公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
波津(原泉)と邦世(磯村みどり)と一緒に東京に戻るつもりだった元子(原日出子)は、二人から松江に残ると言われ戸惑う。正道(鹿賀丈史)も不在なため、三井(星充)に相談すると、相手を尊重した方が良いと言われる。元子は二人を残して東京には戻れない、陽子(田中美佐子)夫婦に大原家に戻って来てもらえないか、と提案する。願いは聞き入れられ、安心して松江を離れられることになった元子たち一家は人形町へ戻る。
東京へ引っ越すにあたって、波津と邦世から自分たちは松江に残ると宣告された元子は三井に相談を持ちかけました。
喫茶店
良男「だけど、どうして僕に相談するんですか」
元子「ごめんなさい。今夜には帰れると思うんですけれど、主人の留守の間にとんでもない結果になってしまって…」
良男「冷たいようで本当にすまないと思う。だけど、ここはガンコさんの正念場だと僕は思う」
元子「正念場?」
良男「お宅に伺って、いつもそう思うんだけど、あのおばあさんたちも実にきちっとものを心得て、自分たちの生き方を持っていらっしゃるような気がするんだ」
元子「そうなの。だから、今度は私もどう説得したらいいのか手も足も出なくなってしまって…。主人はいないし、それでついわらにもすがる思いで三井さんに…ごめんなさい」
良男「だからさ、おばあさんたちの立場になって考えてごらんよ」
元子「えっ?」
良男「君がもしこうしたいとはっきりとした信念を持っている時にだよ、自分の信念を貫き通すか、あるいは自分のメンツを考えて折れるか」
元子「メンツだなんて…」
良男「それがないと言えるかなあ。年寄り2人置いて、それは確かに心配はあるだろうけども、だけどもう一つ、あの若夫婦は年寄りだけ残して行ってしまった。そう世間に思われたくない気持ちもあるんじゃないの?」
元子「それは…」
良男「だったらそれは相手に対して、これほど迷惑な話はないじゃないか」
元子「ええ…」
良男「だから君の気持ちは、おばあさんにとっては親切の押しつけになるんだろうし、そう言っては失礼だけれども残されている時間だって、はるかに君よりは少ないんだもの。それを守ろうとする権利は向こうにおありなんだし、ガンコさんはそれを尊重しなければならない務めがあるんじゃないかな。あとは家族間の問題だから僕はこれ以上、口を挟むことはできないけどね」
元子「ありがとう。やっぱり会ってもらってよかった」
良男「そう」
元子「そうなのよね。私…私たちの希望を優先にものを考えていたみたい」
良男「うん」
元子「だけど、もう一度、努力してみるわ。私たちの希望とおばあ様の考えと一致する点があるかもしれないし」
良男「そうだよ。こういうことは最後まで努力と話し合いさ」
元子「本当にお忙しいとこどうもありがとうございました」
最初から家族である陽子夫婦に相談したらいいのに…と思ったけど、三井さん、ズバズバといいこと言ってるなあ。たばこモクモクだけど。
一方、波津もそのころ訪問した本家で…。
本家
囲炉裏のある部屋
波津「ほんならまあ、そういうことでひとつ」
政久「よう分かあました」
波津「やれやれ、正道や元子さんの前で慣れん大芝居を打っただけん、ハハハハ…こいで一安心ですわ」
政久「だども、ようそぎゃん思い切ったことを」
波津「若(わけ)えもんは、こうからですけんねえ。ほんならお邪魔しましてね」
政久「あ~、今、うちのを供につけますけえ」
波津「ああ、何言わっしゃあ。供なしでは歩けんようなぐらいなったとは…何にもなあませんがね」
政久「ハハハハ…」
波津「大丈夫、大丈夫」
その晩、正道が東京から帰ってきました。
波津の部屋
邦世「そげだわね。おばあ様と私は残ることに決めましたけんね」
正道「いえ、しかしですね、お母さん…」
波津「いや、このことはね、本家の政久さんにもちゃんと了解はとってああますだけんね」
正道「本家のですか?」
元子「あの…差し出がましいことを言うようですが、この家に陽子さんが入っていただくわけにはいかないでしょうか」
邦世「陽子に?」
元子「はい。私、松江に残りたいっておっしゃる、おばあ様たちのお気持ち、大切にしたいと思っているんです」
正道「おい、元子…」
元子「すいません。でも、もう少し言わせてください」
邦世「だども…」
元子「そもそも今度のお話は、おばあ様のお許しがあってのことです。それなのに、おばあ様たちを置いて私たちだけ東京へ行くっていうのは…」
邦世「それは私たちがそげしてごせと」
元子「でも心が残ります。その心残りを陽子さんがかなえてくれるのではないかと…。陽子さんや平八郎さんには何のご相談もせずに勝手に考えたことなんですけれど…。お願いします。ねえ、お義母(かあ)様」
邦世「元子さん…」
元子「お願いします、おばあ様。このままでは私、とっても東京へは行かれません」
正道「僕は、おばあさん残るってのは帰ってきて初めて聞いた話だし、まして、そのあとのことまで考えてなかったな。いや、でも元子も考えに考えた末のことだろうし、今の話聞いてるとなるほどと思うところもあるな」
元子「それじゃあ…」
正道「うん…しかし、もう少し考えさせてくれないか。まあ、そういうことになるんだったら平八郎君ともちゃんと話、しなきゃいかんしな」
波津「考えるってことは、いいことですわね。あとで後悔するよりは考えすぎて悪いってことはないですけんね」
正道「はい」
正道たちの部屋
布団に仰向けに寝て、ため息をつく正道。
元子「あなた…。突然、相談もなしにすみませんでした」
正道「しかし…驚いたよ」
元子「でも、お二人の気持ちになれば、当然、分かりそうなことだったのにうかつでした。そうなったら少しでも早くお話ししたいって思ったもんですから」
正道「ああ。確かに陽子たちに異存がなかったら、元子の考えもいいかもしれないな…。それに昔は松江と東京っつったら、それこそ一生の別れみたいに遠い所だって思ってたけれども距離なんてものは縮めようと思えば、縮まるもんかもしれないな」
元子「はい」
正道「平八郎君に話してみようか」
元子「はい」
結局、話し合いは陽子夫婦が波津たちとの同居を快く同意することで東京行きは正道たち親子4人ということに決まりました。
その出発の朝です。
台所
元子「それからね、こんなことは縁起でもないことなんだけど、もしも…もしもよ、おばあ様が寝込んだりすることがあったら必ず知らせてくださいね」
陽子「ええ」
元子「もしものことがあったら、私、一生悔いが残ると思うのよ」
陽子「お義姉(ねえ)さん…」
元子「それから、一日も早く元気な赤ちゃんを産んで。その時は私、必ず駆けつけますからね」
陽子「お義姉さんこそ、気ぃ付けて」
元子「ありがとう」
陽子「だって、兄も張り切っちょうけど、いわば一からの出直しでしょう」
元子「うん。でも頑張る」
陽子「頑張ってね」
元子「ええ」
波津の部屋
波津「あら、ほんなら大介は5つ寝たら、また戻ってくうだかや」
大介「そうだよ。だって、お父さんだって5つ寝て帰ってきたもの」
政久「そうはなあ、大介…」
波津「まあまあ、そげないなことにしといてやってごしなさい。なあ、大介」
大介「ひいばあは、お土産、何がいい?」
波津「お土産?」
大介「だって平八郎叔父ちゃんにお小遣いもらったもの」
政久「お~」
邦世「おやまあ、それはよかったねえ。ハハハハ…ねえ、よかったね、道子や」
平八郎「それではそろそろ時間ですけん」
波津「あららら、そぎゃん時間ですかいね」
邦世「元子さんは何しとらあさあかいね?」
正道「ああ、陽子と一緒に台所を片づけてましたね」
邦世「まあ、出発前にそぎゃんことせんでも…。はいはい…」
平八郎たちは廊下を歩いていき、部屋には波津と政久が残る。
正道「それでは、大伯父さん、このうちのこと、くれぐれもよろしくお願いいたします」
政久「確かに引き受けた。そうだけん、今度は必ず成功してくうだで」
正道「はい。おばあさん、正道、行ってまいります」
波津「政久さんもこげに言ってごしなはっただけん、後のことは一向に心配いらんけん。十分に働いてきてござっしゃい」
正道「はい。それでは」
大原家前
元子「おばあ様…」
波津「体に気ぃ付けえだで」
元子「おばあ様こそ」
波津「門出に涙は禁物」
元子「おばあ様…」
波津「正道や大介のこと、しっかり頼んましたよ」
元子「はい」
波津「ほんなら、行かっしゃい」
元子「はい」政久達に頭を下げ、歩いていく。
平八郎は荷物持ちとして同行。
元子「♪あかりをつけましょ ぼんぼりに
お花をあげましょ 桃の花
五人ばやしの笛太鼓」
正道「お~、ご機嫌だな、道子」
元子「今頃、おばあ様たちどうしていらっしゃるかしら」
正道「うん…」
元子「3年も松江にいたなんて…。何だかもっと短かったような気もして」
正道「そうだね」
元子「でも、私、おばあ様と暮らせて幸せでした。随分、いろいろなことを教えていただいたんですもの。私もこれからはああいうふうに生きていきたいって思ってるの。どんなことがあっても精いっぱい一生懸命に…」
元子が話している間、波津が点てた抹茶を飲む邦世が映る。
吉宗前の路地を大介が走る。
善吉「こらこらこら、大介坊や!」
順平「こら! こら! 待てよ!」
大介「ただいま~!」
善吉「しょうがないんだから。ハハハハ…」
遅れて歩いてきた元子たち。宗俊が道子を抱いている。
宗俊「ハハハハ…ただいまって言いやがった」
元子「けど驚いた。覚えてたのね、あの子。表通りからまっすぐ間違えずに来たわ」
宗俊「そりゃおめえ『三つ子の魂百までも』っていうじゃねえか、なあ、正道っつぁん」
正道「えっ…でも、大介、ここで生まれたんですからね」
宗俊「ハハハハハ…」
吉宗前
巳代子「お姉ちゃん!」
元子「巳代子!」
巳代子「アハハハハ!」抱き合う2人。
藤井「大原さん!」
宗俊「おいおい、お前はつられんじゃねえ。おめえはお前、こないだ正道っつぁんに会ったばかりじゃねえか」
藤井「ああ、そうでした」
キンや彦造も出てきて、元子は頭を下げる。
宗俊「おい、彦さん、おキンばあさん、これがね、松江生まれのべっぴんの道子ちゃんですよ」
キン「かわいいこと、まあまあ…。まあ、お疲れでございましたでしょう。ねっ、あの…」
彦造「とにかく中へ入ってもらって…。さあさあ…」
善吉「はい、入ってくださいよ」
店にトシ江が正座して待っていた。
涙ぐむ元子。「お母さん…」
トシ江「お帰り」
元子「ただいま帰りました」
トシ江「うん。さぞおばあさんたちのことつらかったろうね」
元子「お母さん…」
宗俊「おう、そうだそうだ、おい善吉」
善吉「へいよ」
宗俊「無事に着いたって電報打っとけ。子連れの旅だから、お前、案じてられるかもしれねえからな」
善吉「へいよ!」
順平「あっ、いいよ、俺が…」
宗俊「よし、さあ、入った入った」
さあ、元子さん、東京で再出発です。
つづく
来週も
このつづきを
どうぞ……
元子が突然提案するより、元子が陽子夫婦に相談したら、そういうことなら…と陽子が言いだす展開の方が自然だった気もするけど、三井さんを出すためだったのかな。平八郎にしたら、夫婦水入らずの暮らしが~と思ってたりして。陽子の立場だったら、私なら仲のいい祖母・母との暮らしは歓迎だな。
ここでもめないのが小山内脚本らしく好きなところなんだけど、はいはい、ヒロイン都合と受け付けない人もいるのだろうね。
それにしても朝ドラはヒロインは、ヒロインの親との同居率、高いよね~。それだけ憧れの存在みたいな感じだったのかな。「マー姉ちゃん」「澪つくし」「はね駒」「純ちゃんの応援歌」。
同居そのものが少なくなった?90年代以降の作品だと「あぐり」「ゲゲゲの女房」も夫婦で上京して、どっちの親とも同居しなかった。どっちも後になって夫側の親と同居してたか。「芋たこなんきん」はヒロインの結婚が遅かったから嫁姑って感じでもなかったしね。
この回で松江に行って3年…結構長かったよね。
ツイッターで見かけたけど、初代・順平の吉田紀人さんの歌。この歌知ってる。1978年発売だから順平を演じた頃より幼い。
wikiを見てたら、初代順平と一緒に出ていた吾郎役の前田晃一さんは、その後、「はいすくーる落書」という斉藤由貴さんが担任の先生を演じた学園モノの生徒の一人だったけど、吉田紀人さんもパート2の生徒だと知る。
来週からは再び東京編。キンさんや彦さんを見かけないと思っていたら今日出てきた。だからもう一度言っとこう。吾郎はどうなった?