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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (134)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

千代(二木てるみ)に熱烈なプロポーズをした朝男(前田吟)。夫婦となった朝男たちは、ウラマド姉妹の家を買って欲しいとマリ子(熊谷真実)に相談する。資産だけでは立ち行かなくなったウラマド姉妹は、家を売って有料老人ホームを立ち上げると言う。家を買う資金のために、サザエさん3巻目を出すよう命じるはる(藤田弓子)。そこへ、塚田(日下武史)が3巻目は陽談社から出し、マリ子は挿絵家に戻ればいいと提案するが…。

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はるたちは台所から閉じられた襖の向こうの様子をうかがう。

 

瓢箪から駒が出る」とはこのことでしょうか。天海さんとお千代ねえやの雲行きが怪しくなってきたのです。

 

朝男「だからよ、俺だって戦争のおかげでもらいそびれのいい年だしよ」

 

天海朝男さんは昭和12(1937)年の時点で26歳。なので明治44(1911)年生まれ。「澪つくし」のかをると同年代かな。そういや、寅さんて2.26事件の時に産まれたから昭和11年生まれなんだよね。若いよね。どうでもいいけど。

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お千代ねえやは昭和9(1934)年3月の時点で21歳。1913年の大正2年生まれ。

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今は昭和23(1948)年の春なので天海さん37歳、お千代ねえや35歳ということになります。まー、これが数え年がどうのというとそれぞれ1~2歳若いくらい!?

 

ついでに年齢が判明してるのは

長谷川毬子 1917(大正6)年8月8日

長谷川町子 1920(大正9)年1月30日

長谷川洋子 1925(大正14)年

 

昭和23年時点だとマリ子31歳、マチ子28歳、ヨウ子23歳ということになります。ついでにいうと三郷さんは昭和11(1936)年に30歳なので(「あぐり」のエイスケさんと同じ歳!)明治39(1906)年生まれの42歳。

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もしかしたら均ちゃんのモデル?の倉金章介さんは大正3(1914)年生まれだそうで、天海さんよりちょっと下くらいの設定かな? 34歳。

 

千代「いえ、そげんことありまっしぇん」

朝男「あるんだよ。だからさっきからこうやって汗拭いてんじゃねえか」

千代「はい…」

朝男「だからさ、つまり…俺のかみさんになってくれる気はねえだろうか?」

千代「あ…うちは…」

 

朝男「こうなった以上、はっきり言ってくれた方がありがてえんだよ」

千代「でもうちは…」

朝男「おう、俺ははっきり言うよ。俺はな、おめえさん、気に入ってんだよ」

千代「いけまっしぇん、そげんこつ…」

朝男「何だよ、ええ? いいものをいいって言って何でいけねえんだよ! ええ!?」

 

これじゃあまるでけんか腰。プロポーズとはとても言えた義理ではありません。

 

朝男「ただな、いいか? (千代の向かいから隣に移動する)ただ、この…ほれた腫れただけじぇねえってことは確かだよ。俺がおめえさんを欲しいってのは、お前さんのその何でも一生懸命やる気性だ。魚屋のかみさんにはもってこいだ。おめえさんよりほかには俺の眼鏡にかなうやつはいねえんだよ」

千代「ばってん…」

朝男「ばってん、何でえ?」

千代「それはできまっしぇん」

 

朝男「どうしてだよ? 魚屋のかみさんじゃ不足かい?」

千代「いいえ。うちは後家さんですけん」

朝男「だからどうなんだよ? だからどうだと聞いてんだよ! (机をたたく音)この俺が虫ずが走るほど嫌いだっていうんなら、俺も男だ、きっぱりと諦める。けどな、後家さんだから嫌だってのは聞けねえな」

 

千代「ばってんうちなんかもらってもらわんでも、もっと若くてよかお人が…」

朝男「いねえよ、そんなものは」

千代「天海さん…」

朝男「そりゃあな、おめえさんだって好きで後家さんになったわけじゃねえだろ。そりゃあ死んだ亭主に義理立てする気持ちは分かるけどよ」

千代「やめてつかあっせ!」

 

朝男「お千代さん」

千代「うちはマリ子お嬢様と一緒にあん人を待つと誓い合った身です」

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何度かこの話は出てきたけど、お千代ねえやはマリ子の話をどう受け取っていいか分からないように思ってるんじゃないかと思ってた。

 

朝男「それも知ってるよ。新八郎さんのインパールはまだ遺骨収集もできずに生死の程もはっきりしてねえ。けどな、おめえさんのご亭主は戦死するところをはっきりと見たっていう人もいるんだから。なっ? 大和田高男ってのはいいやつだよ。おめえさんが忘れられない気持ちは、よ~く分かるけどな、けどな、よ~く聞いてくれよ。今の日本は何もねえところから始めなきゃいけねえ時代なんだよ。後家さんだからといって、もう一度、嫁さんになっちゃいけねえって法はねえんだ。それにな、こんなこと言っちゃ何だが、おめえさんと俺とが一緒になったら一番安心してくれるのは、あいつだぜ」

千代「…」

朝男「ハッ! な~にヤキモチなんか焼くもんか」

千代、顔を覆って泣き出す。

朝男「草葉の陰からおめえさんのことを一番心配してんだから。のう? ハハハハッ! やつと違ってちょいとこの荒っぽい亭主だがな、決して粗末にはしねえよ。いいな? 俺はな、マラリアの看病をしてもらった、あの時から女房にもらうなら、この女、そう決めたんだい」

 

いいですね。女ならこんなプロポーズを受けてうんと言わない方がどうかしています。

 

天海朝男、満面笑顔の結婚写真。お千代ねえやもにっこり微笑む。

 

だからどうかしていない証拠に、お千代ねえやはマリ子たちの祝福を受け、敢然と天海さんの胸に飛び込んでいきました。

 

はる「まあ、本当にいいお写真ですこと」

 

磯野家茶の間。タマが持参した結婚写真を見ている。

タマ「おかげさんでって言いたいんですけどね、まあ2人ともうれしそうに、まあ歯をむき出すほど笑っちゃってさ、こんな記念写真みっともなくてお配りもできませんよ」

マリ子「あら、歯なんかむき出してませんわよ。まあ、もう少しっていう際どさはあるけど」

タマ「そうですか?」

 

マチ子「ううん、うれしい時にうれしい顔をするのが一番の正直でしょう? 私は大賛成よ。こんな正直な写真、今までに一度も見たことない」

ヨウ子「本当に」

マリ子「でも見てよ。この笑顔の自信に満ちていること。どんなことでもドンと2人で力を合わせていくぞって、そんな感じを私はこの写真から受けるわ」

タマ「そういえばそうですよね。でもやっぱり…うれしさ、むき出しだね~」といいながらも笑顔。

 

さて、その自信に満ちた夫婦が最初に磯野家へ持ち込んだのはウラマドきょうだいのことでした。

 

朝男「じゃあ、マリ子さん、すまねえがじかに話を聞いてやってください」

マリ子「ええ、もちろんですとも」

マリ子は朝男に伴われて磯野家からウラマド姉妹宅へ。

 

ウララ「まあ嫌ですわ。あなた、そんなことをマリ子さんのお耳にお入れになったんですか?」

朝男「そいつはしょうがねえよ。だってさ、俺一人の頭で考えたところで、らちの明く問題じゃねえし、それに俺のかかあが言うにはね…」

マドカ「あら、かかあってもしや、お千代さんのこと?」

朝男「ええ…へヘヘヘッ、そのまあかかあが言うには、まあその『下手な考え休むに似たり』と。それにマリ子さん、ちょうどこの『サザエさん』の2巻目の売れ行きがいいんでホッとなさったところだから、今ならきっと相談に乗ってくれるだろうって、お千代の野郎が申しますんでね。へえ」

マリ子「そうですとも。おば様方にはいろいろお世話になったんですもの。こういう時にお力になれないでどうしましょう」

 

朝男「ほら見なせえ。この屋敷をお売りになるんなら変なブローカーのね、口車なんかに乗らねえで、あっしはね、磯野さんに買ってもらうのが一番だ、そう思ってたんだから」

ウララ「そんなことおっしゃったって…。マリ子さんの方のご都合もおありでしょうし…」

朝男「だからさ、それは話し合いだよ。なっ、マリ子さん?」

 

マリ子「ええ。それでこのおうちをお売りになるご意思はおありですの?」

マドカ「…」

ウララ「意思というより必要に迫られてるっていう方が正しいでしょうね」

マリ子「おば様…」

ウララ「戦争さえなかったら、きょうだい一緒につましく暮らしてればなんとかなるはずだったんですけど近頃の物価ではもうその計算が狂いっ放しでございましょう」

 

マリ子「それでもしこのおうちをお売りになったとして、その後の計算はどのようになっていらっしゃいますの?」

ウララ「ああ、そのことなら大丈夫ですわ。ねっ、マドカさん?」

マドカ「はい、大丈夫ですわ」

マリ子「?」

 

マドカ「有料ホームっていうのをご存じ?」

マリ子「有料ホーム? いいえ」

マドカ「そう。有料老人ホームって言うべきかしら。ヨーロッパではね、年金で暮らしていらっしゃるお年寄りたちがご自分の財産を寄付し合って、そしてそのお金を上手に運用しながら、お仲間同士老後を楽しく生きていこうっていう方々がいらっしゃいますの」

マリ子「まあ」

 

ウララ「ですからね、私たちはそれを日本で始めてみようと思ってますのよ」

マドカ「幸いね、同じ考えのお友達がいらっしゃいますの。それでね、ホームの候補地は湯河原でございますのよ。将来はあそこへ温泉を引いたりミカン畑を作ったりなんかしようなんて夢はこんなに広がっておりますの」

マリ子「まあ、それはすてきな夢ですこと」

この時代にはものすごく先進的な考えだよねー。

 

磯野家

はる「本当になんてすてきな夢なんでしょうね。私も一口乗せていただこうかしら」

マリ子「えっ?」

はる「まず第一にあちらの言い値であのお宅を買い取らせていただきましょうよ」

マリ子「それは私もそうしたいのですけど…」

はる「お金だったら借りたらいいでしょう?」

マリ子「今度はどこからですか?」

 

はる「それはあなたの才覚次第ですよ。この家を抵当に入れて借りてもよし。そして、『サザエさん』の第3巻目を出版なさい」

マリ子「3巻目!?」

はる「『続・サザエさん』があるではありませんか」

マリ子「でも…」

はる「『でも』という言葉は嫌いですよ」

マリ子「でも~…」

 

はる「いいえ。そのお金で社会のために…いいえ、殊にお年寄りのために役立てることが今のあなたの道だと私は思いますよ」

マリ子「分かりました。できるだけやります。でも私はいつ挿絵に戻れるんでしょうか?」

はる「決むるは神にあり」

マリ子「はい…」

 

というわけでマリ子はまたまた出版業から足を洗うことはできそうにありません。

 

ベージュのスーツで塚田が磯野家へ。マリ子マチ子が並んで話を聞く。

マリ子「陽談社から『サザエさん』をですか?」

塚田「ああ。昨日、原稿を取りに伺った井関からの話なんだがね、あんたたちが3巻目出すって、あの話な」

マリ子「はい」

塚田「まあ1巻目はともかくとして2巻目はようやったよ。金は貸したが半分は諦めとった」

マリ子「あの節は本当にご無理を申し上げました。ご恩は一生忘れません」

 

塚田「いやいや、んなことはいいんだ。本当に出版ってのは水物だったろ?」

マリ子「はい、それはよ~く肝に銘じました」

塚田「だから以後は私んとこに任したらどうかって話なんだが。まあ、陽談社っていえば業界でも名が通ってるし、宣伝も大々的にやるし、部数も今までの10倍ぐらいには伸ばしてやれるかもしれんぞ」

マリ子「10倍ですか!?」

塚田「ああ。鬼の塚田が責任を持って保証する」

マチ子「そうすると姉妹出版はどうなるんですか?」

 

塚田「解散したらいいじゃないか。マー姉ちゃんは本業の挿絵に戻ればいいんだ」

マリ子「なるほど」

マチ子「マー姉ちゃん、悪くないお話じゃないの」

マリ子「そうよね」

玄関で塚田を送り出すマリ子とマチ子。

 

マリ子は元の客間に戻ってマチ子に座るように言う。

マチ子「改まって何よ?」

マリ子「今の話、いいお話には違いないんだけどちょっと気になるのよね」

マチ子「何が?」

マリ子「私はやっぱり姉妹出版は残しておいた方がいいっていう感じがするの」

マチ子「どうして?」

 

マチ子「陽談社がやってくれるっていうんだったら姉妹出版みたいな面倒なもの残しておくことないじゃないの」

マリ子「それはそうかもしれないけど、塚田さんのお話を聞いてるうちに一つ引っ掛かってきたのよ、私。例えば、マチ子が気に入っていて私も大好きな作品があったとするでしょう。どこの出版社でも出してくれないけど、これだけはどうしても発表したいっていう時、マチ子どうする?」

マチ子「どうするって…」

 

マリ子「だからその時のために姉妹出版は残しておいた方がいいと思わない? ううん、それが自費出版の心細さだけど同時に絶対の強みなのよ。でしょう?」

マチ子「でもそんなことをしたらマー姉ちゃん、足洗うどころか本当の出版屋になっちゃうわよ」

マリ子「だからそれは気にしなくてもよろしい」

マチ子「そんなバカな…」

マリ子「どうして?」

 

マチ子「だってよ、初めに油があって次が挿絵。それも児童物に転向されられて今度は出版屋さんじゃあ、マー姉ちゃんの道は一体どこにあるのよ?」

マリ子「でもね、意外と気に入ってるの、今の仕事」

マチ子「うそ! 借金返したら早々に足を洗いたいって言ってたくせに」

マリ子「本当だってば! 油も挿絵もいいけど男の人たちと丁々発止やり合うとじゃんじゃんとファイトが湧いてきちゃうのよ! 勘と度胸と粘りでどちらが勝つかすっごくスリルがあるんだから!」

マチ子「ふ~ん…」

 

マリ子「大丈夫。そりゃあ陽談社は確かに10倍の部数を出してくれるかもしれないけど、お金じゃないのよね。要は磯野マチ子の作品が最大に生かされなければ困るのよ。よそじゃあ紙や体裁はいちいち文句はつけられないし、となるととことん納得のいく本を出すには、やっぱり姉妹出版以外にはないと私は確信するわ! うん!」

マチ子「そうか…」

マリ子「潰れてもともと。潰しても文句を言わないでいてくれたらもうしばらく姉妹出版をやらせてよ。やめるのはいつだってやめられるんですもの。ただ楽するためだけには今やめる時じゃないと思うの」

 

姉妹出版存続はこれで決まりました。

 

漫画家の親族が出版社やってるなんて他にあるのかなー? 「ゲゲゲの女房」に出てきた戌井さんが夫婦でやってた小さな出版社は本当に小さな規模の自費出版だし、規模が違い過ぎるな。何となく終わりが見えてきたとはいえ、毎日毎日3つくらいの話題が展開していて濃い。