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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(86)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

大介(橘慎之介)は針を踏んで病院で手術を受けることとなった。大事には至らなかったが、最近のうわの空でいる元子(原日出子)に、邦世(磯村みどり)は厳しく小言を言う。元子が仕事をしたがっていることも見抜いていたが、今は子供に専念する時期だと諭す。陽子(田中美佐子)は、そんな元子にラジオのモニターの話を持ってくる。ラジオ放送の番組をいくつか受け持って、自分の意見や感想を放送局に提出する仕事だと言うが…。

泰光の部屋

波津が泰光の体を起こし、大介をおんぶした正道と元子が部屋に入ってくる。

正道「ただいま戻りました。どうもご心配かけて申し訳ありませんでした」

泰光「そうで、どげなあんばいだった?」

元子「はい、足の裏を切開いたしましたので3針ほど縫いました。本当に何とおわびを申し上げていいか分かりません。申し訳ございませんでした」

波津「わびるなら当の大介にわびさっしゃい」

元子「はい」

 

波津「ほいで、大介は泣いたかや?」

大介「はい。でも、ちょっとだけです」

波津「ほう、それはご立派。男の子だけんのう」

大介「はい」

波津「元子さん、道子も待っちょうだけん、邦世さんにお礼を言ってきなはい」

元子「はい。失礼いたします」

 

元子を見送る大介、かわいいなあ。

 

台所

邦世さんの包丁さばき、見事!

元子「お義母(かあ)様…」

邦世「ああ、道子ならミルクを飲んで寝たけん。向こうの部屋へ寝かせちょいてきたけんね」

元子「はい。私の不注意でお義父(とう)様やおばあ様にもご心配をおかけしてしまいました。本当に申し訳ありませんでした」

邦世「そげだがね、子供のけがは親の不注意です」

元子「はい」

邦世「気にはしちょったけども、近頃のあんた、いつもの元子さんと違いますね」

元子「はい」

邦世「とっさのことで針は私の不始末だと、おばあ様に申し上げてしまいましたども、針箱を開けた時に針の数を数え、針箱の蓋を閉めえ時に、もう一度、数を数えるのが私の習わしだけんねえ。私のうそぐらい、もう、おばあ様は、とっくにお見通しだわね」

元子「はい」

邦世「だども針を踏んだのが大介だったのが、まだ不幸中の幸いです。これが道子だったら口もきけず、ただ泣くだけだと思ったら、私は本当にゾッとしましたわね」

元子「はい」

邦世「あなたのおかげで私は、おとうさんの看病と仕立物の仕事に専念できて本当に感謝しちょうますわね。だども、このところ、あんたが考え込んじょなさあことも大方の見当はついちょうつもりです」

元子「お義母様」

 

邦世「ねえ、元子さん、子供もちゃんと育てられんようで、一体、おなごにどぎゃん仕事ができいでしょうかいね」

元子「はい」

邦世「大介も災難だったども道子もおなかをすかせ、泣きながらミルクを飲んでようやく今、寝たですわね。ねえ、言葉がきついやなけど、あんたのうわの空が2人の子供を泣かし、私にもうそをつかしてしまったですけんねえ」

元子「本当に申し訳ございませんでした」

邦世「とかく、よその花はきれいに見えるもんだけん、フワフワしちょったら自分の庭も荒れてしまいます」

元子「はい」

邦世「あなたが本当に仕事を持つ時は、もちろん私らは応援しますけんね。今は子供のことをしっかりと考えてやってごしない」

元子「はい」

 

邦世「で、大介はどげなふうでしたか」

元子「はい、今、正道さんが見ていてくれますが、うみさえしなければ大丈夫だとお医者様が」

邦世「ああ、それはよかったねえ」

元子「はい。お義母様がすぐに針だと気が付いてくださったおかげです」

邦世「ほんなら、ここはいいけん、ちょっと道子をのぞいてやあだわね」

元子「はい」

 

ふだん口数の少ない邦世の注意だっただけに、元子はそのひと言ひと言を深く深く肝に銘じました。

 

夜、正道たちの部屋

着替えもせず子供たちの寝顔を見ている正道。元子が部屋に入って来た。

正道「痛み止めが効いて寝たみたいだ。きっとみんなの顔を見て安心したんだろう」

正道の前に座り、手をつく元子。

正道「おい、元子…」

元子「私の不注意だったんです。私がうわの空だったから…」

正道「元子」元子の手を取る。

元子「それなのに、あの子、病院で私の手をしっかりと握り返して一生懸命頑張ってくれたんです」

正道「うん」

元子「元はといえば、あの時、あなたにも注意されたのに、私の心がよそ見していたから…。バチなら私が受けるべきだったのに…。本当にごめんなさい…本当にごめんなさい…。ごめんなさい…」

泣きだした元子の背中をさする正道。

 

しかし、そんなことがあったとは知らない、こちらでは…。

 

吉宗

巳代子「やっぱり、お姉ちゃんは元専門家だわ」

トシ江「何だって?」

巳代子「私が失敗したかなって思ったところは、みんな注意してきている。でも『おおむね良好、95点』だって褒めてくれてる」

トシ江「『かわいい子には旅をさせろ』って本当だね。元子もだんだん一人前の大人になってくよ」

巳代子「あら、じゃあ私はまだ半人前ってこと?」

トシ江「当たり前でしょ。こんなところで油を売ってる暇(しま)があったら、ご亭主のシャツのアイロンでもかけたらどうなんだい」

巳代子「フフン、もうかけちゃった」

トシ江「まあ、誰に似たのかねえ。のんきかと思えば妙に早いとこもあってさ」

巳代子「ねえ」

トシ江「まあ…」

 

巳代子とトシ江は元子とトシ江にはない雰囲気あるよね~。

 

絹子「こんにちは」

 

トシ江「はい」

 

洋三「こんにちは」吉宗に入って来た。

 

巳代子「ああ、いらっしゃい」

トシ江「まあまあ、おそろいで」

絹子「いえね、ちょっと気になることがあったもんだから」

トシ江「まあ、そう。どうぞお上がりなさいな」

絹子「あっ、そう?」

トシ江「何でしょうね、気になることって一体」

絹子「失礼します」

洋三「じゃ、ちょっとお邪魔して」

トシ江「はい、どうぞどうぞ」

 

茶の間

洋三「いえね、ゆうべ店へ来た記者クラブの人から六根ちゃんのご亭主が病気してたって聞いたもんですから」

トシ江「まあ…ハヤカワさんが?」

絹子・洋三「ええ」

巳代子「でも、もうほとんどいいって話よ」

絹子「あら。じゃあ、やっぱり本当のことだったのね。ろく膜だったんですって」

巳代子「うん、確か、そんなこと言ってた」

トシ江「だったらどうしてそれ言わなかったのよ。見舞いにだって行かなきゃならなかったのに」

巳代子「私だってつい最近聞いたばかりだもん」

 

絹子「まあ、そりゃまあ六根さんにもお母さんはついてるし、おうちのことも心配なかったとは思うけどね」

巳代子「そうか、それで六根さん、逆にバリバリと仕事してたのね」

トシ江「けど無理して、あの人(しと)まで体壊したら大変ですよ」

巳代子「そうねえ…はい」

トシ江「ああ、はい」巳代子が入れたお茶を絹子たちに出す。

 

ハヤカワの病気も気になりますが、こちらのけが人、大介の方は…。

 

波津の部屋

元子「元子です」

波津「はい、どうぞ」

元子「さあ、大介。病院へ行ってまいりました。今日やっと糸が取れたものですから」

波津「おお、そりゃよかったのう」

元子「本当にご心配をおかけいたしまして」

 

波津「痛かったかや、大介」

大介「ちょっとだけ」

波津「おお、そりゃ偉かったのう」立ち上がり、戸棚からお菓子を取り出し、懐紙に包んで大介に渡す。「はい、ご褒美」

大介「ありがとう」と部屋を出て行く。

 

元子「あの、お話って何でしょうか」

波津「本家から持ってきてごしなはった陽子の縁談のことだわね」

元子「はい」

波津「私らに異存はないだども、ああた方の意見はどぎゃんふうにまとまったかと思ってね」

元子「はい、正道さんは、あとは陽子さんのお気持ち次第で信頼のおけるお相手ではないかと言っていますし、私もなかなかのご縁ではないかと思っています」

波津「ひとつ正道と相談して、本家と細かな打ち合わせをしてごしなはらんか」

元子「はい、やらせていただきます」

 

波津「はい、フフ…。あっ、そうそう、叱られたかや?」

元子「は?」

波津「邦世さんにだわや。大介の病院通いが済んだら聞こう聞こうと思っちょっただけんね」

元子「はい。子供もちゃんと育てられんようで女にどんな仕事ができるかと、そのひと言が一番、身にしみました」

波津「あの人も私にうそをついただけんね、ほいで人を叱るはめになってしまって気の毒に」

元子「でも、しっかりと目を覚まさせていただきました」

波津「邦世さんにしても私にしても、これで身を立てようと思って、書道や裁縫をやってきたわけじゃないんだけんねえ。ただ、たゆみなくやってきたことが今日、身を助けえことになっちょうだけんね」

元子「はい」

波津「だからあんたもやりたいことがあったら、自分で時間を作って、ほいで人様に迷惑かけん範囲でやったらいいと思いますわね」

元子「はい。でも、今、私にしかできない役割は子供の母親ではないかとお義母様にもあれから言われました。本当にそうだと思います」

 

陽子「ただいま戻りました」

元子「お帰りなさい」

陽子「大ちゃん、糸取れたんですってね」

元子「ええ、おかげさんで」

陽子「よかった。実はね、今日、ラジオのモニターの話を聞いてきたんですけど」

元子「モニター?」

陽子「ええ。モニターとなあと、お義姉(ねえ)さんは専門家の耳を持っておられえし、大ちゃんの病院通いも終わったとこなら、ちょうどいいだないかと思って」

 

波津「モニターってのは、どげなことだわね?」

陽子「ラジオ放送の感想を述べえ仕事というのかいね。もちろんうちにいてできい仕事だし、番組のいくつかを受け持って聴いて、その放送に対しての意見や感想を書いて放送局に提出する仕事ですわね」

波津「ほう」

陽子「聴くのならね、何かをしていながらだって聴けえし、まとめえのは手の空いた時だってできいだしょうし。お義姉さんがせっかく放送のお仕事をしておられたに、私、もったいないと思うわね。ねえ、おばあさん」

波津「ああ、そげだわね。まあ、元子さんにやる気があったら、そりゃやりたいと思ったら、やったらいいと思いますわね」

元子「はい、ありがとうございます。では、私、少し考えさせていただきます」

 

けれども、元子は、この話を断りました。

 

正道たちの部屋

正道「どうして? おばあさんだっていいって言ってくださったんだろ」

元子「でも、陽子さんのお見合いもあるし、暮れはすぐにやって来るし、落ち着かない中でやっても、結局、中途半端になってしまうでしょう」

正道「うん…」

元子「それにね、おばあ様が賛成してくださったこと、私、とってもうれしいんです。だから余計にみんなの気持ちを大切にしようと思って」

正道「それじゃ、僕も大事に考えよう」

元子「はい」

正道「しかし、やせ我慢には無理があるぞ」

 

元子「あら、今の私の顔、そんなふうに見えます?」

正道「うん?」じーっと元子を見つめる。

元子「嫌だわ」

正道「ハハ…だって見ろって言うから」

元子「じゃあ、陽子さんのお見合いのこと相談しましょう」

正道「そうだなあ。あれもちゃんと考えてやらないと、すぐに適齢期過ぎてしまうからなあ」

 

元子「でもね、これは勘なんですけど何か今度はうまくまとまりそうな気がするの」

正道「へえ~。どうして?」

元子「だから、勘ですってば」

正道を軽く叩いた元子の手が絆創膏?だらけ。

正道「おい…。うん、それじゃあ、まとまるだろう」

元子「どうして?」

正道「うん? それだけ考えてくれてる元子の勘だからね、信用するんだよ。それに本家が持ってきた割には今度の話、結構いいからな」

元子「でしょう」

正道「うん」

元子「陽子さんにも幸せになってもらわなくっちゃ」

正道「うん」

 

陽子には実の妹のような愛情を感じている元子でした。

 

つづく

 

原日出子さんと田中美佐子さんは同じ年だけど、役年齢だと元子29歳、陽子は、まだ20代前半なのかも!?

 

恋愛要素の薄い朝ドラの方が私はハマるんだけど、いや~、小山内美江子さんの描く男性像っていうか、正道さんがすてきすぎて! 小山内美江子さんが少女漫画家ならめちゃくちゃ私のツボを突きそうな漫画を描きそう。カップル萌え作品としては「ゲゲゲの女房」「あぐり」だけど、これも好きだな~。元子と正道は長男長女の生真面目なカップルという感じでいいのよ~。

 

邦世さん、波津さんのいうこともいちいちもっともすぎて。いいよねー。反論せず、ちゃんと叱られるヒロイン。