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【ネタバレ】チョッちゃん(40)―連続テレビ小説―

NHK 1987年5月21日(木)

 

あらすじ

蝶子(古村比呂)の叔父・泰輔(川谷拓三)の元に、映画館の楽士・国松連平(春風亭小朝)が、例のバイオリニスト・岩崎要(世良公則)を連れてきて、しばらく泰輔のところに匿ってほしいと頼み込む。岩崎は男女トラブルに巻き込まれているのだという。岩崎を女の敵と嫌う蝶子だったが、時折岩崎の部屋から聞こえてくるバイオリンの美しい音色に惹かれていく。岩崎も蝶子の歌声をいい声だと褒めるのだが…

2025.5.8 NHKBS録画

peachredrum.hateblo.jp

脚本:金子成人

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黒柳朝チョッちゃんが行くわよ」より

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音楽:坂田晃一

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語り:西田敏行

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北山蝶子:古村比呂…字幕黄色

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岩崎要:世良公則

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国松連平:春風亭小朝

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木村益江:山下智子

佐々木光代:山下容里枝

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早川文吉:鈴木一功

梅花亭夢助:金原亭小駒

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鳳プロ

早川プロ

劇団ひまわり

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野々村富子:佐藤オリエ

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野々村泰輔:川谷拓三

 

<チョッちゃんが一人、留守番をしていた時、連平が例の岩崎要を連れてきて「預かってくれ」と言った、その日の夜のことです>

 

台所にいる富子と蝶子。

 

茶の間

連平「社長、お願いします。しばらくの間、要さんをこのうちに置いていただくわけにいきませんか?」

泰輔「置くったってねえ」

連平「是非お願いします。ずっと居続けってことじゃないんですよ。ほんの、しばらくの間」

泰輔「でも、どうして?」

 

連平「実は…」

うなずく要。

連平「あの、要さん、人に追われてるんです」

 

話が耳に入る富子と蝶子。

 

連平「追われてるったって、別に犯罪を犯したとか、そういうことじゃないんですよ。ねっ」

うなずく要。

泰輔「借金取りから?」

連平「いえいえ」

泰輔「とすると?」

 

要「女の問題でちょっと」

泰輔「なるほど」

要「はあ」

泰輔「いやいやいや、羨ましいかぎりで、どうも」

 

お茶を出して、また台所に戻った蝶子。

 

連平「社長、そんな艶っぽい話じゃないんですよ。要さんは、このとおり女の人にもてる人だから、今までもいろいろと交際がありました。で、そのうちの一人がね、要さんにほれて、今までつきあってきた男を袖にして彼に入れ込んだんですよ。で、まあ、女の方じゃ結婚できると思ってたんだけど、要さんは、そんな気持ちは、さらさらないんですからね。もともとこの人は誰とだって結婚するつもりなんかない人なんですから」

 

富子と蝶子は台所で話を聞いている。

 

連平「で、女は、やっとそれを知って、同時にね、要さんに別に交際している女がいることも知ったんですよ」

泰輔「ん?」

連平「で、問題は、このあとなんですけどね。その女があろうことか袖にした男んところへ泣きついた。で、あることないことしゃべったんじゃないですか? その男が要さんとこへねじ込んできましてね」

 

富子と蝶子は台所で話を聞いている。

 

連平「で、こいつが話して分かるような男じゃないんですよ。実にタチの悪い男でね」

泰輔「というと、こう女の男に追われてると?」

連平「ああ、そうそう、そうそう」

要「面目ない」

泰輔「なるほど」

 

連平「まあね、あたしのアパートもあるんですけど、その女に知られてまして」

泰輔「あ、なるほど」

要「本所(ほんじょ)の方には実家があることはあるんですが、こういうことで行くのは、ちょっと」

泰輔「ま、そりゃあね」

 

富子と蝶子は台所で話を聞いている。

 

連平「それにここだったらね、昼間、バイオリンのお稽古もできると思いまして」

泰輔「う~ん…分かりました。お引き受けしましょう」

連平・要「すいません」

 

富子が台所から出てくる。「だけどさ、部屋が」

連平「あ、ご心配なく。夢助の部屋借りようと思ってますから」

富子「夢ちゃん、承知かい?」

連平「あいつ、今、いますか?」

富子「いるわよ」

連平「じゃ、ちょっと呼んでください」

 

富子「チョッちゃん、呼んでくれるかい?」

蝶子「はい」2階へ。

 

要「あ…夢助という人は?」

連平「噺家だよ。大丈夫、大丈夫。あたしの言うことだったらね、何でもきく男だから」

富子「だけど…」

連平「いや、あいつはね、前座の時分から、うちのおやじがひいきにしてんですよ。あいつの前の師匠とうちのおやじが仲よしでね。よく酒の席にも呼んだの。あいつはね、もうおしゃべりだし、酒癖悪いしね。前の師匠、しくじってさ。ま、そういう男だから」

 

夢助「お呼びだそうで!」

連平「あ、来た来た。さ、そこお座りよ」

夢助「へい」

連平「実はね、お前さんの部屋をここしばらく借り受けたいんだ」

夢助「よっ」

連平「この人がね、あたしの親友なんだけど行き場所がなくて困ってんだよ」

 

夢助「で、あたしは、どういうことに?」

連平「そうだね。まあ、お前さん、野宿かな?」

夢助「えっへへ!?」

連平「冗談だよ。田原町(たわらまち)の安んとこじゃどうだい? 私から話、しとくから」

夢助「ようがす!」

連平「今晩からだよ」

夢助「うれしいねえ。じゃ、早速、荷物をまとめて」

要「申し訳ない」

夢助「いいんですよ」

泰輔「じゃあ、まあ、部屋へ行って荷物でも置いてきたら、どうです?」

 

要をにらみつけるような目で見ている蝶子。落語家さん同士の流れるようなセリフ。

 

連平「あ、そうしようか?」

要「じゃ」

夢助「ご案内! さあ、こちらこちら。足元気を付けてくださいね」カバンを持って2階へ。連平、要もあとに続く。

 

富子「ちょいと、あんた」

泰輔「何だよ?」

富子「どうして、あんな人、置くなんて言うのさ」

泰輔「お前、あの人は、ああ見えても、あれなんだぞ。バイオリンでは、すごいんだぞ」

富子「いくらすごくたってね」

泰輔「何とか四重奏団とかの…」

蝶子「小海清治四重奏団」

富子「四十か五十か知らないけど、ああいう女ったらし、私、や~だね!」

 

泰輔「嫌ったって、俺は人に頼まれたら嫌とは言わない主義なんだ」

富子「主義が何だい!」

泰輔「しかし、困ってるの見たら、お前…」

富子「自業自得だ」

蝶子「そしたら、あれかい? 食事なんかも一緒にするんかい?」

富子「どうすんのさ?」

泰輔「そりゃ、まあ…今後の話し合いだな」

富子「何だかいけすかない男だよ」

 

⚟夢助「ええ」

 

泰輔「ああ」

夢助「ごめんなさいやし。じゃ、あたしは」

泰輔「夢助さん、悪いね」

富子「あの人、出したら、すぐ知らせるからね」

泰輔「うん」

夢助「じゃ」小さな風呂敷包み一つで出ていった。

 

玄関まで見送る蝶子。「おやすみ」

夢助「おやすみなさい」

 

甘味処

光代「ねえ、やっぱりチョッちゃんが言ったとおり女の敵よ!」

益江「で、様子はどうなの?」

蝶子「平然としてるさ」

益江「ずうずうしいんだ」

蝶子「全然すまなそうにしてないんだわ」

光代「嫌な男!」

益江「そういうのを『厚顔無恥』っていうのよ」

光代「無神経男!」

益江「放とう息子」

蝶子「女の敵!」

 

益江「チョッちゃん、気を付けなさいよ。ひとつ屋根の下に住んでんだから」

キョトン顔の蝶子。

益江「…ま、いっか! いい」

 

蝶子「いやいや、みつ豆って、おいしいね! 私、初めて食べたもねえ」

無邪気な蝶子に光代も益江も笑ってしまう。

 

野々村家

ラジオをチューニングしてつけた蝶子は台所にいる富子に「手伝う」と声をかけた。

富子「うん」

 

ラジオから流れるのは「朝日は昇りぬ」

朝の歌 (朝日は昇りぬ)

朝の歌 (朝日は昇りぬ)

  • provided courtesy of iTunes

ラジオの音と重なるようにバイオリンの音色が聴こえる。

富子「何だい、あれ?」

蝶子「バイオリン!」ラジオを止める。

 

富子「あの男?」

うなずく蝶子。

 

連平「要さん、いる?」

蝶子「この音」

 

2階の部屋でバイオリンを弾く要。

連平「来ましたよ、来ましたよ。寺坂静。あたしんとこへ来ましたよ」

要「一人だったかい?」

連平「うん! 『要さんのいるとこ知ってるんでしょ? 教えて』って」

ため息をつく要。

連平「大丈夫だよ。しゃべりゃしないよ。『私も今、捜してるとこですから』って言っといたから」

 

要「なあ、連平」

連平「ん?」

要「こんなこと、いつまでやってても、らちあかないぞ。ここは潔く顔合わせた方がいいんじゃないかな?」

連平「駄目だよ、そんな! 金でも出せって言われたら、どうすんの」

要「金で済むんだったらさ」

連平「それはね、要さんは下世話な話、知らないかもしれないけど、金なんてのはね、いったん出したら後を引くもんなの。そりゃ、うまく男と話がつけばいいよ。万が一、もめた時に、その大事な腕や指にケガでもさせられたらどうすんだい。ここはまあ、ほとぼりが冷めるのを待つのがいいね」

 

要「それで済むかい?」

連平「何?」

要「例えばさ、俺の演奏会に乗り込んでくるってことも考えられるだろ」

連平「ある、ある」

要「な!」

連平「そうか、調べりゃ、すぐに分かるからなあ!」

 

要「…そんなのはね、俺は嫌だからね。やっぱりさ、ここは覚悟を決めて会うしかないぞ」

連平「そうする?」

要「うん…」

 

玄関に出た蝶子。「あ…いらっしゃいませ。あの~…」

文吉「お宅に岩崎要って野郎、来てるよね?」

蝶子「あ、いえ!」

文吉「ウソついちゃいけねえよ、嬢ちゃん!」

蝶子「いえ、そういう人は…」

文吉「じゃ、国松連平に会わせてもらおうか」

蝶子「連平さんは…」

文吉「『来てねえ』とは言わせねえよ!」

 

奥から富子が出てきた。「どうしたの?」

文吉「おかみさんで?」

富子「ええ」

 

蝶子「『岩崎要さんていう人、来てるだろう』って」

富子「そういう人、知りませんね」

文吉「じゃ…とにかく国松連平に会わせてもらいます」

富子「だったら、お門違いだ。連平さんのうちは、ここじゃありませんよ」

文吉「それは分かってる。連平のうちからずっとつけてきて、このうちに入るのを見てこう言ってるんです」

富子「連平さんだったら裏から出てったよ」

 

文吉「何だと!?」

富子「何だい!」

文吉「要の野郎もここにいるに違(ちげ)えねえんだ! 岩崎要! 出てこい!」

富子「帰っとくれよ!」

文吉「捜させてもらうよ!」

 

要が行こうとするのを連平が止めた。

 

⚟富子「ちょっと何すんだい!」

 

要「向こうから来たんだからいいチャンスだって」

連平「駄目だってば」

 

玄関でもみ合う文吉、富子、蝶子。

文吉「こら! 岩崎要!」

富子「ちょっと出てっとくれよ!」

蝶子「警察呼ぶかい!?」

文吉「何だと!?」

富子「この子に手え出したら承知しないよ!」

 

要が出てきた。

文吉「ほら、見ろ。やっぱりいたじゃないか!」

要「表へ出ましょう」

文吉「ケンカしようってのか?」

要「話し合いたいだけです」

文吉「話なんかねえよ!」

 

要「じゃ、どうしろって言うんだ?」

文吉「開き直りやがったな、この野郎! 俺の女をよくもおもちゃにしてくれたな!」

要「そんな覚えありません」

連平「あれは静ちゃんの勝手な思い込みですよ」

文吉「うるせえ!」

連平「要さんに近づいたのは静ちゃんの方だし、結婚の約束なんかしてないんだから!」

文吉「当たりめえだろ。俺って男がいるんだからよ」

 

要「じゃあ、何の文句があるんですか?」

文吉「殴らせてもらう! この野郎! この野郎!」一方的に要を殴りつける。

連平「要さん!」

富子「ちょっと!」

アワアワしている蝶子。

 

文吉「これに懲りたら、ふざけたまね、やめるんだな!」家を出ていった。

 

連平「要さん!」

要「これで問題は片づいたんじゃないか?」

連平「多分ね」

 

富子「う~ん」ふらついて座り込む。

蝶子「あ、叔母さん、大丈夫かい?」

 

連平「要さん、腕は?」

 

要は慌てて2階へ行き、バイオリンを弾く。

要「腕、何ともない!」と笑顔。チョッちゃん、ときめいてる!?

 

連平「本当にありがとうございました」泰輔に酒を注ぐ。

泰輔「いやいや、早く片づいてよかったじゃないの」

連平「ああ、要さんも感謝してましたよ」

富子「ホントかね?」

連平「ホントですよ」

富子「だって、あの人、帰る時『どうも』って言っただけで」

蝶子「うん! 男の人、押しかけてきた時、叔母さん、あの人かばうの大変だったんだから!」

富子「チョッちゃんだってさ、こっちは、かばう義理、何にもないのに、2人して『そんな人いません』ってね!」

 

連平「芸術家ってのは、そういうもんでしてね」

富子「へえ!」

連平「要さんは天才なんだ」

泰輔「ふ~ん、そう?」

連平「そうですよ。音楽学校も出ないで、あの腕なんだから」

蝶子「独学っていうことかい?」

連平「ていうかね、あたしも要さんもデパートの店員だったの。で、そこに音楽部が出来て、そこに入って要さんの才能は開花された」

 

泰輔「努力の人だ」

連平「まさにそうですよ」

泰輔「俺は、そういう人は好きだねえ」

連平「13でね、デパートに奉公に出て音楽に巡り合って、要さんにはバイオリンしかないんだ」

富子「女の方だってさ」

連平「そら、そうですけどね。モボのはしりみたいな人だから。銀座でね、要さんのこと知らない人はモグリなんだよ」

泰輔「『英雄色を好む』ってやつだな」

連平「いいこと言った、社長」

富子「近頃では英雄でも何でもない人も好むけどね」

泰輔「俺がいつ好んだ?」

富子「好みじゃありませんか?」

泰輔「じゃ、ないことはないけど…」

富子「ほら~! あんたね、あのバイオリン弾きを羨んでんだ」

泰輔「何!?」

連平「男だったら羨みますよね」

泰輔「う~ん、そうなんだ。フフン」

連平「そうですよ」

ニコニコ会話を聞いている蝶子。

 

ラジオから「鱒」が流れる。

鱒

  • ジョン・エルウィス & 渡邊順生
  • クラシック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

蝶子がラジオに合わせて歌う。

 

富子「来たよ!」

蝶子「え?」

 

富子「どうぞ」

要「お邪魔します」手には果物の入った籠。「先日は大変お世話になりました」

富子「いいえ」

要「お礼もろくに言わずに帰ってしまったんで今日改めて。どうぞ」

富子「わざわざ、そん…やだ、連平さんから聞いたの?」

要「は?」

富子「あ、いえ…お茶ね」

要「あ、すみません」

 

立ち上がろうとした蝶子に「あ、いい、いい」と奥に行った富子。

 

要「東和音楽学校だったね?」

うなずく蝶子。

要「なかなかいい声だ、君」

慌ててラジオを消す。

要「今度、じっくり聴いてみたいな」

蝶子「結構です!」

要は余裕の笑顔。

蝶子は慌てて部屋を出たが、階段から落ちてしまった。「あ、痛っ!」

 

<ホントにもうおっちょこちょいなんだから…>

 

膝をさする蝶子。(つづく)

 

蝶子はかなり要に対して印象が変わったみたい。でも、意外と苦労人なのね~。