公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
町子(藤山直美)の原稿をひったくりに取られた矢木沢純子(いしだあゆみ)は、責任を感じて精神的にまいってしまう。そんな様子を痛々しくみる町子と健次郎(國村隼)だが、原稿が出版社に届かなかったことで、町子の連載は休載となる。そんなとき、有名人のスキャンダル専門の週刊誌記者、井村秀樹(髙川裕也)が町子の周辺を探ろうとする。強引に町子に取材を申し入れようとする井村を純子は阻止しようとするのだが…。
玄関の扉が勢いよく開く。
北野「ごめんください! ゆっくりで大丈夫ですよ」
純子「はい…」
北野が玄関に純子を座らせる。
町子「純子さん、どないしたの!?」
純子「先生…。原稿盗まれてしまいました! 申し訳ございません!」
町子「えっ…」
北野「警察には届けてきました」
応接間
北野「僕が追いついてれば…。申し訳ありません」
町子「とんでもありません。こちらこそ大変ご迷惑をおかけいたしました」
北野「あの原稿は?」
町子「ええ、あの…来月号の『月刊太陽』の連載の」
北野「『太陽』さんということは、もう…」
町子「今日がギリギリの締め切り日やったんです」
北野「落ちるっていうことですか?」
町子、力なくうなずく。
診察室
純子「い…痛っ!」
健次郎「捻挫してるね。湿布して様子見よか」
ぼんやりしている純子を見る健次郎。
茶の間
純子「申し訳ございません…」
町子「純子さんのせいと違います。ひったくられたんですから」
純子「いや、私の責任です! 原稿が落ちてしまうなんて…。もうこんな大変なことに…」
町子「ねえ、純子さん、元はと言えば締め切り守られへんかった私が悪いんです」
純子「いえ、先生がおっしゃるままに先方に締め切り引き延ばしてもらって…。もしものこと考えなかったからこんなことになってしまったんです!」
町子「起こってしまったもんはしかたがないですから!」
夜、茶の間
町子「はあ…」
健次郎「大変やったな」
町子「私も初めてやもん、原稿落ちたん…。けどね、私より責任感じて純子さんの方が参ってしもてはるみたい」
健次郎「だけどひったくられたんやから、そんなもん不可抗力や。下手に後追いかけてナイフで刺された方がえらいこっちゃ」
町子「ほんまにそう。その方が怖いもん」
健次郎「うん。まあ、あんたが命削って書いた原稿やろけども…」
町子「命まで持っていかれたわけやないしね」
健次郎「うん。そうや」
町子「ねっ。フフフフ。うん」
結婚前は大げんかになっていたことが今ではお互いの考えを受け入れているところが夫婦の歴史を感じます。
路地
右足首に包帯を巻き、歩いている純子。
そして、数日が過ぎました。
診察室
晴子「ちょっと腕上げますね。鉄骨が倒れてきたんですか?」
尚之「もうちょっとで頭に当たるところやったが。思わず『あ~神様』言うて祈ったき!」
鯛子「フフフ!」
晴子「湿布貼ってあげて」
鯛子「はい!」
尚之「痛っ!」
鯛子「男の子でしょ、我慢する」
尚之「何ぞよ、子供やないきに」
晴子「今日はお風呂あきませんよ。一日2回、貼り替えてくださいね」
尚之「一人では貼れんろうね…」
応接間
テレビを見ている清志以外の子供たち。
茶の間
町子「はい。新明出版の松岡さんから。ブラジルで取材ですって」
絵葉書
前略 花岡町子様
私は取材でブラジルに来ております。
日本を留守の間、うちの北野がお世話になります。
宜しくお願いいたします。
松岡哲太
健次郎「へえ、海外取材か」
町子「うん」
健次郎「編集さんもつきあいはんねんな」
町子「1か月行ってるのでね、で、その間、その、ほれ、北野さんが代理担当さん」
健次郎「ああ」
清志「ええなあ、外国行けんの」
健次郎「アホ。仕事で行ってはんねや。大変やで」
町子「北野さんてね、学生時代、ボクシングやってはったんやって」
健次郎「へえ…」
RIKIYAさん自身、大学時代はボクシングしてたそうで、映画版「阿修羅のごとく」もボクサー役だし、そういう役が多かったし、「芋たこなんきん」前後ずいぶん推されていたように思う。よく見たもん。
町子「けど、あの人、優しいねんよ。純子さんと初めてね、そこで会うた時に汚れんのお構いなしで子猫を助けてくれはったんやって」
健次郎「ほう。『タフで優しい』いうやつやな」
町子「で、そして何となくかわいげのある人」
健次郎「ふ~ん」
健次郎の隣で新聞を読んでいた清志。「あ!」
健次郎「何や?」
清志「『『小説太陽』今月の花岡町子さんの連載は都合により休載します』やて」
新聞の広告欄に小さな記事が出ていた。
由利子「おばちゃん、お休みしたん?」
登「何で? あんなに一生懸命書いてたのに間に合わへんかったん?」
町子「けど、あの、大丈夫やからね。うん」
アムール前の路地
肩を落として歩く純子。
原稿の事件が予想以上に純子にダメージを与えていることにまだ気付かない町子でした。
ひったくりに遭った場所のせいか辺りをうかがったり、後ろを振り向いたりする純子。
ここ数日、有名人のスキャンダル専門の週刊誌記者・井村が町子の周辺を探っているのでした。
隆と亜紀が並んで帰っているのを振り向きざま、じっと見ている井村。
玄関前
由利子「行ってきま~す!」
井村「おはようさん」
由利子「はい?」
井村「君、ここの子? ねっ」
由利子「そうですけど…」
通りすぎようとした由利子の腕をつかむ井村。やめてー!
井村「ねえねえ、年いくつ? あ、高校生だ。一番上の子?」
手を振りほどいて無言で去っていく由利子。
井村「なかなかかわいらしいじゃないの」
待合室
鯛子「次の方どうぞ」
藪下「新庄尚之さん、どうぞ」
尚之「はい」
鯛子、笑顔。
診察室
健次郎「うん。骨には異常ないみたいやね」
尚之「あ~、よかった!」
健次郎「当分はこっちの肩に力入れんようにな。鯛ちゃん、湿布替えてあげて」
鯛子「はい」
健次郎「どないかしました?」
尚之「今日は女の先生やないがやね」
健次郎「残念でした。おっちゃんですまんな」
尚之、笑う。鯛子はムッ。湿布を乱暴にはがす。
尚之「痛っ! そろっとしてや!」
鯛子、ため息。
玄関
晴子「週刊誌の編集の方ですか?」
井村「はいはい」
晴子「ちょっと待ってください」
純子「おはようございます!」玄関に入ってくる。
井村「おはようございます」
純子、慌てて中へ。
仕事部屋前
純子「あっ、先生!」
町子「おはようさんです」
純子「おはようございます。あの…」
町子「記者の人が来てはるみたいですけど」
純子「駄目です。やめてください」
町子「え? 何で?」
晴子「仕事の人やあれへんの?」
純子「約束もなしに突然ですから…。あの、私、断ってきます」
玄関
純子「取材はあらかじめお電話かお手紙でお話しいただくようになっておりますので、突然いらっしゃっても困るんです」
井村「ですから、今、うちの人にお話をし…。あっ、あ~! ですよね?」
廊下を通りかかった晴子に話しかけるが、晴子は一瞥して無言で去っていった。
純子「申し訳ございません」
井村「一旦入れといて追い出すんですか?」
純子「お引き取りください」
井村「そんなまあ、固いこと言わずにちょっとで結構なんですから…」
純子「お引き取りください!」
廊下で聞いていた晴子はハラハラ。
茶の間
晴子「あ…ごめんなさい。『編集の人や』て言いはったから、私、てっきり…」
純子「あの人、違うんですよ。あ~、困ったもんです」
町子「週刊誌なんでしょ? どこの雑誌です?」
純子「『週刊ウォッチャー』って言ってました」
町子「いや、私、聞いたことないわ」
純子「いや、私も初めてです。でも、何だか…」
電話が鳴る。
純子「あっ、私…」
町子「あ…」
純子「はい、徳永でございます。はい、花岡です。あ、さっきの…」
工藤酒店の店の前の赤い公衆電話
井村「『前もって電話しろ』って言われましたもんで。ええ。それで今、電話さしてもらってるんですけれども…」
純子「取材ですか? 申し訳ございません。今回はお断りいたします。いえ、あの、ただいまスケジュールが立て込んでおりますので。はい? あ、当分は無理だと存じます。門前払い? 無礼? どちらがですか!? いえ、結構です! はい、失礼いたします!」受話器を置く。
町子「純子さん…」
純子「さっきの記者です。先生…あの記者、私、何か危ない気がします」
町子「分かりました。純子さんがそう言わはるんやったら今回はやめときましょう」
神経をピリピリさせている純子が少し心配になっている町子でした。
工藤酒店
店内で酒を選んでいる尚之。あらすじや字幕を追ってるから分かるようなものの、何もない状態だと井村と尚之がごっちゃになりそう。年齢とか全然違うんだろうけど。
外を通りかかった鯛子が店に入ってくる。「けがしてる人がお酒なんか飲んだらあきませんね」
尚之「あっ、びっくりした…。違うで。会社の人に遣い物、頼まれただけちゃ」
タエ「はい、お待っとおさんで。これでよろしゅうおましたか? あっ、鯛子ちゃん」
鯛子「こんにちは」
タエ「こんにちは」
尚之「ほんならそれお願いします」
タエ「はい!」
尚之「お昼休み?」
鯛子「そう」
タエ「あ、いや、お知り合い?」
鯛子「患者さんなんです」
タエ「へえ~。どうぞ!」
尚之「あ、そうや! サイダーありますか?」
タエ「へえ、ありますで!」
尚之「飲んで行け。ごちそうするき」
鯛子「え?」
尚之「おばちゃん、おばちゃん、2つ」
タエ「は~い!」
鯛子「そんなんええのに」
尚之「ええきにええきに! 診察のお礼」
鯛子「診察したんは先生」
タエ「はい、2つ!」
尚之「はい」
鯛子「いただきます」
サイダーを一気飲みする尚之。
貞男「やあ、珍しな、鯛子ちゃん!」
鯛子「あ~、こんにちは」
貞男「こんにちは」
尚之「ごちそうさん! ほんならまた」店を出ていく。
タエ「あっ、おおきに!」
貞男「おおきに!」
鯛子「ありがとう! ごちそうさま! お大事にね!」手を振る。
タエ「フッフフフ…!」
貞男「何笑てんねや? 気持ち悪い」
タエ「見た?」
貞男「何が?」
タエ「鯛子ちゃんのあんなとこ初めて見たわ。男の子にうれしそうにこう、手、振ってたやろ」
貞男「え? そうか?」
タエ「フッフフフ…!」
貞男「気持ち悪いて。もう、笑うなや!」
工藤酒店前
貞男「よいしょ!」
井村「あ~、すいません」
貞男「あ、はい。いらっしゃい」
井村「今、行った女の人、徳永医院の方?」
貞男「ああ、そうだすけど…」
井村「徳永医院長のご家族?」
貞男「いや、看護婦さんやけど。おたく、何ですの?」
井村「看護婦か…。あ~、どうもありがとう」
茶の間
純子「はい、どうぞ」
晴子「あ、すいません」
純子さん、晴子さんの給仕までするんだね。
純子「午後からですか?」
晴子「はい」
立ち上がった純子がふらつく。
晴子「純子さん?」
純子「ちょっとめまい…。大丈夫です」
柱時計の時報
晴子は純子の後ろ姿をじっと見つめる。
ミニ予告
「初めてお目にかかります」←米倉斉加年さん。米倉さんといえば
教科書で読んだこれ。
先週の「チ~!」が懐かしいよ。もう少し明るくなってくれるといいな。
前も「芋たこなんきん」について書かれてたライターの人、相当ハマってるんだな。他の再放送朝ドラでもそういう記事が読みたかった。「マー姉ちゃん」はヤバい母としてネタ的にいじられてたぐらいだったけど、そういうんじゃなくてさあ!
#芋たこなんきん はどういう経緯で生まれたのか。回想を間にはさむ構成や、戦争の描き方、最終回の撮影秘話など、演出家の1人・真鍋斎さんにお聞きしました。
— 田幸和歌子 (@takowakatendon) August 15, 2022
演出家が今だから語れる『芋たこなんきん』制作秘話(田幸和歌子) https://t.co/cpPbPwE4s3