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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (125)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

振袖のヨウ子(早川里美)を囲み、近所のウララ(楠田薫)たちが綺麗だと褒めそやす昭和22年、正月。新年の挨拶にきた朝男(前田吟)や大宗(渡辺篤史)とともに、皆で正月を迎えることのありがたみを噛みしめる。そんな時、塚田が本の増刷を提案していたと話す大宗。それを聞いたはる(藤田弓子)は、マリ子に再販するように命じる。だが、紙屋の森田(大塚周夫)はインフレにより、前と同じ金額では受けられないと言い…。

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昭和22年 正月

さて、昭和22年の輝かしき幕開きです。

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一部抜粋:「幕が開く」の名詞形としては「幕開き」が本来の形です。以前は放送でも「幕開き」だけを使っていました。

 

磯野家

朝男とはるが新年のあいさつを交わす。晴れ着姿のマリ子とマチ子がお重を持って来た。「ほんのちょっと挨拶回りで寄っただけなんだからさ」と遠慮する朝男に、「仰々しいのは入れ物だけで、当節、中身はかき集めの間に合わせただけですから」と返すマチ子。

 

朝男「何だ、何だ、安心するやらがっかりさせられるやらだな」

マリ子「そうよ、夢がなくなるじゃありませんか」

マチ子「夢ですって? はあ~…。マー姉ちゃんがそんなロマンチストだとは思わなかったわ」

マリ子「いいじゃないの、お正月なんですもの。今年こそは、よりすばらしい年でありますようにと夢だけは両腕いっぱい抱え込んでるんですもの」

朝男「うん、そうだね、本当。まあ、女は愛きょうだが、マー姉ちゃんの場合は女は度胸といって、まあ、今年もみんな元気で、ねっ? いい年にしようや」

マチ子「よし来た!」

はるからお屠蘇をもらう朝男。

 

玄関先では、日本髪で晴れ着姿のヨウ子がウラマド姉妹とタマとお千代ねえやに囲まれていた。

ウララ「まあ、本当になんておきれいなんでしょう。ねえ、ちょっとそっち側を見せていただけませんこと」

マドカ「いいわ、いいわ。まあ、どこから拝見してもまるでお花のようよ!」

 

ヨウ子ちゃんは本当に日本髪が似合う。最初に登場した時の変なカツラよりよほどいい。

 

タマ「まあ、それにしてもお振り袖っていうのは本当に豪華でいいわよね。まるでね、お芝居に出てくる八重垣姫みたいですわよ」

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この時代の人だから歌舞伎や浄瑠璃が身近にあったのか、脚本家の人だからお芝居が好きなのか。

 

千代「あん奥様のことですから、どげんお品でも欲しいとおっしゃる方にはどんどん差し上げたり、お米に換えてしまわれたとですけど、これだけは茶箱の底に反物で残っておったとですよ」

マドカ「まあ、うれしいこと! まるで目が洗われるよう!」

ウララ「本当。これでやっと戦争が終わったんだなって実感ですわよ、ヨウ子さん」

ヨウ子「そうですか?」

 

タマ「そうですとも。ねえ、私と一緒に町内をね一回りしてくれませんか?」

マドカ「あら、それでしたら私どももお供いたしますわよ」

ウララ「だったら駅前まで参りましょうよ」

マドカ「そうですとも、そうですとも! 私たち3人だけで拝見するのじゃもったいないわ!」

 

タマ「そんならね、私がこう手を取って…」

ヨウ子「あの、でも…」

千代「よろしゅうございます、お嬢様、行ってらっしゃいませ。奥様にはこのお千代がちゃんとご報告しておきますけん」

 

タマ「そんならね、気の変わらないうちにさ、ねっねっねっ?」

ウララ「わっしょい、わっしょい!」

マドカ「お姉様、それじゃあお祭りのおみこしみたいじゃございませんの」

ウララ「いいじゃありませんか。お正月とお祭りが一緒に来たと思えば」

タマ「まあ、たまにはいいこと言いますね、おねえさんも」

 

わっしょいわっしょいと騒いでるところに均ちゃん登場。

均「ちょっと待った! ヨウ子ちゃん! どこのお姫様かと思ったらヨウ子ちゃんじゃないの」

今日は茶色のドングリみたいな帽子をかぶっている。黒い外套と中は白い袴。友達からカメラを借りてきたと取り出すが、ウラマド姉妹やタマに邪険にされる。

均「総攻撃ですね~、困りますね~」

 

マチ子が玄関から出てきた。「やっぱり先輩だったんですね。どうも似たような声だと思ったら」

均「マッちゃん助けてくれよ。どうもね、僕は招かれざる客のようだな」

マチ子「そんなことないわよ、お正月ですもの。さあ、どうぞ、お入りになって。相棒も既にご到着です」

均「相棒…天海? 早いな~」

 

磯野家

朝男「しかし何だな…。こうしてみんなで正月が祝えるのが当たり前のようでもあり、二度とできなかったような気もするし…。こうやって生きて帰って本当によかったと思うよ」

均「そうなんだよな。内地勤務の俺だって今度の戦争には絶対生きて帰れないと思った。まして、君みたいに南の海に押し出していったんならなおのことだ。その気持ちはよく分かるぞ」

朝男「『命あっての物種』ってやつだな」

均「そうだ」

 

マリ子「でも、私は死なないと思ってた」

朝男「えっ?」

マリ子「ううん、絶対生き残るって思ってましたよ」

均「しっかりしてるんだな~、やっぱりマリ子さん」

マチ子「そうよ。だって死んでしまったら何もかもおしまいじゃありませんか。生きていなければいけなかったのよ、私たちは」

 

均「そうなんだよ。東郷君もね、絶対、帰ってこなければいけなかったんだ!」

朝男「おい」

マリ子「いいえ、必ず帰ってきますとも。私はそう約束したってそう言ったでしょう?」

均「そ…そうだった…そうだったですね」

朝男「いやいや、ごめんごめん。俺はついついうれしいあまり湿っぽい話になっちゃって…。奥さん、どうもすいません」

はるにお酌してもらう朝男と均ちゃん。

 

マチ子「景気よくいきましょうよ、景気よくパ~ッと!」

マリ子「そうよ。何て言ったってお正月なんですもの!」

均「そうそう! 正月…。そういえば思い出しましたよ、景気のいい話を。陽談社の塚田さんがね、こう言ってましたよ」

マチ子「あら、私、あの年内に納める原稿だったらちゃんと納めましたわよ」

 

均「いや、そうじゃなくてね『サザエさん』の話なんだ」

マリ子「ええ」

均「あの本がね、全部売り切れたと言ったら、よし、それじゃあ早速増刷しようじゃないかってことになってね」

マリ子「増刷?」

均「再版ですよ。2万部売れたんならこれはさい先がいいやと。ねっ? 思い切ってド~ンと押そうとそういうことになった」

www.lowcost-print.com

再版と再販は違うんだ! あらすじは”再販”。字幕は”再版”。

再版…厳密には内容を修正して版を作り直す

再販…在庫切れになっていた冊子を再び販売する

 

マリ子「でも…」

朝男「いや、俺はその出版ってことはよく分からねえけど何か景気のいい話じゃないか」

均「そうなんだよ」

朝男「マー姉ちゃん、ドカンといこうじゃねえか」

マリ子「ええ…」

 

朝男「ええ? 攻撃は最大の防御ってね、そういう言葉なら俺だって知ってんだ。『こいつは春から縁起がいいわえ』」

均「いよっ、天海屋!」

はる「まあ、そのせりふ『三人吉三』でしたわね」

peachredrum.hateblo.jp

純ちゃんの応援歌」で小平治さんも披露してましたが、元ネタが分からなかった。

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朝男「そうそうそう。『三人吉三』ならぬ『三人姉妹』だ。こいつはその姉妹出版の新年の一番の打ち上げ花火だ」

はる「まあ、打ち上げ花火だなんて何年ぶりに聞いた言葉かしら」

マチ子「本当」

はる「そうですよ、マリ子。ドカ~ンといきましょう」

マチ子「はい?」

はる「ただちに『サザエさん』を再版するのです」

マリ子「ええ~!?」

 

朝男「何だい何だい、がっぽりもうけてるくせにさ、情けねえ声出しちゃってよ」

マリ子「でも…」

均「そうですよ。俺がついてんだからね、何にも遠慮することありません。ド~ンと打ち上げましょう」

マリ子「いや、別に遠慮してるわけじゃないんですけど」

はる「そうですよ、遠慮することはありません。『乗り掛かった船』ですよ」

マリ子「『乗り掛かった船』…そうですよね」

マチ子「マー姉ちゃん…」

 

マリ子「大丈夫! そうよ、こういうご時世だからこそ世の中にドカ~ンと笑いを送り届けなければいけないのよ! うん、私、やってみる!」

朝男「(扇子を広げる)決まった! よっ! フレー、フレー…!」

朝男・均「マー姉ちゃん! 頑張れ、頑張れ、マー姉ちゃん! フレー、フレー、マー姉ちゃん!」

マリ子親衛隊だね。

 

ドカ~ンと景気のいいことはいいには違いありませんが、この辺がどうも大胆不敵というか怖いもの知らずと申しましょうか…。

 

均が玄関先で撮影。「いきますよ~。にっこり笑って1,2,3!」

上段左から、お千代ねえや、マチ子、タマ、ウララ、マドカ

下段左からマリ子、ヨウ子、はる

 

ともあれ、このお正月気分が抜けたところで、早速マリ子の行動が開始されました。

 

昭栄洋紙店

森田「するとあとどのくらい?」

マリ子「はい、やはりあと2万部お願いしようかと」

森田「ハハハッ、強気ですな~」

マリ子「フフフッ、おかげさまで」

森田「しかし、どうも出ばなをくじくようで申し訳ないんですがね…」

 

マリ子「はい、何でしょう?」

森田「何しろこのインフレで前の値段ではお引き受けできないんですよ」

マリ子「まあ、どうしましょう」

森田「いや、しかし資金さえ確保していただければ。お宅だって、その分定価を上げればいいんですから」

マリ子「そうか、そうですよね」

 

森田「ハハハハッ、そうですとも。原価が上がれば単価が上がる。これは当然なんですから」

マリ子「なるほど。インフレっていうのはそういう仕組みになってたんですか」

森田「えっ?」

マリ子「いえ、構いません。要はインフレに負けなければいいんですから」

森田「その意気でしょうな」

マリ子「はい、どうもありがとうございました。それではとりあえずあと2万部お願いいたします。今日は5万円用意してまいりましたので、これは紙の手付金にお願いいたします」

風呂敷から出てきた札束に森田、驚く。

 

磯野家

マチ子「な~るほど。インフレっていうのはつまり悪循環っていうことなのね」

はる「構いまっしぇん。『目には目を』です」

マリ子「えっ?」

はる「そう御言葉にもあるではありまっしぇんか」

マリ子「でも何だかどぎつい感じ」

 

はる「だからというて、ここで負けてしまっては何もならないじゃありませんか」

マチ子「あら、お母様、いつから勝負師におなりなの?」

はる「でも定価を上げれば、それだけ教会への献金も余計になるということでしょう?」

マチ子「お母様…そのためにマー姉ちゃんに出版をやりなさいっておっしゃったんですか?」

 

はる「いいえ。そのためだけということはありませんよ。でも、もうかるということは、それだけ皆さんのおかげがあってこそのことでしょう? だからその感謝の気持ちとして教会へ献金するのは当たり前のことではありまっしぇんか」

ヨウ子「でも、定価を上げるということは物価が上がるということですから、献金なさるお金が多くなっても値打ちは前と同じではないかしら」

 

マリ子「そうか…そういえば、そうよね」

千代「はあ~…まあ、やっぱりヨウ子お嬢様、おつむがよろしかとですね」

ヨウ子「ううん。むしろそれに気付かない方がおかしいんじゃないの?」

ヨウ子以外、何とも言えない表情。

はる「そう言われれば、そんな気も…」

 

電話が鳴る。

マチ子「あっ、原稿の催促だ! やだな~、やだな~…」

ヨウ子が電話に向かった。

 

いやはや、こんな金銭感覚で戦後のすさまじい時代を本当に乗り切っていかれるのでしょうか?

 

マチ子は自室で慌てて原稿に向かう。

ヨウ子「やっぱりそうでした。陽文社からの催促よ」

マチ子「分かった、分かった。悪いけどね、お茶とスルメ」

ヨウ子「またですか?」

マチ子「そうよ、またですよ」

ヨウ子「はい」

 

マチ子「え~、陽文社、陽文社…」

窓の前に締め切り一覧。5枚くらいあったけど上の方は見えない。

 

なかよし出版

〆切

一月二十四日

 

陽文社

〆切

一月十九日

 

藝術界

二月七日

 

マチ子「あら? 何よ。陽文社の締め切りあさってじゃない! もう!」

マチ子は陽文社の紙をはがす。昭和22年1月17日は金曜日。日曜日が締め切り!?

 

台所

スルメを焼いている。

マリ子「男女同権なんだもの。こんなものかじらないでさっそうとタバコでも吸えばいいのよ」

 

昭和だな~。放送されてたのは昭和の終わりの54年でもやっぱりまだまだ喫煙率は高かった時代だね。その少し後でも電車の中に灰皿とかあったし、小学校の先生が教室でタバコを吸っていた。

 

千代「ばってん、うちはまあ胃でも悪うなさらんかと、それが心配で」

マリ子「それにしても悪い趣味だわ、もう…」

 

ウラマド姉妹は開け放った窓から外に顔を乗り出していた。

マドカ「おお~、このお匂い…」

ウララ「またマチ子さんの筆に馬力がかかったサインだわ」

マドカ「なんてすばらしい匂い…いえ、サインでありましょう…」

 

磯野家に手紙が届いた。

 

手紙は新八郎の母からでした。

貴美の手紙

「というわけで新年早々に到着しました『サザエさん』のご本、まず新八郎の前に置き、これはマリ子さんがお作りになったものですよと報告したあとに主人ともどもに読ませていただきました。時にはあまりの楽しさに涙をこぼして拝読しながら、これを作るにはなれないお仕事ゆえどのようにご心労あったかとご苦労のほどをしのんだ次第でございます。どうぞ、皆々様、くれぐれも御身ご大切のこととますますのご精進をお祈り申し上げます」

 

はる「まあ、いつものことながらお優しいお心ね」

マリ子「それじゃあ、お母様、心を込めてお礼状をお願いできません?」

はる「私が?」

マリ子「だって私には再版の2万部を完成させる大仕事が控えてるんですもの。ご協力をお願いいたします。もうかったら献金なさりたいんでしょう、そのお金」

はる「ええ、それはそうですけど。でもね…」

 

テーブルの上のスルメをかじるはるとつられてマリ子も手に取る。

マリ子「はあ~、でもよかった。あのお手紙は謹厳なお義父様からの合格通知のようなものだわ。接待の要領も分かったし、これから張り切らなくっちゃ!」

 

マチ子「スルメまだですか!?」

マリ子「えっ!?」

はる「マリ子ったら…」

マリ子「まあ、お母様だって!」笑い

そのままスルメを食べ続ける。

 

ともあれ新年早々、磯野家が活気づいてることには間違いありませんでした。

 

手紙を家族で共有するのはどうかと。東郷家宛の手紙はみーんなはるが書いてるのかな?