公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
東京へやってきたマリ子(熊谷真実)とマチ子(田中裕子)は、畑仕事が板についたウララ(楠田薫)やマドカ(斎藤美和)と再会を果たし、タマ(星清子)も交えてサツマイモでお茶会を始める。そんな中、朝男の無事を聞いて安堵したマリ子は、東郷も帰りが遅れているだけだと言い切ってしまう。さらに、大宗(渡辺篤史)が、空襲後にウメを見かけたという人に会ったらしいという話を聞いて、マリ子は恋文のことを思い出し…。
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ウラマド姉妹の家に招かれたマリ子とマチ子。
ウララ「まあどうぞどうぞ、お入りあそばして」
マドカ「どうぞお入りあそばして。まあ、お疲れになりましたでしょう。どうぞそこにお掛けになって」
マチ子「はい、ありがとうございます」
マリ子「ありがとうございます」
マドカ「あの、福岡からまっすぐ私どもの所へ?」
マリ子「はい、オネスト様から伺いましたものですから」
マドカ「まあ、うれしいわ。本当にようこそ来てくださいました」
ウララ「まあ、マドカさん。あなたのその手」
マドカ「あら! まあお姉様の手だって!」
野良仕事をしてきて手が汚れていて、笑う。
マドカ「それではちょっと失礼して手を洗ってまいりますけれども…戻ってきた時に消えてしまわれるっていうことはございませんでしょうね?」
マリ子「いいえ、全くございません」
ウララ「それじゃあ、マドカさん」
マドカ「はい。あの手がきれいにならなければお茶も頂けませんものね」
ウララ「そうですとも。じゃあどうぞごゆっくりなさってくださいませよね」
「純ちゃんの応援歌」の昭や雄太のように家に入ったらすぐ手を洗うこと! ま、あの家は入ってすぐに台所があって手を洗いやすいというのもあるけどね。
マチ子「ありがとうございます」
戦後の東京へやって来たマリ子たちは、まずこの懐かしのウラマドきょうだいを訪ねました。
天海タマが走って前島家へ駆け込駆け込んできた。
タマ「こんちは~! ごめんなさいよ!」
ウララ「は~い、おタマさんでしょう? どうぞ、お上がりあそばして」
タマ「言うには及ぶ!」
タマは部屋に入って、マリ子、マチ子との再会を喜ぶ。
タマ「いえね、今、うちへ帰ってきたら前島さんにいるって張り紙がしてあるじゃありませんか。ああ~、夢じゃなかろうか。夢だったら覚めないうちに飛んでいって、とにかく顔だけでも見ちゃおうと思って!」
マリ子「いいえ、夢でもお化けでもありません。どうぞゆっくり見てください」
マチ子「そのかわり、おば様の顔もちゃんと見せてくださいよ。その元気なお顔を!」
タマ「本当にもう! あんたたちときたら昔っからいつもそうやってびっくり箱みたいに脅かしてばかりいるんだもの…!」涙を拭く。
マドカ「さあ、感激のご挨拶がお済みになりましたら、お三時にいたしませんこと? さあさあ! さあどうぞ! どうぞお掛けになりまして。バッキンガムでは女王陛下もお茶を召し上がるお時間ですわ」
ウララ「バッキンガムもいいけど、マドカさん、その帽子くらいお取りあそばせよ」
マドカは麦わら帽子をかぶったまま。「あら…私としたことが…オホホホホッ! やっぱりうれしくて少々のぼせておりましたのでごめんあそばせ」
ウララ「本当にこんなうれしいことってあるかしら」
マドカ「本当にこんなにうれしいことってあるでしょうか! 毎日毎日ドッカンドッカンって空襲の度に、まあ何度死ぬかと思ったことか。それでも生きていてよかったわ。ねえ、お姉様」
ウララ「本当」
タマ「あの、それで皆さんにはお変わりなく?」
マリ子「おかげさまで母とヨウ子とお千代ねえやがくれぐれもよろしくと申していました」
タマ「おや、まあ、お千代さんもいるんですか?」
マチ子「はい。空襲の時にお千代ねえやのうちが焼けたものですから、それからはずっと私たちと一緒に」
タマ「ねえ~、ひどうござんしたね~。福岡の方もえらくやられたようで、そりゃあもうウラマドさんと一緒にね、えらく気ぃもんでたんですよ」
マリ子「私たちもどんだけ心配したものか」
マドカ「ええ、お手紙だってろくに届かないし音信不通のような状態だったんですものね」
ウララ「スイートポテトでも召し上がりながら続けてくださいませな」
タマ「それは結構なんざんすけど、これ、サツマイモじゃないんですか?」
マドカ「オサツですの。ちょうど向こうの畑の所で掘ってきたらば、マリ子さんと…お二人にパタッとお会いしてしまいましたの」
ウララ「ばったりとお会いしましたのよ。さあ、どうぞ」
タマ「あの、そんじゃあひとつ」
マリ子「どうもすいません」
マチ子「ごちそうになります」
マドカ「どうぞ召し上がって」
ウラマド姉妹はフォークとナイフでふかし芋を食べ始める。
マリ子「手で頂いてもよろしいですか?」
マドカ「どうぞどうぞ。お姉様、私たちも手にいたしましょうか」
ウララ「そうね、ざっくばらんにいきましょうか」
タマ「へえ~、ざっくばらんっていうと私たちは昔っからこのサツマイモってのはね、手で食べるもんだと思ってましたけどね」
マドカ「まあ、面白い方、ホホホホ!」
うれしいですね~。この人たちは昔のまんま、ちっとも変わってはいませんでした。
タマ「あの、何ですか?」
マリ子「いえ、それで天海さんは?」
タマ「へい。朝男でしたらどうやら無事なようなんですよ!」
マチ子「本当ですか!?」
マドカ「ええ。あのね、私とご一緒に復員局へ参りましたの。そしたらあの名簿っていうのにちゃんと名前が書いてありましたんですけれども、こちらはほら海軍さんでいらっしゃいましたでしょう。ほかの兵隊さんたちをお送りする船の…何とか係なんていうのになっちゃったんで少々お帰りになるのがちょっとだけ遅れるっていうことなんですって」
マリ子「よかった! ねっ、マチ子、よかったわね!」
マチ子「本当ね! これが一番の大ニュースね! 早く帰ってきてくれないかな。我らが兄上」
タマ「ありがとうございます、本当に…」
ウララ「それで東郷さんは?」
マドカ「東郷さんは?」
マリ子「はい、遅れてる方の組らしいんです」
ウララ・マドカ「まあ~…」
マリ子はいつもの笑顔だが、マチ子は驚き、気まずそうな表情。
タマ「いえね、『待てば海路の日和あり』ってさ。まあね、一段と磨きを立ててさ、女っぷりを上げといてさ、待っててやることですよ、マリ子さん」
タマの言葉を聞いてる時のマリ子は笑顔だけど目が涙で潤んでいる。
マリ子「そうですね、本当にそうですとも! いただきます!」
ラジオ「『尋ね人』の時間です。これから申し上げる方々の消息をご存じの方はどうぞ係までお知らせください。皆さんのご協力をお願いします。初めに海外からの引き揚げ…」
「尋ね人」と言えば「純ちゃんの応援歌」。
福岡の磯野家ではラジオを聞きながら、はる、千代が荷造りをしていた。
はる「入り用のないものから徐々にまとめておけば、いざ引っ越しという時に楽は楽だけどね。フフフフッ」
千代「あれ? まあ何でっしょう?」
はる「めぼしい着物や掛け軸はほとんどお米と変えてしまってるでしょう。だから今度のお引っ越しが一番楽なお引っ越しになるんじゃないかしら」
千代「本当にまあよういろんなものを食べてしもうたとですね」
そんな磯野家に電報が届いた。
「無事着いた。天海さんも無事のようです。マリ子」
千代「天海さんってあの天海さんでしょうか?」
はる「そうね、天海さんのお母さんなら前島さんとはお隣さんみたいなもんでしょう。だから『のようです』ということはないわよね」
ヨウ子「それじゃあ、無事らしいけど、まだ復員なさってないっていうことなのかしら?」
はる「う~ん、そういうふうにも考えられるわね。でもまあ2人で一緒に行っていながら、どうしてこんな変な電報しか打てないんでしょう。全くあの子たちは」
ウラマド姉妹宅でくしゃみを連発するマリ子とマチ子。
ウララ「まあどうしましょう…」
マドカ「お風邪を召したんじゃないでしょうかしら!」
タマ「そんなこと言ってる暇にね、あの、いつものこのヒラヒラした肩掛け、あれ貸してあげたらどうですか?」
マリ子「あっ、いえ、大丈夫です。多分、電報が着いてうわさしてるんだと思います」
マチ子「天海さんがご無事のニュースを私が入れときましたから」
タマ「おや、まあ、そうだったんですか。それはそれはありがとうございました」
誰かがうわさしている→くしゃみ連発って最近見ないから昭和の表現になったか…。
ウララ「あ~、そうそう。それから日暮里の酒田さんのおばあさんのこと、あれ、お話ししたんでしょうね? マドカさん」
マドカ「ええ、多分、お話ししたと思いますわよ。ねっ?」
タマ「冗談じゃありませんよ。まだそんなにボケる年でもないのに」
マドカ「ボケる…」
マリ子「あの、酒田さんのことって一体?」
マドカ「あら、やっぱりお話してなかったのかしら」
マチ子「何をですか?」
マドカ「いえね、これは未確認情報っていうんですけれどね、あの空襲のあった翌朝、上野のお山でおばあちゃまらしき方を見たっていう方がいらっしゃったんだっていうことなんです」
マリ子・マチ子「本当ですか!?」
タマ「何の手がかりもないし、まあ、実のところ、私もウラマドさんもね半分諦めていたんですよ。ところがほら田河先生んとこの均五郎さんが…」
マチ子「えっ、先輩、無事だったんですか!?」
ウララ「ええ、ひょっこり訪ねてみえてくださって」
マリ子「あの人、復員なさってたんですか!?」
マチ子「なんて声出すのよ、マー姉ちゃんったら」
マリ子「あ…ごめんなさい」
マドカ「あ~、やっぱり大層な出征のご挨拶がそちらにも行ったんでございましょう。私どもの所にもね、まあ大したご覚悟でお別れの挨拶に見えましたのよ」
マリ子「ええ、まあ…」
タマ「ところがね、あんまり遅くに召集が来たもんで鉄砲担ぐにもその鉄砲がなくってね、松の根っこ掘ってるうちにね、終戦になっちまったんですってよ」
マチ子「まあ」
ウララ「どだいですわよ、松の根っこからとった油で飛行機飛ばそうなんて、そんな戦争勝つわけないじゃございませんの。バカバカしい」peachredrum.hateblo.jp
惣吉の場合は船の燃料のために松根油を採取していた。
マチ子「でもよかった。大体、先輩に戦争や人殺しなんかできるわけがないんですもの」←タマのいる前でドキッとするセリフ。
タマ「それにしたってさ、ああ勇んで出て行ったものの松の根っこ掘ってるうちに、まあね、戦争が終わっちまうなんて…。いかにもまあ均五郎さんらしいじゃありませんか」
マチ子「そういえばそうですわよね」
田河家に鍵をかけようとした均はくしゃみの拍子に鍵が鼻の中に入った!「ああ~…」
順子「均ちゃん、あなた風邪じゃない?」
均「いや、なんのなんの。私はこう見えてもデリケートに出来てましてね、鼻の粘膜、つまり鼻粘膜が多少のにおいも嗅ぎ分けて…」←説明台詞が小林製薬(笑)。
順子「あらそう。ハハハハッ」
均「おかしいですか?」
順子「いいえ。そのデリケートなところがもう少し漫画の方に表れるとよろしかったのにね」
均「全く。いや全く。えっ?」
順子笑い続ける。
均「アハハッ、いや、久しぶりですね」
順子「何が?」
均「奥様がそのように思い切り笑われるなんて」
順子「本当。ありがとう、均ちゃん」
均「何をおっしゃるんですか」
順子「あなたって本当にいい人ね。均ちゃんが帰ってきてくれて主人もどんなにか喜んでるか分かんない」
均「そうおっしゃっていただけると僕もとてもうれしいんですけども、もっともっと先生には活躍していただいて…。でも、今の世の中のやつらが…」
順子「いいのよ。そのうち世の中も落ち着くでしょうし」
均「はあ」
順子「でもどうしていらっしゃるのかしらね? マチ子さんやマリ子さん」
均「はっ?」
順子「陽談社の塚田さんが全国紙に広告出したっておっしゃってたけど、まだ何の音沙汰もないんでしょう?」
均「はあ…」
順子「ご無事でいらっしゃるかしら?」
均「無事ですよ! あの人たちは無事に決まってます!」
順子「そうだといいんだけど…」
またしてもくしゃみをする均。
順子「あなた本当に風邪よ!」
均「ですかね?」
再びウラマド姉妹宅
マチ子「それじゃあ未確認情報というのは大宗先輩が?」
マドカ「そうなの。すぐに私どもの所へ様子を見に来てくださいましてね、それで酒田さんのことを申し上げたら、まあ、その足でもうあの辺をもう行ったり来たりしながら捜し回ってくださいましたんですって」
マチ子「まあ!」
タマ「それでね、ついに捜し出したんですよ。3月10日の明け方、たどん屋のご隠居さんらしい人を上野のお山で見たっていう人をね」
マリ子「じゃあ、ご無事でいらっしゃるかもしれないんですね!」
マチ子「とにかく明日、田河先生のお宅へ伺うんだし、大宗先輩に会えば、また何か新しいことが分かるかもしれないでしょう」
マリ子「ええ…」
マチ子「大丈夫よ、そんな顔しなくたって!」
ウララ「そうですとも。『明日を思い煩うことなかれ』」
マチ子「まあ、おば様ったら!」
マリ子・心の声「どうしよう…。明日一体どんな顔をして大宗さんの顔を見たらいいのよ…」
ごもっとも。均ちゃんも死ぬ気だったからこそ、マリ子に綿々たる恋文を書いたのでしょう。
ウララ「ねっ、マリ子さん」
マリ子「あ…はい、そうですね」
マリ子がうわの空の間に、タマもマリ子、マチ子とともに泊まる話になっていた。
ウララ「まあよかった! パーティーよ、マドカさん!」
マドカ「だけど、オサツのパーティーでは胸が焼けるばっかりで…」
ウララ「駄目ね~、そんな現実的なこと言ってたら」
タマ「そうですよ。つもりでいきましょうよ、つもりで!」
マチ子「そうか! ここにお酒があるつもり!」
ウララ「ここにローストビーフがあるつもり!」
タマ「私はね、ここにトロの刺身があるつもり!」
マドカ「私はキャビアとフォアグラがあるつもり!」
タマ「え~っと、それから私はウナギのかば焼きと、え~…アワビの酒蒸しを足しておきましょう!」
マリ子「それじゃあ、ぼた餅とそれから胃の薬も用意しておかなくっちゃ!」
マチ子「本当だわ!」
色気よりはまず食い気。今夜はさぞ積もる話があることでしょう。
均ちゃんも天海朝男さんも田河夫婦も無事。ウメさんは未確認情報だからどうなんだろう。三吉君はどうなっただろうな。