和30年代)でもシートベルトしてたな～。そんなことしなくていいのにね。
健次郎「さあ、どこへ行こうかな」
町子「え？ 決めてないんですか？」
健次郎「うん。そんなもん最初からここって決めてたらつまらんやろ。海が見とうなったら海。山行きとうなったら山。雨やら風やら気温やらで決めたらええねん。行き先も」
町子「臨機応変やね」
健次郎「ハハハハ！」
見晴らしのいい原っぱで車から下りる2人。
町子「うわ～っ、きれいな景色や！ あ～、空気もおいしいわ。こんな広々としたとこ来たの何年ぶりやろ。あ～！」
健次郎「あ～っ！ 結構登ってきたなあ」
町子「フフッ！」
健次郎「どやろ？」
町子「はあ…」
健次郎「ここら辺で手、打ちませんか？」
町子「え？」
健次郎「僕と結婚したら面白い小説ようさん書けるよ。小説っちゅうのは笑いをもって書くもんやろ？ 1人やったら笑われへん。そやろ？」
町子「そやけど今、結婚したら…」
健次郎「何？」
町子「今、結婚したら物書きとしても主婦としても両方中途半端になってしまいそう。私、それが嫌やねん」
健次郎「そんなこと…」
町子「そんなことって…」
健次郎「アホやなあ。中途半端と中途半端が2つ寄ってトータルしたら人生満タンやないか！ さきざきのことはまた考えたらええがな。家のことなんかなにも完璧にやることなんかあらへん。そこそこでええねんて」
町子「ちょっと待ってよ。さっきから『そこそこ』とか『手を打ちませんか』とか。もうちょっとロマンチックな言葉はないのんですか？」
健次郎「まあ、こんなとこやな」
町子「『こんなとこ』て…。『こんなとこ』て…」笑い
花岡家
朝食の準備をしている和代。
町子「おはようさん」
和代「おはようさん」
町子「お母ちゃん、私…結婚することにした」
和代「え！？」驚いて振り向くが、渋い顔をする。
町子「お母ちゃん…」
和代「徳永先生とか」
町子「私なりにいろいろと考えて出した答えやねん。お母ちゃんの反対する気持ちは分かりますよ。相手再婚やし、子供もぎょうさんいてはるし。あの…そら5人もいてるんやもんね。心配やろなんてのは、よう分かるねんけども、私、誰が心配しても、お母ちゃん…」
和代「誰か反対してんのか？」
町子「え？ そやけど…」
和代「はあ…。朝から奥歯が痛うて…。好きにしなさい。ちょっと歯医者さん行ってくるわ。辛抱でけへん。あっ、話、それだけやな？」
町子「いや『それだけやな』て…。ねえ、お母ちゃん…」
和代「保険証、保険証…」
徳永家
一同「いただきま～す！」
喜八郎「この味噌汁、なかなかええ。ようできとる」
イシ「あ～、よかった」
健次郎「あのな、あの～ちょっと、みんな聞いてくれるか？ あの…。僕、もういっぺん結婚することにした」
喜八郎「え！？」
イシ「あの人か？」
健次郎「みんなもいっぺん会うたことのある花岡町子さんっていう人や」
清志「あっ、赤ちゃん産まれた時の？」
健次郎「うん」
隆「結婚て結婚式やろ？ やった～！」
登「お前、意味、分かってんのか？」
隆「パパパパ～ンや」
登「アホ！」
長女の由利子だけは複雑な顔。
健次郎「僕はな、町子さんという人と一緒に生きたいんや。一緒に機嫌よう暮らして年とっていきたいねん。もちろん今も僕は楽しい暮らしやで。お前らのことや晴子叔母ちゃんやおじいちゃんやおばあちゃん、大好きやからな。ほんでここにもう一人、僕の好きな人が来てくれんねん。なっ、好きな人がみんなここに集まるんや。家の中、もっともっと楽しなるやろ。みんなも楽しなるやろ。こんなええことないなあ。よかったなあ」
登「よかったなあ！」
隆「よかった、よかった！」
末っ子の亜紀も拍手をする。
晴子「おはよう！」
一同「おはよう！」
隆「叔母ちゃん。お父ちゃん、結婚すんねんで！」
慌ただしく起きてきた晴子は自分でごはんをよそう。
晴子「あ、そう、結婚。え？ (茶わんを落として割る)結婚！？」
廊下を歩く白衣姿の健次郎に由利子が声をかけた。「お父ちゃん」
健次郎「うん？ どないした？」
由利子「結婚したらあの人がお母ちゃんになんの？」
健次郎「いいや、違うで」
由利子「え？」
健次郎「おいで。お座り。あのな、由利子、お前らのお母ちゃんはもういてるやろ。今、もうここにいてへんようになってしもうたけど天国にいてるやろ？ お母ちゃんはずっとお母ちゃんや」
由利子「ほな、あの人は何？」
健次郎「僕の奥さんや」
由利子「お父ちゃんと夫婦でしょ？」
健次郎「そうや」
由利子「お母ちゃんやんか」
健次郎「違う。お母ちゃんとして来てもらうんやないねん。新しい家族になるんや。僕らの家族になりたいと思てくれたんや」
由利子「『家族』？」
健次郎「そうや」
納得してうなずく由利子。
いつもの喫茶店
加代子・みすず「やめとき！」
町子「え！？」
みすず「何で今更結婚やの？ これからどんどん仕事も増えていくし一人でもやっていけるやん」
加代子「後妻に入って、すんなり子供らの母親としてうまくいくと思てんの？」
町子「母親って…その母親になんのではないのよね。私は好きな人と一緒になるの。母親になんのと違うの。私は好きな人と一緒になって、そして結婚するの。私は母親になんのではない」
みすず「仕事はどうすんの？ 仕事は」
町子「仕事、続けるよ」
加代子「甘い！ そんな環境で原稿書けると思てんの？」
町子「私、一生懸命努力して書くもん」
みすず「それに何で第一カモカなん？」
町子「かわいらしいねん。かわいげがあるの。一緒にいてて楽しい。何かあの人と一緒にいてたらこれからの私の人生ものすご～く楽しくなりそうやなとそう思えるの」
町子の自室
スケジュール帳に予定をかきこむ。
10 月 結婚式
10月じゃなく10日月曜日だと思います。
昭和41年10月10日 月曜日かな？
慌ただしく町子と健次郎は結婚式に向けて準備を始めました。
電話
町子「はい、もしもし花岡でございます。あっ、どうも。ええ、はい、予定どおりに。ご安心ください。ええ、あのお約束の日にはちゃんと入稿させていただきますので、はい、よろしくお願いいたします」
たこ芳
りん「おおきに。ありがとう」
ひとりカウンターにいる健次郎。
町子「こんばんは。遅なってごめんなさい」
健次郎「いえいえ」
町子「そしたら、すいません。私ね、大根とコロ下さい」
健次郎「ゆっくりしてけんねやろ？」
町子「ありがとう。なんとか2時間ぐらいはね。新しい連載の打ち合わせの電話が入るの」
健次郎「売れっ子やな」
町子「ここしばらく正念場やから私も頑張らんとね」
りん「はい、どうぞ。気ぃ付けてね、おいしいから」
町子「ハハハ！ いただきま～す。もう、おなかペコペコやねん」
健次郎「昼飯はやな？」
町子「食べる時間がなかったの。お母ちゃんも留守やったしね」
健次郎「ふ～ん。ごはん食べる時間もないんか」
町子「うん」
健次郎「けど、結婚したら飲み食いだけは一緒にしたいな」
町子「ほんまほんま」
健次郎「飲んでしゃべって…」
町子「小説を書いて、家事をして。この私に時間が足りるかなあ。ハハハ」
徳永家
子供たち「ジャンケンポイ！」
亜紀、泣いてる。
晴子「亜紀、どうした？」
男の子3人が騒ぐ。食器が落ちる。登と隆は小競り合い。
清志「おばあちゃん、お代わり！」
健次郎「ええ加減にせえ、もう！ お前ら！」
晴子「あの忙しい人がほんまにこんなとこに来てくれはんの？」
結婚することは決めたものの一方で町子たちにはまだ解決すべき問題も残っているようでした。
原稿を書いている町子のもとに電話。「はい、もしもし、花岡…。あっ、まあ、『週刊ジャスト』さん？ いや、どうもありがとうございます。いいえ、とんでもない。もういっつもお世話になってること感謝してるんです。はい」
ミニ予告
音声なし。ケンカしてる？
すてきな大人のカップル…と思う反面、イシさんに子供たちの面倒、家事などを全て任せて好きに飲み歩いたりが、なーんかモヤモヤするんだー。町子も母親になるわけじゃないとすると、やっぱりイシさんの負担は増えるんでは？
《再放送のお知らせ》
— ＮＨＫドラマ (@nhk_dramas) March 23, 2022
あの #松本清張 作品を総合テレビで再放送！NHKプラスでも見られますhttps://t.co/nFHobfIsqm
第1弾【#けものみち】
4/8(金)よる11:50～ 3回一挙放送！
第2弾【#天城越え】5月予定
第3弾【#ザ・商社】6月予定https://t.co/3uEEWni0xe
「けものみち」は以前、BSプレミアムで再放送したのを見ました。「天城越え」も、再放送してたけど、その時はスルーしてしまった。でも、せっかく地上波でやるならチェックしとこう。地上波は何といってもNHKプラスで配信してくれるのがありがたい。
そして、「けものみち」1話のあとに、松本清張さん、名取裕子さん、山崎努さんがロケ地でもあった松本清張邸で対談していて(今回の再放送でもやるかな？)、その中で「ザ・商社」の話もしていたので見たいと思っていました。松本清張作品は過度なお色気など苦手な部分も多いけど、でもNHKとなるとやっぱり見ちゃうなあ。
