NHK 1987年8月4日(火)
あらすじ
父・俊道(佐藤慶)に言われて、大きい病院であらためて診察してもらうと、加津子(椎野愛)は、「結核性股関節炎」と診断される。下手をしたら命にかかわる病気、と言われた要(世良公則)はリュウマチと言った病院を訴えると激昂し、蝶子(古村比呂)に窘められる。泰輔(前田吟)も連平(春風亭小朝)も病院にかけつけて、蝶子を励ます。蝶子は俊道に電話で報告し、俊道はみさ(由紀さおり)に、教会に行って祈ってこいと言う。
2025.8.12 NHKBS録画
脚本:金子成人
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音楽:坂田晃一
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語り:西田敏行
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岩崎蝶子:古村比呂…字幕黄色
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岩崎要:世良公則
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北山みさ:由紀さおり
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野々村富子:佐藤オリエ
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国松連平:春風亭小朝
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中山音吉:片岡鶴太郎
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田所邦子:宮崎萬純
岩崎加津子:椎野愛
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黒木医師:大門正明
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増田たま:もたいまさこ
中山はる:曽川留三子
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横山里子:吉田やすこ
岩崎雅紀(まさのり):河野純平
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早川プロ
劇団いろは
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野々村泰輔:前田吟
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北山俊道:佐藤慶
<チョッちゃんは父・俊道さんの忠告を聞いて、大きな病院で診察してもらうことにしたのです>
診察室前で待っている富子。「遅いね」
うなずく蝶子。「(小声で)座ろう」診察室前のベンチに腰掛けようとしたが…
診察室から看護師が顔を出す。
たま「岩崎さん」
蝶子「はい!」
たま「中へ」
蝶子「はい。(富子に)マーちゃんたち見てて」
診察室
たま「お掛けください」
蝶子「失礼します」椅子に掛ける。
黒木「岩崎さん」
蝶子「はい」
黒木「お嬢さんですが、すぐに入院させてください。今日、このまま」
蝶子「入院ですか?」
黒木「はい」
蝶子「よくない病気なんですか?」
黒木「結核性股関節炎です」
蝶子「!」
黒木「結核菌が関節に入り込む危険な病気です。入院、いいですね?」
蝶子「…お願いします」
黒木「それじゃ、手続きの方」
たま「はい。じゃ、こちらへ」
蝶子「…はい!」
黒木先生は、この間まで「ポニーテールはふり向かない」で最低の下衆男・矢崎を演じていた大門正明さんだ! 矢崎ぃ~!
もたいまさこさんは昔から変わらない。「やっぱり猫が好き」は1988年から。
診察室から出た蝶子は富子に近づく。
富子「チョッちゃん?」
蝶子「すぐ入院だって」
富子「チョッちゃん!」
蝶子「ん?」
富子「私、どうしたらいい?」
蝶子「マーちゃんたちを洗足の方に。今日、安乃ちゃんお休みだから、要さん帰るまで待ってて。要さん、そんなに遅くならないと思うから」
富子「うん、分かった。私は、あの、うちの人んとこ連絡して、え~と…分かったよ」
蝶子「お願い」
富子が廊下を歩いていく。
たま「じゃ」
蝶子「は、はい!」
病室に入ってきた要。
蝶子「要さん!」
<加津子ちゃんは、その日、入院したのです>
ベッドで寝ている加津子の汗を拭く蝶子。「注射のあと、眠ってるの」
要「ああ、そうか」
蝶子「話は?」
要「ああ、おばさんにね。結核性、何とかだって?」
蝶子「股関節炎。滝川に電話した時、父さんに『ちゃんと調べろ』って言われた、すぐあとだったの」
うなずく要。
ノック
蝶子「はい」
看護師が2人入って来た。
たま「先生がお二人にお話があるそうです」
顔を見合わせる蝶子と要。
里子「あ、お嬢さまには私がついておりますので」
要「あ、では。行こう」部屋を出ていく。
里子という若い看護師さんは「3年B組金八先生」第2シリーズの石川祐子役の吉田康子さんだったのか。旧ツイッター見なければ分からなかったな~。当時リアル中3なら古村比呂さんと同い年かも。peachredrum.hateblo.jp
診察室
黒木「黒木です」
要「岩崎です」
黒木「バイオリンの岩崎さんだそうで」
要「あ、はあ」
黒木「さっき、書類見た時にそうじゃないかなぁと」
要「どうも」
黒木「…それで、お嬢さんですが、結核菌が関節に入り込む危険な病気なんです。まあ、今後の検査を見ないと詳しいことは言えませんが、かなり進んでいます。もう少し早く来ていただけたらねえ。とにかく結核ですからね。下手すると命にかかわるんですよ」
並んで座り、話を聞いていた要と蝶子。
要「(蝶子に)どうしてもっと早く診せなかったんだよ」
蝶子「(要に)『馬島(まじま)先生のとこに行った』って言ったでしょ?」
要「どうしてあんなとこに行ったんだ!?」
蝶子「だって…」
要「あそこじゃ、あれだろ。『リューマチ』だって言ったんだろ」
うなずく蝶子。
要「診断を間違えてるんじゃないか!」
黒木「岩崎さん」
要「野郎、ぶん殴ってやる!」立ち上がる。
蝶子「やめて!」立ち上がって止める。
要「どきなさい! 手遅れになって加津子に万が一のことがあったらどうするんだ!?」
黒木「手遅れとは申しておりません!」
要「診断を間違えたこと自体、許せん!」
黒木「この病気は『慢性関節リューマチ』と間違えやすいんです」
蝶子「そうなんだって、うん!」
要「それで済むのか!」
たま「静かになさい!」
要「やっぱり行ってくる!」
蝶子「やめて!」
たま「旦那さん、落ち着いて!」
要「どきなさい!」
黒木「我々も全力を尽くしますから」
要「当たり前だよ!」
蝶子「要さん!」要の頬をビンタ!「当たり前とは何よ! 先生に謝りなさい!」
黒木「いや~、奥さん」
蝶子「馬島先生のとこにどなり込んでいったって、加津子の病気がよくなるわけじゃないでしょ? そんなことも分からないの!?」要の両腕を押さえて、壁に押し付ける。「あなたがうろたえてどうするの? しっかりしないでどうするの!? 先生が『全力を尽くす』とおっしゃったんじゃない。お願いするしかないじゃないの! 演奏会も近いのよ。こんなことじゃ、練習も満足にできないで周りに迷惑かけるんじゃないの? そういうの一番、嫌いなはずよね?」
たま「うん、奥さんの言うとおりよ。ね、旦那さん」
うなずく要。
黒木医師の方へ向き直る蝶子。「申し訳ありませんでした」
黒木「…いや」
昭和のドラマはビンタが多いね。そして、だんだん女性から男性へのビンタも増える。
診察室を出た蝶子と要。
泰輔「チョッちゃん! 大変だったな」
蝶子「…ありがとう」
連平「どうなの?」
要「…危ない病気らしいよ。下手したら命にかかわるって」
泰輔「フフッ、ウソだろ、え?」
要「…そう思いたいです」
連平「大丈夫! 大丈夫だって!」
黒木医師が診察室から出てきて、蝶子たちの脇を通り過ぎる。
泰輔「(蝶子に)先生か?」
うなずく蝶子。
泰輔「先生! 私、親戚の者で野々村っていいます」
黒木「はい」
泰輔「加津子ってのは、私ら夫婦にとっても娘みたいなもんでしてね…ですから、加津子に万が一のことがあったら承知しませんよ!」
黒木「分かりました」
そうだそうだ、大門正明さんと前田吟さんは「マー姉ちゃん」で共演してた。お千代ねえやと縁ある2人。
連平「先生、なかなか頼れそうな先生じゃないですか」
泰輔「うん」
連平「ねえ? ね!」
うなずく蝶子。
連平「マーちゃんたちは?」
蝶子「叔母さんが、うちで見ててくれてるの」
連平「そう」
蝶子「要さん、私、今夜から加津(かっ)ちゃんに付き添うから」
要「じゃ、俺も」
蝶子「付き添いで病室に泊まれるのは1人だけだって」
要「…うん、しかし」
蝶子「要さんは帰って…私、大丈夫だから。演奏会近いんだし、ゆっくり休まないと」
要「でも…」
蝶子「そうして」
要には下の子たちのことは頭から抜けてるのかー!?
病室
加津子についていた里子に頭を下げる蝶子。「ありがとうございます」
里子「…じゃあ」
ベッドで寝ている加津子の寝顔を見る蝶子。
岩崎家茶の間
はる「お握り作っときましたから」
富子「どうもすいません」俊継にご飯を食べさせている。
昨日、加津子と遊んでいたのは俊ちゃんだったのね。マーちゃんが坊主頭になったのだと思ってた。
はる「いいえ。おしんこが来ないなあ。何してたんだよ!」
音吉「いや~、久しぶりにぬかみその中、手、突っ込んだら、いろいろ入ってやがってよ、どれにしようか迷っちゃって」
はる「本当にもう!」台所にざるに乗った漬物を運ぶ。
茶の間
音吉「マーちゃん、俊ちゃん、食べてるか? 食べてるか。よ~し、えらいぞ」
富子「今日はすいません」
音吉「やあ~、そんなこと言いっこなしです。ねえ、こちらさんとは隣同士だもん。お互いさまですよ」
富子「ありがとう」
音吉「(雅紀に)こぼさないで食べろよ。うめえか?」
玄関の戸が開く音
富子「誰だい?」
泰輔「帰ったぞ!」
音吉「お帰りなさい」
はる「お帰りなさい」
泰輔「さあさあさあ」
要「やあ」
富子「中山さんにすっかりお世話になっちゃって」
要「それはすいませんでした」
音吉「いや~、そんないいってこと」
はる「奥さんは?」
要「うん、いや、今夜は病院の方へ」
泰輔「うん」
音吉「加津ちゃん、どういうふう?」
要「う~ん」
泰輔「ハハハッ、大丈夫、大丈夫! 大丈夫だって、な! ヘヘヘヘッ」
富子「あ、ごはんは?」
連平「まだなんですよ」
はる「お握りあります」
泰輔「そいつは、ありがたいね! じゃ、食べましょ、食べましょ!」
病院の事務室から電話する蝶子。「父さん、うん、昨日、入院したんだ。そう、結核性股関節炎…うん。とりあえず報告だけ…したら」受話器を置く。「ありがとうございました」
職員「いいえ」
もう一度頭を下げて事務室から出た蝶子。
邦子「チョッちゃん」花束を持ってやってきた。
蝶子「邦ちゃん」
邦子「連平さんに聞いたんだ」
蝶子「うん」
邦子「大丈夫だ、チョッちゃん!」
蝶子「うん」
邦子「大丈夫だ!」
蝶子「うん…」親友に逢えて、涙ぐむ。
北山医院診察室
みさ「お父さん。加津子ちゃんの病気は、あれかい? 本当に命にかかわるもんなんかい?」
俊道「手遅れの場合は、あるいは、ということだ。それは何にしてもそうだ。盲腸にしろ、風邪にしろ、手遅れの場合は命にかかわる」
みさ「加津子ちゃんは、どうなんさ?」
俊道「ワシに分かるか!」
みさ「…」
俊道「お前、すぐ教会へ行け。ワシはクリスチャンでないから祈っても通じるわけないが、お前ならいいべ。教会行って祈ったらいい」
みさ「…はい、じゃあ」
休憩室のベンチに座っている要。
ドアが開く音がし、トランペットを持った坂上が入って来た。「おい、岩崎!」
要「ああ」
坂上「音も間も随分外してたな。珍しく」
要「そうか」
坂上「おい! どうしたんだ?」
病室
眠っている加津子の汗を拭き、うちわであおぐ蝶子。
病院の庭にはヒマワリが咲いている。
診察室
黒木「調べてみましたが、お嬢さんには、ほかの臓器に結核はないと思われます。命に別状はないでしょう」
笑顔になる蝶子と要。
黒木「今後はギプスをつけて、引き続き、入院加療となります。薬を服用すると同時に栄養のあるものをとらなければいけません」
蝶子「あの入院は、どのくらい?」
黒木「なかなかやっかいな病気でしてね、ま、1か月で済むか、ふたつきかかるか、気長に辛抱してください」
加津子の病室
蝶子「要さんには不自由かけると思うけど」
加津子をうちわであおぐ要。「うん? 気にするな」
蝶子「食事とか洗濯とか子供たちのこと」
要「…安乃ちゃんが一日置きに来てくれるんだし」
蝶子「来ない日もあるのよ」
要「中山さんがね、『面倒見る』なんてことも言ってくれてるし、大丈夫だ」
蝶子「すみません」
要「だから、お前は気にするな」
蝶子「はい」
夜、岩崎家
雅紀「お母ちゃん、お母ちゃん!」
要「あのね、お母ちゃんいないんだよ」
雅紀「お母ちゃん!」
要「いないんだってば!」
要の大声に俊継も泣きだす。
要「もう~、よしよしよし!」
雅紀「お母ちゃん! お母ちゃん!」
要「だから、いないんだってば!」
病室
「ブラームスの子守歌」をハミングする蝶子。
<病人の看病はこれからが大変なんですよね。でも、頑張るんだよ、チョッちゃん>(つづく)
子供の入院に大の男の面倒も気にしなきゃならないなんてね…かと言って、加津子の付添なんてできるわけないし。新しい登場人物が出てきたけど、今日は矢崎に持ってかれた~。

