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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(114)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

元子(原日出子)は試しに、素人が書いた原稿を書き直す仕事をもらう。大介(中村雅紀)と道子(川瀬香織)の協力で、なんとか締め切りに間に合い、福井(三木弘子)からもギリギリ合格点をもらう。元子はすかさず次の仕事も願い出て、小説のダイジェストの仕事も得た事を正道(鹿賀丈史)に報告する。正道は元子の無鉄砲が心配だ。そんな時、腰を痛めて寝ている波津(原泉)に、手伝いに来たキン(菅井きん)が嫌味を浴びせ…。

大原家台所

土鍋をガスコンロにかけている。

 

元子はダイニングテーブルでリライト中。

 

⚟大介「ただいま」

 

ダイニングに入ってくる大介。「何だ、返事がないからいないのかと思った」

元子「シッ」

大介「えっ?」

元子「さっきのぞいたらね、ひいおばあちゃま、よく眠ってらしたから」

大介「大丈夫かなあ」

 

隣の部屋を覗くと波津が寝ている。

元子「お元気なようでお年なのね。お父様が個室から移られたんで安心してお疲れが出たんじゃないの? 寝るだけ寝たら、きっとさっぱりなさるんじゃないかな」

大介「うん…」

 

道子「ただいま」

元子「お帰り」

道子「行ってきた」

元子「ありがとう。はいはい…」

 

大介「何するの?」

元子「うん、おばあ様のおかゆは大体出来たんだけどね、悪いけどあんたたち、今日は簡単でいいでしょう? お母さんね、ざっと支度しておくけど」

大介「だってそれ6時まででしょう?」

元子「うん」

大介「もうすぐ5時だよ」

元子「もうあと2枚だもん」

大介「だったら早くしなくちゃ。支度だってあるんでしょ」

元子「靴履いて出るだけだから」

大介「じゃあ僕たち何か食べておくから、お母さんは早く書いちゃいなよ」

元子「ん? ああ…。じゃあ、ごめんね」

 

道子「ねえ」

元子「うん?」

道子「靴、どれ履くの?」

元子「茶色」

道子「うん」

元子はリライト作業に戻る。

 

玄関

揃えられた茶色の靴を履く元子。「それじゃあ、お願いね」

道子「車に気を付けて」

大介「あとは大丈夫だから」

元子「ごめんね。じゃ」

 

道子・大介「行ってらっしゃい」

元子「行ってきます。はいはい…。あっ!」門を出たところで巳代子に出会う。

巳代子「お姉ちゃん」

元子「ちょうどよかった。おかゆ出来てるから、おばあちゃんに食べさせてね」

巳代子「はい…」

元子「お願い」

巳代子「よいしょ…」

 

台所

巳代子「へ~え、それじゃあ道子ちゃんがお洗濯物取り込んだの?」千切りしながらダイニングテーブルに座っている道子と会話。すごい。

道子「うん。だって、お母さんの仕事だもん」

巳代子「偉いわね。いい子だわ」

道子「いい子にしてれば、お父さんも早くよくなるって」

巳代子「道子ちゃん…。それじゃ、そこのお布巾、取ってちょうだい」

道子「はい」

巳代子「はい、ありがとう」

 

波津「まずまず元子さん、起こしてごさんもんだけん、いい気になって、こぎゃん時間まで寝てしまったわね」

道子「やだなあ。お母さんじゃなくて巳代子叔母さんなのに」

波津「はっ?」

 

巳代子「あ…すいません。お目覚めにならないようにと静かにやっていたつもりなんですけど」

波津「あらら。ほんなら元子さんは?」

巳代子「はい、出来上がったらしく出かけました」

波津「あら…また、私としたことが、まあ」タスキがけをしている。

 

大介「気分どう? ひいばあちゃん」

波津「ああ、大丈夫だわね。このとおり、すっかり元気になっただけんね。もう、私がやあますけんね。あっ、どうぞどうぞ巳代子さん」

巳代子「あっ、いいえ。私が来た時ぐらい、おばあちゃまはどうぞ骨休めしていらしてくださいな」

波津「いいや、私は客ではああませんけん。元子さんの留守は私が守ります。今、お茶いれますけん、あなた、そこで待っててごしなさい」

巳代子「あ…あの…」

 

それこそ、ふだん着のままで飛んできた元子さん。約束の時間ギリギリに滑り込みセーフ。ところがその場で書き直しを命じられるという初体験もありました。

 

女性時代編集部

デスクで書き直しをする元子とコーヒーカップ片手に原稿を読む福井。編集長の他にも女性編集員の姿がある。

 

編集員…相田麻理子さん。ちょっと検索したらすごいタイトルの映画が引っかかった。ヒロインではないけどね。

 

元子「あの、ここからこっちの4行目につなげたいんですけど」

福井「送り仮名が2か所違ってるわよ」

元子「はい」

福井「校正係がやることはやるんだけど、大原さん、校正もやれるって言ったもんね」

元子「すいません、急いでたものですから…」

福井「うん、いいでしょう。ご苦労さま」

元子「あっ、それでは…」

 

福井「どうして…なぜ書き直してもらったか分かりますか?」

元子「はっ?」

福井「この手記にはね、もともと主婦が子供を抱えて行商をするっていう迫力と思いがけないエピソードがあるわけね。ただ、素人だから、その順序立てがうまくないの。その点、あなたは順序立てもうまくいったし整理能力はあるようね。けどね、表現力、つまり、この主婦が自分の言葉で語っているっていう表現に欠けていたわけ。時間がないっていう言い訳は、この世界では通用しないわ。その点、注意すればこの仕事は向いてるかもしれないわね」

元子「はい」

 

病室

正道「それじゃあ、OKだったんだね」

元子「際どく合格って感じだったんだけど、物は試し、ほかにも仕事ありませんかってずうずうしく言っちゃったの。そしたら、くれたのよ!」

正道「元子…」あきれ気味。

元子「今度はね、小説のダイジェストなの。編集長言うところの整理能力が買われたみたいよ」

正道「そうやってな、すぐいい気になるところが昔からの悪い癖だ」

元子「いいえ、昔の私とは違います。子供たちは本当によく協力してくれてるし、私一人(しとり)で、あんな急な仕事ができたなんて思ってないもの」

正道「うん。そういえば、おばあさんどうしてる? 最近、顔見せないな」

元子「ええ…おばあちゃまはね、私があんまりバタバタしてるもんだから主婦代理業に職替えです。東京の人(しと)は、どうして、ああ忙しそうに歩くんだろうって言ってたし、やっぱり町へ出るとお疲れになるんじゃないかしら。一人で病院に来て途中、もしものことがあったらってお考えになってるみたいよ」

正道「うん、まあ、それならいいけども。かえってね、君たちのお荷物になってるんじゃないかと思ったからね」

元子「そんなこと絶対にありません」

元子を見つめる正道。

 

元子「あっ…りんごでもむきましょうか」

正道「いや、今はいいよ」

元子「平井さん、山田さん、召し上がります?」

山田「じゃあ、ごちそうになろうかな」

平井「お願いします」

元子「はい。じゃあ、今、洗ってきますから」

平井「いつもすいませんね」

山田「どうも」

リンゴを手に持ち、病室から出ていく元子。

 

山田「いやぁ、美人で明るくていい奥さんですね」

正道「あ…ハハ…」

 

廊下を歩いていた元子の前に別の病室から正道の手術を担当した医師が出てきた。いつもの看護婦さんも一緒。

元子「先生」

医師「ああ、大原さん」

元子「主人、何だか元気がないような感じなんです」

医師「うん…実は軽い黄疸症状が出ているんです」

元子「黄疸…!?」

医師「ええ、大量に輸血しましたからね。その影響が出ているんです」

元子「ということは?」

医師「いや、もちろん、その手当てはしていますから、しばらく様子を見ましょう。それより肝炎の心配もなくはないんでねえ」

元子「先生…」

医師「まあ、回復が少し遅れるかもしれないな。じゃ、そのつもりで」

元子「はい…」

 

夕方、大原家

 

⚟元子「ただいま」

 

ダイニングの隣の部屋で寝ている波津。「ん…。お帰りになったか」

元子「遅くなりました。どうかなさったんですか?」

波津「腰の痛みがとれたと思ったら今度は風邪ひいたみたいで」

元子「まあ、横になっててくださいな。風邪は寝るのが一番っていいますから」

波津「すまんのう。自分がこげん役立たずだとは思わんかったけんね」

元子「何をおっしゃいますか。おばあ様がお留守をしていてくださると思うだけで、私、どれだけ安心か分かりませんよ」

 

波津「で、正道はどげなあんばいだったかいね?」

元子「はい、仕事のこと、とっても喜んでくれました。しっかりやれって」

波津「あぁあぁ、そげかね。この前行った時は、えらい考え込んじょうやな様子だっただけんね」

元子「はい…ですから、よくなることのほかは、くれぐれも考えないようにと言っておきました」

波津「そげかね。私のことは言わんといてごしなさいね。病人に気ぃ遣わせるといけませんけんね」

元子「はい」

波津「なに、今夜一晩寝たら明日は起きられえだけんね」

元子「ええ。何か召し上がりましたか?」

 

波津「いや、それより、あなた新しい仕事頂いてきたのをせんといけませんでしょうが」

元子「はい」

波津「子供たちが帰ってくるまでにちょっとでもせんと、また徹夜になあといけませんで」

元子「今度は2日間、余裕があるにはあるんですけど…。そうですね、じゃ、夕方の支度まで私、ここでやります。よいしょ…」布団の隣にテーブルを出す。

波津「そこなら私にも見えるだけん、ちょうどいいわ」

元子「はい」

 

キン「ごめんくださいまし」

元子「あっ、おキンさん」

縁側から顔を出すキン。「あっ、ご隠居さん、お加減でも悪いんですか」

元子「うん、ちょっと風邪気味だっておっしゃるんで大事をとって、今、横になっていただいたとこなの」

キン「そうですか。そりゃ、ちょうどよかった。今日はね、巳代子さんがテレビ局だから、ちょっとのぞいてきてくれって言われたもんで、ついでに買い物もしてまいりました」

元子「大丈夫?」

キン「ああ、いいんです、いいんです。奥さんはお仕事を続けといてくださいまし。そのためにこのおキンばあやが来たんですから、へへへ…」

元子「すいませんねえ。じゃあ、ポットにお湯入ってますからね。勝手にお茶飲んでってちょうだい」

キン「へいへい」言葉の穏やかさと裏腹に家に上がりながら波津をにらむ。冷たい目。

 

ダイニング

波津が寝ている隣の部屋のガラス戸は閉まっている。

キン「ねえ、人の親切は素直に受けるもんだってのに、まあ、せっかく巳代子さんが忙しい間縫って来てくれるってのに偉そうに私がやりますなんて、まあ、突っ張らかるから、こういうことになるんで。ねえ」

エプロンをあてながら大きな独り言を言うキンの言葉は当然、元子の耳にも入る。

 

⚟キン「年を取ったらかわいがってもらえるようでなきゃ、おしまいだってのが、まあ、分かんないんだから本当にどうしようもないわね。ねえ。気位ばっかりね、高くて、あれじゃ手伝いに来たんだか、奥さんの足引っ張りに来たんだか本当に困ったもんだ」

 

波津にも聞こえていて、元子はたまらずダイニングへ。「おキンさん」

キン「へえ」

元子「そこ、置いといてくれるだけでいいのよ」

キン「あっ…何を言ってんです、え。勝手知ったる他人のうちってね、ねえ、奥さんとは赤ちゃんの時から何たって、ねんねこ背負(しょ)ってつきあってきたんです。このうちのことでしたらね、何でも分かってるんですから、へえ。奥さんはね、大船に乗ったつもりでお仕事どんどんしてくださいまし、へへ。はばかりながら、このおキンばあや、口先だけでなく足腰だって、このとおりピンシャカしております、ヘッヘッヘ…」

 

元子「悪いけど、おキンさん、今日はもう帰ってくれない?」

キン「へ!?」

元子「買い物してきてもらえただけで十分だし、もう大丈夫だから巳代子によろしく言ってちょうだい。ね」

キン「何言ってんです。私ならどうせ暇ですし、まあ、病人2人も抱えてたら、お嬢が参っちまいますですよ」

元子「大きなお世話だわ」

キン「お嬢…」

 

元子「私、おキンさん大好きよ。子供の時から本当によく面倒見てもらって、とっても他人だと思えないし、しばらく顔見なけりゃ、おキンさんどうしてるかなとも気になります。けどね、寝てる人に向かって、わざわざ当てこするような悪たれを言うおキンさんは私、大嫌いよ」

キン「悪たれだなんて、そんな…」

元子「じゃないなら、ごめんなさい。でも、私にはそう聞こえたの。ましてや慣れない東京で寝込んで心細くなってる人に、どう聞こえるか考えもなしに言うなんて、どっちが困り者かしらね」

キン「お嬢…」

元子「おばあ様はね、私にとって掛けがえのない大切な人なのよ。だから悪いけど、今日はもう帰ってちょうだい」

キン「申し訳ございませんでした」

 

キンさんのイヤミ。昔の方がかえってお年寄りには辛辣だったりするよね。まあ、こんな状態じゃ銀太郎さんも店出すしかないよ。善吉も同じような性格だしね。しかし今回のことも元子が言ったから素直に謝ったようなものの、波津が言い返したらまたとんでもないことを言いそう(^-^;

 

吉宗作業場

善吉「だから口を慎めっていつも言ってるじゃねえか。それをてめえがてめえがっていい気になりやがって、バカ野郎が、もう」

宗俊「まあ、元子も元子だ。なあ、亭主が入院中だっていうのによ、またぞろ変な虫を起こしやがって」

トシ江「それにしたって言い過ぎよ。元子だって一生懸命やってるのに」

宗俊「いや、俺ぁな、寝ているばあさんの身にもなってみろって、そう言ってんだ」

キン「だから私、手ぇついて謝ってきたんですけど」

彦造「けどな、一旦、口から出ちまったもんは取り返(けえ)しがつかねえだろ、え」

宗俊「全く『弱り目にたたり目』ってのは、このこったい」

 

藤井「とりあえず私が一度、様子見てきましょう」

善吉「あっ、そうですか…」

トシ江「そうね、そうしてもらえないかしら。まあ、正道さんがもう少しはっきりするまで、おばあ様こちらに寝ていただくとか何とかねえ」

宗俊「まあ、あのばあさんのこった、うんとは言わねえだろうな」

トシ江「だからといってね…」

 

藤井「いや、大丈夫ですよ。おばあさんには僕から穏便に話をしてみます。その上で今のお義姉(ねえ)さんに一番いい方法を考えてみます」

善吉「あ~…」頭を下げる。

宗俊「まあひとつよろしく頼むわ。な。元子のやつは気が強(つえ)えからよ、俺が出ていきゃ、またぞろ親子げんかになりかねねえ。な」

藤井「はい」

 

困ったことになりましたが、今、一番切ない思いをしているのは、この波津ではないでしょうか。

 

夕方、大原家茶の間

寝ている波津の傍らで原稿を書いている元子。

 

病室

正道は、じっと天井を見つめ、窓に目をやる。ベッドサイドの家族写真、何か違和感あると思ったら昭和38年にカラーの大きめの写真だったからだな。昭和40年代生まれくらいの人でも小さいころは白黒じゃなかった?

 

大原家台所

ネギ?を切っている元子。

 

とにかく今は乗り越える以外に道はありません。波津も正道もそしてもちろん元子もです。

 

茶の間を覗いて波津が寝ていることを確認した道子が元子にOKマークを出し、食器を出す。

 

つづく

 

切ない…。波津さんがあんなイヤミを言われる筋合いないよ! そんでもって藤井に任せて大丈夫なのか!?